Fate/false protagonist   作:破月

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はやく4章まとめてpixivにも投稿しなきゃ……


沖田さんを引くかどうか迷う(FateGO)
石は旧剣にめっちゃ貢いだからな……まあ、運だよね、運
そういえば、うちの兄貴は星5セイバーが全部そろったそうで
その代わりにほ星4が悉く来ないという



Kapitel 4-2

 

虎の咆哮で目が覚めた、と言えば聞こえがいい……訳でもないが、ともかく目が覚めた。はっきりはしないが、一度目が覚めた時にランサーが傍にいたような?と首を傾げ、いつものように胸元に置いてあるダークを手に取った。鈍く光る暗器を懐に入れ、軽く布団を畳んでそのまま居間に向かう。

 

 

「……大河ちゃんでも来たかな?」

 

 

寝巻にしている浴衣の裾を払って呟けば、霊体化して傍にいたハサンが控えめに笑いをこぼす。

 

 

「いつものことですが、相も変わらずお元気ですなぁ」

「そうだな」

 

 

姦しいと言ってしまえばあれだが、よく言えば賑やか。成人女性とは思えない頑固さと子供らしさもあるが、他人のことをよく見ている娘だ。なまじっか、彼女が学生だった頃から知っているせいで、どうにも自分の子供のように見てしまうのも仕方がないことだった。

 

 

「さて……自室待機を命じられていそうなセイバーもつれて、居間に行くとするか」

 

 

― ―

 

 

「とにかく遠坂はうちに泊めるんだ。文句は聞くけど変更はしないから、言うだけ無駄だぞ」

 

 

そんな甥っ子の声が聞こえて、思わずため息をつきそうになる。我慢する気がないのだろう、ランサーの爆笑も聞こえるのだからなお悪い。士郎の説明不足に大河ちゃんがさらに吠え、俺の背後にいるセイバーはやや顔を青褪めさせている。申し訳ない気持ちになりながら戸を開け、居間に入れば、一斉に視線がこちらに飛んできた。

 

 

「大河ちゃん、そう頭ごなしに否定するものじゃないよ。士郎には士郎の、遠坂嬢には遠坂嬢の事情があるんだから。まずはそれを聞いてから、反対なり賛成なりすればいい。……ああ、それと、そこの青い髪の男性と、白髪の男性、それから俺の後ろにいる金髪の女性は、みんな仕事仲間だ。それぞれ得意とする得物にあやかってコードネームを付けている。仲良くしてやってくれ」

「あ、はい」

 

 

冷静さを取り戻したのか、少しだけ顔を赤らめて頷く大河ちゃんに頷いて定位置に腰を下ろす。所在なさげにしていたセイバーも呼び、傍観に徹していたアーチャーがさっと差し出した朝食に箸を伸ばした。

 

 

「折角、桜ちゃんが作ってくれた朝食だ。……なぜに鍋物なのか疑問ではあるが、皆で仲良くいただこう。冷めてしまっては、もったいないからね」

 

 

そう言うとこ、親父とそっくりだよな。と、呟いた士郎の声は聞かなかったことにする。女の子には優しくするものだ、とは、確かに兄貴の持論ではある。が、別に俺はそれを徹底しているわけではないし、女の子だからという理由で優しくしているつもりもない。客観的事実を述べただけだ、と誰に言うでもなく心の中で弁明する。

 

 

「ああ、そうだ。――――急がないと、朝練に遅刻するよ?」

 

 

再び虎の咆哮――否、絶叫が響いた。大急ぎで朝食を片付け始める大河ちゃんに、アーチャーと遠坂嬢が目を瞬かせる。ちらり、と時計を確認していた桜ちゃんも、苦笑を浮かべて箸を進める。俺は、間違ったことは言っていない。あと数分もすれば、いつも大河ちゃんや桜ちゃんが家を出ている時間になる。中途半端に朝食を終わらせ、後が辛くなるのは可哀想だと思った俺の、ちょっとした心遣いだ。ここに、ビジネスパートナーたる()がいれば、"胡散臭い"なり、"偽善っぽい"なり、憚りなく罵ってくるに違いないが。

 

 

― ―

 

 

――――そうして、朝食は終わった。食器の片づけは、食べるばかりでは申し訳ないと言って、セイバーが請け負ってくれた。

 

 

「アレは、まだドイツにいた頃でしたか。ホムンクルスたちに交じって、貴方に食器洗いの何たるかを教わりましたね。食器洗いなど久しくしていませんでしたから、力加減が判らずにカップを割ってしまって。……懐かしいことです……ええ、本当に」

 

 

そう言って小さく笑みを浮かべたセイバーに、俺は何も言えなかった。その時、少しだけ落ち着かない様子でセイバーの手元を窺っていたアーチャーが、ギョッとした顔で俺を見た気がした。それから、支度を済ませた士郎と遠坂嬢を、いつも通りの時刻に衛宮邸を出た大河ちゃんと桜ちゃんにそうしたように玄関先で見送りる。アーチャーがいる遠坂嬢はともかくとして。霊体化出来ないセイバーの代わりに、士郎の護衛にはランサーが付く。サーヴァント同士でも話をしていたらしく、そのことはすんなりと受け入れられた。ただ、士郎は、自身の心臓を穿って見せたランサーが護衛、ということに少々びくついてはいたが。ぴしゃり、と音を立てて閉められた戸を後に、自室に戻る。どうにも、昨夜消費した魔力があまり回復していないようで、全体的に体が怠い。袋いっぱいに溜めたはずの空気が、知らぬうちに空いた穴から細く漏れ出しているかのようだ。微量に、魔力が体外へと放出されているような気さえする。少々結界を手直ししただけで、莫大な量の魔力を使ったという訳でもない。不思議なことだと首を傾げ、そして原因に思い至る。

 

 

「(咄嗟のこととはいえ……昨日は、投影魔術を使ったな)」

 

 

アーチャーの奇襲を凌ぐためとはいえ、アレはまずかったかもしれない。俺の投影魔術は、不完全なものだ。起源が起源なので、消費する魔力は多いし、抑止力が働いて碌に維持すら出来もしない。元々、投影魔術は宝具を作り出すというものではない。セイバーが彼らに話したように、ゲイボルクなど宝具級のモノをポンポンと作り出せるのは、()()()()()()()()だ。だからこそ、俺のそれは型落ち品。むしろ、本来の投影魔術といえる。英霊にすらなれなかった男にはちょうどいい、完成などするはずもない、ピースの欠けたパズルのようなモノだ。それでも、いつかの日に本物にすら迫るゲイボルクを投影することが出来たように。今後もそんなことがあるのかもしれない、と期待するのはお門違いだろう。あの時は特別だったのだ。何がどう常と違ったのかは判らない。というか、記憶にない。アレは、()()()()()()()()()()()が作り上げた幻想だ。願いの具現だ。それを、どうして俺自身が投影したと言えようか。真っ当な人間でもない、非人道的な手段すら用いてきた。それでも、魔術師としての誇り(プライド)くらいはある。だからこそ、アレを、さも俺の功績だと褒めそやすセイバーに対して、苦いものがこみ上げてくるのは仕方のないこととも言えた。

 

 

「(()()()()はそんなものじゃない……そんなもの、では……)」

 

 

ならば、一体何が本質と言えるのか。

 

 

『――――ほんの少しだけ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

■■■■(だれか)の言葉を思い出す。

 

 

「(()()()()()()()()とはなんだ?それより、あの男はなぜそんな事を――――)」

「魔術師殿。その先に道はありません、壁と衝突してしまいますぞ」

「――っと、すまない」

「いいえ」

 

 

どこかに飛んでいた思考が、ハサンの声によって呼び戻される。どうやら、自室を通り過ぎ、廊下の端まで来てしまっていたようだ。ああ、集中すると周囲が見えなくなるのは危ないな。そう思い踵を返そうとした、その瞬間。不意に、何かが弾けた。

 

 

『――――■■。熱中するのは構わんが、ほどほどにしろ。貴様はヒトだ。英雄に足る者でも、サーヴァントでも、まして神でもない。ヒトである身で出来ることを弁えよ。幼さ故それが判らぬ、等とは言わせぬぞ。そのような戯言を口にした暁には、二度と口を利けぬようにしてやろう。……貴様は■と同じ、()()()()()()()なのだからな』

 

 

身に覚えのない/どこか懐かしい記憶が脳裏を掠めていく。

 

 

「――――今のは、」

「魔術師殿?」

「ああ……いや、何でもない。俺は部屋に戻って睡眠をとる。おそらくセイバーもそうするだろう。バゼットは目が覚めれば、自分でどうにかするはずだから……そうだな、お前には偵察を頼む。お前が怪しいと思う場所を、徹底的に調べてくれればいい。俺は、お前の勘を信じる」

「はっ……では、御前を失礼いたします」

 

 

浮かび上がったのは一瞬、すぐに霧散して消えていった。あれは、失くしてしまった記憶の欠片(パズルピース)なのだろうか。そうだとしても、何かが、おかしい気がした。

 

 

「(……()()に、あんな尊大な物言いをする知り合いがいたかな……それも、Fateシリーズに精通してるような……)」

 

 

無い記憶を掘り起こすことは出来ない。まあ、思い出せない/忘れてしまったのなら、大したことではないのだろう。そうあたりを付けて、ようやっと自室の方に踵を返す。そんな俺を、

 

 

「――――本当に、」

 

 

姿を消したとばかり思っていたハサンが見ていたことなど、

 

 

「忘れてしまわれたのですね」

 

 

知る由もなかった。

 

 

 

 

 

― ― ― ― ―

(side : Shiro)

 

 

 

 

周囲の視線にさらされながら校門をくぐる。校舎に入ってしまえばそれぞれ別行動だから、周りの目もそれまでの辛抱だろう。

 

 

「――――――――」

 

 

余裕を持って正門を通り抜け、校舎へと向かう途中。何かおかしな違和感に襲われて、足を止めた。

 

 

「衛宮くん?」

 

 

遠坂が怪訝そうな顔をして俺を呼ぶ。

 

 

「(……なんだ?別に何がおかしいってワケじゃないよな……)」

 

 

確かに、遠坂と一緒に登校してきたせいか自然と視線が集まるは当然だ。それでも、誰かに意図的に見られているというワケでもないし、いつもと景色が違うワケでもない。しいて言うのなら、そう―――なんとなく活気がない、というか。それは校舎に向かう生徒たちだけでなく、木々や校舎そのものも、どこか()()()()()()()()()()()()だった。

 

 

「(……気のせいかな。色々あって過敏になってるのかもしれない)」

 

 

目を瞑って、ポキポキと肩を鳴らす。……が。そうやって一呼吸おいて見ても、正体の判らない違和感は消えてはくれなかった。いい加減、遠坂の視線が痛いので何でもないと言って歩行を再開する。この違和感の正体がはっきりしているなら、遠坂に相談なり出来たんだろうけど。あまりに曖昧なそれを口にするのは憚られ、結局そのまま予鈴を言い訳にして教室へと向かった。

 

 

― ―

 

 

「――――――――」

 

 

廊下で遠坂と別れ、教室に入るなり、またあの違和感があった。誰かが菓子でも持ち込んだのか、()()()()()()()()()()

 

 

「……別に、いつも通りの教室だよな」

 

 

男連中に挨拶をしながら席に着く。ホームルームが始まるまであと十分ほど。その間にぐるりと教室を見渡して、鞄のない席に気が付いた。

 

 

「慎二のヤツ、欠席か」

 

 

朝練の時間は終わっているから、この時間帯に教室にいないならそうなんだろう。昨日、セイバーとの手合わせを終えた後、藤ねぇに頼まれて学校に弁当を届けに行った叔父貴がいうには、昨日の部活にも参加していなかったらしい。ああ見えても慎二は几帳面で、神経質なまでに規則を守ろうとするヤツだ。そんなあいつが二日も学校にいないというのは、なんとなく気になった。そんな俺の心情を察してか、そうではないのか。霊体化して後ろについているランサーが、くっ、と喉を震わせた気がした。

 

 

 


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