月の死後にゲーム好きの高校生がデスノートを拾ったら   作:マタタビ

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察知

 ジェニファーは髪を拭きながら部屋に入りパソコンの電源をいれた。程なくして画面が明るくなった。

 椅子に座りパソコンに文字を打ち込む、一見でたらめな文字の羅列に見えるがニアとジェニファーの間だけで通じる、法則性をもたせた暗号だった。死神にパソコンを覗かれるかもとニアが考えたのだ。普通の人が見ても内容を知ることはできないだろう。文字を打ち終わり今日の結果を報告するとパソコンの電源を切り一息ついた。

 あの煜という青年、今日見た限りでは普通の高校生に思えた。しゃべっていても特に特別なことは感じない。事前にNキラかもしれないと考えていなければまず疑いもしないだろう。

 ジェニファーは彼女の長い髪を指先でくるくると弄ぶ。まずは仲を深め、家に自然に入れるようになるのが一番の近道だろう。その時にうまく盗聴器を取り付けられれば死神との会話からノートの隠し場所が分かるかもしれない。

 だが無理は禁物だ。焦って勘づかれてしまえば終わりだと思ったほうがいい。慎重に慎重を重ねて行動していこう。

 

  「アリスーご飯できたぞー」

 

  アンディが呼んでいる。昼は会社員、夜は主婦のような生活を続けているアンディ、捜査員としては使えないが彼の料理はなぜかとても美味しい。

 

  「はーい」

 

  アリスは部屋を出ていい匂いのするリビングへと向かっていった。

 

 

 

 

 

  ソフトクリーム、それは至高の食べ物。口にすれば甘いバニラの香りと幸せなフレーバーが広がる。そして食べ進めていくうちにたどり着くワッフルコーンとの相性、それはまるで運命を約束された恋人たちのように混じり合い、優しいハーモニーが産声をあげる。

 

  「L、聞いていますか」

 

  「ええ、聞いていますよ」

 

  「最近、お菓子を食べているだけで何もしませんね」

 

  「後はもうジェニファーがノートを確保してくれるのを待つだけですからね」

 

  もう解決したかのような口ぶりで話している。この事件が終わったらLはどうするのだろう。もしニアが所有権を放棄しなければ死ぬまで一緒にいなければならない。そんなことをする気はないが、Lがどう思っているのか聞かずにはいられなかった。

 

  「どうですかねぇ。食べ物がまずすぎるので死神界には戻りたくありませんが。ニアが死ぬまで憑いていても構いませんか?」

 

  「嫌です」

 

  「そうですか。まあ今はキラ事件を解決させることを考えましょうよ」

 

  さっきまでと言っていることが矛盾している気がするが、一つだけ分かったのはLはしばらく死神界に戻る気はないということだった。

 

  「ジェニファーからの報告ではまだ怪しい点は見つかっていないようです」

 

  「まあ、当然といえば当然ですね。月君も私以外には誰にも疑われていませんでしたし。怪しい点がないということはジェニファーが捜査員だとばれていないということです、今は彼女を信じて待ちましょう。そう時間はかからないはずです」

 

 

 

 

 

  煜は軽い足取りで学校に向かっていた。アリスが転校してきてから3日が経っていた。昨日は近くの図書館で一緒に勉強をしたのだ、と言ってもほとんど教えてもらうだけだったが。今日もアリスに会える。そう思ったとき煜は背後に嫌な気配を感じた。しばらく気づかないふりをして相手に十分に近づけさせ、振り返ると同時にカバンを回して相手にぶつけた。

 

  「いってぇ!」

 

  「やっぱり夕斗か」

 

  「いきなり何すんだよー」

 

  「それはこっちのセリフだよ。また後ろから抱きつこうとしてたろ」

 

  「いいだろそれは。それよりさーお前アリスちゃんとどういう関係なのー、昨日部活の帰りに見ちゃったんだよねー、一緒に歩いてるところ。転校してきたその週の日曜日にいきなりデートかー」

 

  「ちがうよ。あれは一緒に勉強をしてただけだって」

 

  「またまたー金曜日も一緒に帰ってたくせにーお前も隅に置けねーなー。でも、俺もあの子にガンガンアタックしていくからな。今日は部活オフだし、帰りは俺も一緒に帰るからな!約束だぞ忘れたら夕斗怒るからね!」

 

 謎のオネエ口調で一方的に約束して夕斗は学校に走っていった。しばらくするとまた後ろから足音が近づいてきた。

 

「煜ーおはよう」

 

  「おはよう。あ、そうだ今日の帰り夕斗も一緒に帰るって言ってたよ」

 

  「ふーん」

 

  興味なさそうな返事をしてアリスは煜の横に並んだ。

 

  「昨日の英語ちゃんと分かった?」

 

  「え、うーんまあまあ」

 

  一応返事はするが英語のことよりもアリスと喋ったことのほうがよく覚えているくらいだが、そんなこと言えるはずがなかった。

 

  「本当に分かってるのかな?」

 

  アリスが無邪気に笑って茶化してくる。

 

  「あっもうこんな時間だ早く行かないと遅れるよ」

 

  煜はこの話題から逃れるため、小走りを始めた。

 

  「あっ逃げるなー」

 

  煜を追ってジェニファーも走り出した。

 

 

 

 

  3時間目の授業が始まることを告げるチャイムが鳴った。ジェニファーはちらりと煜のほうを見る、本当に煜がNキラなのか。

 もちろんニアが仕掛けた作戦もなぜ自分が煜を調べているのかもよく分かっているが、煜と話せば話すほど彼が普通の高校生に思えてならない。Nキラの裁きは昨日も行われた。煜がNキラだとすればジェニファーの隣の家でまさに殺人が行われていたということになる。

 ジェニファーはとても歯がゆい思いをしていた。早くノートを見つけたい。焦りは禁物だが、何か確証が欲しかった。今日、動いてみるか。もう一度煜のほうを見ると今度は目が合った。

 

 

 

 

  「でさー今日の体育のサッカーで煜、何もないところで転んでみんな大爆笑だったよホントあれは見ものだったなー」

 

  「ちょっと!それは言わない約束だろ」

 

  「そうだっけ?ていうかアリスちゃん聞いてる?」

 

  「え、ああうん、聞いてるよ。煜、運動も苦手なんだね」

 

 ふふっと笑いながらアリスがこっちを見る。

 

  「運動もってどういうこと!?「も」って!?」

 

  「だって英語全然ダメだったじゃん」

 

  「あーそうそう煜って他の教科はともかく英語はホントダメだもんなー」

 

 他人事のように言っているが実は夕斗も英語が苦手だ。

 

  「西谷くんは勉強得意なの?」

 

  「えっそれは、まあまあ」

 

  「えーなんだか朝の煜みたいな言い方だなー」

 

 そう言いながらアリスはチラチラとこちらを見てくる。

 

  「そんなことよりアリスちゃん、俺のことはしたの名前で呼んでくれていいよ」

 

 夕斗、必死に話題を変えようとしてるの、バレバレだぞ。

 

  「じゃあそうするね、夕斗くん」

 

  「ああ、そうきたか」

 

 夕斗は急に元気をなくしたように立ち止まった。

 

  「俺こっちだからまた明日ねー」

 

 夕人はふらふらとやる気なさそうに手を振ると、こちらに背を向け、夕日に向かって歩いて行った。

 

  「帰っちゃったね」

 

  「うん急にどうしたんだろう」

 

 遠ざかっていく友達の背中は寂しそうに見えた。

 

  「煜?」

 

  「ああ、僕たちも帰ろう」

 

  「ねぇ、今日、煜の家にお邪魔してもいいかな?」

 

 その言葉に煜は耳を疑った。

 

  「え、、家にくるの?」

 

  「ダメかな?」

 

  煜は自分の部屋にある一番の秘密に考えを巡らせていた。デスノートは自分の机の引き出しの中だ。どうせ誰も入っては来ないと思って夜神月のように見つからないよう対策などしていない。

 でもこれはチャンスだ。今まで女の子とこんなに親しくなったことがあったか?この先なれるか?いやこの機会を逃したくはない。

 部屋に入れる前に少し片付けると言ってノートをベッドの下に滑り込ませておこう、そこならまず見つからないだろう。

 

  「いや、僕はいいけど部屋散らかってるから少し片付けてもいいかな?」

 

  「分かった。じゃあ一旦家に帰ってからまた来るね」

 

  煜とアリスは一旦別れ、それぞれの家に帰っていった。

 

 

  ジェニファーは思わぬ進展に喜んだ。

  これはまたとないチャンスだ。こんなに簡単に家に入れるとは思わなかったが、これを逃す手はない。カメラを仕掛けるとさすがにばれそうなので超小型の盗聴器を仕掛けよう。

 仕掛けるとすればベッドだ。その裏にでもセットすれば、仕掛ける瞬間さえ見られなければまず見つからないだろう。死神にもだ。これで死神との対話でも聞ければ、しめたものだ。ジェニファーは思わずガッツポーズをしそうになった。

 

 

  煜はガッツポーズをした。アリスが家にくる、それだけでウキウキした。デスノートも隠したし、部屋も綺麗にした。準備は万端だ。

 

  「煜ぅー最近構ってくれないからリュークさみしーい」

 

  「やめてよリュークまでオネエ口調で」

 

  「だってよ〜あの女がきたらゲームもリンゴも禁止だろ〜」

 

  「そりゃそうだよ。でも僕がそわそわしながら話してるの見て面白がってるだろ」

 

  「まあ確かにこれはこれで面白いな」

 

 ピンポーンとチャイムがなった。

 

  「あっ、来た。じゃあアリスがいる間はおとなしくしててね」

 

  「分かってるよ」

 

 煜は一階の玄関まで行きドアを開けた。

 

  「いらっしゃい、上がって」

 

  「お邪魔しまーす、煜だけ?」

 

  「うん多分母さんは買い物に行ってるから」

 

  「じゃあ今は二人っきりなんだね」

 

 煜はドキッとしたがすぐに二人と一匹だということを思い出した。

 

  「そうだね。僕の部屋、二階に上がってすぐだから先に行ってて。お茶持っていくよ」

 

  「ありがとう」

 

 ジェニファーはそう言って二階に上がって部屋に入った。いきなり一人になれたが、死神が見ているかもしれない、だが仕掛けるときはどちらにしろそれなりのリスクがある。今しかない。ジェニファーは思い切ってベッドの横の床に座り手を後ろにして盗聴器をつけた。

 ほんの2秒ほどしか掛からなかっただろう。もし死神が見ていても分からないだろうという自信があった。これでいい、このまま部屋をくまなく探したいがそれは出来ない。煜がお茶を持って上がって来た。

 

  「はい、お待たせ」

 

  「ありがとうね」

 

  アリスがそう言ってお茶を飲んだ。

 

  「なんで今日、急に家に来たのか、分かってるよ」

 

 煜がそう言うとアリスがむせた。

 

  「うっ、え?!」

 

  「これでしょ」

 

 煜は一冊のノートを見せた。

 それは昨日、アリスと一緒に勉強したときに使ったものだった。

 

  「僕が昨日、全然分かってなかったから」

 

  「そ、そうだよー。ってやっぱり昨日、分かってなかったんじゃない」

 

  もうっとアリスが呆れたように言った。

 

「じゃあ今日は徹底的にしようね」

 

  アリスがにっこりと笑った。

  煜はそれから二時間ほどみっちりしごかれたあと、やっと解放された。

 

  「どう?これで覚えたでしょ。これだけやれば頭が覚えてなくても身体が覚えるよ」

 

  「そうだねさすがに疲れたー」

 

 煜はぐったりとベッドに体を投げ出した。

 

  「でもね、煜。まだ今日の宿題が残ってるんだよ」

 

  「うう、忘れてた。わざと言わないようにしてたでしょ」

 

 ふふ、とアリスが微笑んでいる。

 

  「さあ、やりましょう手伝ってあげるから」

 

  そんな恐ろしいことをしても可愛らしく見えてしまうから不思議だ。

 

「じゃあもうひと頑張りしますか」

 

 煜はシャーペンを取り出し、また一時間ほどかけて宿題を終わらせたのだった。

 

 アリスが帰ったあと煜はデスノートをタンスの裏から取り出そうとした。ベッドの下におこうと思ったが直前で思い直してやめたのだ。そのとき、煜のiPhoneが振動し始めた。どうやら電話が掛かって来ているようだ。

 

  「もしもし」

 

  「煜ーおれだぁー」

 

 夕斗の情けない声がiPhoneから流れ出した。

 

  「夕斗か、急にどうしたの?電話なんて珍しい」

 

  「煜、俺はお前が羨ましいよ」

 

  「なんだよ、急に」

 

  「気づかなかったのか?アリスちゃんは俺に全く興味なかった。でもお前はちがう。授業中だってあの子、お前のことしょっちゅう見てたし、煜のことは煜って呼ぶのに、俺のことは夕斗くんだぜー」

 

  どうやら夕斗は愚痴を言うために電話をしてきたらしかった。夕斗はあれで結構モテる、それだけにアリスが彼にまったく興味がないというのはショックなのだろう。

 

  「仕方ないよ今回は僕にツキが回ってきたと思って諦めるんだね」

 

  「クッソ〜いい気になりやがって〜。まあ仕方ないか〜。じゃあ、これからは応援してやるからなんかあったらすぐに俺に相談してくれていいぞ!じゃあな」

 

 一方的に電話がぷつっと切れた。すかさずリュークが話しかけてくる。

 

  「なあ、もうリンゴ食ってもいい?」

 

  「ああ、それにしてもアリスって本当に可愛いなぁー僕のこと見てたって言ってたけどどう思ってるんだろう」

 

  「なあ煜」

 

 リュークがリンゴをかじりながらさっきとは違ったトーンで言ってくる。

 

  「死神の目の取引の話、覚えてるか?」

 

  急になんだ、もちろん覚えているが今の煜には必要ないし、残り寿命の半分なんて代償は払いたくなかった。

 

  「なんでそんなこと言うんだよ」

 

  「あの女の本当の名前、知りたくないか?」

 

  「どういうこと?」

 

  「俺にはあいつの本名が見えてる、それはお前が知ってる名前とは違うってことだ、つまり偽名ってことだな」

 

  「え?」

 

 煜は一瞬固まった、感情をなくした石の塊にでもなったかのように。そしてすぐに疑問が浮かんだ。なぜ?なぜ彼女は偽名を使っているのか。

 煜は様々な想像をした。実は有名な家のお嬢様で身分を隠している、逃げてきた犯罪者一家、海外からのスパイ、煜は笑った。どれも無理がある。

 ただ一つを除いて。

 煜はその可能性を考えないようにしていたが、どうしてもそこに行き着いてしまう。

 彼女はキラの捜査をしていてデスノート対策に偽名を使っている。どうやって煜までたどり着いたかは今は置いておくにしても、それが一番筋が通るように思えた。

 夕斗に興味がなく、煜ばかり気にしているというのもそれで説明がつくのだ。それにあの日本語、初めて日本に来たにしてはうますぎる。煜はどんどん膨らむ嫌な予感を抑えきれなかった。

 やっぱりそうなのか?そんなの嫌だ、嫌すぎる。煜は本気でアリスのことを好きになっていた。まだ捜査員と決まったわけではない、可能性で表せばきっと1%程度だ。何か事情があって偽名を使っているんだ。煜は自分にそう言い聞かせた。

 

  「おい煜、どうする?」

 

 取引はしない、煜はそう決めていた。

 

  「ちょっとコンビニに行こっと」

 

 煜はそう言って家を出たあと、コンビニには向かわず近くの公園に行き、ベンチに座った。さすがに7時を回ると人の姿はなかった。

 

  「おい煜、なんで無視するんだよ」

 

  「アリスが捜査員だったらあの部屋はもう、監視カメラや盗聴器が仕掛けられているかもしれない。もちろん僕は彼女が捜査員だなんて思いたくないけど」

 

  「え、それってこれから家でリンゴ食ったりゲームしたりできなくなるってことだよな?」

 

  「うーん、やっぱりいいよ」

 

  「え!?いいの?」

 

  「うん、ただノートの隠し場所に関することは話さない、それだけでいい」

 

 ノートさえ出て来なければ煜は絶対に捕まらない。アリスが捜査員だとして、煜を疑っているなら、もうそれは煜がキラだということがバレていると考えたほうがいい。

 ニア、世界一の探偵がキラ捜査に全力を挙げるとテレビでやっていた。天才探偵は僕の思いつかないような方法でキラを絞り込み、ノートを見つける最後の締めとしてアリスを送り込んだ。

 でもなぜ?ノートを確保するだけなら僕を捕まえて、尋問して場所を吐かせた方が早そうなのに、わざわざ僕にバレないよう、ノートを見つけようとしていることになる。いや、煜はリュークから聞いた夜神月の話を思い出していた。僕がノートの所有権を手放さないようにするためだ。

 もし僕が所有権を手放せばそれは相手にとって非常に厄介なことだろう。煜はアリスを捜査員と前提して考えを進めている自分に気づき、嫌になった。だが万一のことを考えて行動しなくてはいけない、何せ相手は世界一の探偵だ。

 煜は昨日まで考えもしなかった状況にあるのだと自覚した。どうやってニアの捜査をかわすか。とりあえず煜はアリスは捜査員かもしれないと自分が気づいていることに気付かれないようにしようと思った。これだけが今の煜にとって相手の裏をかくための材料だった。

 

  「今まで通り何も気づいていないふりをするんだよ、そしてしばらくアリスの様子を見る。まだ捜査員と決まったわけでもないし」

 

  煜はそう言って立ち上がった。あたりはもう真っ暗で寒くなってきた。リンゴと暖かい飲み物でも買って帰ろう。

 

  「なあ、煜」

 

 リュークが珍しく真面目なトーンで話しかけてきた。

 

  「どうしたの?」

 

  「俺は、もしお前が月だったらあの女が偽名を使ってることを教えなかっただろう」

 

  何が言いたいんだ?

 

  「どういうこと? 」

 

  「つまり、あれだ俺はお前にいなくならないでほしい。お前がいなかったら一緒にゲームできねーし、お前と話すのが楽しいんだよ」

 

  アリスならともかく、リュークにそんなことを言われても嬉しくない。

 

  「だから俺はお前の味方をすると決めた。まあ、ニアの名前をデスノートに書いてくれなんて頼みは聞く気がないがな。だが、できることはやってやる、感謝しろよ」

 

  そう言い残すといつも付いて来るくせに、家に向かって先に飛んでいってしまった。

 

 

 

 その頃、ジェニファーは煜の部屋の音声を聞いていた。今のところ友だちと電話で話したあとコンビニに行っただけで怪しい点はない。しかし、男というものはちょろい。少し愛想をよくしてやればそれだけですっかり油断してくれる。

 アリスとして高校生活を送るのは思っていたよりも楽しかったが、ジェニファーは夕斗はもちろん煜にもNキラとして以外興味はなかった。ノートを見つければアリスとしての生活も終わる、結構気に入っていたキャラだったから少し寂しいが仕方ない。10分ほどすると煜が帰ってきた。ジェニファーは部屋の音に集中する。

 

  「晩御飯を食べ終わったらゲームでもしようかリューク」

 

 リューク?友達か?それともまさか死神?

 

  「そうだね、はいリンゴ」

 

 友達らしき声は聞こえない、ということは死神と話している?

 

  「いや今日はもうノートに名前は書かないよ」

 

 ノート、名前、決まりだ。デスノートのことを死神と話しているんだ。話し振りからすると盗聴器にも気づいていない、部屋にノートがあるのか?

 いいぞ、そのままノートの隠し場所も話してしまえ。

 しかし煜は晩御飯を食べるため下の階に降りていったようだ。まあいいだろう、これならそう時間はかからずノートの隠し場所についても話してくれそうだ。もう煜と仲良くする必要もないが、急に冷たくなって怪しまれたら本末転倒だし、もう少しアリスとして付き合ってやろう。

 もともと人を騙すのは好きだ、自分の手のひらの上で愚かに踊り回る操り人形を見ているようで気分がいい。天才も死神も私の思い通りに動かしてやる。

 

  「アリス〜勉強してるのか?晩御飯できたぞ〜今日はハンバーグだ!」

 

  アンディが呼んでいる。

 

  「ハンバーグ?やったー!」

 

  アリスはイヤホンを外し、下の階に降りていった。


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