月の死後にゲーム好きの高校生がデスノートを拾ったら   作:マタタビ

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初投稿なので至らない点があるかもしれません。原作が好きで勢いで書いちゃいました(^^)一応頭脳戦のつもりです


出会い

  これはあの世界を巻き込んだキラ事件から五年後の話。1人の少年の元に再び死神が舞い降りた。

 

  「なんだこれ?」

 

  朝陽 煜(ひかる)は学校からの帰りに道に落ちた黒いノートを手に取った。

 

「Death note、直訳して死のノートか、、、かっけえええ!!え!?ナニコレ!超ヤバイんだけど!」

 

  それは真っ黒なノートで表紙にはただDeath noteとだけ書かれていた。周りを見渡してから誰も見ていないのを確認すると、煜はそれをこっそりカバンの中に入れた。煜はウッキウキで家に帰った。

  家に着くと一目散に部屋にこもった。煜の部屋は二階にあるため急な階段を登らねばならない。ゲーム機や漫画で散らかった狭い部屋に入るとノートをかばんから出した。1ページ目を開くと使い方まで丁寧に書いてある。これ作ったやつすごいなと思いながら英語の説明を苦労しながら読んでいく。

  このノートに名前を書かれたものは死ぬ、なんて身もふたもない内容だ。さすがに少し興醒めしたが、試さずにはいられなかった。だが死んでほしい人間もいないし全く関係のない人を殺すなんてことは煜にはとても出来ない。そこで煜はインターネットで死刑になるような罪を犯した指名手配犯を検索し、名前を書くことにした。これならもし本当に死んでしまっても良心は痛まないし何より何人も人を殺した犯罪者なんて死んだほうがマシだと思った。

  煜は名前を書いた後、すぐには死んだか確認出来ないことに気付き、その日はノートにそれ以上触れることなくいつも通り過ごした。

  次の日いつも通り遅刻ギリギリで学校に行き、いつも通りの1日を過ごし、いつも通り家に帰って来た。

  ノートのことなど半分忘れていたが、ふとリビングでテレビをつけると、昨日煜が名前を書いた指名手配犯が死体で発見されたという報道がなされていた。

  煜は唖然とした。こんなことが本当に起こるなんて思っていなかったのだ。煜はテレビを消すのも忘れて部屋ふらふらと部屋に戻り、床に放っておいたノートを震える手で拾い上げた。そこには確かに煜の字であの犯罪者の名前が書いてあった。本当に人を殺してしまったのか?寒気が止まらない。煜はもう一度ノートの説明を読んでいくうちに五年前のキラ事件を思い出していた。

 

  「キラの裁きってこれでやってたんじゃ...」

 

  「その通りだ」

 

  「へぶっ、う、うわぁ!」

 

  声のした方を向くとパンクファッションをした背が高い化け物が立っていた。おまけに肌は真っ白で口は耳元まで裂けていたのだ。

 

  「そんなに驚くなよ。俺はそのノートの落とし主、死神のリュークだ」

  その化け物はいたって普通に声をかけてきた。

 

  「死神?じゃあ返すから命だけはっ」

 

  声が裏返った。

 

  「いやいや、ノートを拾った時点でそいつはお前のもんだ。どう使うかは好きにしな。」

 

  煜は臆病な性格だった。そのせいで小学校時代は酷いいじめを受けたこともあった。そんな彼が目の前の出来事をそう簡単に受け入れられるはずもなかった。

 

  「おいお前〜大丈夫か?って気絶してるじゃねーか。やれやれ、こいつ、ちゃんと俺を楽しませてくれんのか〜」

 

  煜は泡を吹いて倒れていた。煜にとってはそれほどの衝撃だった。

  すでに西の空に傾き始めた太陽を見ながらリュークはいささかの不安を感じていた。

 

 

 

  「ふぅ」

  煜はペンを離し身体を椅子の背もたれに預けた。目の前のノートには人名が一面に書かれていた。すべて犯罪者の名前だった。 もちろんあの日からしばらくは人を殺してしまったという罪悪感に悩まされた。

  だからこの行為はその罪悪感から逃れるための逃げ道を見つけただけだったのかもしれない。

 

  「しかしおどろいたなー、俺を見て気絶しちまうほど気の小さいお前が月と同じことをするとはなぁ」

 

  なぜか嬉しそうな声でそう言うとリュークはりんごをかじった。

 

  「そのライトって人はキラのことなの?」

 

  「ああそうだデスノートを使って世界を変えようとしたんだ、面白かったぜ〜最後はあっけなかったがな。あんな奴にノートを拾われた俺は運が良かった」

 

  「やっぱりすごい人だったんだね、そしてその人のおかげで僕は救われたんだ」

 

  当時煜をいじめていたクラスメートはキラに粛清されるのを恐れ、いじめをやめたのだった。

 

  「僕はキラの意志を継ぐんだそして犯罪のない世界を作る」

 

  「ククッ、これは面白くなりそうだ。ただ最初に言っておくが、デスノートを使った人間は幸せになれないらしいぜ」

 

  「それでもいいんだ僕の幸せを犠牲にしてでも世界が平和になるなら」

 

  煜は強い決意をもってそう言った。

 

 

 

  再び現れたキラによる粛清が始まって一週間、ついに世界はキラの復活を認めた。事態を重く見た各国の代表は今やLに代わって世界一の探偵として認められているニアにこの事件の解決を依頼し、そのための資金や調査員、捜査の拠点を提供すると約束すると同時に、世界にこのことを発表した。

  そしてここはアメリカにある対キラ組織SPKの本部である。

 

  「今回の殺人も前回同様ノートによるものとみて間違いないでしょう。問題は未だに新たなキラ、仮にNキラとでも言いましょうNキラがどこにいて何をしているのか全く手がかりがないことです。キラは日本人でしたがNキラも日本人だとは限りませんし、第一裁かれている犯罪者の七割がアメリカ人です。」

 

  ニアはそう言い終えると手元のパズルをいじり始めた。だからと言ってNキラがアメリカ人だとも限らない、ほとんど手がかりがのない中で捜査は早くも行き詰まっていた。

 

  「ひとついいですかニア」

 

  捜査員の1人のアンディが声をあげる。

 

  「もし私がNキラなら裁く犯罪者をわざわざ自分のいる国の人間に集中させません、当然その国のものだと疑われるからです。つまりNキラはアメリカ人の可能性は低い、そう言えるのではないでしょうか」

 

  「確かにその通りです。しかし、それだけではアメリカ人ではない、とは断定できません。そんなことはみんなわかっていることでしょう」

 

  捜査員全員に疲労の色が浮かんでいた。一向に進まない捜査状況にみんなイラつきはじめていた。そもそも何を調べればキラに行き着くのかさえわからない、つまり何をしていいかわからないのだ。

  それでも殺人は行われるのだから全力で阻止しなければいけない。そんなジレンマの中での捜査だった。

 

  「皆さん今日はもう家に帰ってもらって結構です。身体を休めて下さい」

 

  副指揮官を務めるジェバンニがこの状況を察知し、指示を出した。

 

  「いいですね?ニア」

 

  ジェバンニは有無を言わせぬ調子だった。

 

  「はい、どうせこのまま会議を続けていても意味はありません」

 

  ニアはうつむいたまま返事をした。

 

 

 

  その2日後、今日は世界的な人気を誇るゲーム、ポンスターハンターの最新作が発売される日だ。今月は月初めにボケットモンスターも発売されており煜にとっては忙しい月だった。

  少し前に世界一の探偵、ニアがキラ事件の捜査に全力を挙げるとテレビで言っていたが、そんなことはどうでもいい。バレるはずがないのだから。

  この日をどれだけ待ち望んだことか。このために煜は朝の四時から店の前に並んで買ってきたのだ。今日は学校もサボって一日中ゲームをしてやると前から決めていた。

 

  「でもよぉ煜なんで2つも買う必要あったんだ?ゲーム機本体も、お前、持ってるだろ?」

 

  リュークが不思議そうに聞いてくる。

 

  「決まってるだろ。リュークに僕の狩りを手伝ってもらうためさ」

 

  「えーやだよめんどくさい」

 

  「面白いよ?やらないとか人生の半分損してるよ?」

 

  「俺死神だから人生じゃねーし。まあ少しくらいならやってやるか」

 

  その一時間後、リュークは煜とともに人間界の大人気ゲームにどハマりした。

 

 

 

  翌日、 対キラ組織SPK本部

 

  おかしい、昨日を境にNキラの裁きがピッタリと止んだ。どういうことだ?今まで毎日のように犯罪者を裁いていたのに。

 

  ニアはひとり捜査本部に設けられた自室で頭を抱えていた。

 

  前にも一度だけ裁きが止まった日があった、一体何をしたいのか全く読めない。裁かない期間を設けることに意味があるのか?

  いや待て、裁かないんじゃなくて裁けないとしたら?むしろそう考えるほうが自然ではないだろうか?じゃあどういう理由で裁けなくなったんだ?ノートをなくした?

  いや、ありえない唯一殺人の証拠となるノートをなくすはずがない、ではなぜ?やはり意味がわからない。ニアは困り果てた。捜査を進める方法すら思いつかない。

 

「困っているようですね」

 

  そんな声が聞こえた気がしてニアは部屋の反対側を見た、そこには見覚えのある黒いノートが落ちていた。

 

  (!?あれはデスノート!なぜこんなところに?)

 

  ニアは床に落ちたそれを手に取り、再び前を向いた。そこにはニアが予感した通り死神が立っていた。しかし、その死神になぜか懐かしさのようなものを感じていた。

 

  「...L、ですね?」

 

  人間とは似ても似つかぬ姿となっていたが卓越した能力を持つ人間の独特の雰囲気、いわばオーラのようなものがその死神からは発せられていた。

 

  「はい、月君に負けたままでは癪だったので死神大王にお願いして死神になり、月君の最後を見届けたのです」

 

  淡々とした調子でそう応える、Lだけに。

 

  「しかしなぜ今更私の前にあらわれたのですか?」

 

  「今起こっているキラ事件を解決するためです」

 

  「それで私にノートを…でも今のあなたなら死神の目でノートの所有者を見つけることは容易いはず」

 

  「いや、いくら死神と言えど70億人全員を確認していくのは骨が折れるなんてものではないです。それにそんなやり方で解決させたくないです」

 

  負けず嫌いな Lらしい理由だった。

 

  「確かに。ですが残念ながら捜査はほとんど進んでおらずNキラのおおよその居場所さえ掴めていません」

 

  「そうでしょうか?」

 

  「えっ?」

 

  「ニアは今、Nキラの裁きが昨日から止まっていることで悩んでいたのでしょう。しかし、この前にも1日だけ裁きが止まっている日があります」

 

  「その通りですが、それだけでは居場所の特定など」

 

 ニアは反論しようとしたが、Lはそれを遮るように話し出した。

 

  「そうですか?実は大きな見落としをしているんじゃないですか?

  最初に裁きが止まった日は世界中で発売されているゲーム、ボケットモンスターの日本での発売日。そして今回裁きが止まった日は世界的な人気を誇るポンスターハンター最新作の日本での発売日です。

 つまりNキラは日本人または日本在住のゲーム好き、という仮説を立てることができる」

 

  「でもそんなことで裁きを止めるでしょうか?」

 

  「今回のキラは日によってかなり殺害する人数が違います。つまり計画的と言うよりは、行き当たりバッタリに裁きを行っている。ゲームに夢中になり裁きを忘れるということは十分に考えられます。まぁこれはあくまで仮説なのでそれを確定させることが必要です」

 

  今まで考えもしなかったことだった。さすがLだ、自分が気づかなかったことに軽々と気づく。やはりLを超えることなどできないのだろうか?

 

  「ニア?どうしました?」

 

  「いえ素晴らしい推理です。流石はLといったところですね。早く捜査員にこのことを伝えましょう」

 

  「ええ、それから私のことは誰にも言わないほうがいい。混乱を招く恐れがあります。あとなんか甘いものありますか?死神界のものはどれも苦くて口に合わないんですよ」

 

  「そこの冷蔵庫にショートケーキがあります。どうぞ」

 

  ニアは小さな敗北感に支配されつつも、捜査を進める上でこれ以上ない助っ人を手に入れ、少し複雑な心境になっていた。

  これで捜査は進むだろう、しかし、自分は何もしていない。これではLを超えるという目標を達成することなど到底出来ない。次の策はLより先に考えるんだ。どうやってNキラを絞り込むか、Lは前のキラ事件で夜神月の負けず嫌いな性格を利用しテレビを使っての絞り込みに成功した。

  相手の情報を最大限に活かすのだ。Nキラはキラを崇拝していながら裁きを下す数やその有無は日によってまちまち、行き当たりばったり、死亡時刻をあやつれるにも関わらず自分が書きたいときに名前を書いているあたりこちらの捜査には恐らく無関心、ゲームが大好き、これらのことから何か有効な一手を打てないものか。行き当たりばったり、ゲーム好き、こちらの捜査には無関心ーこれだ。

 

  「L、面白い作戦を思いつきました」

 

  「何ですか?」

 

  「ゲーム会社に協力してもらい、人気ゲームの次回作を日本の地域ごとに時期をずらして数量限定で先行販売しましょう。ゲーム好きなNキラなら食い付く可能性はある。これで裁きがもう一度止まればNキラはその地域の人間、いや、そのゲームを買った人間である可能性が極めて高くなります」

 

  「確かに、それなら容疑者をそのゲームを買ったものに限定出来る。裁きが止まった時点で販売をやめ、購入者一人一人の行動を追えばNキラにたどり着く。よく思いつきましたね」

 

  「Lの使った方法を応用しただけですよ。やはり私はまだLには遠く及ばないようです」

 

  それより、とニアは切り出す

 

  「早くこの作戦を実行に移しましょう時間をかけるほど犠牲者が増えます」

 

  その後すぐにその作戦が伝えられた。捜査員たちはニアの大胆な作戦と推理に驚きつつも、やはりこの状況を打開することが出来るのは世界一の名探偵しかいないと確信した。


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