さて、破壊した艦艇の破片と落伍した艦艇を工作機と腐れパウ、そしてストロバルト(戦闘では活躍させられなかったが、本来の仕事であるごみ収集を出来て本望だろう)に回収させながら、俺は確保した『巡戦』の最高責任者らしき異星人をノーザリーへと呼び出した。
呼び出す方法だが……とりあえず、前回敵艦から回収し、汚染することで制御下に置いた人型ロボットを差し向け、ハンドジェスチャーで艦体に打ち込んだ『管』に誘導することで行う。
汚染することで制御下におけるのはとにかく便利だが、言語までは補完出来ないため、向こうの言語を回収することは出来なかった。
しかし、前回敵艦を回収した際に、翻訳装置と思われるヘッドセットのようなものを確認している……というのも、それは地球連合軍、及びグランゼーラ革命軍で運用されていたそれによく似た形態をしているからだ。
要するに、どの文明の人間でも『曲刀』『フレイル』『サーベル』『青龍刀』『マカナ』といった他文明の刀剣類を見れば、それが何であるか理解できるようなものだ。
回収した分は全て溶かして腹に入れてしまったが、向こうは間違いなくそれを使ってくる筈だ。
───さて、俺の予想に反して青肌に髭面の異星人はドイツ語に似た語調を持つ未知の言語でなにやら怒るようにまくし立ててくる。
弱った、さっぱり分からない。
その上、なにやら侮辱のニュアンスまで感じる……しかしなぜ、完全に優位な相手に対して侮辱的な態度を取る?
人間としてならともかく、軍人、社会人の選択として、筋が通っていない。
あいや、罵倒や侮蔑が無条件に誤っていると言うのではなく、それは時と場合、相手によっては有効であるし、常に抑えきれるものでもないもので、一概に否定することはできない。
しかし……、圧倒的に有利な相手、それも生命を握られたにも等しい状態で侮辱というのは、自らの不利しか招かない筈だ。
何か理由があるな?
とにかく会話が成立しないのは困る、俺はジェスチャーにって相手に翻訳装置を起動させようと試みる。
しかし、それにも一悶着した、翻訳装置を起動しろ、というニュアンスは理解できたようだが、理解した途端青い顔を真っ赤に(妙な表現だが、そうとしか言い表しようがない)して怒り始めた。
……ふむ。
これはつまり、こいつは俺が自らの使う言語の話者だと思っているということか?
そう考えればしっくり来る……こいつは、俺が自分と同じ言語を使えるにも関わらず、それを渋り、こちらに合わさせようとしていると思っているのだ。
それがこいつの民族感情、もしくは所属する国家などへのプライドを逆撫でしたのだろう。
しかし……理解した所で、俺はこいつと会話しないことには始まらないのだ。
会話すらしようとしない捕虜に遠慮する必要はない、俺は士官用の物理銃を腰から抜き、突きつける。
すると、流石に観念したようで、青肌を今度は青くした指揮官は翻訳装置を起動させた。
「……やっと観念してくれたか、私は地球連合軍大将、連グ合同特別遠征艦隊指────」
「き、貴様!ザルツ人の分際でこのような────!!」
……翻訳機が起動しようと、話が通じない状況は変わらなかった。
いやむしろ、希望まで失われた分悪化しているような気すらしてくる。
髭面がまくし立てる内容を要約するとこうだ。
『お前は我々ガミラスの支配下にあるはずのザルツ人であるはずなのに、何故我々に牙を剥く、何故ガミラス語を使わない、そしてこの兵器はなんだ』
……一瞬、また目覚めたときの頭痛にも似た違和感が『俺』を襲う。
正体不明のノイズを振り切り、思考を続ける。
こいつらの文明は『ガミラス』といい、どうやらかなりの規模を持つ星間国家であるようだ。
さらに、配下には『ザルツ』と呼ばれる星、あるいは人種が存在し、彼らは我々と近い形態を持っている……。
────脳裏に、俺が少年期に好んで見たカエル型侵略者の漫画がよぎる、そう、地球を地球と呼んでいない可能性が
「私は地球人だ!ザルツ人などという人種ではない!」
「地球ゥ?なんだそれは……あいや、確か基地に係留中の捕虜名簿に……」
「何!?」
「そうだそうだ、そこを攻めていたのもザルツ人指令だったな、ドメル殿の旗下に居たらしいが、まあ劣等人種同士お似合いだろう」
なんということだ、こいつらは地球と接触しているだと!?
「どういうことだ、詳しく話してもらおうか」
「フン、自らの母星のことすら分からないとは、そんな文明度でよくここまでたどり着けたものだ!先制攻撃を仕掛けてきた挙句、反撃を初めて数年で滅亡寸前になる程度の星だ、司令官の程度もたかが知れて─────」
その瞬間ノーザリーの肉が沸騰し、艦橋に血潮……バイド体液が噴出する。
艦橋空間に強酸の液体が満ちるのと、その場に有った存在が全て分解され消滅するのはほぼ同時のことであり……。
ジュルジュルと音を立てて暫く蠢き、バイド体液が引いた艦橋には、肉体を再び構成した私しか立っていなかった。
「……どういうことだ?」
完全に溶解し、既に体液中に拡散したガミラス艦隊の指令は、何も答えを返さない。
しまった、この船が俺自身である以上、感情を爆発させたことによって『生理的反射』が起こることに気を配っておくべきだった……。
『横』に目をやると、異様な状況を見たガミラス艦が逃げようとしているのが見えた、艦長を見捨てる……いや、もう死んでいることを確信したのだろう。
俺は、バイド粒子の密度を上げてその汚染を試みる。
完全に統制し戦力にすることは出来ないが、支配下に置いておけば解体するのにも便利だろう。
……しかし。
「地球が、滅亡寸前だと?」
馬鹿な。
地球連合軍、グランゼーラ革命軍ともに、そのような脆弱な勢力ではない。
私の艦隊が最も大きく膨れ上がった時ならば、今の艦隊の10倍の勢力が敵だろうと、問題なく粉砕してみせた。
主力艦隊なら、数の上ではもっと大戦力を振るえるだろう、俺の記憶にある『ある星系の外縁部』の如く、一つの戦場だけで宇宙戦艦数隻とR戦闘機200機以上を運用できるだけの戦力がある。
タキオンレーダーなどなくとも、両軍の旗艦級艦艇の索敵力、早期警戒機、電子戦機の能力は十分にガミラスの艦艇を捉える事ができる。
バイドシステムαのものは大半が通じなかったフォースレーザーだが、艦砲や新型機、人型機が放つそれは問題なく命中するはずだ。
……考えられない。
グランゼーラ革命軍は分厚い支持層を利用したゲリラ戦と電撃戦で地球連合軍の拠点を奪った。
そして、地球連合軍は拠点を奪われながらもバイド戦で養った驚異的な継戦能力と逞しさでそれに耐えた。
『あの地球』が、地球圏が、そうもあっさりと侵略を許すということは、全く考えられない。
むしろ、地球軍ならば即座に艦艇を鹵獲、兵器を解析して旧式戦艦に組み込み、私やジェイド・ロス提督のような不幸な司令官を乗せて送り出すはずだ。
それを……滅亡寸前にまで追いやれるとするならば、ガミラス文明はこの脆弱な艦艇を4ケタ、いや5ケタは投入したということになる。
途轍もない物量をもった人命軽視の軍隊だ、ソビエト陸軍のような攻撃を艦艇で行うとは……!
しかもバイドについて無知ということは、ここは地球から遠く離れた星系であり、ともすれば銀河間を移動しているということを意味する。
広大な版図を持つ、死を恐れない軍隊を持つ超巨大な帝国、それが想像されるガミラス像だ。
ならば、我々が行わなければいけないことは、もはや知らせること、救援を行うことなどではない。
想像される敵戦力と、現在差し向けられた艦艇の量。
そして、今回の艦艇から入手した眼下の星系の兵力から鑑みるに、ここは、ガミラスの本拠地の深く……つまり、内地であることが予想される。
───ガミラスの内地に我々が放たれたことの意味。
……シミュレーションゲームとしての『R-TYPE』の前身、本家家元たるシューティングゲームの『R-TYPE』におけるバイドは、未来の地球人類が放った生物兵器であった。
もし、この我々も、そのような経緯によって造られたバイドだとするならば。
もし、バイドにも地球を愛する心が残っているのならば……、これはガミラスを俺自らが討てということなのかもしれない。
だからこそ、自我が残っているとするならば。
だからこそ、汚染を制御できるとするならば。
答えなければならない、俺自身の、私自身の地球への愛をもって。
ガミラスの帝国をズタズタに引き裂き、その本星を破壊することで!
俺は粉砕した艦艇から更に資源を回収し、余りに余った金属素材と、巡戦に搭載されていた亜空間ソナーの技術によって『思い出した』記憶によって、生命要塞『ベルメイト』の建造を行う。
これは、金色の棘の塊にスラスターが装備され、中心に赤いコアが装備された外見をしており、攻撃力と搭載能力を持ったバイド艦艇(生命要塞)である。
ベルメイトは本来、バイド汚染され腐食した金属塊が集合し一体化した、バイド肉塊への統制能力と一定の耐久力を持つだけのバイド生命体だ。
しかし、『どこか』で『何か』を取り込んだ影響で何やら決定的な変化を起こしたらしく、強力な衝撃波を発生させる能力と、亜空間に強力なエネルギーを発生させ、亜空間潜行を行っている機体を破壊する能力を得たのだ。
その衝撃波は戦艦の主砲、副砲や艦載ミサイル砲に匹敵する射程と、ともすればそれらを上回る程の攻撃力、更にはその攻撃の特性を利用したミサイル迎撃能力を持っている。
私はこれに大分手を焼いた記憶があるし、ゲームとして遊んだ俺の記憶では、大分『頼りになる』艦艇だったと記憶している。
この艦の加入により、我が艦隊はついに艦載機によらない打撃力を入手したのである。
……というか、これまでは単艦であったため、艦隊とすら呼べなかったわけだが。
さて、『各種資源』を回収したことによって、艦隊への統制能力にある程度余裕が出てきたから、もう少し戦力を拡充することにする。
敵艦から得られた植物体をベースに、【バイドの記憶】から新しく戦闘機とフォースを作成する。
今回作成するのは、『植物』によって構成された生命機体、『ジギタリウス』と『フラワー・フォース』だ。
この機体は通常のバイド機体が持っている『バイド粒子弾』の欠如と引き換えに、強力なフォースレーザー(フォース着用時に使えるレーザー砲)と、速射可能な波動砲を持っており、
十分に高いデータリンク能力と合わせ、航空戦力として大いに活躍してくれるだろう。
更に今回、人型兵器に触れたことによって呼び起こされた人型機動兵器の記憶から、中距離支援兵器を生みだした。
ゴロゴロと丸みを帯び、黄土色をした人型の大型機体、中型人型兵器『タブロック』だ。
これは地球、バイド軍の艦載ミサイルに匹敵する大型ミサイル砲を肩部に搭載しており、機体にしては大型であることが足を引っ張るものの、強力な万能戦力として役立つだろう。
戦闘機隊に混ぜ、護衛させながら攻撃に用いることで、対艦、対地打撃力、防空能力を全て向上させることができるだろう。
……二つ追加したら余裕が埋まってしまい、一つ入れられなくなるな。
代替可能な戦力である『ストロバルト』を外すとしよう……ストロバルトには、本来の役目に専念してもらう。
さて、今回の戦力増強により、我が艦隊はついに輸送艦を旗艦とした航空戦力一辺倒の艦隊から抜け出し、強力な攻撃手段を持った艦艇の打撃力を存分に利用しての戦闘が可能となった。
このまま戦力増強に勤しむのも一つの手だが、このままこの宙域に留まれば、敵にも我々に対する策と戦力を整える時間を与えてしまう事になりかねない。
それに……指揮官が吐いた『捕虜』という言葉も気になる、今の地球の情報を知っているかも知れないし……地球連合軍の人員が捕虜になっているとするならば、私にはそれを助ける理由があることになる。
俺は旗艦(意識)をベルメイトに移し、コア内部に艦橋空間を作成する……今度は、キレただけでバイド体液まみれにならないよう、気密性を重視した金属製の艦橋を作った。
「うむ、大分艦隊らしくなったな」
俺はベルメイトの目から艦隊を一望し、呟いた。
さあ、目指すは眼下の敵星系だ。
獲得した『ワープB』装置を起動させ、一気に敵基地があると思われる宙域に乗り込むことにする。
敵がどれだけ居ようとも、俺は絶対に諦めず、全て撃破して敵本星を叩いてやる。
地球に目を向けられないほど、お前らの領域で暴れてやる。
私は必ず地球を救うのだ、かの『若き英雄』のように!
→出発する
入手トレジャー
【亜空間ソナー】
地球側の早期警戒機などに搭載されているものと似た、しかし大型の亜空間ソナー。
亜空間に均一な衝撃を起こし、その反応によって亜空間内の物体を感知する機能を持つ。
この文明に亜空間潜行能力を持った機体が存在することを示唆している。
【異文明のアンドロイド】
異文明の人型アンドロイド。
地球勢力は電子戦に敗れた瞬間寝返るような機械を好まないが、この文明はそうで
はないようだ。
あるいは、テクノロジーに優れた対抗勢力に恵まれていないのかもしれない。
……単純に、版図に対して軍人が足りない可能性もあるが。
(ちなみに、トレジャーや部隊の入手状況は今のところNo3クリア時と設定しています。)
(まあ多分今後は考証なしで好きにやってくと思いますが)
提督の地球への厚い信頼感と勘違い展開。
ちなみに、普通にあの世界の地球がガミラスと接触しちゃった場合は提督が想像してる通りの流れになると思います。
別にガミラスに負ける国連宇宙軍をdisっているのではないので、あしからず。
基礎技術と戦歴が桁違いですから結果が変わってくるのも仕方ないことです。
バイド由来のオーバーテクノロジーを手に散々準備してバイド戦役を戦い抜いた地球と、内惑星での小競り合いしか体験してない所に突然ガミラスがやってきた2199地球では比べる事自体が間違ってるからね。
なお、本作でのR-TYPE世界はR-TYPE TACTICSⅡをベースに違和感がない程度にSTG版R-TYPEの設定を入れたものです。
ヤマトについても、2199ベースでオリ解釈とか旧作設定とかちょいちょい混ざってます。