俺と私のマゼラン雲航海日誌   作:桐山将幸

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このB-BS-Cnb……こと創作に限り虚偽はあんまり言わぬ
一年以内に投稿する……!投稿するが……!
今回一年以内としか指定していない、そのことをどうか諸君らも思い出していただきたい つまり……私がその気になれば投稿は一ヶ月後一週間後ということも可能だろう……ということ……!


狼と悪魔!!闇に潜む2つの軍団!!

 ─────小マゼラン雲。

 ガミラス文明が主に活動範囲とする大マゼラン雲にほど近い(最も、宇宙的な距離感の上でだが)位置に存在する小規模で不安定な形の銀河。

 活動が活発であり生命の誕生、発展に最適とは言えないものの、この銀河もまた、星々の中に数々の文明を育んでおり、現在それらの多くはガミラスに恭順するか、あるいは、絶滅の道を辿っている。

 

 ……そして、この領域を実質的に支配したガミラスでさえ、更に異なる勢力によって、激しい戦いを強いられていた。

 その敵の名は、ガトランティス。

 大帝ズォーダーを頂く古めかしい統治形態と組織構造、そして文化様式を持っており、それに対して不自然なほど発展した技術力と圧倒的なまでの物量を持った未知の文明。

 彼らの襲来における軍事目的は一切不明であり、ただ、襲撃を行っては破壊活動に勤しみ、場合によっては『科学奴隷』と称した技術者の拉致を行うだけである。

 

 しかし、その目的が分かるまいと、文明程度が未熟であろうと、その無尽蔵の物量と破壊にかける情熱は脅威の一言であった。

 そのため、ガミラス軍は小マゼラン雲に散発的、かつ猛烈な攻撃を加えるガトランティス軍を撃破すべく、ガミラス軍は小マゼラン雲における軍事拠点を拡大し、そこに他戦線で多大な戦功を上げた英雄であり、『宇宙の狼』と讃えられる『エルク・ドメル中将』と大規模な増援艦隊を送り、すでに駐在していた艦隊と合わせ実に3000隻に及ぶ艦艇を指揮下に与えた。

(もっとも、3000隻が直接ドメル配下で動くのではなく、そのほとんどは小マゼラン雲各地の防備や哨戒のために使われ、ドメルは配下である『ドメル軍団』と呼ばれる第6空間機甲師団のみを運用し、敵を叩いている)

 

 宇宙の狼ドメルの戦いは苛烈にして巧妙。

 彼の指揮する第6空間機甲師団を『幽霊師団』と言わしめる変幻自在かつ神出鬼没の艦隊運用を行う智将の側面と、烈火の如き攻め口で敵を一挙に分断、各個撃破する集団戦術の果敢さを兼ね備えた彼は、間違いなくガミラス全体で言っても最強の将軍の一人に入ると言っていいだろう。

 

 そして今、彼が現在拠点としている小マゼラン雲最大の泊地、その中央会議室に重苦しい気配が漂っていた。

 

 

 「2時間前、エルン・ヴィルヘ少佐隷下の艦隊が消息を絶った」

 

 その更に中央、司令官が座すにふさわしい豪奢かつ剛健な椅子を脇におき、立ち上がった男が行った報告────否、宣言は、そのよく通る声に乗り、会議室を征服した。

 男の出で立ちは、一片の隙すらない筋肉の鎧の美しさを誇示するような密着型の宇宙着に、頭部は本人の潔白さと虚飾のなさを物語るように整えられた丸刈り、顔面の造形は粗野にならぬ最大のラインで男性的な威厳を高めたと言わんばかりの精悍さ。

 そして、彼の全身を包む肌の色は、若さと生命力を感じさせる彩度の高い鮮やかな青だ。

 そう、彼こそが宇宙の狼、幽霊師団の主、エルク・ドメルその人であった。

 

 彼は短く、そして深く、黙祷するように一拍の沈黙を置くと、続けて口を開く。

 

 「……ヴィルへの旗艦は消息を絶つ寸前、あるメッセージをこの基地に向け放った、見ろ」

 

 ドメルの号令とともに、ドメルの背後に設置されたパネルに奇妙な図形の集合体が表示される……一種の知識のある人間が見たのならば、それは一種の時空間の歪みやエネルギーを記録したものだと分かるものだろう。

 事実、数人の見識深い士官はその事実に気づき、感嘆の声を漏らした。

 

 「これは、数ヶ月前から大マゼラン雲辺縁を荒らし、現在は小マゼラン雲に近づきつつある敵性生物群……『貪食する群れ』が次元断層を生成する際に生じる空間、エネルギー異常に関するデータだ」

 

 ドメルが息継ぎをすると、顔に傷のある若年の士官が割り込んだ。

 

 「するってぇと、そいつがあれば奴らが潜む空間のぶっ壊し方や避け方が分かるってことか!」

 

 「そうだ、だがバーガー、上官の話がまだ終わっていないのに割り込むのは感心できんな」

 

 「おっと……、すいません」

 

 顔に傷のある士官、『フォムト・バーガー』は少し顔を赤く(青く)すると、乗り出した体を引き下げ、バツが悪そうに座り込む。

 

 「まったく……。だが、言いたくなる気持ちも分かります、『奴ら』には散々煮え湯を飲まされてきて来ましたからね」

 

 「そうだなハイデルン、軍人、民間人問わず、万を超える命がやつらの『無差別通商破壊攻撃』によって失われた」

 

 派手に笑ったのは、白髪、隻眼の老軍人『ヴェム・ハイデルン』だ。

 バーガーが先走り、ドメルが諌め、ハイデルンが呆れる。

 この流れは彼らの間では定番のものらしく、士官は皆慣れた様子で、軽くなった空気を味わっていた。

 

 「ドメル司令、しかし、あんたは奴らが『攻撃』なんて高尚なモンで動いてると想ってるんですか?」

 

 「どういう意味だ?」

 

 「いや、……その、奴らを見てて、そんな、明確な作戦行動を行いそうなもんには見えないので……」

 

 「敵を侮るなと何度も言っているだろう、バーガー」

 

 バーガーの物言いを、異形の敵に対する蔑視だと受け取ったドメルが強く釘を刺す。

 しかし、バーガーは止まらない。

 

 「いえ!俺も、奴らの戦闘からは非常に高い戦術能力と技術力を感じます、しかし、だからこそ!奴らが我々と同じような行動原理で動いてるとは思えねえんですよ!」

 

 すると、ドメルは考え込むような素振りを見せる。

 

 「私はあの『貪食する群れ』の動きを見た時から、何らかの、しかし確固たる『意思』を感じていた、故に、彼らは我々と同じように行動していると考えていたが……なるほど、そのような視点もあるのか」

 

 異形の存在に知性があろうと、知性の形とその目的が自分達と同じとは限らない、そのような考えに、ドメルは盲点を突かれたという気分になった。

 

 「お考え中のところすいませんが、閣下の考える『連中の目的』をお聞かせ頂いても?」

 

 「それは構わん……が」

 

 ドメルは会議室を睥睨し、ほど近い位置に居るハイデルンとアイコンタクトを取って、言葉を続ける。

 

 「本題を片付けてからにしよう」

 

 「失礼しました、それでは続きをお願いします」

 

 「うむ」

 

 ドメルは小さく頷くと、指揮棒を手にとってパネルにかざす。

 すると、エネルギー分布図の一つが拡大され、更に模式化された空間を示す図形へと変化した。

 

 「細かい技術的な厳密性は抜きにして、と前置きせねばならんが────」

 

 ドメルが遠慮がちに、しかし威厳をもって口を開くころには、弛緩した雰囲気は消え、上官の説明を真剣に拝聴する、という気配のみが残っていた。

 

 「現在、我々がゲシュタム・ジャンプと呼んでいる超光速航法は、空間の歪みを作り、そこに穴を開けることで二点間をつなぎ、空間を跳躍するものだ」

 

 現行のゲシュタム・ジャンプのモデルが表示される。

 (ゲシュタム・ジャンプのモデルは、21世紀を生きる読者諸兄にとっては『ドラえもん』や『インターステラー』などにおける、紙を歪めることで紙上の二点を接続する模式図や、ワームホールの模式図によって容易に情景を想像出来るものだ。)

 

 「だが、この模式図は正確ではない」

 

 ドメルがパネルに表示された模式図を操作すると、二点間をつないでいた空洞が、その間にあった空間に張り付くように移動した。

 

 「実際には、空間の二点を接触させる際にこのように大きな迂回を行うことはなく、実空間とほぼ密着と言っていいほど距離に発生させた小規模の次元断層、あるいは古風に言うところの『亜空間』の中を進行することによって、実空間上では超光速で移動しているように見せかけているのだ」

 

 だが、とドメルは続けた。

 

 「この航法を持ってしても、完全に実空間の物理法則を脱したとは言えない」

 

 ドメルがそう言うと、画面の中では模式化された天体の発生させる重力によってゲシュタム・ジャンプのワームホールが切断されてゆく。

 この程度の浅い亜空間上では天体の重力などの影響を受けやすく、惑星程度の大きさの物体でもたやすく『またぐ』ことは出来ないのだ。

 

 「しかし、彼らの特殊な技術は、我々が普段用いる『亜空間』よりも更に『深い』次元に潜ることによって、次元間にまたがる天体の重力をある程度無視してジャンプを行うことが出来る、そればかりか─────」

 

 水面のように模式化された『深い』亜空間を進む複数の『貪食する群れ』の艦艇(読者諸兄が実際にそれを見れば、それらの名前が『ボルド』、『ベルメイト』、『ノーザリー』であることが分かるだろう)が、実空間に張り付くように進むワームホールに『水』をかける。

 

 「────彼らは、度々観測されてきた『次元断層』に似た空間を自ら作り出し、我々を彼らにとって日常的な、そして、我々にとっては完全にアウェーの、未知の異空間に引きずり込むことが出来る!」

 

 ……会議室に沈黙が走った。

 『彼ら』『奴ら』『連中』『貪食する群れ』……そう呼ばれてきた敵が行っていることは、会議室の面々にとっては周知の事実であったが、明確にそれらの事実が確定し、猛将たりうる圧を持った上司に熱弁を振るわれると、ますますもってその深刻さが身に染みるような感覚に囚われたからだ。

 

 「……閣下、少々脅かしすぎかと」

 

 「そうだな、私もただ奴らの脅威を煽りたかったわけではない、……そうだ、対処法があるからこそ、今日、今、ここに皆を集めたのだ」

 

 ドメルがビシリとパネルを叩くと、いくつかの写実的なオブジェクトが模式図の周囲に出現した。

 

 「ゲシュタム・コア……」

 

 日常的に見覚えのある、しかしこの場では大きな意味を持つそのフォルムに、誰かが思わず呟いた。

 ゲシュタム・コアとは、ガミラス文明を支える基盤、ゲシュタム・ジャンプのまさに『コア』となる部品にして、ガミラス艦の主要なエネルギー源だ。

 空間に作用し、空間に作用される、航宙文明には必須の『慣性制御』などといった様々なテクノロジーの基幹部分でもあった。

 

 「これの性質はここに居る者なら知っての通りだろう、我々が空間に干渉する道具だ。マイクロブラックホールを発生させ、その蒸発の際に出るエネルギーを取り出せばエネルギー炉に、空間干渉を広げて空間歪曲を行えばゲシュタム・ジャンプのコアに、少し艦の空間を歪めれば重力発生装置となる」

 

 まさに夢の機械。

 ガミラス文明がこれを手に入れた……正確には『与えられた』のは遥か昔、ガミラスとイスカンダルが一体の国家であった時代だというが、ガミラスはその頃からこの装置に一切の改良を与えることができていない、それほどの完成度と技術的難易度を兼ね備えた装置だ。

 

 「これを暴走させつつ、高次元方向にゲシュタム・ジャンプさせる」

 

 「そんなことが出来んのかよ……!」

 

 バーガーが独り言のようにおののいた。

 

 「我がドメラーズの技術士官は『出来る』と言った、私はそれを信じるだけだ」

 

 納得するしかなかった、彼の言葉にはその力があり、彼の信頼する者は、自らも信頼すべき者だということを、この場にいるすべての人間が共有していたからだ。

 

 「我がドメラーズの大出力ゲシュタム・エンジンと軍司令部レベルのコンピューターをフルに使ってジャンプを実行する、それにより、超不安定状態のゲシュタム・コアは『深部亜空間』に飛び込み────」

 

 模式化されたゲシュタム・コアがドメルの乗艦『ゼルグート三世』から射出され、『深部亜空間』と呼ばれた空間の水面に到達すると────

 

 「────その場で『炸裂』!敵は不安定な亜空間に響く空間震によりその構造を破壊され……破断し、亜空間航行能力を失い消失(ロスト)、あるいはしのぎきったとしてもただでは済むまい」

 

 待ち望んだその言葉に、会議室が喜びの色でどよめく。

 未知の、それも対処不能と思われた敵への対処法が、そこにあったのだ。

 

 「じゃあ、後はこれを敵さんにぶちかますだけってわけですかい!」

 

 「小マゼラン雲に向かう航路のうち、敵集団の経路になると予想されるものはすべて通行禁止措置を敷いてありますから、後は────」

 

 「敵がこの星雲にやってきて、我々が迎撃するのを待つだけ」

 

 バーガー、ハイデルン、ゲットーが次々に言葉をつなぐ。

 ドメルはニヤリと笑ってそれに答えた。

 

 「その通り、そして奴らの進行経路には─────」

 

 

 

 「ブラックホール、恒星の二連星?」

 

 「その通り、我々は一度、そこで通常空間に復帰する」

 

 恒星の光、宇宙背景放射、真空のゆらぎ、ありとあらゆるエネルギーが圧縮され光り輝く異様な空間。

 そこを行くのは、現在この宇宙に戦いと死を撒き散らし、反対に死を撒き散らす『船団』、あるいは『群れ』。

 我らが主人公、アキラ・クロガネ提督とその部下、武本洋子率いる『バイド軍団』であった。

 

 「……存在自体は古くから知られていますが、これまた随分と過酷な場所に降り立つのですね」

 

 「過酷だからこそ、とも言えるな」

 

 ブラックホールは非常に過酷な環境だ。

 そして、そのブラックホール周辺の環境はその圧倒的な重力に影響され、非常に危険で、航路としては決して選びたくないものになっている。

 落下しゆくチリ、エネルギー、熱、電磁波、それらをキャッチしている強大な重力、それは恒星間航行文明であっても無視出来るようなものではない。

 至近距離に恒星が存在し、そこから大量の高エネルギーガスを吸収しているこのような種の連星は更に過酷と言えるだろう。

 重力バランスは更に不安定で、エネルギー放射は更に多く、電磁波は嵐となり、恒星から剥ぎ取られたガスは星系の情報的な不透明性を更に高めるであろうことが予測された。

 

 「危険なブラックホール星系への侵入によって、敵の接触を避けつつ、こちらの侵入情報を遮断する、ということですか」

 

 「全くもってその通りだ、我々の地球文明に属する艦が持つ過剰なまでの環境適応能力ゆえの荒業だが……」

 

 「しかし、有効でしょう」

 

 「うむ」

 

 そう答えた『提督』は、少しだけ悪い予感がした。

 このようなシチュエーションを、どこかで見たような気がしたからだ。

 だが、提督はそれをあえて振り払った。

 それは、『私』の記憶が罠ならば食い破れと叫んでいたからであり……。

 艦隊後方にて『建造』が進む異形のシルエットと、傍らで盛んに細胞を増殖させ、『変態』を進めつつある旗艦の姿が、彼に力を与えていたのである。

 だが、悪い予感そのものへの疑念は、晴れない。

 

 (……この宇宙に来てから度々覚える違和感、その正体に俺は近づいているのかもしれんな)

 

 航海は、戦いは、続いていく。

 

 

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入手トレジャー

【決戦の予感】
無人の航路、近づく敵拠点、安全をもたらすはずの策。
脳裏に響き渡る警鐘の『持ち主』は、人間か、それとも……。
────戦力の拡充を急がねばならない。


色々時間を食いつつなんと一週間投稿を達成!
……実に一年半ぶりですね、出るときだけ出るやる気は当てになりません、これを…とまでは行かずとも、これに近い勢いを維持せねば。

あ、あとこれがはじめての原作キャラ登場ですね、別に原作と無関係なストーリーのつもりではなかったのに、こんなにかかってしまうとは。

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