第10話までもうすぐです、早いものですね
前々回の後書きで梁山泊の方々を出すと書いたのですがスミマセン!次回になります!
「そこまで!!勝者、黒鉄一輝!」
第四訓練場で行われた模擬戦は落第騎士«ワーストワン»黒鉄一輝の勝利で幕を閉じた。その様子を観ていた伐刀者は驚愕、口から言葉を発する事が出来ないでいる。
「いやー今年の代表選抜戦は見物だねぇ~。まこっちも選抜戦に出るんだっけ?」
「そうですね、一輝と同じ様に条件付きですが」
彼が何故条件付きなのか。
それは一輝を庇い前理事長の顔をぶん殴ってしまったからである。何故なら一輝が能力が足りず授業に出る事について、真琴が納得がいかなったからである。
一輝程の剣士が授業に受け、代表選抜戦に出場すれば成績を残し結果を出す事は、数多の伐刀者を観てきた伐刀者教師なら判るばすだった。だが前理事長の仕打ちは『落第騎士を授業に出さない』これにつきていた。他の伐刀者教師も同様に一輝を見下し蔑み、『自分の授業に出席する価値がない』と教師にあるまじき行動をとっていたのだ。
その事に激怒した真琴は理事長室に乗り込み話をしに言ったのだが、その際に「あの落第騎士とは縁を切ろ、お前は一応低ランクだが能力はギリギリ足りている。授業に出てもいいが、もし抵抗するなら只では済まさないぞ」
と脅しを掛けられた。
真琴は人にこんなに激怒した事はなかった。人の友人関係を他人から謂われる覚えなど無いからだ。前理事長の脅しは真琴には効果がなかった。そして真琴におもいっきり殴られる事となったのだ。
だがこのままであれば真琴は退学確実だ、そこに手を差し伸べたのが現理事長、神宮寺黒乃だ。真琴が素行が悪いから殴った訳ではなく、友の為に行った事、そして真琴が授業等を真面目にうけている事を黒乃は知っていた。それは周りのクラスメートも承知している。それを教育委員会に訴え、生徒を退学にすることは間違っていると学校側に抗議した。だが真琴がやった事は許されない事なのは事実。その為『留年』と『来年度七星剣武祭本選出場』を条件に退学を取消てくれたのだった。
「複雑な事情があるんだねぇ~、あっそうだ、まこっちーこの後暇?」
「え、今日の修行ノルマは終わってますし予定はないですけど」
「んじゃくーちゃんの部屋で少し話でもしようよー」
「それは良いですけど・・「勝手に決めるな!」」
「いったぁい!何するのくーちゃん!!」
審判を終え、寧々の暴挙を手刀で止めに入った黒乃。
「お前が勝手に話を進めてるからだ。近衛、それより黒鉄に手を貸してやれ」
「そうですね、ヴァーミリオンさんの方は?」
「私の方で手配しておく、気にするな」
「はい!」
そう言うと彼はスタンドを乗り込え一輝に近付き、肩を貸しながら第四訓練場を後にした。その様子を一人の少女が観ていた。
「あれ、あそこに居るのまこ君?まこ君もこの試合観に来てたんだね。それじゃ挨拶してから戻ろうかな?」
と言って眼鏡を掛けた彼女は彼を追った。二人の落第生の事を・・・。
「にしてもくーちゃん、今年の破軍学園は面白くなりそうだね」
「そうだな、少し私達の学生時代を思い出したよ」
「近衛ちんと切磋琢磨してたあの頃?」
「あぁ」
果たして真琴と同じ姓を持つ近衛とは誰なのか、それが判るのはこれから数時間の事である。
「・・・・真琴、ありがとう」
「ん?何がだ?」
「真琴が背中を押してくれなきゃステラさんに勝てなかったよ」
「馬鹿言え、お前の力で勝ち取った勝利だろう?俺の力じゃないさ」
「そんな事ないさ・・・」
「一輝、俺がおぶってやるから少し寝とけ、俺が部屋まで運んでやるよ」
「ん、分かった。そうさせて貰うよ・・・・」
そう言うと彼はあっという間に眠りに堕ちてしまった。さながら雪解けで熔けてしまう結晶の様子に・・・。
第四訓練場から出てると入口付近で待っている一人の少女がいた。先程の試合を観客席から観ていた眼鏡の彼女だった。
「まこ君お疲れ様」
「ん?あれ刀華さんじゃないですか!試合観てたんですか?」
「うん、こんな面白い試合見過ごせないからね。うた君に仕事を任せて来ちゃった」
「(うたさんも苦労してそうだな・・・)で、刀華さん的に試合はどうでした?」
「ん?二人とも戦って見たいよ?」
「貴女ならそうですよね、そういうと思いました。まぁ二人共、学生伐刀者ではかなりの実力者ですから」
「やっぱりまこ君から観てもそうなんだ」
「はい」
「というか渾名についてはもういわないんだね」
「もう慣れましたよ、流石に・・・。会う度に何度もまこ君、まこ君って言うから」
「そうだったね、ふふっ」
この笑っている眼鏡の生徒はというと、何を隠そう破軍学園序列第一位破軍学園生徒会長『東堂刀華』である。何故«雷切»東堂刀華が落第の拳«ワーストフィスト»と仲良さげに話をしているかというと、真琴が一人重しを装着し朝のランニングをしているのを、刀華に目撃された事がきっかけで会う度に話し掛けられているからだ。境遇が似ているからか、直ぐ様仲良くなり生徒会の面子とのお食事会や刀華の仕合前の調整等を真琴が勉めていたりしている。
「寝ているのは黒鉄君だよね?」
「あぁ一刀修羅の影響ですね、疲労してるだけなのでこれから部屋に運ぶ所ですよ」
「そっか、なら途中まで一緒に行こう?」
「それは良いですけど、何も無い所で転んだりしないで下さいね」
「そんな事やらんよ!」
(でも、実際、やりそうなんだよなぁ、心配・・・)
そんな会話をしながら学園の寮に到着しそのまま刀華と別れ、一輝を部屋のベッドへ寝かして寧々が待つ理事長室へ向かう真琴だった。
ステラと一輝の模擬戦から数時間後、ここは寧々が待つ理事長室前、何故自分に話が有るのか判らない真琴であったが、意を決して理事長室のドアを開けた。
トントン「失礼します、近衛真琴です」
「良いぞ、入れ」
「失礼します」
「まこっち遅ーい!今まで何やってたんだよ!」
「すみません、刀華さんと世間話に花開いちゃって・・・」
「まこっち、雷切とも繋がりが有るの?何気に顔広いんだねぇ」
「刀華さんとは色々有りましてね、と言うか何で理事長室まで俺を喚んだんです?」
「それはねお前さんが近衛ちんの息子だからさ」
「・・・!そうか、父の学生時代を知ってるですね」
「あぁそうだよ、何せ同級生だったからねぇ」
「真一も友の為なら何でもやった男だ。苛めを受けていたら相手に鉄拳制裁、友と修業したり、そう言う所はお前とそっくりだよ」
「!父とそっくりですか、共通点があって凄く嬉しいです。父はとある事件で命を落としました。俺の事を危険を顧みず母と一緒に、犯人から身を呈して護ってくれました。それが俺にとっての誇りです」
真琴はとある事件で父と母を亡くしている。父が伐刀者専門の捜査官だった。犯人が証拠隠滅の為在宅中の近衛家を襲撃。その事件で真琴の父と母は命を落としたのだ。葬儀には黒乃と寧々も出席している、真琴とは少し会話をした程度だったが真琴は今でもその事を覚えていた。
「まこっちはその犯人に復讐したいって思わないのかい?」
「ないと云えばそれは嘘になります、けど犯人に復讐した所で俺の父と母は帰って来ません・・・。俺がやるべき事は父と約束した❮日本一の伐刀者になる❯夢を叶える事!それに俺にはもう家族が居ます、梁山泊の人達が今の俺の家族です!その人達が俺の道を示してくれた、それが活人拳です!活人拳は人を活かすのが理、ですから犯人を捕まえる事になったら罪を償わせるだけですよ!」
「ふっ大人だねぇ、まこっちは・・・」
「それじゃ近衛には真一の昔話でもしてあげようじゃないか」
「はい!是非!!」
その後話は延々と続き真琴が帰るのは理事長室から寮に帰る頃には夕陽が沈む頃だった。
一方、その頃一輝の部屋では病室から戻ったステラが一輝のベッドへ乗り込み頭をぶつけるという間抜けな事件が起きていた。だがそれはまた別の話・・・。
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