史上最強の武術家の弟子伐刀者マコト   作:紅河

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BATTLE.60 親子の会合

 当事者である一輝とステラ、俺は理事長室に呼び出しを受けていた。

 呼び出しの理由は赤座の一件だ。

 有らぬ噂を立てられたことと、ステラとの不純異性交遊。その事実の確認をするべく。

 

 

 

 しかも、早朝七時に破軍学園理事長室へ来いとのメールのお達し。

 本来ならば、昨日に説明すべきなのだろうが、理事長が所用で学園におらず、報告が出来なかった。そのための朝早くの登校なんだな。

 あと、他の生徒達に見られたくないってもあるか。

 七時なら、誰も学園には居ないだろうしな。教師ならともかくとして。

 

 まぁ、修業で早起きには慣れてるから別に良いけどな。

 朝四時はないですよ、師匠・・・。

 

 あぁ・・・理事長室遠いなぁ・・・。

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 程なくして、理事長室へ到着した。

 

 俺、一輝、ステラ、一同が理事長室に集った。

 

 

「あ、真琴」

 

「おう、おはよう。お二人さん」

 

「マコト!昨日の説明、してもらうわよ!」

 

 俺に人差し指で差しながら、発言するステラ。

 昨日、赤座と俺との一件の説明をせず、逃げるように去ってしまった。

 

「分かってるって!ちょっと待っとけ」

 

「分かったわ、昨日みたいに逃げないでね!」

 

「はいはい」

 

 

 俺が扉を開けると、そこには新宮寺黒乃理事長が笑顔で待っていた。

 理事長、その笑顔は怖いですよ・・・。

 

「事情は一応、把握している。だが真実かどうかお前達の口から直接聞きたい、いいな?」

 

「はい」

 

 真っ先に一輝が口を開いた。

 

「取り合えず、事実確認だ。お前達は本当に付き合ってるのか?」

 

「はい、確かに僕達は恋人同士ではありますが、健全なお付き合いをさせて頂いてます」

 

「記事のことは出任せです!こんなことを一輝がしないのは理事長先生だって分かるでしょう!?」

 

「そうだが、一応な。それじゃ路チューなんかはしていないんだな?」

 

 タバコに火をつけながら、質問を投げ掛けた。

 

「はい、やっていません」

 

「・・・教師とは生徒を信じるものだ。信じすぎるのも駄目だが、お前、いやヴァーミリオンと黒鉄は嘘は言ってない。その濁りの無い目を信じるとしよう」

 

 その答えに安堵の表情を見せる一輝とステラだった。

 

「あの、他の生徒達にも僕達の噂が知れ渡っているのでは?」

 

 当然の疑問だな。

 

「そうですよ。昨日、学園記事も記載されてたし・・・」

 

「その点については大丈夫だ。連盟が手を回したのか、そのお陰かなのは分からないが、一応事態は落ち着いている。生徒達も単なる噂としか認識していない、時期に収まるだろう」

 

「なら、安心ですね」

 

「だが・・・」

 

 理事長の言葉の表情が変わる。

 手を組むと、その口を開いた。

 

「近衛、お前に聞きたいことがある」

 

「はい」

 

「お前は赤座とかいう男に何かしたのか?昨日、夜遅くだったが連盟から連絡があったぞ。明日、黒鉄一輝と近衛真琴は本部へ来るようにと」

 

「えっ」「イッキとマコトが?」

 

「まぁそうでしょうね」

 

「知っていたのか」

 

「はい、その質問は来るだろうと予想出来ましたから。昨日の説明も兼ねて今から話しますよ。

 実は俺の師匠の知り合いに有名な探偵が居まして・・・」

 

「探偵?」

 

「へぇ」

 

「お前にそんな知り合いが居たとはな、差し支えなければ教えてくれるか?」

 

「はい、良いですよ。〝ロキ探偵事務所〟です。もう各都道府県に事務所があるので聞いたことがあるかも知れませんが」

 

 その名を聞いてから黒乃理事長は納得の表情で、一輝は名前だけはっていう感じ。ステラは・・・ま、知らねぇよな。

 

「それで、そのロキ探偵事務所ってなによ」

 

「知らないステラに簡単に説明すると、ロキという男性が切り盛りしてる事務所で様々な依頼をこなす探偵さんだ。各、都道府県毎にロキさんが配置され社長を勤めている」

 

「ええ!?各所に一人づつってロキって人、影武者でも雇ってるの?」

 

「そうだよ。しかも全員そっくりだ」

 

「ええ・・・」

 

「それで、何故お前はその、ロキ探偵事務所に依頼を?」

 

 厳密に言うとロキさんじゃなく、新島総督なんだが・・・今それを言うと混乱するだけだな・・・。

 訂正せず、このまま行くか。

 

「前に合宿を生徒会の面々と俺達で掃除をしたの覚えてます?」

 

 黒乃理事長が頷きで返す。

 

「そこで、ゴーレム達に一輝とステラが襲撃に遭いまして、それを企てそうな人物は誰かって一輝に聞いたら、一人だけ候補がいると・・・。その犯人らしき人物の名が赤座守だと。それでその確認のために、赤座守をロキさんに頼んで調べて貰ったってわけです」

 

「それで、お前と黒鉄が呼ばれたってことか」

 

「そうなりますね」

 

「私は行かなくてもいいんでしょうか」

 

「ヴァーミリオンは大丈夫だ、行かなくていい。先に事情聴取ということで黒鉄と赤座の件の確認で近衛が指名されている。二人とも国際魔導騎士連盟日本支部長、黒鉄厳にな」

 

 黒鉄・・・。

 一輝の親父さんか。

 

「父さんに・・・」

 

「えっ・・・父さん?」

 

「そういうことだ。これから黒鉄と近衛の二人には連盟へ行ってもらう。学園の方は私の方で公欠扱いにするよう、手配しておく」

 

「ありがとうございます」

 

「宜しくお願いします、黒乃理事長」

 

「任せろ」

 

 一礼をして俺達は理事長を出た。

 

 タバコで一服する黒乃。

 ふと、ふかしながら天井を見上げながら、こう溢した。

 

「行ったか・・・。黒鉄、今一度、父親と向き合ってこい」

 

 その小さな声援はゆっくりと天井へ消えていった。

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 時刻は午前八時。

 東京、国際魔導騎士連盟日本支部。

 俺達の目の前に、要塞のようなビルの姿が広がっている。

 

 

「いよいよだな」

 

「・・・うん」

 

「緊張してんのか?」

 

「そうだね。久し振りに父さんと会うことになるし」

 

 一輝の声は寂しさと怒ったようなそんな顔を覗かせていた。

 

「無理するなよ?俺がついてる、一人じゃねぇんだ、心配すんな」 

 

「ああ、行こう」

 

 ゆっくりと俺達は前へ進んだ。

 久し振りの父親との再会。

 行かなきゃ始まらない。

 取り合えず、前だ。

 

 俺達は受付を済ませ、待合室で待つこと数十分。

 スタッフの方だろうか、その人が日本支部長が居る部屋まで案内してくれた。

 その階には周りに部屋がなく、日本支部長の部屋のみが設置してある。

 

 トントンとノックする一輝。

 

「「失礼します」」

 

「入れ」

 

 扉に手を掛ける一輝だが、そのドアノブは重く、開けることが出来ない。

 何の変哲もないドアノブなのだが、余程緊張しているのだろう。

 そばに居る俺までプレッシャーに押し潰されそうになってくる。

 

「大丈夫だ」

 

 一人じゃない。

 俺が居る。

 お前の背中は、俺が押してやる!

 

 片方のドアノブに手を掛ける。

 

「ありがとう、真琴」

 

 その重い扉は真琴の助力で漸く開いた。

 窓際の近くまで何もないただの広々として部屋。

 デスク以外、何一つない。

 質素な部屋。

 

 ずっと居ると逆に気が滅入ってしまいそうだ。

 

 コツコツと俺達は進み、デスク前へと到着した。

 

  

「初めまして、黒鉄厳さん。近衛真琴と言います。息子さんにはお世話になっています」

 

「ああ、宜しく。息子と仲良くしてくれてありがとうと言っておこう」

 

 真琴と会話しても、その厳つい表情は変わらない。

 

 

「お久し振りです、父さん」

 

「ああ、一輝。代表戦勝ち進んでるそうだな」

 

 この男こそが黒鉄一輝の父、黒鉄厳だ。

 

 

「は、はい!」

 

 一輝、嬉しそうな声だな。

 俺が二人の会話を待っていると・・・。

 

「あ、お前っ!近衛真琴!お前、お前のせいで!私のっ・・・!」

 

 赤座が突っ掛かってきた。

 居たんだな。

 何か隈っぽいのが目にあるけど・・・。

 

 

「あ、赤座さんでしたっけ。居たんですね、気が付きませんでした」

 

「なにを偉そうにっ・・・!お前のせいで!私の計画がメチャクチャだ!」

 

 唾を吐きながら俺に向かって罵詈雑言をあれやこれやと言ってくる。あんまりこんなことを思いたくないけど、その姿は醜い豚のようだ。

 

「・・・あーだこうだ言ってますけど、何?メチャクチャ?それは貴方の自業自得ではないのですか?態々改竄なんかに手を染めなければ、こんな事にはならなかった、そうでしょう?」

 

「ぐぬぬ・・・」

 

「近衛君、私の部下が言うには君のせいだと言っているが?何か弁明は?」

 

「弁明も何も俺は降りかかる火の粉を振り払っただけです。黒鉄支部長も既にご存じかも知れませんが、俺達が合宿場を掃除した際に、とあるゴーレム軍団に襲撃を受けました。俺が狙われる理由はないですし、そこに居合わせた生徒会の面々達もそうです。もし、あるとすればステラか一輝のみです。そのあと二人に話を聞いて、一輝から疑わしい人物が上がったので、信じたくはありませんでしたが、一応知り合いに頼んで調べて貰ったってだけですよ」

 

「ふむ・・・」

 

「そしたら、証拠が出た。赤座さんが黒だった、そういう事です」

 

「そうか、事情は把握した。私の部下がすまなかったな」

 

「いえ、黒鉄支部長が謝ることじゃありませんから」

 

「では、次に一輝、お前だ」

 

 そう、口にした瞬間に、実の父親とは思えない目線が一輝を襲った。

 




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次回更新予定日は4月4日~5日の17時00分~21時00分とさせていただきます!

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