史上最強の武術家の弟子伐刀者マコト   作:紅河

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BATTLE.5 模擬戦その2

 ここから一輝の反撃が開始した。すると一輝の繰り出した技を観ていた野次馬伐刀者の中に、驚く伐刀者や何故驚いているか分からない伐刀者など様々な心情を浮かべていた。だが驚愕したのは何を隠そうステラ・ヴァーミリオン本人だろう。何故ならば一輝が使った技はステラ・ヴァーミリオンの皇室剣技(インペリアルアーツ)だったのだ!!

 

 

 

「私の剣どうしてアンタがそれを!?」

「僕は誰にも何も教えて貰えなかったからこういう事ばかり巧くなっちゃってね!!!」

(枝を伝って理に至れば全てを理解出来る!そして超えられる!)

「ど、どういう事だ!?落第騎士«ワーストワン»が使ってる剣術はヴァーミリオンさんの剣技じゃないか!」

「何!?んじゃ落第騎士は何かの伐刀絶技を使ってるのか?」

「野次馬の皆さん、何か勘違いしてるみたいだが一輝は伐刀絶技(ノウブルアーツ)は使用していないぜ?ヴァーミリオンの剣術を模倣しただけだ」

 

 

 真琴の言葉に耳を傾けていた伐刀者達だがその言葉を信じられなかった。何よりFランクという自分達より劣っている底辺の人間が達人の様な芸当を今正にやってのけているのだから!

 

 

「模倣だと!?嘘を言うな!!落第の拳«ワーストフィスト»!!」

「そうよ!!Fランが模倣何て事出来る訳ないじゃない!」

「だけどまこっちが言ってる事は本当さね」

「寧々先生までそんなこと言うんですか!?」

「お前達の言い分も判るが近衛の言っている事は事実だ、黒鉄が使用したのは模倣剣技❮ブレイドスティール❯アイツ自身が編み出した黒鉄だけの剣術!対戦相手の剣術の術理を解析し、さらにそれを発展させ完全上位互換を造る剣術だ」 

 

「う、嘘だ!」「理事長先生まで・・・」「ふんっ模倣をFランに出来たなら俺にだって出来る!」「ヴァーミリオンさんの剣技が簡単に覚えられる剣技なんじゃね?」

 

 

 伐刀者達の言葉は武術を舐めている冒涜的な発言だった。それを聞いた直後の真琴は頭に血が登り、腹の底から沸々とマグマの様な怒りが溢れ出て来た。それは黒乃や寧々も同じ心情だったが真琴はそれ以上に腹立たしく声を上げれずにはいられなかった。

 それは一輝を貶し、あまつさえ対戦相手のステラすら馬鹿にしている事に他ならず真琴は声をあらげながら言い放った。

 

「ただ真似るだけなら誰だって出来る。けどな技を盗むという事はその剣術の創られた歴史を紐解く事に意味があるんだ!アイツは!!一輝は、闘いの最中にその模倣をやってのけてるんだ!その意味がお前らに判るか?人を貶して生きてるお前らに、人の努力を嗤ってるお前らが!ステラや、ましてや一輝を馬鹿にする権利などない!!」

 

「気持ちは判るけど少し落ち着きなさいな、まこっち」

「あっ・・・すみませんつい・・・」

 

 集まった伐刀者達は真琴の言葉を聞いた瞬間、反論する事が出来なかった。だがどうしてもその事実を受け入れる事が出来ない、何故なら“もし受け入れてしまったら”自分達の努力が足りない事を認めるという事になる、だからこう考えた【これは八百長だったのだ】とそう思えば自分達は救われる。あの落第騎士«ワーストワン»より自分達は劣っていないと敗けていないと実感出来るそう思ったのだ・・・・。

 

 

 伐刀者達が物思いに耽っていると模擬戦が動いた、ステラがフェイントを加え一輝に攻撃を浴びせようとしているのだ!だが見切りを終えた一輝はその攻撃を読み、陰鉄の柄の部分でステラの一太刀を完璧にかわし、そのままステラへ斬り込んだ!!

 

「なっ!?き、決まったのか?」「まさかAランクが・・・」「いや、あれを見ろ!」

 

 惜しくも一輝の一太刀はステラへ届いてはいなかった。ステラの魔力を使い編んだ炎のドレス、妃竜の羽衣(エンプレスドレス)によって陰鉄は阻まれていた。これがAランクとFランクの差だ、一輝がどんなに鍛練し素早く攻撃を仕掛けステラに一太刀浴びせようとも、一輝の伐刀者としての攻撃力が足りず傷一つつけることすら出来ないのだ。

 

「カッコ悪いわね、こんな勝ち方・・・・」

「陰鉄が傷つけられないと判っていたんだね、その上で僕に剣戟を挑んだ」

「えぇ、アンタに勝って私が才能だけの人間じゃないと知らしめる為にね。でも認めてあげるわ、この一戦私が勝てたのは確かに魔力のお蔭だって。だから最大の敬意を持って倒してあげる・・・」 

 

 ステラが自分最大の攻撃準備の詠唱を始めている。

だが一輝の瞳は諦めていない!いや諦める訳にはいかない!一輝には魔導騎士になる為に立てた誓いがある!そして自分の勝利を信じて待ってくれている親友がいる!! 

 

「僕には魔導騎士の才能がない。だけど退けないんだ!あの日に立てた誓いが・・・!共に鍛練した唯一無二の親友が僕の背中を押してくれたっ!だから考えた天才に勝てるにはどうすれば云いかを!!そして至った!!」

 

「『一刀修羅!!』」「『焼き尽くせ!天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)!!』」

 

 ステラの伐刀絶技«天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)»第四訓練場の天井を貫き炎の特大剣を造り出す、ステラ・ヴァーミリオンの切り札ともいえる伐刀絶技だ。その特大剣レベルではない正しく竜王のブレスである。

 そしてステラはそのまま一輝へ妃竜の罪剣(レーヴァテイン)を向け一輝を捉えたと思った次の瞬間、一輝は姿を消していた。

 一輝の姿を捉えもう一度、天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)で一輝に攻撃を仕掛けるがその攻撃は外れた、いや躱されていた!

 

「どういう事!?それに魔力も上がって・・・!?」

「上がったんじゃない形振り構わず全力で使ってるんだ!!!」

「だからって!」

 

 何度も何度も攻撃を繰り出すがその都度一輝は躱していく、その姿を見ていた周りの伐刀者は唖然としていた。

 そして伐刀者達は悟った、何故黒鉄一輝のステータスが“身体能力A”なのかを、そして理解した!超人的な身体能力倍加のブーストが落第騎士の切り札なのだと!!

 

「あれは一輝だけのオリジナル伐刀絶技«一刀修羅»自分自身の脳のリミッターを外し生きる時間の全てを一分に凝縮して搾り尽くす!一輝が高ランク伐刀者達と戦って行く為に編み出した荒業だ」

「身体能力倍加の能力を伐刀絶技まで昇華させるとはな、あそこまでいくと天晴れとしか言い様がない」

 

 そして一輝がステラの攻撃を躱しながら懐へと跳び込んだ!

 

      

「僕の 最 弱(さいきょう) を以て君の最強を打ち破る!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最強に打つ勝つ為には修羅になるしか・・・ないんだ・・・」

「そこまで!!勝者、黒鉄一輝!」

 

 

 

 

 一輝はそのまま、妃竜の羽衣(エンプレスドレス)ごとステラを斬り伏せた。ステラは倒れ込み、一輝は一刀修羅の副作用の為、全魔力を使い果たし気を失い、第四訓練場には静寂が訪れていた。Aランク騎士が破軍学園の落第騎士«ワーストワン»黒鉄一輝敗れ去ったのだ。

 こうして第四訓練場で行われたAランク騎士ヴァーミリオン皇国の皇女ステラ・ヴァーミリオンVS落第騎士«ワーストワン»の対決は落第騎士、黒鉄一輝の勝利で幕を閉じた。

 

 

 




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