史上最強の武術家の弟子伐刀者マコト   作:紅河

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BATTLE.55 合わせ技

 さぁて、どうしたもんか・・・。

 一応、世直しで経験はあるが・・・。

 

 俺は師匠との世直しで世界各地を回った経験がある。世直しはその名の通りの世直しだ。

 世界の悪事を倒し、世界を旅すること。

 師匠こと、白浜兼一師匠も梁山泊最長老、〝風林寺隼人〟と〝風林寺美羽〟と共に世界を回り沢山の悪者退治をしてきた。

 それの延長線上で俺も世直しを経験している。というか半ば強制に近いような気がするが・・・。

 

 まぁ、修業にもなるし楽しかったから良いけど。

 その世直しでは伐刀者との戦闘もあって、その中にはゴーレムを操る敵もいたんだ。それで経験してるってこと。

 

 

 

「真琴、二人でやるよ」

 

 いつの間にか隕鉄を展開している、一輝。

 それなら、俺の返す言葉は決まってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言われなくても分かってる!」

 

 おっ始めるとするか!!

 

「一輝!俺は中央を叩く!」

 

 

 

「それじゃ僕は、真琴が溢した敵を倒すよ!」

 

「ああ!頼んだ!惚れた女は守るのが男の使命だぜ!?」

 

「わ、分かってるさ!」

 

 戦闘開始してから間も無く、敵の増援が現れた。

 数十体にも及ぶ。一応、二人でなんとか出来る数しか来てないから、まだいいが・・・。

 終わる気配が全く無い・・・。

 それどころか・・・増している気がする・・・。

 

「こりゃ、俺らの戦闘を監視してる奴が居そうだな・・・」

 

「そうでもしないと、ここには呼べないだろうから、ね!」

 

 お互いに己の武器を奮いながら会話する。俺は一拳、一輝は一刀。

 辺りのゴーレム達を縦横無尽に薙ぎ倒す。ただ倒すのは簡単だ。敵のコアの部分に攻撃を叩き込めばいい。

 

 俺なら師匠から授かった拳を。

 一輝なら努力で培った一太刀を。

 

 しかし、これはゴーレム戦。

 遠隔操作している召喚士を倒さない限り、この戦闘は終わらない。

 

「とりあえず!うたさん達には俺が帰って来なかったら探すように言ってある」

 

「そうなのかい?」

 

「ああ!だからッ!」

 

 近くのゴーレムの頭をぶっ飛ばす。

 

「それまで、持ちこたえろ!」

 

「任せてよ、柔な鍛え方はしてきてないよ!」

 

 一輝の積み重ねた技がここで光る。

 

「そうだっ、たな!」

 

 俺も負けてられないなッ。

 

 ❮空中三角飛び❯!

 

 一体のゴーレムに跳び蹴りを叩き込む。

 これは空中蹴りを気の運用で無理やり軌道を転換する荒技。

 本来であるならば、敵に目掛けて蹴りを入れる。これが飛び蹴り。

 だけど、この技は的外れな方向に行くため、戦闘中に意表を突く技。逆鬼先生に学んだ時、奇襲に使えと教えられたっけ。

 

「チェストー!」

 

 その飛び蹴りでゴーレム三体纏めて葬った。

 

 そんな事をしてもこの状態が改善される訳もなく、敵は瞬く間に増えていく。

 今の状況じゃじり貧。

 

 俺達の体力が尽きてやられるか・・・。

 うたさん達の増援が到着するのが先か・・・。

 

 後者になることを願うばかりだ。

  

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「おやぁ?まだ残ってるですかぁ?黒鉄君はぁ・・・?」

 

 ここは、とある一室。

 暗闇の中、一つの蛍光灯で一人の男が佇んでいるだけの部屋。

 そこへ、ある男が室内へやって来る。嫌味たらしく、その男に話し掛ける。

 

「なぁるほど、なるほど。黒鉄君の友人が居たのかぁ、しかも去年問題を起こした、近衛君じゃないかぁ・・・。よくもまぁ伐刀者を続けられるねぇ・・・Eランクの分際で・・・。まぁ、落ちこぼれは落ちこぼれらしく居れば良いんですがねぇ・・・」

 

 伐刀者の圧倒的、格差差別。それを怠らず、その男は一輝達の様子を窺っている。ふくよかで口元には小さなちょび髭をしていて、頭には黒のハット帽をしているようだ。

 

 伐刀者と思しき人物の前には一つのモニターが置いてある。そこには戦闘真っ只中の真琴と一輝の姿があった。

 

「頑張って下さいね。直に体力も無くなるでしょうから、ほっほっほっ・・・」

 

 余計な一言を残し、暗闇の中へ消え去っていった。

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ブラックバード!」

 

 お!この声は!

 

「クレッシェンド・アックス!」

 

 近場に居たゴーレム達が次々と打ち倒されていく。

 どうやら、間に合ったみたいだな。

 

「兎丸さん!それから砕城さんまで!」

 

 俺達の直ぐ側へ着地する、恋々さん。その隣には雷先輩もいる。

 

「遅いですよ」

 

「ごめんごめん!道中慣れなくてさぁ」

 

「ここは某達に任せるといい!」

 

 よし、面子は揃った・・・。

 ここを打破する方法は、あれしかない!!

 

「いや、四人でやりましょう。一つだけ思い付いた事があります」

 

「おっ!なんだい、真琴君!」

 

「三人で時間稼いで貰えますか?あとは俺がなんとかします」

 

「了解だよ!」「頼んだぞ!」

 

「恋々さん!うたさん達は?」

 

「あと数分ってとこだと思うよ!」

 

 なら、丁度ってとこくらいだな・・・。

 

「了解です!」

 

 二人はすぐさま、ゴーレム達の相手に向かった。

 

「真琴、ボディーガードが必要かい?」

 

「いや、心配いらねぇよ。こんな苦難どうってことねぇ、やるぞ!」

 

「ああ!」

 

 今度は一輝がゴーレムへ突撃を開始した。

 

 俺は技の体勢へ・・・。 

 ゴーレムを操作しているということは目には見えない、魔力の糸が存在する。それを打ち払うには。

 

 まずは自分自身の気をありったけ右の手刀へ集める・・・。

 そして、左の鞘には電気を精製する。

 俺自身の細胞から筋組織、そこから小刻みに動かし電気を編んでゆく・・・。

 

 大きな積乱雲が雷を作るイメージで・・・。

 左の手首から右手の手刀へ、電気を送る。ゆっくりゆっくり。慎重に。

 そうだ。ゆっくりと!

 

 細胞から筋組織を動かし、その摩擦を静電気を精製、電気に変換!

 何度も!何度も!何度も!筋組織を動かす!!

 

 焦るな・・・。焦るな!

 

 ゴーレム共は一輝達がなんとかしてくれる。

 技に集中しろ!

 

 刀華との修業を思い出せ!

 焦ったら全てが水の泡だ!

 

 手刀の身体法はそのまま抜刀。

 この方法じゃないと俺が出せない。

 

 ッ!

 

 

「真琴!❮第四秘剣―雷光❯!」 

 

 無防備だった俺の目の前に三体のゴーレムが押し寄せていた。

 躱すことも出来たが、その前に一輝が片付けたようだった。

 

「大丈夫かい?」

 

 頷きで返す。

 今の俺に言葉を発する余裕はない・・・。

 

「なら、僕がステラと君を守る。真琴には借りが出来たからね、今それを返すよ」

 

 借り?

 ああ、師匠のことか?

 そんな事、いいのに・・・。

 

 俺が借りを作ってるみたいなもんなんだけどな・・・。

 

 よし・・・もう少しだ・・・。

 あと少しで・・・。

 

「苦戦してるようだねぇ、真琴君」

 

 あっ!うた・・・。

 

「ああ!いいよ~喋らなくてー。伐刀絶技が疎かになったらまずいからねぇ。もうそろそろ来るから」

 

 そっか、もうそんなに経ったのか。

 

 バチバチ、ビリリッ。

 俺の周囲に電磁が迸る。

 主に手首周りに、電気が歩き始めている。

 

「皆、遅れてごめんなさい」

 

 ここで、誰もが聴いたことのある聞き馴染みの声が木霊する。

 

「刀華!」「会長!」「待ちくたびれたでござるよ!」

 

「あ、貴女が、❮雷切❯東堂刀華!」

 

「はい。自己紹介もしときたいですけど、今はそれどころじゃないのでまた今度」

 

「は、はい」

 

「まこ君、いける?」

 

「も、勿論!行けますよ」

 

「なら、一緒に行こう?」

 

「はい」

 

 その声と共に俺は駆け出した。

 

「・・・鳴神」

 

 キシャーーーン!

 豪雷が森林内で轟き、刀華の手から一本の鞘と一刀が現れる。

 

 一昔前に、一本の刀が雷を斬ったという伝説が知れ渡った。それを成したのが❮雷切❯と呼ばれる刀だそう。

 一昔前といっても戦国時代、もしかするとそれより前かも知れないが・・・。ともあれ、そんな都市伝説がここ、日本には存在する。

 

 その名に恥じない強さをこの騎士は持っている。

 

 

 

 

 刀華さんが俺の道を作ってくれてる。

 俺が集中し易いように・・・。

 

 なら、俺がやるべきことは。

 

 俺の技を彼奴に、何がなんでも浴びせること!!!

 やるっきゃない!いや・・・やるんだ!

 

 次第にゴーレム達が元の姿へ戻っていく。

 周囲の残岩をかき集めながら、巨大なゴーレムへ進化していく。

 雪ダルマを作るときみたいに徐々に、徐々に大きくなっていく!!

 

 

 ゆっくりと刀華さんの呼吸に合わせてゆく。

 一歩、一歩、着実に。

 

 相手までもう数メートルの距離だ。

 もう、技を叩き込める!!

 

 俺達が到着と同時に、一挙が振り下ろされる。

 

「ハァ―――」

「近衛流・手刀電磁抜刀術・・・」

 

 

「・・・❮雷切❯!」

「❮雷刀無斬❯!!」

 

 ゴロゴロッ!

 

 周囲の人間を包み込む光と共に、轟轟(ごうごう)しい雷音が平穏だった森林に鳴り響いた。

 

 二人の伐刀者から放たれた雷撃によって、痕跡を残すことなく、蒸発していった。

 




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次回更新予定日は2月17日~18日の17時00分~21時00分とさせていただきます!

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