さぁて、どうしたもんか・・・。
一応、世直しで経験はあるが・・・。
俺は師匠との世直しで世界各地を回った経験がある。世直しはその名の通りの世直しだ。
世界の悪事を倒し、世界を旅すること。
師匠こと、白浜兼一師匠も梁山泊最長老、〝風林寺隼人〟と〝風林寺美羽〟と共に世界を回り沢山の悪者退治をしてきた。
それの延長線上で俺も世直しを経験している。というか半ば強制に近いような気がするが・・・。
まぁ、修業にもなるし楽しかったから良いけど。
その世直しでは伐刀者との戦闘もあって、その中にはゴーレムを操る敵もいたんだ。それで経験してるってこと。
「真琴、二人でやるよ」
いつの間にか隕鉄を展開している、一輝。
それなら、俺の返す言葉は決まってる。
「言われなくても分かってる!」
おっ始めるとするか!!
「一輝!俺は中央を叩く!」
「それじゃ僕は、真琴が溢した敵を倒すよ!」
「ああ!頼んだ!惚れた女は守るのが男の使命だぜ!?」
「わ、分かってるさ!」
戦闘開始してから間も無く、敵の増援が現れた。
数十体にも及ぶ。一応、二人でなんとか出来る数しか来てないから、まだいいが・・・。
終わる気配が全く無い・・・。
それどころか・・・増している気がする・・・。
「こりゃ、俺らの戦闘を監視してる奴が居そうだな・・・」
「そうでもしないと、ここには呼べないだろうから、ね!」
お互いに己の武器を奮いながら会話する。俺は一拳、一輝は一刀。
辺りのゴーレム達を縦横無尽に薙ぎ倒す。ただ倒すのは簡単だ。敵のコアの部分に攻撃を叩き込めばいい。
俺なら師匠から授かった拳を。
一輝なら努力で培った一太刀を。
しかし、これはゴーレム戦。
遠隔操作している召喚士を倒さない限り、この戦闘は終わらない。
「とりあえず!うたさん達には俺が帰って来なかったら探すように言ってある」
「そうなのかい?」
「ああ!だからッ!」
近くのゴーレムの頭をぶっ飛ばす。
「それまで、持ちこたえろ!」
「任せてよ、柔な鍛え方はしてきてないよ!」
一輝の積み重ねた技がここで光る。
「そうだっ、たな!」
俺も負けてられないなッ。
❮空中三角飛び❯!
一体のゴーレムに跳び蹴りを叩き込む。
これは空中蹴りを気の運用で無理やり軌道を転換する荒技。
本来であるならば、敵に目掛けて蹴りを入れる。これが飛び蹴り。
だけど、この技は的外れな方向に行くため、戦闘中に意表を突く技。逆鬼先生に学んだ時、奇襲に使えと教えられたっけ。
「チェストー!」
その飛び蹴りでゴーレム三体纏めて葬った。
そんな事をしてもこの状態が改善される訳もなく、敵は瞬く間に増えていく。
今の状況じゃじり貧。
俺達の体力が尽きてやられるか・・・。
うたさん達の増援が到着するのが先か・・・。
後者になることを願うばかりだ。
◇◆◇◆◇
「おやぁ?まだ残ってるですかぁ?黒鉄君はぁ・・・?」
ここは、とある一室。
暗闇の中、一つの蛍光灯で一人の男が佇んでいるだけの部屋。
そこへ、ある男が室内へやって来る。嫌味たらしく、その男に話し掛ける。
「なぁるほど、なるほど。黒鉄君の友人が居たのかぁ、しかも去年問題を起こした、近衛君じゃないかぁ・・・。よくもまぁ伐刀者を続けられるねぇ・・・Eランクの分際で・・・。まぁ、落ちこぼれは落ちこぼれらしく居れば良いんですがねぇ・・・」
伐刀者の圧倒的、格差差別。それを怠らず、その男は一輝達の様子を窺っている。ふくよかで口元には小さなちょび髭をしていて、頭には黒のハット帽をしているようだ。
伐刀者と思しき人物の前には一つのモニターが置いてある。そこには戦闘真っ只中の真琴と一輝の姿があった。
「頑張って下さいね。直に体力も無くなるでしょうから、ほっほっほっ・・・」
余計な一言を残し、暗闇の中へ消え去っていった。
◇◆◇◆◇
「ブラックバード!」
お!この声は!
「クレッシェンド・アックス!」
近場に居たゴーレム達が次々と打ち倒されていく。
どうやら、間に合ったみたいだな。
「兎丸さん!それから砕城さんまで!」
俺達の直ぐ側へ着地する、恋々さん。その隣には雷先輩もいる。
「遅いですよ」
「ごめんごめん!道中慣れなくてさぁ」
「ここは某達に任せるといい!」
よし、面子は揃った・・・。
ここを打破する方法は、あれしかない!!
「いや、四人でやりましょう。一つだけ思い付いた事があります」
「おっ!なんだい、真琴君!」
「三人で時間稼いで貰えますか?あとは俺がなんとかします」
「了解だよ!」「頼んだぞ!」
「恋々さん!うたさん達は?」
「あと数分ってとこだと思うよ!」
なら、丁度ってとこくらいだな・・・。
「了解です!」
二人はすぐさま、ゴーレム達の相手に向かった。
「真琴、ボディーガードが必要かい?」
「いや、心配いらねぇよ。こんな苦難どうってことねぇ、やるぞ!」
「ああ!」
今度は一輝がゴーレムへ突撃を開始した。
俺は技の体勢へ・・・。
ゴーレムを操作しているということは目には見えない、魔力の糸が存在する。それを打ち払うには。
まずは自分自身の気をありったけ右の手刀へ集める・・・。
そして、左の鞘には電気を精製する。
俺自身の細胞から筋組織、そこから小刻みに動かし電気を編んでゆく・・・。
大きな積乱雲が雷を作るイメージで・・・。
左の手首から右手の手刀へ、電気を送る。ゆっくりゆっくり。慎重に。
そうだ。ゆっくりと!
細胞から筋組織を動かし、その摩擦を静電気を精製、電気に変換!
何度も!何度も!何度も!筋組織を動かす!!
焦るな・・・。焦るな!
ゴーレム共は一輝達がなんとかしてくれる。
技に集中しろ!
刀華との修業を思い出せ!
焦ったら全てが水の泡だ!
手刀の身体法はそのまま抜刀。
この方法じゃないと俺が出せない。
ッ!
「真琴!❮第四秘剣―雷光❯!」
無防備だった俺の目の前に三体のゴーレムが押し寄せていた。
躱すことも出来たが、その前に一輝が片付けたようだった。
「大丈夫かい?」
頷きで返す。
今の俺に言葉を発する余裕はない・・・。
「なら、僕がステラと君を守る。真琴には借りが出来たからね、今それを返すよ」
借り?
ああ、師匠のことか?
そんな事、いいのに・・・。
俺が借りを作ってるみたいなもんなんだけどな・・・。
よし・・・もう少しだ・・・。
あと少しで・・・。
「苦戦してるようだねぇ、真琴君」
あっ!うた・・・。
「ああ!いいよ~喋らなくてー。伐刀絶技が疎かになったらまずいからねぇ。もうそろそろ来るから」
そっか、もうそんなに経ったのか。
バチバチ、ビリリッ。
俺の周囲に電磁が迸る。
主に手首周りに、電気が歩き始めている。
「皆、遅れてごめんなさい」
ここで、誰もが聴いたことのある聞き馴染みの声が木霊する。
「刀華!」「会長!」「待ちくたびれたでござるよ!」
「あ、貴女が、❮雷切❯東堂刀華!」
「はい。自己紹介もしときたいですけど、今はそれどころじゃないのでまた今度」
「は、はい」
「まこ君、いける?」
「も、勿論!行けますよ」
「なら、一緒に行こう?」
「はい」
その声と共に俺は駆け出した。
「・・・鳴神」
キシャーーーン!
豪雷が森林内で轟き、刀華の手から一本の鞘と一刀が現れる。
一昔前に、一本の刀が雷を斬ったという伝説が知れ渡った。それを成したのが❮雷切❯と呼ばれる刀だそう。
一昔前といっても戦国時代、もしかするとそれより前かも知れないが・・・。ともあれ、そんな都市伝説がここ、日本には存在する。
その名に恥じない強さをこの騎士は持っている。
刀華さんが俺の道を作ってくれてる。
俺が集中し易いように・・・。
なら、俺がやるべきことは。
俺の技を彼奴に、何がなんでも浴びせること!!!
やるっきゃない!いや・・・やるんだ!
次第にゴーレム達が元の姿へ戻っていく。
周囲の残岩をかき集めながら、巨大なゴーレムへ進化していく。
雪ダルマを作るときみたいに徐々に、徐々に大きくなっていく!!
ゆっくりと刀華さんの呼吸に合わせてゆく。
一歩、一歩、着実に。
相手までもう数メートルの距離だ。
もう、技を叩き込める!!
俺達が到着と同時に、一挙が振り下ろされる。
「ハァ―――」
「近衛流・手刀電磁抜刀術・・・」
「・・・❮雷切❯!」
「❮雷刀無斬❯!!」
ゴロゴロッ!
周囲の人間を包み込む光と共に、
二人の伐刀者から放たれた雷撃によって、痕跡を残すことなく、蒸発していった。
いかがでしたか?
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次回更新予定日は2月17日~18日の17時00分~21時00分とさせていただきます!