史上最強の武術家の弟子伐刀者マコト   作:紅河

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追記、2月28日 一部の描写変更


BATTLE.53 とある合宿

 第三訓練場。そこに真琴と刀華の姿があった。

 どうやら、技の修業をしているようだ。

 

 

「ハァハァ・・・やはりこの技は魔力の消費がでかいな・・・」

 

 

 技の反動に耐えきれず、膝をついてしまう真琴。

 真琴の魔力はDほどしかない。伐刀者としては低い数値。普段の戦闘でも魔力は使わず、己の体力のみで戦っている。これでも充分過ぎるほどなのだ。

 魔力を用いることは滅多にない。が、真琴は伐刀者。これは一生変わらない。だからこそ、伐刀絶技の鍛練も行うのだ。

 

「戦闘では使えない?」

 

「普段の仕合だと無理だろうな・・・」

 

 真琴が立ち上がり・・・。

 

「第一に、技の隙がでかすぎる。魔力制御が上昇すれば話は変わってくるだろうが・・・」

 

「訓練のみ、だね」

 

 飲み物を手渡す刀華。

 

「そうだな」

 

 受け取る真琴だったが、ふと携帯が鳴る。

 

「ん?メール?誰から?」

 

 真琴が目をやると・・・

 

「理事長からみたいだな」

 

「黒乃理事長から?」

 

「ああ。合宿についてらしいが・・・」

 

「もしかして、あの事かな?」

 

 顎に手を当てながら、そう話す刀華。

 

「生徒会の仕事の手伝い、か?」

 

「かもしれないね」 

 

「とりあえず、今から行ってくる」

 

「うん、いってらっしゃい」

 

 ――――――――― 

 

 直ぐ様、理事長室へ向かう。

 トントンっとノックする真琴。

 

「近衛真琴です」

 

「いいぞ。入れ」

 

「失礼します」

 

 ガチャリ・・・。

 キィィィ・・・という木製の歯軋り音が静かな廊下に響く。

 

「あれ?真琴?」

 

「え?」  

 

 そこには見知った人物達、黒鉄一輝とステラ・ヴァーミリオンが居た。

 

「一輝?ステラも?」

 

「・・・それでは、話を始めるぞ。    

 

 

 

     という事だ。いい機会だこの休みに合宿で心を休めてくるといい」

 

「ええ!?折角、一輝との二人旅行がぁ・・・」

 

 まるで頭に岩石が落ちたような、分かりやすい落ち込みをするステラ。

 

「まぁ、そのなんだ・・・。なんかわりぃな」

 

「ううぅ・・・」

 

「落ち込みすぎだよ、ステラ・・・」

 

「だってぇ・・・イッキと同時にメールが来て、初二人旅だと思ってたんだもの・・・」

 

 

 ―――――――――

 

 

 そのまま時は過ぎ、合宿当日となった。合宿場までバスで向かうことになる。

 相変わらず、ステラは一輝との二人旅じゃないことに落ち込んでいる模様だ。

 

 一輝達は後部座席に座り、窓際にステラ、その横に一輝、真琴の順で並んだいる。

 

「いつまで、そうやって落ち込んでるつもりだよ」

  

「ハアアアアアァァァ・・・・」 

 

「そうだよ、ステラ。外を見てみなよ、そんな気持ち吹っ飛ぶよ?」

 

「・・・え?」 

 

 そのバスから一つの滝が顔を出していた。滝はまるで生物のような、そんな表情をステラ達に見せてくれた。

 

「綺麗ね・・・」

 

「でしょ?」

 

「イッキ、ゴメンね。気を遣わせちゃって・・・」

 

「ううん。遠出することなんてなかったんだし、目一杯羽休めでもしようよ」

 

「そうだぜ?代表戦で連戦してる俺達にとっての、一時の癒しにしねぇとな」

 

「休みって一週間だよね?」

 

「ええ、そのハズ。ねぇイッキ、私あの滝を間近で見たいわ」

 

「うん、いいよ」

 

「マコトはついて来なくていいからね!」

 

「言われなくたって分かってるよ」

 

 三人は今後の予定を立てつつも、バスは着々と目的地へその足を進めていたのだった。

  

 とあるバス停で降りると、住所を頼りに合宿場へと歩を進める真琴と一輝とステラの三人。

 ステラが一輝の腕を組み、目からラブラブオーラ溢れ出ていた、が、二人の足は止まらずまっすぐと歩みを続ける。

 すると、その三人を呼ぶ声が耳へ入ってきた。

 

 

「おーーい!こっちだよーー!」

 

「うん?あれって・・・兎丸さん?」

 

「なんか、他の人達も見えるけど」

 

「あぁ・・・やっぱこういう事だったかぁ」

 

「こういうことって?」

 

「ん?理事長に俺らはまんまと騙されたってことだよ」

 

「「ええええ!?」」

 

 二人のひとまわり大きな声が響き渡った。

 

 

 ―――――――――

 

 

 生徒会の面々からはこう、説明された。

 一ヶ月後、ここで代表メンバーが本戦に向けて合宿が行われる。その為の掃除ということ。毎度生徒会は掃除を任されているのだが、人員が足りないためこの三人が呼ばれたとのことだ。

 

「それじゃ、生徒会長の東堂さんも?」

 

「そうだよぉ~」

 

「会長は所用で遅れてくるそうですわ」

 

 どうやら、生徒会全員、この場所にいるという訳ではないらしい。

 生徒会長である東堂刀華がまだ到着していないようだ。

 

「毎度のことですね」

 

「ふふっそうですわね。真琴さん」

 

「名前呼びだなんて、真琴、もしかして何度かこういう手伝いしてたの?」

 

「まぁな。刀華さんの調整を手伝っている時にたまぁにな」

 

 真琴がモップで床を拭きながら受け答えしている。

 刀華の調整がてら何度か生徒会室に呼ばれたりして、そこで生徒会の面々とは会っていた真琴。

 

 兎丸が自身の能力を使用しながら、雑巾掛けをしている。それを見ていたステラが不意にこんな質問を投げてきた。

 

「ねぇ、真琴の伐刀絶技って何なの?」

 

「あれ?ステラには話してなかったっけか?」

 

「そうよ!真琴の能力は知ってるけど伐刀絶技自体は知らないわ!」

 

 その質問で真琴が思い返すと、そう言えば言ってないという事実が浮かんで来た。

 

「いい機会だ。教えてあげなよ」

 

「と言っても俺のは口では説明しづらいですよ?」

 

「そうだねぇ・・・あ!そうだ!真琴君、何処か怪我してない?」

 

「怪我?ああ、そういうことですか」

 

「うん!」

 

 何か思い付いたような表情を見せる、真琴と泡沫。二人のやることを察したのか徐にカナタが鉄製の安全ピンを真琴へ手渡した。

 

「カナタさん、有難うございます」

 

「いえ、たまたまあっただけですわ」

 

「んじゃ今から見せるから、よぉく見とけよ」

 

「え、ええ分かったわ」

 

「うたさんも宜しくお願い」

 

「りょ~かい!」

 

 何を始めるかと思えば、安全ピンの先を自らの人差し指へ突き刺した。

 案の定、指先からは血がプツッとその赤い顔を出した。

 

 すると、泡沫が自身の能力である因果干渉系❮絶対的不確定(ブラックボックス)❯を発動する。

 

 真琴が目を瞑り、直立になっている。真琴の体の中で真っ白い空間が広がり、一つの世界が生まれる。しかし、その世界は何もない。ただ、ただ、真っ白い空間だった。そこにポツンと真琴が立っている。

 

 しかし、何も起きることはなく血は止まらない。

 

「ん?何も起きてないわよ?ちゃんと発動してるの?」

 

「やってるよ」

 

「これくらいでいいでしょ、真琴君、僕疲れたよ」

 

「ありがとうございます、うたさん」

 

「どういうことよ?」

 

「俺の伐刀絶技は因果無効化(ワールドキャンセラー)、ありとあらゆる因果干渉系の無効化だ」

 

「む、無効化!?」

 

 ステラの目が大きく見開く。

 

「だから破軍学園で唯一、因果干渉系を有している僕が必要だったんだ」

 

「因果干渉系が珍しいのは知ってるけど、まさかそれを無効化する伐刀絶技とはね」

 

「役に立つ場面が少ないのが欠点だかな」

 

「他には何かないの?」

 

「“今は”ないな」

 

「そうなのね」

 

「あっても、教えんよ」

 

「なんでよ!」

 

 その返しにほんのちょっとの怒りを見せるステラ。

 

「仕合で戦うかも知れない相手に、わざわざ教えんさ」

 

「ふん!まぁいいわ。もし仕合で戦うときは容赦しないから」

 

 

 時は過ぎ、掃除も一通り済んだころ。ステラと一輝が滝を見たいといって山の方へ向かった。生徒会の面々と真琴は合宿場で寛いでいる。刀華を待ちながら・・・。

 ただ、天気がだんだん怪しくなってきた。合宿に到着した時は、快晴といっても差し支えなかったというのに・・・。まるでこれから悪いことでも起きるようなそんな感じさえしてくる。そんな天気だった。




いかがでしたか?楽しんで頂けたでしょうか?

次回更新予定日は1月31日~2月1日の17時00分~21時00分とさせていただきます。

ということで漸く本筋のストーリーに戻ります。皆様、宜しくお願い致します!

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