一応、原作通りのストーリーですが、真琴の過去話がメインとなります!
それから真琴の対戦相手が決まり、原作には出ないオリジナルの生徒が出ますのでご了承下さい!
それではどうぞ、お楽しみ下さい。
「にしても、でっけぇ~市民プールだなぁ」
「そうだね、でも、大人数で律する感覚を訓練する為には、このくらい広い所じゃないと」
「そうだよなぁ、学園のプールは借りれなかったしな、仕方ないか」
「でも、近衛先輩、己を律する感覚って何ですか?」
「やれば分かるさ、それより早く受付済ませてプールに集合だ」
「?分かりました」
休日を利用し、真琴達は市民プールに訓練しにやって来ていた。真琴達に教えを受けてたい生徒達は男女を含め、計30人程にまで増えていた。その為、一つの訓練をするのに場所をとってしまうのだ。しかし、各々の都合もあってか、参加した人数は18人程だった。
全員が水着に着替え、プールサイドに集まり談笑しながら真琴達を待っていた。真琴と一輝以外の男子達の目はステラや珠雫、加々美達の水着姿に釘付けだった。
「へぇー日本のプールってこんなところなのね」
「やっぱり異国のお姫様は世間を知りませんねぇ!」
珠雫が煽るようにステラに物申している。
そして、いつもの様ににらみ合いが始まった。
「やめなさいよ、皆が見てるわよ」
それを宥めるアリスもいつもの光景だ。それが終わると真琴達が姿を現した。
「わりぃな、待たせたか?」
「いえ、そんなことは!」
「それじゃ始めようか」
「全員、プールに入ってくれ」
真琴が全員に指示を出し、一輝がこれから行う鍛練方法を説明する。
「これから皆にやってもらうのは、己を律する訓練だ。身体の力を抜いて水中に漂ってもらうよ」
「この訓練は肺活量を鍛えるって事もあるが、一輝が言った様に己を律する事が目的だ」
「己を律する訓練?それは何なんですか?」
「説明してもよく分からないと思うけど、やってみれば分かるよ。水中では自分自身をとても近くに感じられる、潜ったら自分の内側にだけ向けてみて。そして自分自身の音を聞いてほしい」
「(この訓練は自分自身の気を認識する為でもある、それに気付けば騎士として、一つ前に進む事が出来るだろう。一輝の❮一刀修羅❯はこの感覚を研ぎ澄ましたものだからな。俺は師匠が手解きをしてくれたから、自分自身の静の気を修める事が出来たが、師にもつかず一人でここに至るとは・・・一輝の器用さには驚かされるな)」
生徒達は真琴達が言っている事を理解出来ずにいたが、取り合えず言われた通りに潜ってみる事にした。各々が水中に潜り始めると真琴や一輝がアドバイスをしたり、サポートをしてくれていた。
そんな様子をステラが遠くから見つめている。ステラは訓練には参加していなかったのだ。参加しないのには理由がある。それは、ステラには“自分を超える存在で居て欲しい“ “最適化されているステラの体術に僕が教える事が少ない”と一輝に部屋で説得をされたからだった。だから一人、退屈そうに時間を過ごしていたのだった。
「私にも少しは構えばいいのに・・・」
ステラが愚痴を溢しながらプールに足を浸からせている。それから少し時間が経ち、真琴は一輝に任せて、テーブルで休憩していた。
「ふぅ・・・(ま、参加した生徒達が全員弟子級、武術初心者で助かったな)」
「真琴、お疲れ様」「お疲れ様です」
「ん?珠雫とアリスか、お疲れ。お前達は良いのか?参加しなくて」
「ええ、少し身体が冷えてきたから休憩を挟もうと思ってね」
「成る程、身体を休めるのも大事だからな」
「真琴さんもこの訓練を道場でやってたんですか?」
「いや、道場ではやってねぇな。確か己を律する訓練をやったのは山籠りでだったかな」
「山籠り!?」「ワルイドねぇ・・・」
珠雫とアリスが山籠りと聞いて、驚きの声をあげる。
「ああ、前に見せた制空圏の修行と共にな」
「あの制空圏って技には驚きました」
「魔力を使ったわけじゃないのに、バリアをはっていたなんてね」
「そういう技だからな(しかもこの技にはまだ“先がある”とはいえんな)」
「そのどんな修行内容だったんですか?というか山籠りって基本的には何をするんです?」
「修行内容は言えねぇけど、山籠りではまず生き残る事を最優先で考える、修行は二の次だ」
「へぇ・・・」
「それじゃ、修行しに来た意味が無いんじゃ?」
「・・・山籠りじゃ、食べ物は全て自給自足だし、住居なんかも自分で作らないといけないから大変だぞ?」
「食べ物は持っていかないのね」
「自分で・・・」
「ああ、それじゃ修行にならないだろう。それに危険な熊も出没するしな、自分の身は自分で守らないといけない」
「じゃあ何故、武術家達は危険な山籠りなんかをするんでしょうか?」
「それはな、新鮮な空気を吸えば傷の治りが早くなるし、それから高い集中力が得られるからだな。多くの武術家が山籠りを好むのはそういった効能の為なんだよ」
「山籠りにそんな意味があったなんて・・・」
珠雫は驚嘆しつつ、真琴の話を聞いていた。
そして、今まで気になっていた事を口にする。
「あ、そうだ、前から聞きたかったんですけど、真琴さんってどうして武術を始めたんですか?真琴さんって全然自分の事を話してくれませんよね」
「そういや、話してなかったな」
「真琴が梁山泊に弟子入りした経緯とか、そこら辺を聞きたいわ」
「仕方ねぇ、他の奴等には話すなよ?」
「分かりました」「任せて」
真琴の顔が次第に真面目な顔付きに変わっていく。いつもと違う表情を見た二人は口を閉じて、真琴が話すのをじっと待っていた。そして覚悟を決めたのか、真琴がその重い口を開いた。
「んじゃ話すぞ・・・。8年前、梁山泊に弟子入りする前に俺は、8歳の頃に両親を亡くしている」
「えっ・・・」「!?」
二人にとって驚愕の事実だった。そんな二人とは裏腹に尚も真琴は話を続ける。
「とある“事件”で、俺の両親は殺されたんだ」
「あっ・・・」
「・・・すみません」
珠雫は罪悪感から真琴に謝ってしまった。
「・・・別にいいさ、お前達には話してもいいなって思ったから話したんだし、続けても良いか?」
「・・・はい」
「真琴、辛かったら言わなくても良いのよ?」
「構わない、二人が聞きたいってんなら話すさ。でなその現場には俺も居てな、この顔の傷はその時の記念品だ・・・。両親が俺を犯人の攻撃から身を呈して守ってくれたお蔭で、今こうしてお前達と過ごせているんだ」
「・・・それでその犯人は捕まったんですか?」
「いや、捕まってない。どうやら大きな犯罪組織らしくてなニュースにはならなかった、親族と一部の人間しか知らない」
「真琴はその犯人に復讐したいとは思わなかったの?」
アリスはいつになく真剣な表情をしている。その発言は少し重く感じた。
「・・・ないといえば嘘になるが、だが復讐したところでなんになる・・・。俺の父さんと母さんは犯人を殺したって帰っては来ない、俺が新たな殺人者となるだけだ」
「・・・真琴は大人なのね」
「ではその時に伐刀者として覚醒を?」
「いや、俺は生まれながらの伐刀者だ」
「え?誰か血縁関係者が伐刀者だったんですか?」
「ああ、俺の父が伐刀者だ」
「真琴さんのお父さんが?」
「名前は“近衛真一”虹色の騎士«レインボーバトラー»名の知れた伐刀者だ」
「(まさかあの“近衛真一”!?)」
「ん?どうかしたのか?アリス」
「・・・何でもないわ」
「(もしかしてアリス、父さんの事を?梁山泊の事も知ってたみたいだし、アリスも“こっち側”なのか?)」
「確か、虹色の騎士«レインボーバトラー»って黒乃理事長や夜叉姫と同級生だった?」
「よく知ってんな」
「私は黒鉄家です、高ランクの伐刀者の情報なら入ってきますよ」
「・・・近衛さんの有名な能力は“何でも好きな能力を創る事が出来る”だったかしら?」
「ああ、けど創れるっていってもその能力を得意とする伐刀者には劣るがな・・・」
「それでも強い事には変わりないですよ、何でも創れるんですから・・・」
「それじゃ真琴の能力も?」
「そうだ、父さんと同じさ。だから俺の固有霊装は『玉鋼』って言うのさ」
「その名前とどんな関係が?」
「これは、手甲やすね当てを創る時に必要な鉄の材質の名前から来ている」
「鉄の材質?」
「ああ、その最も最高に純粋な鉄の事を『玉鋼』呼ぶのさ」
「同じ創る繋がりで玉鋼なのね」
「ああ。父さんは多くの伐刀絶技を持ってる事でも有名だった。俺も父さんが編み出した技を受け継いでいるが、魔力量が足りなくて今はたった一つしか使えない」
「一つ?真琴さんにも伐刀絶技があったんですね。使わないから無いのかと思ってました」
「それには理由があるのさ」
「理由?」
二人が疑問を浮かべる。
「ああ、伐刀絶技は因果無効化«ワールドキャンセラー»有りとあらゆる因果関係の無効化っていう技さ。限定的な技だから使えないんだよ。これは父さんと母さんが、戦うための武器が必要だろうと俺に残してくれたんだ・・・。母さんからは空手を、そして父さんからこの伐刀絶技を受け継いだんだ」
「「・・・・」」
それを聞いた二人は言葉を失った。限定的とはいえ、その技は能力の無効化なのだ、弱いわけがない。
真琴の夢は父と約束した日本一の伐刀者になること。その事を珠雫とアリスは真琴から聞かされていた。真琴の両親は真琴の伐刀者として、戦う未来を見越して、育てていたのだ。それは両親の真琴への愛情があってこそ成り立つものだった。その両親のとてつもない真琴への愛情を知った二人は言葉を失っていたのだ。
「貴方の両親は偉大な人なのね・・・子供の為に命まで棄てて貴方の未来を護ったんだから」
「ええ、親の鑑ですね・・・(あの人もこれくらいしてくれれば・・・お兄様も・・・)」
珠雫は自分の父親の事を考えていた。父親ですら一輝の事を居ないものとして扱っている。父としてあるまじき失態だろう。真琴の父の様に振る舞って欲しいものだと、考えていたのだ。
「真琴さんの両親は分かりましたが、父方と母方は?両親が亡くなったら普通、どちらかの家に行くのでは?前に道場で育ってきたって仰ってましたが・・・まさか!」
「珠雫の察しの通りさ、父方と母方は俺を引き取るのを拒否したんだ。伐刀者の俺を化物だと罵り、厄災の子供として忌み嫌いながらな」
「・・・酷い」
「人のやる事じゃないわね・・・」
「大事な我が子を殺した様なもんだからな、それに元々両親の結婚に納得してなかったみてぇだし、伐刀者の事も嫌ってた」
一般人から見れば伐刀者という存在は、異能を使う化物だ。嫌われても当然だろう・・・。
「だからって実の孫なのよ?少しは動くべきじゃないの?」
「ま、でもそいつらが俺を拒否ってくれたから梁山泊の家族と会えたんだ、今となっては感謝してるがな」
「真琴さんは強いですね・・・」
「そんな事は無いさ・・・」
「でもどうやって梁山泊に?前から知ってたの?」
「いや、それは母さんの親友に紹介されたんだよ。俺は小学校の頃、父さん達の事件を同級生に誤解されて苛めを受けてた。それを母さんの親友の那緒さんにその事を相談したら、梁山泊を紹介されて弟子入りを果たしたのさ」
「真琴さんが苛めを受けていただなんて、あんまり想像できませんけど」
「だろうな、でも俺は元々クラスで浮いた存在だったんだよ。勉強や運動神経、一通り出来たからな、だからいじめたんだろうぜ」
「苛めは生物が一定量集まった時、優劣をつけて自分の立場を確立させる為に起きる現象の一つだものね」
「その通り」
「真琴が浮いた存在だったなら、起きても不思議じゃないわ」
珠雫が真琴に質問をながかけた。
「その、那緒さんとは何処で?」
「ん?那緒さんとはたまに実家で会ってたりしてた、親切なお姉さんだったかな。父さんと母さんの葬式にも出席してた。その那緒さんとの思い出のエピソードが葬式であってな」
「葬式で?」
「ああ、父さんと母さんの葬式では、俺の身柄を何処に預けるかで父方と母方は揉めてた、双方いがみ合いつつ、時々俺の悪口も挟みながら。んでその光景を見かねた那緒さんが『真琴の事を真剣に考えられない様だったら、いい加減やめなさい!美琴や真一の目の前でこれ以上の醜態をさらさないで!真琴は私の方で何とかします、貴方達はもう引っ込んでなさい!』ってな事があってよ」
「格好いいわね、その人」
「俺の憧れの人さ、そして俺は貴徳原財閥の養護施設へ預けられたんだ」
「施設出身だったんですね」
「まぁな、それから苛めの事情と施設に預けられた訳を師匠達に話して、梁山泊の師匠達が俺を施設から引き取り、そのまま俺は弟子入りして道場に住む事になって、そこで武術を学び、今に至るというわけだ」
一通りの話を聞いた珠雫が一言口にする。
「・・・・壮絶な人生ですね」
「真琴、辛いときはいつでも私達を頼るのよ?」
「ああ、そうさせてもらうさ」
「(真琴は本当に強いはね・・・身体や騎士としてもだけど、何より“心”が強い。私にはなかった“心”の強さを持ってる)」
アリスは真琴の事を感心しつつ、昔の自分を重ねていた。自分には無かったものが真琴に有ることを、羨ましく思いながら・・・。
「暗い長話に二人を付き合わせちまったな、帰りに何か奢ってやるよ」
「良いですよ、奢らなくて。私達から聞きたかったんですし」
「いいんだよ、奢らせてくれ・・・せめてものお礼だ」
「分かりました、んじゃ今度美味しいスイーツでも奢ってください」
「良いわね、うんと高いところにしましょ?」
「おい、高いのはやめろ!財布が死ぬから!」
「冗談よ、ウフフ」
「冗談に聞こえないぜ・・・」
一方その頃、一輝達はというと・・・。
大事な話をするといいつつ、噴水の中で痴話喧嘩を行い、終いにはキスをしていたのだった。だが、これを知るものは今のところはいない。その後、一輝とステラがより一層バカップルに近付いたのはいうまでもないだろう。
そして時間が過ぎ、帰る時間が迫ってきていた。各々が着替えを済ませ、バスに乗り込み破軍学園へと帰宅途中の事だった。すると一斉に真琴と一輝とステラの生徒手帳の通知着信が鳴り、次の選抜戦の対戦相手を知らせるメールが届いたのだ。
「黒鉄一輝様
代表選抜戦第六仕合 破軍学園生徒会庶務 位階序列3位
兎丸 恋々様に決定致しました」
「ステラ・ヴァーミリオン様
代表選抜戦第六仕合 破軍学園生徒会書記 位階序列4位
砕城 雷様に決定致しました」
「近衛真琴様
代表選抜戦第六仕合 破軍学園3年2組 位階序列10位
剛鐵寺 心陽様に決定致しました」
「生徒会役員!?」
「へぇ一輝達の相手は恋々さんと雷先輩か、面白そうだな」
「強いの?というかやっぱり知ってるのね」
「そりゃな、生徒会に遊びに行くこともあったからな。けど強さは俺が教えちゃつまらんだろ、自分の目で確かめな」
「真琴の相手は誰なの?」
「俺か?俺は剛鐵寺心陽さん?みたいだな」
「女性なのか男性なのか分からない名前ね・・・」
「確かその人、鋼鉄人«メタルマン»の二つ名で知られてる伐刀者だよ」
「んじゃ男なのか、まぁ、男だろうと女だろうといつも通りに叩きのめすだけだぜ!」
真琴は仕合の決意を固め、プールに参加した全員を乗せるバスの足は、着々と破軍学園へ進んで行ったのだった。
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