史上最強の武術家の弟子伐刀者マコト   作:紅河

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こんにちは、紅河です!

真琴の初戦は次回とお伝えしていましたが、次々回になるかもです。申し訳ありません!

ではBATTLE.17お楽しみ下さい!


BATTLE.17 落第騎士«ワーストワン»VS«狩人» その2

 西京寧々と月夜見半月が実況解説席に座り、仕合の様子を観戦していた。解説を任されている西京寧々は、現役のKOK選手であり、現世界ランキング3位という超一流の騎士である。

 そんな彼女が観戦していて、一つ気付いた事がある。それは一輝が”桐原静矢“という人間に対して、摸倣剣技«ブレイドスティール»を行っている事だった!一輝の❮摸倣剣技❯とは相手の剣技を暴き出す、一輝だけの剣術。その技を応用し、“桐原静矢”に使用していると言う事は、桐原の思考の把握に他ならない。そしてそれに気付いているのは西京と真琴のみだ。

 

「アッハハ!マジっすか!本当にやりやがったよ、アイツ!アッハハ!!」

 

 寧々が突然笑いだした。

 

「ど、どういう事ですか、西京先生!?どうして黒鉄選手は桐原選手を!?」

「摸倣剣技«ブレイドスティール»、黒坊は相手の剣技の理を暴き出す事が出来るのさ、つまり・・・」

 

 

「つまり、一輝は摸倣剣技を応用し、桐原の思考を完全に掌握したんだ。名付けるなら、完全掌握«パーフェクトビジョン»!一輝にもう狩人の森«エリアインビジブル»は効かない、既に観えているからな!」

「・・っそれじゃあ!」

「あぁ、一輝の勝ちだ!(武術家にとって相手の行動を把握する事は何よりも重要だ、そしてあの技は長老の“流水制空圏”とほぼ同格の技と言って良いだろうな・・・あの技を使用したら、この破軍にいる伐刀者じゃ、もう一輝に太刀打ち出来ない。限られた伐刀者でなければ!それほどの技だ、あの完璧把握«パーフェクトビジョン»は!・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、イカサマだーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 それを聞いていた桐原は困惑し動揺した。だが桐原は攻撃を続ける。それは桐原が諦めていない証拠だろう。自分は一握りの“天才”なのだ!凡人に負けるわけがない!桐原はそう確信している。凡人は天才になすすべなく、敗北するのが当たり前だと・・・!だがそんな事はあり得ない。

 何故なら勝利を勝ち取るのは強力な❰信念❱を持つ、一部の騎士だけなのだ!そして完全に思考を把握した一輝の前に、桐原の攻撃は掠りもしないのだった。

 

「“行くよ”桐原君・・・僕の最弱を以て君の最強を掴まえる!」

 

 一輝は観えている桐原を見据えて、突撃を仕掛けた!桐原も負けじと矢を発射する!自身の最大攻撃、驟雨烈光閃(ミリオンレイン)を放ち、一輝を迎え撃った!

 その刹那--一輝は陰鉄で矢を打ち落とす!そして矢の雨を掻い潜りながら、そのまま前へ進んでいった。

 

「やめろ!来るな!やめてくれええええ!!」

 

 やめろと言いながら、桐原は攻撃を止めない。諦めたくない!自身の“無傷”で激戦を渡り合って来たのに、こんな凡人に負けてしまっては、自分の面子がつぶれてしまう!それだけは避けねばならない!一輝から逃げながらも桐原は攻撃を続けた。そして・・・。

 

「わ、悪かったよ、君を馬鹿にしてさ・・・謝るよ!君の親友を貶したのも謝る!だから、その刃物で攻撃しないでくれ!当たったら痛いだろう、なっ!?」

 

 惨め。

 これほどこの言葉が似合う人間もいないだろう。しかし桐原の抵抗は続く。

 一輝は飛んでくる矢を掴みとり、それを向かってくる矢の雨に投げて攻撃を凌ぐ。

 

「そうだ!ジャンケンで決めよう!」

 

 桐原は何を思ったのか、そんな戯れ言を言い放った。しかしそれが通る訳もなく、一輝は桐原に向かってくる!それを見た桐原は怖じ気ずき、尻餅をつく。それを見ていた真琴が一言溢す。

 

「あーなっちまえばもう、終わりだな・・・」

 

「えぇ、いい気味だわ!人の努力を嗤った報いよ」

「そうだな、桐原も努力は!してたんだろうが、足らなかったな・・・。一輝は強者に立ち向かう為に、千の努力を!それが足りないなら、万の努力を!そうやってずっと鍛練に励んで来たんだ!己の才能に溺れた奴に、一輝が負けるわけない!」

 

 

「なぁ黒鉄君!僕達、友達だ、ろ?そんな刃物で斬られたら死んじゃう!死んじゃうからぁ!」

 

 一輝は止まらない。

 

「わ、分かった!もう僕の敗けで良い!敗けでいいからぁー!痛いのは、嫌だあああああああ!!!」

 

 その情けない悲鳴は会場全体に響き渡った。ズトォン!と、一輝が桐原の場所目掛けて、斬撃を落とす。その斬撃はそのまま桐原の鼻先を掠りながら落ちていく。桐原が降参していた為、攻撃を反らしたのだ。

 

「少し予測とずれたか、僕もまだまだだ・・・」

 

 一輝は染々感じている。そして自分に向かって来た攻撃を目の当たりした桐原は、耐えきれず気絶してしまった。

 桐原が気絶した所でアナウンスが鳴り響く。 

 

「桐原静矢、戦闘不能 勝者、黒鉄一輝」

 

「し、仕合終了ーーーー!!なんと!黒鉄選手が、去年授業にすら出る事が出来なかった黒鉄選手が!«狩人»桐原静矢選手を下して、なんと勝利を勝ち取りましたーー!!こんな事があるでしょうか!?今年の選抜戦は一回戦目から目が離せなくなりました!!選抜戦一回戦の対決は落第騎士«ワーストワン»黒鉄一輝選手の勝利です!!!」

 

 

 

 

 その実況を聞きつつ、一輝は励ました真琴達を見つめている。その一輝の目線はなんとなく、ステラに向けている様に感じた。 

 

 

 

(へっステラだけを見つめやがって、俺も居るっつの・・・でも、やったな、一輝!)

 

 落第騎士«ワーストワン»VS«狩人»桐原静矢の対決は一輝の勝利で終わった。会場中一部の人間以外は桐原の勝利を確信していただろう。それゆえに“落ちこぼれ”の勝利という事実を受け止める事が出来ずにいた。何故なら自分達より数段劣っている人間が、猛者の桐原を打ち倒したのだ!落胆する一方だった。

 

「う、嘘よ・・狩人が負けたなんて・・・」「何かの間違いだよ、こんなの」「俺は認めないぞ!」

 

(他の伐刀者の奴等、何かほざいてるな・・・そうやって人を見下す事しかしてないから、騎士として前へ進めないんだ。それを止めない限り、成長出来るわけないだろうに・・・分かってねぇなぁ)

 

 そして一輝はステラとアイコンタクトとるとそのまま倒れた。それもその筈だ、一輝は桐原との対戦で内蔵破裂を起こし、全身傷だらけで本来ならば立つ事すらやっとなのだから。気絶して同然だった。

 

「早く、黒鉄選手をiPS再生槽(アイピーエスカプセル)に!」

 

 iPS再生槽(アイピーエスカプセル)とは一般には普及していないが、高級設備の事である。四肢の切断や臓器の喪失程度であれば、凄まじい速度で回復出来る設備である。

 伐刀者はその責務ゆえに、気軽に利用する事が出来るのだ。一輝はそのまま病室へと運ばれ一命をとりとめた。

 

 こうして落第騎士«ワーストワン»VS«狩人»桐原静矢の対決は一輝の勝利で幕を閉じた。




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