史上最強の武術家の弟子伐刀者マコト   作:紅河

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こんにちは、紅河です。


4000字オーバー、台詞が多いですがお付き合い下さると嬉しいです。
では宜しくお願い致します


BATTLE.12 珠雫の弱点

「「・・・はい」」

「もう遅いし、トイレ掃除は明日からで構わないから、学園全ての女子トイレの清掃、頼むぞ?」

 

「「分かりました・・・」」

 

「まぁ気を落とさず気楽にな!」

「マコトが言わないでよ・・・」「真琴さんが言わないで下さい・・・」

「アハハッ」

「「笑い事じゃない!」」

 

 

 そんな会話をしながら、第三訓練場を後にする五人。そのまま自分の自宅へ帰宅しようとした時、真琴は珠雫に声を掛けた。

 

「黒鉄妹、ちょっといいか?」

「・・・別に良いですけど、何か用ですか?」

「ドリンクでも奢ってやるからよ、少し付き合ってくれ」

「・・分かりました」

 

 

 

「それで、話って何ですか?」

「単刀直入に言う、お前、このままだと七星剣武祭で勝ち上がる事が出来ないぞ」

「!?どういう事です?私が弱いとでも言うのですか!?確かに貴方に敗戦を期してしまいましたが・・・!」

「いや、勘違いするな、学生伐刀者の中じゃ黒鉄妹は一二を争う手練れではあるだろう。話を聞けば破軍学園、入学者の中じゃロングレンジでお前に右に出る者はいないそうじゃないか」

「だったら!」

「だが、もし、対戦相手のロングレンジがお前より勝っていたらどうするんだ?」

「それは・・!」

「ロングレンジの魔法戦で互角に渡り合える伐刀者に当たったらお前どうするつもりなんだ?」

「・・・・っ」

「黒鉄妹、お前にはな、“致命的な弱点”があるんだよ」

「致命的な弱点?」

「あぁ、お前も気付いてるはずだ、俺との組手でな・・・」

「・・ハッ!クロスレンジ、ですか?・・・」

「そうだ、お前にはクロスレンジが無い!」

「クロスレンジが無い?言っている事が良く分からないのですが・・・。私は実家で小太刀を習っていますし・・」

「それは知ってる、観の目で観たからな。だがなお前のクロスレンジは練度が低く過ぎるんだよ」

「低い?」

「あぁ。学生の中では武術を学んでいる人間は少ないだろうからな、連中なら身体能力を身に付けるより自分の能力を鍛えるだろうし。そういう連中だったらお前の練度の低いクロスレンジでも通じるだろう、だが全国はそれほど甘くない」

「貴方に何が分かるんですか!?貴方は前回の七星剣武祭にも出場していないでしょう!?そんな偉そうな事言わないで下さい!話というのはこんな下らない事を言う為だったんですか?なら私は帰ります」

「話を最後まで聞け!ったく・・。お前が七星剣武祭で勝ち残る為には、クロスレンジに対するお前なりの答えを見付ける、これしかない」

「私なりの?」

「そうだ、今よりクロスレンジの練度を上げるでもよし、伐刀絶技を造るでもよし様々有るだろうからそれを見付けろ。そうすれば本選でも戦えるだろうぜ?後はお前次第だ、黒鉄妹」

「・・・一応、お礼を言っておきます、有難うございました。でも何故私にそこまでしてくれるんです?私にアドバイスするメリットを貴方に感じないんですが?」

「それはな破軍学園じゃ貴重な存在だからだよ、お前ほど魔力制御に通じる伐刀者は他にいない、破軍学園じゃ随一だ。それにお前は一輝の妹だしな、だから気になっちまったんだよ」

(・・・お兄様の)

「すまんな、時間が取っちまって、そんだけだからじゃあな!」

「・・はい、また明日(お兄様の妹だからですか、少し嬉しいですね・・・それに他人から褒められて嬉しいの何て初めて、少しお兄様が真琴さんを気に入る理由が分かった気がします)」

 

 

 

 そんな事を思いながら珠雫は自分の寮へ帰宅した。自分の事を褒めてくれた真琴を思いながら扉を開けて部屋に入ると一人の男性が座って待っていた。

 

「あら、随分遅かったのねぇ、待ちくたびれたわ」

「貴方は?男、性で良いのよね?」

「生物学上はね、心は乙女よ?それから私は有栖院凪、アリスって呼んで、宜しくね?私の事はお姉さんとして頼ってくれて良いからね?」

「ん、分かったわ、私は黒鉄珠雫、宜しくねアリス」 

「えぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 次の朝、真琴と一輝とステラの三人はランニングを終え、ベンチで休憩を取っていた。ステラはまだ真琴達のランニングに付いていく事は出来ていない。黒乃理事長は病室にてステラに話していた事がある。それは「ヴァーミリオン、この一年、黒鉄の背中を追い掛けてみろ」という事だった・・・。ステラはこの朝のランニングでその意味を少し理解出来た気がした。

 

 

「さて今日のランニングも終わりだね」

「ステラも良く付いてきてるな、やるじゃねぇか」

「はぁはぁ・・・・どんな・・・もんよ・・」

「まぁ、無理すんな、ほらお前のドリンクだ」

「ありがとう、マコト」

 

 ステラは渡されたドリンクを一気に飲み干した。

 

「ねぇ、イッキ、明日は土曜日よね?」

「うん、そうだねステラ」

「ってことは休みよね?」

「うん」

「(ステラの奴、もしかしてイッキとデートしたいのか?素直に言えば良いのによ、仕方無い手伝ってやるか・・・)」

「ステラ殿下?一輝とデートしたいならそう仰れば良いんじゃないですか?」

「で、で、デート!?」

「あれ?違うのか?」

「ち、違うわよ!」

「本当に~?」

「本当よ!」

「真琴もステラをからかわない!」

「だってステラをからかうの楽しくてな!」

「楽しむなっ!」

「アハハッ」

「笑うな!!」

 

 和気藹々と話をしているとふと一輝の生徒手帳が鳴り始めた。誰かからメールが来たようだ。

 

「ん?対戦相手が決まったの?」

「いや違うみたいだぞ?」

「“お兄様へ明日の土曜日、買い物に付き添っていただけませんか?”」

 

 それは珠雫から買い物に付き添って下さいというデートのお誘いだった。一輝と珠雫は血の繋がった実の兄妹であるが妹の珠雫は一輝の事を男性として愛している。ステラも一輝の事が気になっているのか、ただの買い物であっても止めたいと思うのだった。

 次の日、待ち合わせの時間に真琴、一輝、ステラ、珠雫、そして珠雫のルームメイトの有栖院凪が到着した。

 

「何故ステラ殿下がここに居るんですか・・・?」

「兄妹で糸を引くキスする妹と二人きりにさせてたまるもんですか!イッキに日本についてもっと知りたいって言ったら来ても良いって言ってくれたのよ」

「殿下は空気読んでいただけませんかねぇ?」

「まぁまぁ二人共落ち着いて、ね?」

「その辺にしとけっての、つかそっちの男性は誰だ?」

「一応、ね?でも心は乙女よ?私は有栖院凪、皆アリスって呼ぶわ」

「お、お、そうか、俺はステラ殿下が何かと不便だろうと理事長の命で、一輝とステラのサポートを任されている近衛真琴だ、宜しくなアリス」

「ええ、こちらこそ宜しくね、真琴」

「僕が黒鉄一輝、珠雫の兄だ。珠雫の事、宜しくねアリス」

「珠雫の事は妹が出来たみたいで嬉しいわ、一輝、こちらこそ宜しくね?それにしてもイケメンね、私も狙っちゃおうかしら?」

「え?」

「ぬーん・・・・」

「じょ、冗談よ珠雫!冗談だからそれしまって!」

「おい、黒鉄妹、また校則違反だからな?また女子トイレの掃除日数を増やされたいのか?」

 

 真琴の言葉で冷静さを取り戻したのか、固有霊装である宵時雨をしまった。その後ステラが珠雫にからかわれながら真琴一行はデパートのファミレスへ足を運んだ。

 

「うーん!このクレープ美味しいーー!」

「ここのデザートは旨いって評判なんだよ、ついて来て正解だぜ」

「あら、真琴って甘いもの好きなの?」

「あぁ、甘いものは別腹さ」

「珍しいわね、スイーツが好きな男なんて」

「良く言われる」

「真琴は食べたい時は自分でお菓子を作っちゃうからね、ルームメイト時代に良く食べたよ」

「腕はどうなの?一輝」

「期待して良いよ、凄く美味しいんだから」

「そんなに褒めるなよ、一輝・・・照れるだろう」

「あら、照れ顔可愛いわね・・・」

「そんな顔で見るな、俺はノンケだから・・」

「へぇー意外ですね、真琴さんがスイーツ系男子だなんて」

「好きなもん位料理するだろ?俺はたまたまお菓子だっただけさ」

「それにしてもマコトってカラテを道場で習ってるのね」

「正しくは“空手も”だかな」

「ん?他の武術も習ってるの?」

「俺は空手の他に、ムエタイ、柔術、中国拳法、対武器戦闘術、それから我流武術だな」

「多すぎですよ、それ・・・」

「ちゃんと身に付いてるの?」

「あぁ、もちろん」

「ふぅん、まぁいいわ。ねぇマコトが私達と戦った時、使った気当たりって技私にも使えないかしら?」

「んー?気にも段階が有るからな、掌握に至らないと技にならない」

「「掌握?」」

「そうだよ、気の段階はそれぞれ3つに分類されている」

「1つは❮気の発動❯二つ目は❮気の開放❯そして、最後が ❮気の掌握❯だ」

「それじゃ真琴さんは気の掌握に至っているんですね」

「あぁ、気当たり自体は気の発動した武術家にも使えるが、相手を怯えさせて気絶させたり、相手の戦意のみを奪ったりという芸当をこなせるのは気の掌握に至った一部の達人達だけだ」

「それじゃ真琴も気当たりを完璧に使いこなしてる訳じゃないのね」

「そういう事だ、アリス、くーっショートケーキうめぇ・・」

「真琴さんが掌握ならお兄様や私達は、何処に位置しているんですか?」

「そうだなぁ、まずステラと珠雫に関してだが、まだ気の発動にも至ってねぇな。一輝については“気の発動”だな、アリスは・・・戦いを観た訳じゃないからなんともいえん」

「本人じゃないのに良く分かりますね、真琴さん」

「そりゃ一度戦った相手だしな、相手の気のタイプくらい把握出来るぜ」

「気のタイプ?気には種類があるの?」

「あぁ、気のタイプは基本的に二種類だ。一つは俺が修めている❰静❱そして一輝が修めている❰動❱に分けられている」

「ん?基本的に?もしかしてまだあるんですか?」

「黒鉄妹、いい質問だ。例外もあってどちらの気も有している稀有な武術家もいるぞ」

「へぇー色々いるのね、マコト私達はどちらのタイプなの?」

「ステラと黒鉄妹は気のタイプが綺麗に分かれている、珠雫が俺と同じ心を落ち着かせて闘争心を内に凝縮し、冷静かつ計算ずくで戦う❮静❯のタイプ。ステラは逆に感情を爆発させ、精神と肉体のリミッターを外し本能的に戦う❮動❯のタイプだ」

「だけど動のタイプは少し危険なんだ。何故ならそのリミッターが外れっぱなしになって、人を見ると暴れまわる化け物と化すからな」

「その話を聞くと動の方が強い気がしますが・・?」

「これについてどちらが強いとかは存在しない、それに自律して選べる訳じゃないし、本人の性格や戦闘スタイル等から向き不向きが決まる」

「あ、そうなの?」

「うん、静のタイプは冷静に相手を分析しながら戦う人が多い、珠雫はそのタイプだ。逆にステラは頭で考えるより体を先に動かすタイプでしょ?」

「た、確かにそうね」「はい」

「それによ、逆に考えてみろ、少し違和感があるだろ?」

「言われてみれば・・・」

「イッキは何故動のタイプなの?イッキは私と戦ってる時、冷静に分析して見切りをやってたじゃない」

「別に動のタイプが冷静に対応しない訳じゃないからな、ステラ?そこは勘違いするなよ?」

「少し話疲れたぜ・・・またスイーツ食おうぜ」

「真琴、太るよ?」

「ああ?良いんだよ、太らねぇ体質なんだから」

 

 食べ足りない真琴はその後、ショートケーキやガトーショコラを話をする前に食べていた数を合わせて計15個平らげた。しかしそんな彼等の身に危険が迫っているとは、誰しもが思わず、幸せな昼食を過ごしていた・・・。




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