「どうして……どうしてなの……何度やっても……あいつに勝てない……ッ!」
少女は左腕に装備されている盾に手を伸ばした。だが直前に躊躇し、手を止めた。
(繰り返せば……それだけまどかの因果が増える……私がやってきたことは、結局……!)
彼女は嗚咽した。そして、彼女の左手の甲に着いている紫の宝石が、濁り始めていく。
そのときだった。声がした。
アイツの声が……
『レッドファイッ!』 その声が聞こえた方向に彼女は振り向いた。そして見た。赤い巨人の姿を……
『イヨッ!』
赤い巨人はジャンプし、今まで彼女を苦しめてきた魔女にチョップをした。
『レッドチョップ!』
その一撃は魔女に大きなダメージを与えた。間髪いれずに巨人は魔女を投げ飛ばした。
『ヨッ!』
いつの間にか魔女はさっきと違い、ボロボロの着ぐるみの様な感じになっていた。
「すごい…」
彼女は思わず呟いた。絶望仕掛けていた彼女にとって巨人はまさに救世主だった。
(これなら……奴を倒せる…!)
だが、彼女は知らなかった。この巨人は決して救世主なんかではないことを……そしてこの巨人が、自分にとっての最狂の敵になることを……
『レッドナイフ!』
巨人はナイフを取りだし、魔女に切りかかった。魔女の体と歯車を繋いでいる柱を切断し、魔女は2つに別れた。
『レッドアロー!』
そして巨人は槍を取り出すと、大地に墜ちた歯車につきたてる。そして歯車が動かなくなったのを確認すると、槍を歯車から引き抜き、魔女の体につきたてた。そして、引き抜き、刺す。引き抜き、刺す。引き抜き、刺す。引き抜き、刺す。これを何度も繰り返した。
「うわぁ…」
見ている少女もドン引きである。
魔女は完全に力尽き、消滅した。そして巨人は少女を見た。すると巨人は等身大のサイズにまで縮んだ。
「?」
赤いアイツは少女を見て叫んだ。
『レッドファイッ!』
「……え?」
赤いアイツは跳んだ。そしてナイフを取りだし…
『レッドナイフ!』
少女に切りかかった。少女は咄嗟に左腕の盾を向けてガードしようとした。だが……
「……え?」
気が付くと彼女の左腕は無かった。
『レッドアロー!』
赤いアイツは槍を取りだし、彼女の胸に突き刺した。
少女は何が起こっているのか分からなかった。突然現れた理不尽な暴力の前に、彼女は何もできなかった。
「…うぅ……」
それでも彼女は右手を、切り落とされた左腕の盾に伸ばした。
彼女を動けるのは、あの時誓った約束があるから。約束を果たすまでは死ねない!という思いが、彼女を動かした。
薄れ行く意識の中、彼女は盾の砂時計を反転させた。
時間が巻き戻って行く……
マギアレコード楽しみ