この素晴らしい世界に時魔法を!   作:クロノス

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第6話

ジャイアントトードのクエストの翌日、俺は相変わらずウィズの店で居候生活を送っていた。

しかし今までとは違い財布に余裕もできてきたため、今までの家賃としてジャイアントトード1体分…約5000エリスを支払った。

 

「家賃なんていいって言ってるじゃないですか…」

 

「それじゃこっちの気がおさまらないんだ。俺のためだ思ってもらっといてくれ」

 

こうしてウィズは最後までエリス硬貨を受け取ることを拒んだが渋々といった表情でエリス硬貨が詰まった袋を受け取る。

ウィズは袋からエリス硬貨を取り出してカウンターの棚にしまうとそそくさと店の裏へと去っていった。

 

恐らくこれから朝食を作りに行くのだろう。

 

ウィズの背中を見送ると俺は借りている自分の部屋へと閉じこもりいつも通りに砂時計を傾ける。

こうして朝と夜に砂時計を傾けて魔法を使うことが俺にとって欠かせない日課となっていた。

朝やってるところをウィズに見つかると怒られるのは心配してくれてるからだろうか。

 

(そんなわけないけど)

 

ちょっと残念に思いながらさらに魔力を込めていく。

 

朝に魔法を使用することは魔力切れになる原因となり得るのだが、こうでもしないと成長はしないと考えた結果だった。

それにカズマたちのパーティーに入ったのも、魔力切れを補ってくれると期待してのものだ。

 

(…結果は散々な気がしないでもないが)

 

カズマはチート能力がないだけであって戦力として申し分ないだろう。

もしもカズマがチート能力を持っていたら間違いなく化けただろう。

 

問題はアクアとめぐみんだ。

 

アクアの問題点は攻撃方法がないこと。

攻撃方法がないと言えば後方にいればなんとかなると思うかもしれないが、つまるところ防衛手段がないのだ。

だから俺かカズマがつきっきりで介護する勢いで守り抜く必要がある。

 

めぐみんの問題点は爆裂魔法しか使えないこと。

昨日あのロリッ子は爆裂道を極めるために爆裂魔法しか使わないと宣言した。

実際のところは爆裂魔法しか使わないのではなく、爆裂魔法しか使えないらしい。

アクアから言わせればあり得ないらしいが、めぐみんが爆裂道を語ったとき痛く感動していたため詰まるところ馬鹿なのだろう。

 

(なにこのアンバランスなパーティー、無理ゲーだろ)

 

率直にこう思うわけである。

 

昨日のジャイアントトード狩りでまたレベルが2上がったものの相変わらず爆発的に魔力は増えないし、覚えたスキルはない。

しかし停止(ストップ)重力(グラビティ)は大きく成長した。

特にめまぐるしいのは重力(グラビティ)だ。

 

今までは重力を用いて球を作って引き寄せたりするだけだったが、今回の成長では空間に直接作用させることができるようになった。

ミカエラさんがいっていた時空間魔法だと俺は推測している。

 

恐らく時魔法師(クロノス)の真価というのは時間でも重力でも空間でもなく、3つが統合されて発揮されるものだ。

 

そう考えるとやはり今回の成長は嬉しいものだ。

 

今日の予定は例に漏れず何かのクエストを受けることになっている。

受けるクエストについて詳しく知りはしないが、討伐系のクエストには違いないだろう。

内容は4人で決めるとしてもめぐみんが爆裂魔法撃ちたいと喚くのが目に見える。

 

「ソラさーん、朝食できましたよ〜」

 

「は〜い今行く〜」

 

今日も今日とて平和に1日が幕を開けた。

 

 

▼ ▼ ▼

 

ウィズと他愛のない話をしながら朝食を摂り、準備を終わらせてギルドへと向かう。

今日もウィズは店番をしているようだが、あのお店に人が入っているところをあまり見ない。

 

(…あの店大丈夫なのか)

 

経営は順調とはいかないように思える。

 

そもそもウィズの店に置いてある道具だが、聞いた限り冒険者がまともに使えそうな物はない。

仲良くなるための魔道具だとか、遠出したときに大量に購入したお守りだとかよくわからないものばかりだ。

 

仕入れる度にマイナスが出ているのではないかと思うとゾッとする。

本格的に俺も魔道具について学んでみようかと考えギルドの中に入る。

クエストが貼られている掲示板にはすでにカズマ一行が到着しており、カズマは俺を見つけると大きく手を振った。

 

「今日はなにのクエストを受けるんだ?」

 

「それも考えてるんだが、ソラ」

 

「ん?」

 

「ソラのスキル教えてくれないか?」

 

「その前にめぐみんどうしたの?」

 

「我が…ロリッ子、ロリッ…クヒッ」

 

めぐみんを見てみれば、クエストが貼られている掲示板に額を押し付けて壊れていた。

サゲスティクな笑い声は不気味さを助長させている。

 

「ロリッ子はロリッ子だ」

 

「まあ、間違っちゃいないが…」

 

「アクア〜この2人が虐めます」

 

耐え切れなくなったのかめぐみんがアクアに抱きつく。

アクアはそんなめぐみんを抱き締め頭を撫でるとチラリとめぐみんの胸部を見て表情を歪める。

 

「大丈夫、あなたもちゃんと成長するわ!!」

 

「今どこ見て言いました!? どこ見て!?」

 

「で、スキルなんだが…」

 

普通、スキルとは冒険者カードに出ている『現在習得可能なスキル』という項目からスキルポイントを割り振ることで習得するもの。

しかし、最弱職である冒険者という職業は誰かにスキルを教えてもらうことが可能らしい。

冒険者はこの世界の全てのスキルが習得可能らしい。

 

『なにそれチートじゃん』とか思うかもしれないが、実際のところそう上手くはいかない。

例えば、めぐみんが扱う爆裂魔法はアークウィザードが覚えようとすれば10、20ほどのスキルポイントで習得することができるだろう。

 

では冒険者が爆裂魔法を習得しようとするとどうなるのか。

 

アクア曰く、『10や20じゃきかないわ。あんたが習得しようとするなら10年はスキルポイント貯めときなさい』らしい。

 

「というわけで何かと役に立ちそうなソラの魔法を教えてもらおうと思って」

 

「カズマが時魔法師(クロノス)の魔法…まあやってみればいいじゃないかしら?」

 

「なんだその深みのある言い方は」

 

未だに撃沈しているめぐみんの頭を撫でつつ、アクアはカズマを小馬鹿にしたように笑う。

女神だけあって何か知っているようなその態度に俺自身も興味を惹かれたが、それ以降アクアはめぐみんを慰めるのに専念してしまった。

 

「じゃあとりあえず停止(ストップ)教えてみるか」

 

「よっしゃ、こい!」

 

停止(ストップ)

 

今回は止めるのではなく、カズマの時間を遅くした。

それは脳に作用するのではなく、身体の神経に作用するものだ。

 

つまり今のカズマは、遅くなっていると実感はしていても身体が追いつかないといったところだ。

 

数秒カズマの時間を遅めてから元に戻す。

 

「これでカズマの冒険者カードに停止(ストップ)が出たんじゃないか?」

 

「お、出た出た! さっそくスキルポイントを…って…おいなんだこの馬鹿げたポイント数は」

 

カズマの冒険者カードを覗き込むとそこには確かに停止(ストップ)が出ていた。

問題はその必要ポイント数…11。

停止(ストップ)時魔法師(クロノス)の初期魔法…必要なポイント数はわずか2だ。

だというのにカズマの冒険者カードに示された値は約5倍。

 

「たとえそれで習得できたとしても、カズマとの相性が悪ければ暴走して自分の時間が止まって動かなくなるわよ〜」

 

「…なに?」

 

「ある意味勇者よりもピーキーで伝説級の職業なのよ。誰にでもなれる職業じゃないの。それこそ私たちですら時間や空間を司ってる神様くらいしかなれないとおもうわよ。私は水の神様だから無縁もいいとこね」

 

「お前ってなにもの?」

 

「…さぁ?」

 

謎は深まるばかりである。

そんなときだった。

 

「へぇ…面白い魔法を使うんだね君」

 

横から突然声が聞こえたのは。


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