アニメキャラを呼び出して戦わせるマスターに選ばれた件   作:100¥ライター

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70話 七草さんちの双子ちゃん

七草香澄と七草泉美は乗積魔法という他の誰にも出来ないことが出来る。

 

 

魔法科高校の劣等生における魔法は基本的に複数の術者が同じ魔法を唱えても大きな一つの魔法にすることは不可能である。

 

 

大規模な魔法を放つために複数の術者が魔法式を組むこともあるが、それは一人一人別の魔法式を組んでいる。

 

 

その理由は簡単に言ってしまえば邪魔だからだ。複数人で一つの魔法式を作ろうとすれば最も干渉力が強い者が他の者の干渉をおしのけ、その一人の魔法しか発動しないというのがオチ。

 

 

ただし、この二人は違う。先ほど言った複数人の魔法が足し算ならこちらは掛け算。一つの魔法の工程を分担し、より高度な魔法を放つことが可能なのだ。

 

 

それが可能な理由は魔法演算領域がこの二人は全く一緒だから。

例えるなら魔法演算領域が違う者同士が魔法を合わせるというのはある数式に対してお互い全く違う解き方をしているようなものだ。最終的に早い解き方をした者や計算が早い者が勝つ。

しかし、二人ならその数式を二人で同時に考えることが可能であり、より早く正確に数式を解ける…といった感じだ。

『七草の双子』と呼ばれているのもそれが由来している。

 

 

余談だが、普通なら意図的に遺伝子操作を用いて作られた調整体の同シリーズ同世代だろうとこのような現象は起こらない。

 

 

しかし、香澄と泉美がこのようになったのは偶然。七草家が手を加えたりしていない。ある意味姉の真由美よりも凄いものを持って生まれたと言えなくもない。もちろん先天性の知覚系魔法を持っている真由美も充分凄いのだが。

 

 

さて、先ほど真由美に現代日本の案内をしていたらその二人とエンカウントしたわけですが…

 

 

 

 

ここは近所のファミレスじゃねぇか。てっきり洒落た喫茶店に連れて行くと思っていたが…まぁ、別に何も問題はないか。

 

 

いや、香澄と泉美が制服というのは多少なりとも問題か。アニメキャラが認識阻害をかけずに外にいるというパターンは実はそこまで珍しい話ではない。私服に着替えて…必要であれば髪型も変えて上手く現代社会溶け込んでしまえば意外とバレないものらしい。 そもそもマスターが認識阻害を外して出歩くアニメキャラはいないという先入観を持っていることもバレないことに一役買っているんだとか。

もちろん修学旅行生を装うなどあえてそのまま制服でいた方がいいケースもあるが、いかんせん劣等生の世界の制服は現代のそれとかけ離れているから目立つ。今度そいつに会ったら忠告しとくか。

 

 

それにしてもまさかこんな短期間で劣等生のやつらと3人も会うなんてな。映画は見たが、アニメは小学校の頃見たきりな上、原作も来訪者編とダブルセブン編しか買ってない。おまけにマスターになってから読んでいない。

真由美も当たったし、そろそろ本格的な知識が必要かもしれないな。

 

 

「何か頼むか?素直に話してくれるなら昼飯分ぐらいなら奢ってやっても…」

 

 

真由美はドリンクバーのみで構わないとのことなのでとりあえずドリンクバーだけ注文。まぁ、せっかくこのような会話の場を設けさせてくれたので話すなら奢ってもいいというのは俺の本心だ。

 

 

「水だけで結構!アンタの施しは受けない」

 

 

冷静な泉美に比べ、香澄はやたら気が立ってるな。真由美をより強く慕っているのは香澄なわけだし、変な男が真由美の側にいるとなれば良く思わないのは当然っちゃ当然か。真由美にふさわしい人間であればいいと考えている泉美とはスタンスが違う。

 

 

しっかし、こんだけ姉のことを大切に思ってくれる妹達がいるってのはちょっとばかし羨ましい。おまけに二人とも可愛いしな。見た目的にも性格的にも。

 

 

「泉美は?」

 

 

「私も香澄ちゃんと同意見です」

 

 

先ほど泉美が冷静だと言ったが、だからと言って俺に気を許したというわけではない。泉美も香澄と同じように俺を強く警戒している。ただし、香澄とは対照的にしたたかさと冷静な態度を感じる。

 

 

「じゃあ俺はこのやたら大きいストロベリーパフェを」

 

 

見た目も中々派手だし、これが今時のJKとかならインスタ映えする〜とかで写真を撮って、SNSにアップするんだろうけど特定されるのが怖いからやらない。

 

 

「え?これ貴方が全部食べるの…?3〜4人前って書いている気がするのだけれど」

 

 

「何か問題あるか?」

 

 

疲れている時はやっぱり甘いものだよな。特にチョコレート系やストロベリー系のパフェは最高。パフェの語源がフランス語のパルフェ(意味は完全な)から来ているだけあるよな。

 

 

「…分かったわ。それなら何も言わない」

 

 

さて、ジャンボパフェが来る前に一通り質問したいが…

 

 

「まずマスターの年齢、身長、体重、スポーツ経験の有無、彼氏・彼女の有無、いたのならいつまでいたか…他にも性別や容姿、かつていたキャラも含めた他の所持キャラ、通っている学校もしくは勤め先、趣味、所属している部活やサークル、資格、そいつが思う人生の価値観、死後の世界はあると思ー」

 

 

「個人情報。並びに意味のない質問と答えがない質問。そしてセクハラはやめてください」

 

 

体重なんかがセクハラに入るならマスターは女か?まぁ、泉美のようなやつがそう簡単にボロを出すとは思えないから男とも考えられなくはないが…彼氏彼女云々もつい流れで言っちゃったし。

 

 

「まぁ、何を聞かれてもボク達は何も言えない。マスターに許可なく、マスターの情報は話せないよ」

 

 

少なくとも命令権1回分を行使済か。命令権は行動を無理矢理縛るのだから行えば多かれ少なかれ不信感が出るものだ。

 

 

だが、この程度なら別によくあること。

これを言い張ればたとえ二人のマスターが命令権を行使していなかったにしても黙認可能だ。俺はそれを確かめられないわけだしな。

ルール上拷問なんかで口を割らせることも不可能だからこれ以上食い下がっても意味はない。仮にすることができたにせよ、姉である真由美が見ている上にやっているこっちも気分が悪くなるだけだからやらない。

 

 

「命令権を行使済か」

 

 

「お言葉ですが、それもマスターの許可なく話すことは出来ません」

 

 

やっぱダメだよなぁ…それだったらこれ以上こいつらから聞ける情報はないかもしれないな。本当に命令権を使ったかは相手のスマホに載っているマスターの所持キャラ一覧を見なきゃ分からないし。

捕虜みたくするのも考えたが、試合が始まったらどうせ1kmルールで逃げられちまうからな。マスター同士ならいざ知らずキャラ相手だと盤外戦術は少ないな。

 

 

「一旦俺の話は終わりにする。お前達の話を聞こう」

 

 

「…お姉ちゃんと別れて」

 

 

「あぁ?それは恋人的な意味で言っているのか?」

 

 

別れろ?そもそも俺はあの中の誰とも付き合ってない。そもそも誰かを嫁にしたいなんておこがましい事は微塵も思ったりしていない。

 

 

「それ以外に何があるのさ」

 

 

「香澄ちゃん!?何を勘違いしたか知らないけど私達は付き合っているわけじゃないのよ!」

 

 

「だって…急に人が来ないような場所に連れて行ってた。つまり姉ちゃんと外でヤらしいことする気だったんでしょ」

 

 

「お前達を炙り出すための作戦だったんだが。邪推するのはやめろ」

 

 

俺に野外の趣味はないし、今9月だぞ。時期を考えろ。

 

 

「嘘だ!認識阻害をしていたボク達に気づくのは不可能だったはずだよ!」

 

 

確かに基本的に不可能…ではあるが、違和感に気づくだけならそんなに難しいわけではない。たとえば何もない場所で転んだり、突然何かにぶつかったり手がかりを掴むことは可能。この戦いにおける認識阻害とはあくまで極限まで気づかれにくいというだけなのだ。

 

 

あとこれは調査中だが、煙草の残り香なんかも気づくきっかけになるはず。まぁ、俺は勘だったわけだけど。

 

 

「そもそもさ…いくらマスターとパートナーの関係であったにせよ、合意がなきゃハラスメント行為は不可能ってルールを知らないのか?」

 

 

この手のやつは命令権で強引に従わせるのも不可能らしいし、これで納得してくれるはず。

 

 

「いいえ、そのルールには抜け穴があります。津島さん」

 

 

「…何だと?」

 

 

「確かに普通なら洗脳させようが、操作しようがハラスメント行為は不可能です。ただし、このルールを正しく理解していればこのルールがほとんど機能していないことが分かります」

 

 

流石に俺もそこまでは知らなかったわ。つーかただでさえルールブックが長すぎる上にキャラを持ってなきゃ知る事が不可能な特権ルールなんてふざけたもんがあるのもやめていただきたい。こちとらやる事多すぎてバトルのルールを覚えるだけで手一杯なんだわ。

 

 

「…何が言いたい」

 

 

「例えば…お姉様を能力で洗脳したとします。そうしたらデートやスキンシップなどを何度も念入りに行い、貴方が好きだということをお姉様の深層心理に刷り込ませます。そうしてしまえば洗脳をしていなくとも深層心理に潜む好意を利用して、肉体関係を迫ることが可能なのです」

 

 

やたらあくどい手段を顔色一つ変えずに淡々と話す泉美に何故その辺りに詳しいのかと問いただしてみたくなったが、それを聞いたら荒れそうだからやめとく。とりあえず今は俺の疑惑を張らなきゃならないし、下手に話を逸らそうとすれば疑いが濃くなる可能性がある。

 

 

「そ、そうなの!?泉美!」

 

 

そして何故お前が驚くんだ。…だが、そうなると泉美が実はその被害者だったとかいう可哀想なことはないんだな。良かった、良かった。

 

 

「…で、それがあの時ヤらしいことしていたってのにどう繋がる?」

 

 

「要するに…一度身体で堕としてしまえば二度目以降は楽に迫れるのです。私のマスターはかつてそういう事件に出くわしたらしいです」

 

 

「…まぁ、お前のマスターは災難だったな。そんでもってお前は俺の評価をどこまで貶めるつもりなんだ」

 

 

「貴方はお姉様のマスターにふさわしいとは思えません」

 

 

「…つまり俺に死ねと?」

 

 

「そこまでは望んでいません。私には貴方が大人しく殺されるような人間には見えませんし」

 

 

「当たり前だろ。さっきのはあくまで例え話…俺は俺の目的を果たすまで死ぬわけにはいかないからな」

 

 

「何かしら叶えてもらいたい願いがあるのですね」

 

 

「お前らに話す気はない。そして付き合っているわけではないから香澄の要求を聞くことは出来ない」

 

 

 

「あっそ!」

「そうですか…」

 

 

「そうだよ」

 

 

 

 

『…』

 

 

あれから香澄、泉美の二人と無言で睨み合うこと数分。全く動きがない。凄く気まずいが、まさか注文しておいて帰るわけにはいかない。

 

 

「し、失礼しました!!」

 

 

ったく…ジャンボパフェを持ってきたバイトの女がビビってんじゃねーか。

 

 

「…」

 

 

「食うか?」

 

 

「いらない」

「いりません」

 

 

取りつく島もないとはまさにこのこと。絶対零度すら生温い険悪なムードが漂う。

 

 

「…ねぇ、マスター?香澄ちゃん?泉美ちゃん?」

 

 

『…』

 

 

真由美がこの状況を嫌ったか三人に声をかけるも聞こえるのはパフェの縦長な容器にスプーンが当たる音のみ。

 

 

仕方ないんだ。もう話すことないんだし。

 

 

「…」

 

 

「今日行われるであろう勝負で…俺と戦わないか?俺はここらで待機してやるよ」

 

 

ここら辺はベイルアウトを使った1kmルールでパートナーごと撤退可能な範囲内なのにそこまで遠くない。その上視界は良好だし、高い建物も少ない。比較的理想なエリアだ。

 

 

それにあまりにも無言の間が長引くと辛いし、新たな話題作りのためにも提案してみた。

 

 

「ダメ。勝負するならこっちの指定した場所!そして連れてくる者はアンタとお姉ちゃんだけ!これはお姉ちゃんを賭けた戦いだからね」

 

 

いつの間に真由美が賭け皿に乗せられていた。まぁ、いいや。どうせここで負けるようならこの先やっていけない。

 

 

「はぁ…なんなら今から俺がさっきみてーにお前らからの攻撃を許可してやっから今すぐ戦わねぇか?」

 

 

個人的にはいくら一定の信用があるからといって、他のメンバーと相談せずに方針を決めたくはないからな。俺の提案通りにすれば最悪もみ消せるのに。

 

 

「うん。その方がルールも決めやすいし、卑怯なことをされる心配もない!受けて立つよ、津島隼人!」

 

 

「それなら…私もお力添えしますが構いませんね?私達は二人で『七草の双子』…ですので」

 

 

「あぁ、二人まとめてかかってこいよ。返り討ちにしてやる」

 

 

巨大パフェの完食後、二人のいる方へスプーンを向け、戦線布告。明確な勝ち筋はまだ用意していないが、ここまで来たらやるしかない。

 

 

 

 

真由美もここまできたら戦うしかないと諦めたのか広い空き地で戦いの準備をしていた。

 

 

「攻撃手段で使用可能なものは魔法及び能力のみ。身体の接触は禁止。次にお互いこのラインから出ることは禁止。そして回復不可能な後遺症を残すような魔法及び能力の使用も禁止。最終的に私の判断で先に戦闘不能になった方の負け。準備はいい?」

 

 

「いいよ、お姉ちゃん!」

「えぇ、いつでもどうぞ」

 

 

「はい、そのルールは七草先輩達の世界で言うところのノータッチルールですね。ということは武器での攻撃はあくまで魔法で遠隔操作したもののみ…ですか?」

 

 

ノータッチルール。記憶は若干あやふやだが、魔法のみでの戦いかつ異性間の場合よく使われるあっちの世界じゃ一般的なルールだ。(女性間でも適応される場合がある)

 

 

「そうね、そうでない武器の接触も反則負けにするわ」

 

 

トリガーをたまたまシューター用に改造してきて良かった。

 

 

編成

 

メイントリガー(右手)

アステロイド

バイパー

メテオラ

シールド

 

サブトリガー(左手)

バイパー

ハウンド

グラスホッパー

シールド

 

 

今回のコンセプトはサブトリガーでは主に変則的に攻めて牽制や撹乱をする。そうしてメイントリガーで詰ませにいく。

 

 

グラスホッパーは使い慣れていたし、移動時に非常に便利だから採用。というかこんな形式の戦いで無かったら別のトリガーを用意してた。

 

 

「七草先輩。知っているとは思いますが、念のため言っておきます。この武器は近接武器を全て除けばどんな弾でも殺傷能力は0です。そもそもこの武器は人を守る為の武器です。それで人を傷つけては本末転倒でしょう?」

 

 

「とかなんとか言っておきながら戦いとなれば使うんだね」

 

 

「あいにく近接武器が禁止されたら攻撃手段はもうこれしかないんで。御託はいいからさっさと始めようぜ?」

 

 

「それじゃあ、双方構えて」

 

 

『…』

 

 

香澄と泉美は両方ともやる気に満ち溢れている。いつでも覚悟は出来ているみたいだな。

 

 

 

「勝負開始!」

 

 

バトル開始の宣言と同時にトリオンとサイオンが弾けた。




魔法科高校の劣等生では香澄と泉美が好きで、いつか出したいなと思っていた作者です。
作者は所持金の都合上原作全巻までは持っていませんので、もし拙いところがあれば指摘していただければ嬉しいです。

もし二人が気になった方は1巻のみで読みやすい原作のダブルセブン編を読むかソシャゲであるLOST ZEROでカードを入手すれば泉美と香澄が使えますのでプレイしていただければ魅力が分かるはずです。

あと漫画版のダブルセブン編も絵がとても良くてオススメです。
今回は香澄と泉美の説明しかしてませんねw

次回はこの三人の戦いが始まります!それでは!

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