幻想郷(仮題) 作:パンドラぼっくス
紅魔館の食堂に人影が入ってくる。
「はあぁぁ〜お腹すきましたぁ〜」
彼女の名は『
「お疲れ様美鈴」
その次に入ってきたのはパチュリーと咲夜である。
「お疲れ様です、パチュリー様。あ、咲夜さんもおはようございます。」
「おはよう美鈴」
「あれ、小悪魔ちゃんは?」
美鈴が姿の見えないパチュリーの使い魔の所在を聞く。
「こぁなら妹様の部屋に料理を運んでいったわ」
「あれ、珍しいですね。咲夜さんが持っていかないなんて」
「今日はお嬢様のお目覚めがいつもより早かったのよちょっと準備のために代わりにこぁに行ってもらったわ」
「なるほどですね」
咲夜の答えに納得したように美鈴が頷く。
「ところで問題のレミィ本人はまだ来てないのね...」
「あれ、パチュリー様お嬢様に早く会いたいんですか?」
「そういう訳じゃないわよ....」
パチュリーのつぶやきを美鈴は聞き逃さない。
と、パチュリーを美鈴がからかっていると、
「おはよう誇り高き紅魔の諸君!主様のお目覚めだ!...ところで咲夜今日の飯は...『ガキィィイィンッ』」
扉をぶち破る勢いで入ってきた一人の少女の言葉は金属同士がぶつかるような音に阻まれる。
「今日のご飯はそちらになります、お嬢様」
「ふむ...『ボキッ』...今日の飯は...『バキッ』銀製のナイフ...『ボリッボリッ』...程よい歯ごたえに舌がピリッとする刺激...『ゴクン』...うむ、美味い!」
お嬢様とよばれた少女は口で受け止めたナイフを、何の問題もないように噛み砕き、咀嚼する。
やがて出てきた感想は美味の言葉。
彼女こそ、吸血鬼にして魑魅魍魎の集まる紅魔館の主、『レミリア・スカーレット』である。
そんなレミリアの感想に応える様に咲夜もお辞儀をし、
「お気に召された様で、
ではおかわりを
」
瞬間、レミリアの周りに無数のナイフが現れる。
「はっはっはっ!!..今日は..『ガキッ』...何だか...『バキッ』...いい日になりそうだから.....『ボキッ』」
次々に現れるナイフ、レミリアは笑いながらそれら全てを時には手で掴んで、時には直接、その鋭利な牙で噛み砕いていく。
飛び散るナイフの欠片が証明に反射し、その姿はまるで光り輝くステージで踊っているようにも見えた。
「しっかり食べて体力をつけねば...な!!..『パシッ』」
最後の一本を手でつかみとり。人が爪楊枝を扱うように器用に歯の隙間を掃除している。
「しかし咲夜、私はお前の手料理も食べたいぞ」
咲夜は全く問題無さそうなレミリアに嬉しそうにしながら声をかける。
「しかしお嬢様、私の手料理はすでに...」
と、レミリアが咲夜の指し示す方を見ると。
「ふぅ〜、お腹いっぱいです〜」
「・・・・・・・」
さっきのやり取りの間に美鈴の前に大量の皿が積まれている、ちなみにパチュリーの前には皿は積まれていない。こころなしか、パチュリーの持つフォークが震えている。
「むっ、また美鈴が全員分食べてしまったのか...はっはっ!食べ盛りで何よりだ!」
レミリアは美鈴の見事な食いっぷりに満足しているようである。しかし、納得のいかないものもいる訳で
「何よりだ...じゃねぇぇええええっ!!!」
パチュリーがフォークを持ったまま慟哭をあげる。
「む、どうした我が親友パチェよ!」
「親友じゃねぇ!んなことより、私の食べ物はどこにあんだ!」
「だから美鈴が全て食べたと言っているだろう?」
「ふざけんじゃねぇ!また今日も私の食べる分はこれだけか!?」
パチュリーがフォークで指す場所にはポツンと1枚のハムが皿の上に置いてある。
「美味しいじゃないかハム、何が問題なんだ?」
「〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
パチュリーが言葉にならない叫びをあげる。
「そうですよ〜ハムでいいじゃないですか、ハムチュリー様、なんつって」
美鈴がそう零すとパチュリーは無言になる、『あ、やべっ』と美鈴が思ったのもつかの間、パチュリーの前に魔法陣が出現する。
「よ〜し、じゃあハムでいいわ...ただし...
お前をスライスしてハムにしてやるがなぁぁぁぁああっ!!!
」
魔法陣から剣の形をした光が出てきて、美鈴を襲う。
「ひぃぃい〜〜!!パチュリー様が人喰いになった〜〜!!」
『美鈴って人じゃないわよね』と咲夜は思いつつ敬愛する主を伺う。主はその光景を見て満足そうに大笑いしている。スキだらけだ、いけるか、
「なぁ、咲夜」
「っ!?なん、っでしょうかお嬢様?」
気づかれていたようだ。
「今日は客がくるぞ」
客?客ならいつも紅魔館の門前で美鈴が処理しているではないか、と咲夜は思う。
「違う違う、特別な客だ。もてなしの準備をしておけ」
なるほど合点がいった。あいつらが来るならそれはしっかりとおもてなしをしなければいけない。
「かしこまりましたお嬢様、この咲夜の名にかけて」
咲夜の姿が消える。もてなしの準備をしに行ったのだろう。
未だ騒いでいるパチュリーと美鈴を見ながらレミリアはくくっと笑う。
「やはり今日はいい日になりそうだ....よし、私も混ぜろ!!」
レミリアは来客を待つ。