リインのアトリエーアインクラッドの錬金術師ー 作:kaenn
今後はもっとアトリエ感が出せる様にしていこうかな?
では本編です。
ーキン…キキン……ガキンッ………ー
「ふむ…やはり動きもベルカ時代とほぼ同じか……魔女殿は何処へ行ったというのだ?もしこの光景を観ているなら手出しをして来そうな気がするのだが……勿論妨害の方で……」
攻撃を槍で受け流しながら、魔導兵器の背後に視える友人でもある愉快犯でデタラメな魔女の事を考えていると横から「スイッチ!」と言われ交代したメイルが短剣を翼竜の眼に突き立てた。
「お姉さん、リインさんだっけ?こいつの動きが分かるみたいだけど考え事しながらだと危ないよ〜〜?」
眼に相当するレンズを叩き割られた翼竜から目を逸らさずにメイルは私に注意する。
完全にヘイトが私達2人に向いた時、翼竜の背後からマイルが大剣を上段に構えてソードスキル”アバランシュ”を発動させて打ち込む。
ソードスキルを受けた翼竜は右手側の翼が砕けて大きな悲鳴のようにも聞こえる咆哮を上げながら私達3人を睨みつけてくる。
すると、その時
ーバサァッ…バサバサバサァ……ー
翼竜の背後の森から轟音が響き、目の前の翼竜よりも一回り大きい翼竜がリンダース方面へと飛び上がって行った。
「2匹目!?聞いてないよ!そんな……こいつだってこんなに強いのに……」
メイルが眼を見開いて驚いている。
「………………すまないがちょっといいかい?こいつは手負いだが飛んで行った方はまだ完全な状態だ……私が飛んで行った方を足止めしているからこいつを倒したら君達が合流するっていうのが効率的な気がするのだが……勿論こいつを3人で倒してからでも間に合うかもしれない……だが、その場合死者が出る可能性が高まる。」
私がそう提案するとメイルの顔に一瞬迷いが生まれる。
「行け!リイン殿!私には判る!貴女なら飛び去ったアレを止められる!行ってくれ!」
メイルを横目に見たマイルが私に叫ぶ、それを聞いたメイルは溜息を吐くと
「マイルちゃんがそう言ったらテコでも動かないもんね?………良いよ!お姉さんは行っちゃって!さっきの見る限り大丈夫だと思うけど気をつけてね!」
吹っ切れたようにメイルは私に”行っていいよ”という意思表示をした
「すまない……終わったらすぐ助けに来るから!」
それを聞いた私はリンダースに向けて全力で走り出した。
「………行っちゃったね?如何するのマイルちゃん?あのお姉さんもう戻ってこないかもよ?」
不安そうにメイルがマイルに問い掛けると
「いや、リイン殿は必ず戻って来る!私達2人に出来るのはこいつを出来る限り早く倒す事だ!」
と、叫んでリインというプレイヤーを追いかけようとする翼竜に大剣の一撃を打ち込む。
「なんでそんなに信じられるのさ!……もしかしたら怖気づいて逃げちゃったかもしれないじゃな……い!!」
ヘイトが向いたマイルへの鉤爪をメイルは手にした短剣で弾きながら文句を言っているとマイルは誇らしげに胸を張って
「メイルはあの人の眼を見てはいないだろう?あんなに澄んだ瞳は見たことが無い!きっとあの人は聖人君子の類だ!……メイル!!危ない!………ガハッ……」
言い切ると、メイルに迫った翼竜の一撃を防ぐ為大剣を盾にして嘴の一撃を受けるがあまりにも強い力に吹っ飛ばされ崖に叩きつけられて倒れた。
「マイル!!」
吹っ飛ばされたマイルを見るとHPゲージがイエローまで減り止まる。
その事にホッとした瞬間、翼竜がマイルに向けて走り出す。
「速い!?…………クッ…………ーガキンッー…マイル!!逃げて!」
メイルは翼竜に追いつくと短剣を前に突き出し奇跡的に攻撃を防ぐ事に成功するが、メイルの必死の呼び掛けも虚しく気絶状態でピクリとも動かないマイル
「グググ……マイ…ル……くっぅぅぅ…………。」
必死に双子の妹に迫る凶刃を遠ざけようとするメイルだったが翼竜のパワーが徐々に上昇しているようで次第に推されてくる。
少しづつ嘴や爪が中りマイルのHPゲージがイエローからレッドに差し掛かったその時、
ーピロリン♪ー
場違いな音がしてウィンドウが勝手に開いたと思い確認すると二刀流という文字が表示されている。
何故かスローモーションの様に感じる中、迷わず二刀流を習得し左手にソードブレイカーをオブジェクト化して装備した次の瞬間
ーザシュッザザザザシュッー
今にも2人を切り裂こうとしていた翼竜の鉤爪と嘴を斬り裂き残心を取るメイル
斬られた翼竜は固まったかと思うとポリゴン片になって消えていった。
「やったの?………もういっぽもうごけないよ……………。」
そう呟く様に言うとパタリと倒れた。
ーリンダース リズベット武具店ー
ー……カーン…カン、カン、カーン……カーン…ー
「ん?………生きてる?………マイル!っ痛っ!」
武器を鍛える為の鉱石を打つ音が響く中、ベッドに寝かされていたメイルが目を覚まし起き上がろうとすると何かにぶつかり再びベッドに横になる。
「!痛っいわね〜〜、まぁそれだけ元気ならもう大丈夫よね?…………一応言っとくわ……ありがとう。」
ぶつかったのはリズベットで頭を手でさすりながら心配と感謝を言って「ちょっと待ってて。」と言い、退出して行った。
「あの娘は確かリインさんと一緒に居た………ハッ!マイルは?!」
ぼーっとしているとマイルが如何なったのか聞いていないことを思い出して起き上がる。
ーガチャー
リズベットが出て行ったドアから自分によく似た少女が入ってきた。
「大丈夫かメイル?……っと!」
入ってきた人物がマイルだと分かるとメイルはベッドから飛び上がって抱き着く
「…………うん大丈夫そうだね?驚いたよ、2人とも倒れていて翼竜は居ないから如何したのかと思ったよ。」
マイルを抱き締めているとマイルの背後から澄んだ声が聴こえる。
顔をそちらに向けるともう1匹の翼竜を追って行ったリインだと名乗ったプレイヤーとアルゴが苦笑しながら立っていた。
「いや〜〜、メーちゃんのそんな姿が拝めるとはナ〜〜いやいやお見舞いに来た甲斐があったってもんだナ?」
苦笑から完全にネタにする気まんまんのイイ笑顔に切り替わったアルゴが何やらメモを取りながら話し掛けてくる。
「わ、私をネタにするつもり?アルルんと私の仲じゃない?ね?ね?」
懇願するメイルにアルゴは「いくらで買う?」などと言いながら戯れている。
ーその後 35層ミーシェ リインのアトリエー
「ステラ殿、此方は3番テーブルで宜しいですか?」
「マイルさんそちらは4番テーブルになりますわ……メイルさん8番テーブルの片付けは終わりましたか?」
「モチのロンだよ〜〜ついでにKOB団長様から追加オーダーももらって来たよ〜〜、店長〜〜今日のランチプレート1つ追加で〜〜す♪」
アトリエのカフェスペースでステラと新しい2人の従業員が連携を取り合って注文や配膳を行なっている。
「了解メイル、しかしヒースクリフは暇なのか?殆ど毎日食べに来ているじゃないか……」
私はメイルの受けて来た注文の品を作りながらヒースクリフの方へ目を向けると此方に片手を上げて微笑んでいるのが見える。
「まぁ……攻略自体は進んでいるんだし良いか?」
と呟きながら料理を作っていると久しぶりに店の中で迷惑な客が騒ぎを起こし始めた。
「俺は攻略組の1人だぞ〜〜!!そんな俺からコルを取ろうってえのか?!あぁん!!」
慣れてないお客様が慌てているが、常連のお客様方は懐かしいものを見る様な目で男を眺めている。
常連のお客様はこの後に起きる光景に期待しているのか皆ジッと私を見てくる。
「……ハァーーー……仕方ない…期待されている様だしね………。」
トボトボと騒ぎを起こした男の元へ向かおうとするとマイルが私を手で制して止めるとツカツカと歩いて行く。
「……たくよー!そんなサービスも出来ないんなら攻略辞めちまおうかなーー…あっ!そうだここの店員は美人揃いって聞いたから倫理コード解除してサービスしてくれれば……ん?何だねえちゃん?サービスしてくれる気になったのか?」
俯いたままのマイルが望むサービスを提供しに来たのかと思ったのだろう…男は下卑た笑顔を浮かべながらマイルの頭から足下までを舐める様に見る。
ーガシッー
「貴様……攻略組…と言ったか?生憎と私もこの店の従業員も皆攻略組だが貴様の様な輩は見たことがないのだが?」
俯いたままだったマイルが男の頭を鷲掴みにすると絞り出す様に呟く。
「まっ!待て!知らないかもしれねぇが俺はあの”黒の剣士”をデュエルで倒した男だぞ?こんな手荒に扱いやがったら本気で潰しに掛かってやるぞ!」
とっさの出来事に慌てた男は自分の実力は黒の剣士を倒せるレベルだ!と宣う。
「………ほぅ?……だそうだ、”黒の剣士”殿?心当たりはおありかな?」
マイルが男の頭を自分の背後が見える様に掲げると、男の目に困った様な顔をして真っ黒な装備に身を包んだ剣士が視界に映る。
「えっと……俺アンタとデュエルした事あったっけ?………大体俺デュエルで負けた事まだ無いんだけど?」
頬を指で掻き周囲の視線に居心地悪そうにしながら質問するキリト
それを見た常連以外の客も安心したのか落ち着きを取り戻して経過を観察している。
「……あ…あぁ……」
男が呆然とする中メイルがマイルの背後から顔だけ出していい笑顔で
「因みに〜〜♪奥の席に座ってるのがKOB団長様で〜〜♪うちの店長は”銀の聖女”で〜〜♪今この店の中には攻略組のプレイヤーが8人いるんですよぉ〜♪しかもトップクラスばっかり!そんでそんで!私とマイルちゃんも攻略組の1人だぞ〜〜♪」
と追い討ちをかける。
その後ろには拳を握る大男やレイピアを鞘から抜き放つ美少女、赤い装備主体の集団が憤怒の表情で立って居た。
その後、男は黒鉄宮に送られた。
捕まってから牢屋に入るまでに男が語ったのは
「……もう2度と悪い事はしません……」
という言葉だけだったという。
アトリエがあまりに人気の為従業員も増えました。
攻略組の4人が働き、客も攻略組多数のこの店に防犯対策は必要なのか?
次回は日常生活編を書きたいと思ってますのでよろしくお願いします。
ではまた次回。