二人目が、『自己犠牲精神』が過剰な人間だった結果 作:日λ........
結局、クラスの代表は一夏に決まった。
セシリアが辞退し、どうもスッキリとした表情で自身の考えの過ちを認め、一夏に対してのキツい態度を止めたのである。少し前まではここ最近たまに目にする行きすぎた女尊男卑の思想をもった人、という印象だったのだが、どうにも無理をしていたようであり、随分と人当たりが良くなって驚いた物だ。
そうして模擬戦後、鏃の友好関係はほんの少し広まった。
対戦相手であったセシリアと話すことが多くなったのである。今では一夏と共に勉強で分からない部分を共に聞いたり、ISについて話し合ったりする仲である。
尚、鏃が自分のISの仕様を話してドン引かれるのは良くあることである。何せ何かとデータを集めているあらかさまに搭乗者をモルモットか何かとしか扱ってない非人道仕様なのだ。もっとも、彼は望んでそうやって貰っているのでやってる側がドン引いてむしろブレーキが効いているという傍目からみてよく分からない状態になっているのだが。
そして、そんな普通のクラスメイトとして二人に接していると、何故か妙な視線を感じることが多くなった。奇特な見た目なので視線を集めるのは分かるが、どうも同じ人からのようである。センサーが探知する反応が、ほぼ完全に一致するものだからである。
(たまには自分から話しかけてみるのも悪くないですね)
そう思い、鏃は放課後の部活動が終わった時間帯に、いつもこちらを見ている人に訪ねることを決めたのである。
『どうも、聞きたい事があるので少し時間は取れますか?』
「……何のようだ?私はあなたに用事はないのだが」
『いえ、いつもこちらを__というより、一緒に話してる織斑君のことを貴方が見てますので、少し気になりまして』
「うっ……気がついていたのか」
『こんな体ですので、気がつかなくてもセンサーに反応するんですよ』
「それは……なんといったら良いか」
『まあ私のことは今はどうでも良いんですが、なんで遠くから見てるだけなんです?別に話に入ってきても大丈夫なんですが』
「その……一夏の事が気になってな」
『ああ、彼の事が好きなんですか?そういえば幼馴染と聞きましたね』
「ななななななんの事だっ?」
『分かりやすい反応ありがとうごさいます。まあ、そりゃ気にもなりますか。セシリアさんもなんか彼の事好いてるようですし』
「……やはりか。アイツは昔からそうだ。あの鈍感っぷりと天然ジゴロっぷりは相変わらずなのだな……一夏ぁ……私は……」
あれ?な、なんか地雷を踏み抜いてしまったか?段々と声が嗚咽混じりになっていく。目から涙が流れ出す。これはいけない。
『あ、あの、ゴメンナサイ。落ち着いてください。……なにか、溜め込んでいるんですか?私でよければ、話を聞きますよ?』
話してしまえば少しは気が晴れるかもしれないと、そう思って私はそう言った。
「……スマン。よく知らない相手に話すのも少し気が引ける…が…その、私もあまり、愛想がいいとも言えない、のでな……こういうことを話せる相手がその、い、いないんだ……だから、少し話させてくれ」
そういうと、彼女は少しずつ、彼とのなれ初めやら、彼のどうしようもない鈍感っぷりやら、どれ程お熱なのか色々と語ってくれた。
彼女の苗字は篠ノ之、つまりISを作った束博士の妹である。
なんでもそのせいでここに来るまでは要人保護プログラムにより、家族と離れ離れにされ、各地を転々とし学校も慣れる前に転校を繰り返す、そんな心が落ち着かない生活を送っていたという。
それで、かつての楽しい頃の思い出__幼馴染である織斑君との思い出や、数少ない家族との思い出を心の頼りにして今まで生きてきたと彼女は語った。
「正直、剣を振るう者としてはあるまじき、弱さだと思う……八つ当たり的に、唯の暴力のような剣を試合で振るってしまった事もあった。それでも、心細さを紛れさせる手段が、私には、それ位しか無くて……そうしてここに入学して、漸く落ち着ける場所に来たと思ったんだ。それで、大きくなった一夏にここで出会えた時は人の縁の繋がりに感謝したよ。でも……段々と」
『……織斑君が私達と話すことが増えて、中々入り込めなくなったと』
「そうだ。でも、あのオルコットとも、お前とも話があうとは思えなくて……割って入るのも、気が引けてな……」
ああ、だからずっと見ていたと。まあそりゃ勇気がいるだろう。彼女からすれば外人さんであるセシリアさんと、人外さんでキワモノ過ぎる見た目かつ尋常ならざる行為を行った自分の組み合わせである。ろくに友達付き合いをすることができなかったという篠ノ之さんには、そりゃハードルが高すぎる話だろう。それでも長年煮詰めてしまった思いから、織斑君を諦める事もできず、じっと見ていたと……
『……なんとも、織斑君が羨ましい話ですね。そんなにも思ってくれる人がいるなんて』
「うっ……言わないでくれ。自分の事ながら、恥ずかしい……だが、ありがとう。知らず知らずの内に、色々と自分の中で溜め込んでいたようだ。話してみて、気がはれたよ……」
そういうと、篠ノ之さんは立ち上がり、顔を胴着で拭った。
「……今度は、勇気を出して会話に入っていこうと思う。色々長々と、話してすまなかったな……迷惑じゃなかったか?」
『いえ、話しかけたのは私ですし、泣かせちゃったのも私ですので気にしないでください』
「ふふ、なんだろうな……鏃とは、なぜか話しやすい気がするんだ。そんな身なりだし、やったことが極端すぎて変な奴かと私も思っていたが、案外そうでもないんだな……少なくとも姉さんよりは」
『うーん、誉められてるの貶されてるのか良く判りませんねそれ。まあ、なんかあったらまた相談に乗りますよ?』
そういって、自分は篠ノ之さんの元から離れた。
そこから先については後日、また一人鏃の友好関係が広がったとだけ記しておく事にしよう__
いくらセシリアが話しかけても怯む事無くイッピーと一緒にいようとする箒でも、この狂人と話すのは怖かった模様()
だが話してしまえば以外と話してしまいやすい模様。そのコミカルな姿が、話してしまえば色々と言ってしまいやすい理由であろうか?
しかし中身は脳と脊髄。歩くブラックジョークである()