Grand Order Of Fate   作:レモンの人

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暫く、長い溜めになります。シナリオの内容が変わっていますが…終着点は同じにする予定です。







オルレアンにて…2

「鬼!悪魔!」

「何とでも言うがいい!今は非常時だ。それにお前だけ馬ってのは不公平なんだよ!!!」

 

愛馬に馬車を引かせる事になり、アルトリアは涙目で抗議した。が、今は馬が足りない。一頭でも増えれば負傷者の負担も減る。馬車の中で俺は対策を巡らせる。取り敢えず、敵がどんな奴かを見定める事が大事だろう。

 

「父上!敵は少ないぜ!先行して制圧してくる!」

「頼みます」

 

モードレッドが軽い足取りで草原を駆け抜けるのを見送り、俺は負傷兵から借りた弓矢の使い方を聞いていた。とにかく、俺も戦えないと足手まといになっちまうからな。

 

「いいセンスしてるぞ、短弓でここまでやれるなら即戦力として充分過ぎる」

「やめてくれよ、照れるだろ」

「ただいま〜、マスター!」

 

モードレッドは仕事が早い。あっという間に制圧して戻ってきたらしい。その手には何か見覚えのあるものが握られている。

 

「取り敢えず、一団を制圧したんだがコイツを見てくれよ」

「なんだこれ?」

「アルバム」

「──は?」

「ジャンヌ・ダルクのグラビアアルバム」

 

何その焚書案件。見てみると、強気そうな顔をしたジャンヌ・ダルクが水着でセクシーポーズをキメた写真やベッドに横たわり蠱惑的な笑みを浮かべる写真といった明らかにこの時代のヨーロッパ人には早過ぎる物品が揃っていた。

 

「なんだこれは、たまげたなぁ」

「他にも法被やら何やら色々あったぜ。アイドルってのは間違いないみてぇだ」

「はぁ……なんか解決する自信無くなってきたぞおい」

「はい……帰りましょう」

「駄目ですよ何帰ろうとしてるんですか先輩!?」

 

これならフランスを殆ど壊滅に追い込むくらい暴れてくれた方がやりやすい。だが、今回のこれは「期日までに間に合えば後は歌や踊りを聞いているだけで安全が保証される」のだ。正直に言おう、なんか危機感が感じられない。

 

「あ、ラ・シャリテに来ましたよ先輩!」

「ちょっと待て、関所があるぜ」

「関所?」

 

ちゃんと整備された道の向こうに確かに関所があった。他の諸侯達が同じように馬車を引かせて関所に何かを渡して通っていく。一体何を渡したんだ?取り敢えず、通ろう。

 

「いらっしゃいませ、ジャンヌ・ダルクのライブ会場へ。お客様はチケットをお持ちですか?」

「チケットってこのビラか?」

「はい、確認致しました。それでは素敵なひとときを!」

 

あー…なんか、ダルい。全然趣旨が分かんねぇ…。ていうか、関所の役人がみんなアイドルオタクみたいになってたぞ!?どうなってんだこれ。

 

「えー、お客様はこちらの席へどうぞ」

「どうも」

 

取り敢えず全員で席に着いた後、スタッフが用意した水筒で水分を補給した。野外の特設会場は椅子やら木組みのステージやらで凄い本格的だ。

 

「さてと…この隙に他の人の話を聞くとするか」

 

一ヶ所に人が集まっているので情報収集にはうってつけだ。取り敢えず、話を聞いてみるか。

 

「えー、すんません。ちょっと話を伺いたいんですが…」

「はい、なんでしょう?」

「ジャンヌ・ダルクがこのアイドル?ってのを始めた時期とか聞きたいんだけど良いっスか?」

 

リヨン出身という農家のご婦人に声をかけると、彼女の顔は窶れていた。

 

「去年よ。去年からジャンヌ・ダルクは竜の魔女って芸名でアイドルを始めたのよ。他の人達は最初こそ『死んだ筈の魔女が蘇った!復讐に来る!』とか言い張ってたのに今なんて『ジャンヌ様〜子豚な私を罵って〜!』とか叫んでるのよ?野良仕事しないでいっつも追っかけしてるし…」

「…」

 

これはある意味タチが悪い侵略だな。民衆を蹂躙するのではなく、洗脳して国力そのものを弱らせて滅ぼす魂胆だ。

 

「ウチの主人なんて私よりジャンヌ・ダルク様の方がいいとか言い出してるしもう家庭崩壊も秒読みね。あーやだやだ」

「…その、御愁傷様っス」

 

取材のお礼にビスケットを手渡すと、彼女は嬉しそうな顔で戻っていった。席に戻り、成果を報告すると3人+画面1人と一匹は苦虫を噛んだような顔をした。

 

「なんか…ある意味ヤバい侵略方法だな」

「我が槍でも解決出来ない問題ってあるのですね」

「先輩…もう帰りたいです」

『ネットアイドルこそ至高』

「フォウ…」

 

と、その時。不思議な音楽が響いた。急に空が暗くなると、スポットライトが一点に集中する。

 

「みんな〜!今日は竜の魔女のライブに来てくれてありがとう〜♪」

 

後ろの幕から現れたのは漆黒の装束を纏った女性だった。手にはマイク、キラキラとしたオーラを纏った彼女はクルクルと回るとポーズを決めた。イタイ…イタ過ぎる…。

 

「今日も私、ジャンヌ・ダルクは皆さんの為に歌います!最後の全員斉唱はしっかり歌わなきゃデュへっちゃうゾ☆」

「「ぉおおおおおおおお!!!」」

 

観客から歓声が上がる。さっきまで家庭崩壊とか抜かしてたご婦人までハイテンションで叫んでいる。とにかく、彼女のカリスマ性が高い事だけは分かった。

 

「それでは…ジャンヌ・ダルク歌います!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想を言おう。上手い…思わずカルデア組が全員ハイテンションになるぐらい上手かった。まさに最強のアイドルだ。キョンキョンとかセーコちゃんとかそこらへんのカリスマ性だ。

アイドルのアの字も知らない連中がそんなアイドルに出会えば夢中になるのも仕方ないだろう…。

 

「今日は私の為に来てくれてありがと〜♪じゃあまたね〜!」

「「いつでも待ってま〜す!!!」」

 

お決まりのやり取り(らしい)をした後、ジャンヌ・ダルクはどこかへと消えた。途端に空が明るくなり、魔法に掛けられた観客達はその余韻を楽しみながら帰っていった…。

 

*******************

 

「いや、これそのままでいいんじゃね?」

「そうですね」

「そうだな」

「アイドルを取り上げるのは可哀想かもしれませんね」

「フォウ!」

 

『そうだね〜…じゃなくて!駄目だよ!!!今回の特異点は死んだ筈のジャンヌ・ダルクが蘇りアイカツをした事から始まっているんだ!』

 

それもそうなんだけどなぁ…なんか肩透かしを食らった気分なんだよな。洗脳とはいえ、フランス国民も楽しんでいるみたいだし、これ以上責めきれない…というか。

 

 

「取り敢えず、対策を考えながら観光でもするか…」

『だめだこりゃ』




ジャンヌ・ダルク(?)
真名:ジャンヌ・ダルク
身長:159cm / 体重:44kg
出典:史実
スリーサイズ:B85/W59/H86
属性:混沌・悪
性別:女性
概要:突如現れた竜の魔女を自称するアイドル。彼女の歌や踊りは観客を魅了し、洗脳させてしまうとまで言われるほど上手い。実は彼女にも何やら事情があるようで……?




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