Grand Order Of Fate   作:レモンの人

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今回はアルトリアの鈍剣の秘密が明かされる回です。これがやりたくてキャメロット編は気合(?)が入っていた…






新生

生まれ変わったモードレッドは結構様変わりしていた。頭部にはアホ毛が一本生え、アルトリアに似た甲冑の背には1枚のプレートと4枚のプレートバインダーで出来たマントを装備、杖のように付いているのは剣ではなく、銃身下部にクラレント由来の刃を備えたビームライフル。そして、左腕には先端が鋭利なシールドが装備されている。

 

「どーだカッコいいだろ?オレの真似事をしていた魔神柱のエネルギーを吸収し返して霊基再臨した時に父上のDNAから借りパ──データを取った武具をベースにオレ好みに仕上げたんだ」

「すっげーイカしたデザインだぜ!カッコいいな!」

「だろだろ───っと!そんな事良いから早く父上を助けに行かなきゃ」

「そうだった!行くぞモードレッド!」

「じゃあ、オレにお姫様抱っこさせてくれ。最短距離で行くぞ」

「えぇ…」

「嫌か?」

「では有り難く…」

 

諦めてモードレッドにお姫様抱っこをさせ、恥ずかしい思いで顔を隠していると、バインダーが翼状に広がり、

 

「飛ぶぞ!スプマドール!」

 

──アルトリウム、認証。 スプマドール、フライトモードニ移行。飛翔 開始

 

「行くぜぇえええええええ!!!」

 

電子音声が鳴った瞬間、俺達は空を飛んだのだ!魔力を推進剤に高く上昇する。眼下の戦場が随分と小さく見えた。

 

「もう地を這う必要なんてねぇ!今は自由に飛翔出来るんだ!キャメロットの壁なんざひとっ飛びだぜ!」

 

そのまま滑空し城壁を飛び越えると、俺達はキャメロットの城下町に着陸した。再び結界が張られているようで、分厚い障壁が行く手を塞いでいる。

 

「下がってな。オレの『/クラレント』でブッ飛ばす」

「/クラレントか…」

 

宝具ブッパに特化したライフルへと変質したクラレントの銃口が目の前に向けられる。魔力が収束&圧縮された直後、凄まじい出力のビームが照射され、結界が吹き飛ばされた。煙が立ち昇る銃身を軽く払って肩に担ぐ姿は様になっている。魔神柱の魔力炉ってそんなに凄いのか…?

 

「ざっとこんなもんよ!さっ、行くぜ!」

「了解ッ!」

 

俺達は全力で走りキャメロットにあるであろう王の間を目指した。

 

 

 

***************************

 

王の間

 

そこでは2人の戦士が獅子王に立ち向かっていた。因みに倒れているのは………

 

「情けねぇ後輩だなぁ。恥ずかしいぜ」

「ひど…い……」

「ただ倒れてるだけじゃねぇか!気合いで立て!シャキッと!」

「いだっ!?」

 

モードレッドに片手で軽々と引っ張り上げられたマシュは足をプルプル震わせながら必死に立っている。

 

「よしそのまま立ってろ。案山子くらいにはなる」

 

モードレッドは快活に笑いながらゆっくりと前に立つと、/クラレントを背中のマウントラッチに懸架しシールドを手前に向けた。

 

「モルデュール!」

 

──アルトリウム 認証、モルデュール 起動シマス─

 

電子音が聞こえた瞬間、シールドが中程から折れて中から小さなバトンが露出、モードレッドがそれを抜き放つとバトンから光の刀身が現れた。ビームサーベル…だよな?アレ。

 

「父上!助太刀するぜ!」

「モードレッド!……………何故私の武器を?」

「あー…霊基再臨の時に『父上みたいに強くなりたい』って願ったら……」ゴニョゴニョ

 

途端に勢いを無くすモードレッドの姿を一瞥したアルトリアはフッと微笑んだ。

 

「許す、私と来い!」

「は…はい!父上!!!」

 

父親の凛とした言葉にモードレッドは笑顔を取り戻し、ビームサーベル「モルデュール」を振ってから戦陣に斬り込んだ。

 

 

 

「何人増えようが変わらん。私は今ある信念に従い戦うのみ」

 

獅子王の力は圧倒的だった。力を解放したロンゴミニアドを指揮棒のように振るい、3人の攻撃を軽々といなし逆に死の一突きを浴びせる。

 

「獅子王!テメェには借りがあるからな!ゼッテー殺す!または裸でドジョウすくいやってもらうぞオラァッ!!!」

 

それでも、モードレッドは下がらずビームサーベルで斬り込む。ロンゴミニアドに阻まれたが、それは彼女の計算内。

 

「ロンドンのアイツの技…使わせてもらうぜ!」

 

敢えてバランスを崩し、隙を見せる。当然見逃さずに穂先を突き出した瞬間。それをダッキングで回避すると、モルデュールを逆手持ちにしアッパーカットの要領でドゥン・スタリオンの首を刎ねた。

 

「貴様ッ」

 

首を失ったドゥン・スタリオンが転倒し、獅子王は跳躍して何とか離脱した。しかし、すぐにルキウスが斬り込む。

 

一閃せよ、銀色の腕(デッドエンド・アガートラム)!」

 

跳躍しての一撃を転がって避けた獅子王は立っていた地点にルキウスの宝具が叩き込まれ、近くにあった柱が破壊される様子を一瞥。呻き声を上げ動きの鈍る彼に襲い掛かるが、カバーするようにアルトリアが鈍剣を手に行く手を阻む。

聖槍と鈍剣が火花を散らして打ち合い、鍔迫り合いとなった。

 

「貴様…宝具はどうした。私と同じサーヴァントなのだろう?」

「我が至高の宝具は…これだけだ!」

 

鍔迫り合いを解除し再びインパクト。この時はと言わんばかりに鈍剣は聖槍と打ち合う程の力を発揮していた。

 

「何故だ。貴様はアルトリア・ペンドラゴンなのだろう?何故最高の宝具が凡百のなまくらなのだ」

 

鍔迫り合いを解除した獅子王はそう問いかけた。そういえば…俺も気になっていた。今まで何度か鈍剣について聞いてみたが、アルトリアはいつも『秘密です』と教えてくれなかった。そして、今…彼女は「どんな聖剣、聖槍よりも優れた宝具だ」と断言した。その理由を知りたかった。

 

「では、聞かせましょう。獅子王にとっては記憶から抹消したどうでもよい記憶でしょうが………」

 

互いに緊張を解かぬままにアルトリアは静かに言葉を紡ぎ出した……。

 

────

 

あの日の私は怒り狂っていた。執政を任せていたモードレッドが叛逆を起こし、私に戦いを挑んで来たというのだ。少しでも私の血が流れているのだからと傍に置いたのがそもそもの間違いであった!あの時姿を認めた時に処刑するべきだったのだ!

理性を失い、感情的になっていた私の目にモードレッド軍の陣が見えた。エクスカリバーもアヴァロンも無いが、ロンゴミニアドがあれば充分だ。当然ながら私は圧倒した。所詮は烏合の衆…怒りと聖槍さえあればあっさり怯んだ。退け、進ませろ、不貞の愚息を討たせろ!

 

散り散りになり逃げ出す兵士を追うように走っていた時、1人の兵士が逆に向かって来た。身につけた装備からして農家から徴兵されたのだろう。そんな装備で勝てる筈が無いというのに…。

 

「これ以上は行かせん!!!」

「ッ!?」

 

だが、私を見ても彼は恐れなかった。私の威光、覇気…その全てを押し返すように彼は刃毀れを起こしたエストックを振り下ろした。何と踏み込みが良い男だ…!

 

「くっ!?」

「これ以上は…絶対に!!!」

 

私の槍を決して振るわせないように彼は斬りかかった。きっと怖いだろうに…逃げ出したいだろうに…彼は躊躇う事無く前へと私を押し込んだ。

 

「何故だ……何故だ!!!」

 

私も負けじと彼を押し返し、槍を振り回す。絶対に殺す!これほどしつこい敵は数少ないだろう…だからここで殺さなくてはならない!……なのに、何故これほど刺し傷を与えているのに倒れない!!!

 

「ぐっ…!?」

 

彼の剣が私の腕にぶつかった。刃は残っていない為、腕を斬り落とされはしなかったが当たった箇所が内出血で腫れるのを感じる。全く引こうとしないのだ!この兵士は!

 

「何故だ…何故死に恐怖しない!!!もう致命傷を幾らも与えているのに!──」

「僕の背には同胞が…家族がいる!絶対に引くものか…絶対に!!!」

 

不屈の闘志を以て幾度も立ち上がり剣を振るうその兵士に私は心の底から恐怖した。怒りなど消え…失禁する程の恐ろしさを全身で感じたのだ。凡人とはここまで強くなれるのか…!

 

「だが、私にも引けない理由がある!そこを退け!!!」

 

震える膝を堪えて突進した私は、今度こそ手応えを感じた。兵士の腹を貫く聖槍…だが、私は何度も死んだ。あの剣が刃毀れを起こしていなければ腕を失い、臓物を引き摺り出され、今当たっている刃先から推測するに首も飛んでいた。直前で彼は何を思ったのか首に剣を叩き付ける事無く押し当てるだけだった。いや、それで限界だったのかもしれない。

 

「見事な腕であった…名も無き兵よ」

「限界……か…」

「…何故剣を止めた」

「さぁ…何故でしょう…?」

 

男は血を吐きながらそう答えた。そして、私の右手に自身の剣を握らせた。

 

「お願いがあります……もし、生きていましたら…この剣を……私の…つ…ま…に………」

「………約束しよう。それまでは私が預かろう…今は安らかに眠れ………」

 

魂を失った亡骸から槍を抜いた私は、戦場に落ちていた鞘に剣を納めて腰に提げ、漸く見えた我が息子モードレッドに斬りかかるべく駆け出した………。

 

 

 

─────

 

「今の私はアルトリア・ペンドラゴンでは無く、名も無き兵として貴様を倒す。いや…この剣で貴様を止めてみせる!」

「なるほど、確かに()()()()があったかもしれぬな。だが、所詮はただの一時の出来事よ。私にはそのような凡百の剣など通用せん」

 

…そうだったのか、アルトリア。あいつはずっと剣を返す為に…ずっと宝剣として持っていたのか。折れても自分で鍛え直し、鏡のようになるまで磨いて大事に持っていた事も…全てはその時まで待っていたからなのか!

 

「凡百の魂宿る剣よ、今一度奇跡を起こしたまえ!」

「笑止」

 

再び打ち合う2人のアーサー王。だが、ウチのアルトリアはまるで「勇猛」のスキルでも入ってるんじゃないのか、と思う程に聖槍を恐れず剣を振るい続ける。兎に角引かずに前に出る。剣を叩き付けるように振るい、反撃しにくい体勢を作った。そうした積み重ねが遂に奇跡を生んだ。

 

「ッ!?バカな!」

 

アルトリアのフェイントを交えた切り抜けが遂に獅子王を捉えた。穂先の先端が砕け散り、獅子王の頬に小さな破片が刺さった。

 

「一矢報いたぞ………ッ!?」

 

だが、そこでアルトリアは魔力枯渇を起こし膝をついた。すぐにアルトリアへの魔力供給に集中し、戦いをモードレッドとルキウスに任せた。

 

「オレに合わせろ!ロキウス!」

「名前間違ってますけど、承りました!!!」

 

戦えなくなったアルトリアに代わり、息子と忠臣は獅子王へと戦いを挑んだ……。




モードレッドのマントは通販で買った「AGP アルトリア」をヒントに採用しました。他にもプリドゥウェンのギミックは「ウイングガンダム」、/クラレントは「ダブルオーガンダム・セブンソード/G」などを元ネタとしています。ミキシングし過ぎましたが、「アストレイ レッドフレーム改」をかなり意識しました(笑)。

因みに、モルデュールが何故ビームサーベルになったかと言うと、「魔法を破り、鋼鉄でも石でもその打撃を防げない」という伝承をモードレッドが「魔法を破り、鋼鉄でも石でもその打撃を防げない?何そのビームサーベル」と解釈した事で爆誕した経緯があります。
また、多くの新規武装には音声認証とアルトリウム(アホ毛)認証のダブルチェックがありますが、これも「アルトリアの兵装を完全な状態で使用するにはアルトリアの象徴であるアホ毛が必要だから」というモードレッドの誇大解釈によって生まれています。

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