Grand Order Of Fate   作:レモンの人

48 / 60
予告通り、モードレッド視点を中心とした話です。






叛逆

「おぉおおおおおおおおおおおお!!!」

 

2つの炎が激突する。騎士が振り下ろすクラレントを折れたクラレントで迎え撃つ。完全なクラレントの切れ味に当然耐え切れなかった刀身が砕け散るが、インパクトの衝撃で軌道が逸れオレの体に当たる事は無かった。お返しに折れた剣を捨て拳を引き絞り矢のように突き出した。クラレントの刀身で受け止めた騎士だったが、魔力を集束させたストレートが刀身に亀裂を入れた。

 

「クソッ!テメェ!!!」

「───っ!!!」

 

続けて袈裟斬りとして振るわれたクラレントを腕のショートシールドでギリギリ受け流してさらに拳を叩き込む。またしても阻んだ騎士だったが、再び亀裂が走る。これ以上は使えないと判断した騎士はクラレントを捨て同じく拳を握って襲い掛かった。互いに即死するレベルの拳を振るい、互いにそれを読んで受け流す。

 

「今こそ俺と1つになれ!!!」

「その言葉…そのまま返してやるぜ!!!」

 

左ストレートをギリギリで見切り、肘打ちを騎士の右肩に命中させる。衝撃で大きく揺さぶられた騎士だったがそれを読んでいたお返しの膝蹴りが鳩尾に命中する。

 

「うごっ…!」

 

刈り取られそうな意識を寸前で繫ぎ止めたオレは頭突きで距離を離す。とうに意識を刈り取られる程のダメージを受けた精神を支えていたのはオレを待ってくれ・愛してくれる立香と父上だった。

 

「まだまだァ!!!」

 

続けて振るわれた騎士の拳がオレの右ショートシールドを砕く。そのままの勢いで右腕がへし折れた。

 

「ッ!?───クソッタレェエエエエエエエエエエエ!!!」

 

だが、痛みを堪えて一切足を止めずにそのまま右腕を顔面目掛けて叩き込む。左腕で受け流そうとした騎士の骨が衝撃で砕け、同時に折れた右腕が千切れ飛んだ。大量出血する血液を一瞥する。まだイケる。

 

「ッ…!」

 

堪らず蹴りで距離を取った騎士は太陽を背に跳躍しヒールを叩き込む。それを見切って避けたオレはそのまま回避動作の勢いを利用した回し蹴りを左肩にお見舞いし、骨が砕ける手応えを感じた。

 

「死ねや!偽者ォ!!!」

「ホンモノは1人で良いんだよ!!!」

 

キャットファイトなどとは程遠い「殺す」為の殴り合い。一瞬の隙が命取りとなる中、オレは感覚のほとんど無くなった腕を盾にして身の安全を確保する。ヒールを突き刺すような騎士の真っ直ぐの蹴りをスライディングで避け、そのまま潜り抜ける。振り向き反撃する騎士の攻撃を再び避けた後、残った拳を真っ直ぐに突き出した。偶然同じ動作をしていた騎士の拳がぶつかり、同時に離脱し回し蹴りを放つ。素早く離脱し突撃を仕掛ける。幾重もぶつかり合い、2つの闘気が混ざり合いスパイラルのように螺旋を描いた。

 

「「ッ!!!」」

 

最後は互いに組み合いの形になり頭をぶつけ睨み合う。既にどちらも死んでも可笑しくない程のダメージを受けている。しかし、互いの意地とプライド・原動力となる感情の爆発がそれを繋ぎ止めていた。やがて、その闘気は2人を包み込み………。

 

「テメェだけは…殺す!」

「この先には…行かせねぇ!」

 

既に霊基が耐え切れずに溶解を始めているのにも構わず、オレは最後の一撃を繰り出した。だが、読み違えた。奴はその拳に対し、味方から奪った剣を向けて迎撃したのだ。

 

───悪りぃ…立香。約束…まも れ な かっ た……───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……バカヤロウ」

 

モードレッドの霊基が消滅した事を俺は確かに感じ取った。あいつは…俺達を守る為に相討ちになった。大きな虚無感を感じてしまったが、そんなものに浸っている暇は無い。

 

「マスター、行きましょう」

「あぁ」

 

弔い合戦だ。あいつの死を無駄には出来ない。アルトリアとルキウスの願いを叶えてやらなきゃいけない。待っていろ…獅子王。今度こそ…!

 

 

************************

 

「───ッ!?」

 

ガウェインは目の前の骸骨剣士を相手に思わぬ苦戦を強いられていた。得意の聖者の時間ですら押されている中、躍起になって剣士の急所を狙い次々と剣を振るう。しかし、全て弾かれ逆に傷を負わせてくる。しかも明らかに手を抜いて……。明らかに力量に差が生じている事を彼は悟った。

 

だが、再びインパクトしようと時、剣士は突然砂嵐を身に纏い姿を消した。呆然と立ち尽くすガウェインだったが、周囲に別の魔力反応が突然発生した事を感じ取った。

 

“まるで、大地が脈動しているような”

 

 

直後、戦場の中央…先程まで2人のモードレッドが交戦していた地点でそれが爆発した。聖剣を地面に突き刺して衝撃波で吹き飛ばされぬよう固定しつつ、顔を上げた時…彼はこの戦場に居てはいけない……決して居てはならない物を目にした。

 

キャメロットに匹敵にする巨体…天を覆い尽くすような翼…炎のように赤い鱗…荒々しいブロンドの鬣……

 

「ウェールズの…赤き龍だと!?」

 

ウェールズの赤き龍…ブリテンの象徴であるその龍…かつて白き龍と戦い勝ったその龍は天を仰ぎ、ゆっくりと口を開き息を吸った。

 

 

“グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!”

 

 

天すら揺るがすような咆哮。急いで耳を塞いだ為にその音の息から身を守る事が出来たが、何も知らなかった敵味方全員が耳から血を流してもがき苦しんでいた。

さらに、龍は鎌首を擡げると口から炎を吐く、真紅の炎…だが、その色がゆっくりと青に変色し…そして絞られたビームが縦に薙ぎ払われる。

 

一瞬にして射線上にいた人間も魔獣も全てが蒸発し、あのキャメロットの城壁や獅子王の結界ですら寒天のように切り裂かれた。

大地ですら深く削られ天変地異のようになった風景を見て、赤き龍は再び咆哮した。




モードレッド………死す。
そして、新たに現れた竜がキャメロットを襲う!!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。