Grand Order Of Fate   作:レモンの人

4 / 60
冬木編終了。
やっぱ変える箇所なさ過ぎィ!





冬木にて…3

「「やったぜ〜!ヒャッハー!!!」」

「セイバー、キャスター、共に消滅及び戦闘不能を確認しました……私たちの勝利…なのでしょうか?」

『ああ、よくやってくれたマシュ、ぐだ男君!所長もさぞ喜んでくれて……あれ、所長?』

 

喜びの言葉が交わされる中、オルガマリーだけは不穏な表情を顔に貼り付けていた。

 

「……冠位指定(グランドオーダー)……あのサーヴァントがどうしてその呼称を……?」

「所長も〜!」

「「イェーイ!!」」

「い…イェーイ……えー、こほん!よくやったわ、藤丸、マシュ、モードレッド。不明な点は多いですが、ここでミッションは終了とします。」

 

そして、彼女は大聖杯にある水晶体を指差し歩き始めた。    

 

「まずあの水晶体を回収しましょう。セイバーが異常をきたしていた理由……冬木の街が特異点になっていた原因は、どう見てもアレのようだし。」

 

マシュもそれに続こうとした瞬間、突然今ある空間に別の存在が現れた。それは………

 

「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。48人目のマスター適性者。まったく見込みのない子供だからと、善意で見逃してあげた私の失態だよ。」

 

「レフ教授!?」

 

その正体は緑のスーツとシルクハットを被った男…レフ教授であった。あの温厚な表情が無ければただの変態紳士である。

 

『レフ───!?レフ教授だって!? 彼がそこにいるのか!?』

「レフ教授!?どうして教授がここに!?自力で脱出を!?」

俺のツッコミに苦笑しながら彼は続ける。

「うん?その声はロマニ君かな?君も生き残ってしまったのか。すぐに管制室に来てほしいと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね。まったく───」

 

そう言った次の瞬間、温和な表情が悪魔のように醜く恐ろしいものとなった。

 

「どいつもこいつも統率のとれていないクズばかりで吐き気が止まらないな。人間というものはどうしてこう、定められた運命からズレたがるんだ?」

「そういうテメェはどうして犬歯しかないんだ?食べる時苦労すんだろ?」

「しーっ!モードレッドさん!それを言っちゃいけません!」

 

こちらの煽りを無視して彼は話し続けているが…もしかして台本通りにしか喋れないタイプの奴なのか?

 

「───!マスター、下がって……下がってください!あの人は危険です……あれは、わたしたちの知っているレフ教授ではありません!」

「って言っても、あのオッサンと喋った事無いから普段のレフ知らないんだよなぁ…」

 

しかし、そんな彼に近付く者がいた。時々レフ教授の名を呼んでいたオルガマリーだった。

 

「レフ……ああ、レフ、レフ、生きていたのねレフ!」良かった、あなたがいなくなったらわたし、この先…どうやってカルデアを守ればいいか分からなかった!」

「所長……! いけません、その男は……!」

 

彼女はレフ教授の胸に飛び込むと泣きじゃくり始めた。普通なら「歳上の“をじさん”に父親を求めるJK」っぽい雰囲気だが、シャレになっていない。

 

「やあオルガ。元気そうでなによりだ。君もたいへんだったようだね」

「───そうなのレフ。管制室は爆発するし、この街は廃墟そのものだし、カルデアには帰れないし…予想外の事ばかりで頭がどうにかなりそうだった……でもいいの、あなたがいれば何とかなるわよね?」

 

彼の胸の中で上目遣いにオルガマリーは微笑んだ。信頼し切った人物との再会は彼女の心を癒した。

 

「だって今までそうだったもの。今回だってわたしを助けてくれる…よね?」

 

しかし、そんな彼女にもレフ教授は容赦の無い言葉を投げ掛けた。

 

「ああ。もちろんだとも。本当に予想外のことばかりで頭にくる…その中でもっとも予想外なのが君だよ、オルガ。爆弾は君の足下に設置したのに、まさか生きているなんて。」

 

その言葉に彼女の顔が凍り付いた。

 

「────え?……レ、レフ? あの、それ、どういう、意味?」

「いや、生きている、というのは違うか。君はもう死んでいる。肉体はとっくにね。トリスメギストスはご丁寧にも、残留思念になった君をこの土地に転移させてしまったんだ。ほら。君は生前、レイシフトの適性がなかっただろう?肉体があったままでは転移できない。」

 

ガタガタと震え始めるオルガマリーにレフ教授は冷たい現実を叩きつけた。

 

「分かるかな。君は死んだ事ではじめて、あれほど切望した適性を手に入れたんだ。だからカルデアにも戻れない。だってカルデアに戻った時点で、君のその意識は消滅するんだから。」

 

 

「ところで、マシュの好きな料理ってなんだ?」

「今シリアス!シリアスシーンですよ先輩!」

「オレ、インスタン─」

「インスタントだぁ?その馬鹿げた妄想ぶち壊す!」バキィッ!

「みゆきっ!?」バタッ

「さて、インスタントとか抜かしたらぶちのめすぞマシュ」パキポキ

「だから!今シリアスシーンです!前向いて前!」

 

 

「ふざ───ふざけないで!わたしの責任じゃない、わたしは失敗していない、わたしは死んでなんかいない……!アンタ、どこの誰なのよ!?わたしのカルデアスに何をしたっていうのよぉ……!」

 

オルガマリーのヒステリックな声が大聖杯周辺に響き渡る。だが、レフ教授は淡々と喋り続ける。

 

「アレは君の、ではない。まったく───最期まで耳障りな小娘だったなぁ、君は。」

 

その瞬間、彼女の体が浮かび上がった。すげぇ!

 

「このまま殺すのは簡単だが、それでは芸がない。最後に君の望みを叶えてあげよう。君の宝物とやらに触れるといい。なに、私からの慈悲だと思ってくれたまえ。」

「ちょ───なに言ってるの、レフ?わたしの宝物って……カルデアスの、こと?や、止めて。お願い。だってカルデアスよ?高密度の情報体よ? 次元が異なる領域、なのよ?」

「ああ。ブラックホールと何も変わらない。それとも太陽かな。まあ、どちらにせよ人間が触れれば分子レベルで分解される地獄の具現だ。遠慮なく、生きたまま無限の死を味わいたまえ。」

 

必死にもがくオルガマリーだったが、手足は宙に浮いており逃げる事すら叶わない。

 

「いや───いや、いや、助けて、誰か助けて!わた、わたし、こんなところで死にたくない!だってまだ褒められてない……!誰も、わたしを認めてくれていないじゃない……!どうして!?どうしてこんなコトばっかりなの!?」

 

髪をブンブン振り回しながらオルガマリーは必死に未練を叫び続けた。きっと、脳内で赤ん坊の頃からやり直してる所なのだろうか…?

 

「誰もわたしを評価してくれなかった!みんなわたしを嫌っていた!やだ、やめて、いやいやいやいやいやいやいや……!だってまだ何もしていない!生まれてからずっと、ただの一度も、誰にも認めてもらえなかったのに───!」

「今際の際の叫びは認めてやろう。よかったね。オルガ」

「そんなのいやぁああああああああああ!!!」

 

意外に粘るなぁ……近付くギリギリで表面に障壁を展開して必死に抵抗している。

 

「すげぇ所長……ゴキブリみてぇな粘りだ」

「喩えが酷いッ!?」

「イテテ…あっ!マスター、アレってあれだろ?『押すなよ!絶対押すなよって奴』」

 

野次馬が頭悪くてごめんなさいとジェスチャーで謝るマシュに何かを勘違いしたのか、レフ教授の表情が突然穏やかになった。

 

「ほう。さすがはデミ・サーヴァント。私が根本的に違う生き物だと感じ取っているな。改めて自己紹介をしようか。私はレフ・ライノール・フラウロス。貴様たち人類を処理するために遣わされた、2015年担当者だ。」

 

レフ教授はゆっくりと顔を上げ、モニターに映るロマンを視界に捉えた。

 

「聞いているなドクター・ロマニ? 共に魔道を研究した学友として、最後の忠告をしてやろう。カルデアは用済みになった。おまえたち人類は、この時点で滅んでいる。」

 

それに対し、ロマンの態度は驚くべき程に冷静だった。

 

『……レフ教授。いや、レフ・ライノール。それはどういう意味ですか。2016年が見えない事に関係があると?』

 

静かに行われる言葉のキャッチボール…俺達は黙ってその話に耳を傾けていた。

 

───ちょっと!アンタ達!ここから出るの手伝いなさ──あっ

 

「関係ではない。もう終わってしまったという事実だ。未来が観測できなくなり、おまえたちは“未来が消失した”などとほざいたな。まさに希望的観測だ。未来は消失したのではない。焼却されたのだ。カルデアスが深紅に染まった時点でな。結末は確定した。貴様たちの時代はもう存在しない」

 

今オルガマリーがカルデアスに吸われていった事に対して俺は何か言うべきだったろうか…いや、死んでしまった人の話を今アレコレ言うべきではない…。

 

「カルデアスの磁場でカルデアは守られているだろうが、外はこの冬木と同じ末路を迎えているだろう。虚しい抵抗だ。カルデア内の時間が2015年を過ぎれば、そこもこの宇宙から消滅する。もはや誰にもこの結末は変えられない。なぜならこれは人類史による人類の否定だからだ!おまえたちは進化の行き止まりで衰退するのでも、異種族との交戦の末に滅びるのではない!自らの無意味さに!自らの無能さ故に!我らが王の寵愛を失ったが故に!何の価値もない紙クズのように、跡形もなく燃え尽きるのさ!」

 

高笑いするのでもなく淡々と続けるあたり、彼からは新人なりたての役者っぽさを感じるな。まるで機械が喋ってるみてぇだ。

と、その時…今いる空間に光の粒子が浮かび始めた。

 

「おっと。この特異点もそろそろ限界か……セイバーめ、おとなしく従っていれば生き残らせてやったものを。聖杯を与えられながらこの時代を維持しようなどと、余計な手間を取らせてくれた。では、さらばだロマニ!そしてマシュ、48人目の適性者。こう見えても私には次の仕事があるのでね。君たちの末路を愉しむのはここまでにしておこう。このまま時空の歪みに呑みこまれるがいい。私も鬼じゃあない。最後の祈りぐらいは許容しよう」

 

天井から次々と岩が落ちてくる。マシュとモードレッドがそれぞれの武器で弾き続けているが、どこまで保つか…。

 

「ロマン!至急レイシフトを実行してくれ!このままだと俺ら死んでまう!!!」

『わかってる、もう実行しているとも!でもゴメン、そっちの崩壊の方が早いかもだ!その時は諦めてそっちで何とかしてほしい!ほら、宇宙空間でも数十秒なら生身でも平気らしいし!』

「そうそう、鼻摘んで息止めてたら数十秒は───ってアホ!この状況でツッコませるな!」

「今先輩のノリツッコミでしたよね!?」

「あぁああああああ!!!ヤベェよぉ…まだ死にたくねぇ……」

『とにかく意識だけは強くもってくれ!意味消失さえしなければサルベージは───』

 

薄れゆく空間の中、俺は咄嗟にマシュとモードレッドを引き寄せた……その先の記憶は…無い。




マシュ・キリエライト
愛称:マシュ
身長:158cm / 体重:46kg
出典:Fate/Grand Order(???????)
属性:秩序・善 / カテゴリ:地
性別:女性
年齢:16歳(『Grand Order』プロローグ時点)
趣味:聖晶石の欠片をぶつける
特技:特に思い浮かばない
概要:今回の不遇枠。マスターが攻撃的且つ戦闘面で仕事をする為に「盾が要らない」という状況に陥り、やや存在意義に疑問を感じている。また、マスターのメタ発言や心にも無い言葉・セクハラ等で弄られキャラとして定着しつつある。




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。