Grand Order Of Fate   作:レモンの人

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本作品はたとえ主人公がシリアスキラーだろうが、死ぬ人は死にます(真顔)



冬木にて…2

ベースキャンプ

 

 

一通り話を聞きながら歩いていると、マシュが用意したという中継ポイントを発見した。

 

「なるほど、ここで補給とか英霊召喚とか何とか出来るわけだ」

「頭悪そうだけど、吞み込みはいいじゃない」

「一言余計だ」

 

設置された召喚サークル付近に立った俺は、移動中に拾った物をポケットから出した。

 

「この聖晶石を触媒にサーヴァントを呼び出せるのな」

「えぇ、3つあれば召喚術を詠唱せずともサーヴァントが召喚出来るわ。試しにやってみせて」

「はいはい、試しに1回入れて…と」

 

3つ取り出すと召喚サークルの中央に置いた。少し離れると、サークルが反応しスパークを起こした。それが徐々に札の形となり、姿が現れた。

 

「所長、これがサーヴァント?」

「バカ!それは概念礼装よ!」

「ちぇっ、ハズレか」

 

概念礼装と呼ばれたカードには「ムーンセル・オートマトン」と描かれていた。チープだなぁ。ハズレって言ってるようなモンじゃん。

 

「サーヴァントに持たせればいいんだよな?」

「えぇ、これでサーヴァントの能力を向上出来るわ。さぁ、試しにマシュに───」

「モードレッド!これやるよ」

「サンキュー!どうだ!カッコよくなったか?」

「」ズーン

「強く生きるのよ…マシュ……」

激しく落ち込むマシュにオルガマリーは同情の声を掛けたという。

 

 

 

 

 

 

「さて、これからどうするかを考えましょう」

 

オルガマリーはさっき拾ったホワイトボードと持っていたペンを手に俺達へ質問を投げかけた。

 

『まず今の状況を纏めんぞ。今ここでは聖杯戦争が起きていた…間違いないんだな?』

「えぇ、この時代の冬木市では聖杯戦争が勃発していました。セイバー・ランサー・アーチャー・キャスター・アサシン・ライダー・バーサーカーが召喚され、激しい戦いが続いたとされています。」

 

彼女の言葉に対しモードレッドが手を挙げる。

「でもよぉ、オレはこの聖杯戦争で呼ばれなかったぜ?」

 

誰に呼ばれたのかは分からねぇけど…と吃る彼女にオルガマリーは腕を組む。

 

「恐らく、先程のシャドウサーヴァントを見るに貴女は別の何かに反応して召喚されたサーヴァントなのでしょう。でも、セイバーを…それも円卓の騎士モードレッドを仲間に出来た事は大きい」

「そんなに褒められると照れるぜ///」

 

「いいから話進めるぞ所長!とにかく俺らがやるべきは敵拠点の占拠じゃねぇのか?」

「そう、でも敵の拠点がどこにあるかが分からないのよ…それが分かれば苦労しないんだけど…」

どん詰まりかぁ…。

 

*********************

 

「♪〜」

「うめぇ!缶詰だけでよくやるな!」

新たに手に入れた缶詰を使い、簡易的にスイーツを作ってみた。みかん・パイン・白桃(モードレッドの剣を借りて適当に切った)を混ぜ、ナタデココを加えた物だが…まぁ、女子達は満足げに食べてくれているので良しとしよう。

 

「甘いもので糖分補給完了!さぁ良い案あるか?」

「「……」」

「ねぇのかよ!!!」

 

途端に閉口する女子達にツッコミを浴びせたタイミングで、ロマンから報告があった。

 

『8時の方向から魔力反応!これは…サーヴァントだ!』

「チッ、おいでなすった!」

汁だけになった容器を投げ捨てたモードレッドは剣を拾い警戒態勢を取る。マシュが俺とオルガマリーを守るように盾を構えた時……そいつは現れた。

 

「よう!あんたら、生存者みてぇだな!」

 

完全にチャラ男な姿をした術師が俺達の前に飛び降りた。

 

「誰だテメェ。魔力反応を見るに…お前、キャスターか?」

「そうだお嬢さん。俺は聖杯戦争に参加しているサーヴァントだ。いや…()()()

 

警戒を解かないモードレッドに、キャスターは敵意が無い事を示すべく杖を置き両手を挙げた。

 

「これで良いか?」

「………分かった。随分と良いタイミングだな…まるで最初から俺達の話を盗み聞きしたみてぇにな」

 

俺は前に出てチャラ男に尋ねてみる。

 

「そうだ。有り体に言えば、美味い話に便乗しようって事だ」

「美味い話?」

「この周りでは魔力不足で飢えたシャドウサーヴァントが彷徨いている。こちらの魔力も心許ない。そこでだ…お前とそこの魔術師の女のどっちかが魔力供給をしてくれ」

 

俺とオルガマリーを指差して彼は要求した。だが、まだ対価を聞いていない。

 

「代わりにあんたは何をくれる?」

「そうだな…敵の本丸の場所へ案内するってのはどうだ?ついでに力になってやろう」

 

なるほど…奴の目的は魔力供給による延命。だが、実質魔力供給が困難である以上、魔力を安全に補給出来るようにしたい…と。

「分かった。ドクター!カルデアから転送出来る魔力でこいつを維持出来るか?」

『充分だよ。ただし、こちらから重ねて条件提示をする』

「あ?他に条件があるのか?」

『真名を預けてもらいたい』

 

なるほど、真名を教えるという事は対策が取れるという事だ。頭良いな、ドクターは。

 

「いいぜ。俺の名はクーフーリンだ」

「「………は?」」

 

───いやいやいや!!!クーフーリンはゲイボルグを操るケルトの戦士だよな!?こんなチャラ男がクーフーリンな訳無いだろ!?

 

「いえ、先輩。英霊の中には複数のクラス特性を持つものがいます。この人は槍の使い手でありながら、魔術師の側面も持つ、高レベルの英霊と思われます……」

「はぁ…。クーフーリンなら抜群の知名度を誇る戦士だぞ。だが槍取り上げられるとか……カレーにご飯無いのと同じだろ…」

「さっきから失礼だよなぁお前!?」

 

俺の言葉にモードレッドがツッコミを浴びせた。これから協力する相手に言いすぎたかな?

 

「気にすんな、仮契約だなよろしくな。マスター」

「お、おぅ」

 

一応、握手してから俺達はクーフーリンを先導に目的地を目指した。

 

**********************

 

『大聖杯……? 聞いた事がないけど、それは?』

「この土地の本当の“心臓”だ。特異点とやらがあるとしたらそこ以外ありえない。」

 

ロマンの質問にクーフーリンは淡々と答えていく。

 

「だがまあ、大聖杯にはセイバーのヤロウが居座っている。ヤツに汚染された残りのサーヴァントもな」

「ライダーは私と所長で再起不能にしましたが…」

マシュ…お前強いんだな。

 

「という事は…残っているのはバーサーカーとアーチャー?どうなの、その二体は。強いの?」

「アーチャーのヤロウはまあ、俺がいればなんとかなるが…問題はバーサーカーだな。アレはセイバーでも手を焼く怪物だ。近寄らなけりゃ襲ってこねえから無視するのも手だな」

「触らぬ神に祟りなしって奴だな。了解。じゃあバーサーカーに悟られねぇように移動すっぞ!」

 

 

 

 

 

大聖杯

 

「って事で、途中クーフーリンのスパルタ指導でマシュが仮想宝具を使えるようになったりしたが、やっとゴールにたどり着いたのであった まる」

「酷いッ!私の心温まる成長物語を端折らないでください!!!」

「いや…原作から変える要素無いしよ…」

「メタ発言!?そしてなんで私の扱いがぞんざいなんですか!?」

「だって、盾とかぶっちゃけダサ──」

「もうやめて!マシュのライフはとっくにゼロよ!もう立ち直れなくなるから!」

 

「おい…そろそろ話を進めたいのだが…」

「お前喋れるのかよ!?」

 

黒化した騎士の前で説明口調気味に話しツッコミが飛び交う中、耐え切れずその騎士までもツッコミを飛ばして来た。しかもクーフーリンまでもがツッコミを飛ばし返し収拾がつかなくなってきた。取り敢えず収拾をつけるべく俺から話を進める事にした。

 

「あー、悪い悪い。ところでお前がクーフーリンの言ってたセイバーか?」

「その通りだ。何を語っても見られている…故に案山子に徹していた」

セイバーの目線はマシュの盾に向いている…が、もう1人。セイバーの顔に憎しみを持って睨む者がいた。

 

「ちち…うえ…!」

「モードレッド、どうした?あいつ女だろ?」

 

そう言った瞬間、モードレッドが剣を引き摺りながら勝手に突貫を開始した。

 

「死ね!今度こそ殺す!!!」

「──この剣筋…なるほど、貴様か」

 

渾身の一撃をセイバーはひらりと避けて黒い剣を振り下ろす。バク転でそれを回避したモードレッドは刺突で応戦する。

突然、2人だけの世界になり置いていかれる俺達…。

 

「モードレッド!一度下がれ!!!チッ…言っても聞かねぇか」

 

彼女への指示を諦めたその時、殺気が飛来した。慌ててカバーに入ったマシュの盾にそれがぶつかる。

 

「くっ!?」

「───今のを防いだか。なかなかの勘だ」

 

盾の隙間から様子を伺うと、そこには弓に矢を番えたシャドウサーヴァントがいた。恐らくあれがアーチャーか。

 

「クーフーリン、すまない。あいつの足止めを頼む」

「了解、別にあいつを潰しても構わねぇんだろ?」

「いいぜ、殺すか否かは自己の判断に任せるが最低限無力化しろ」

 

そう指示を送り、俺は足元に転がっていた枝を拾った。コレとコレを組み合わせて……よし。

 

「先輩?」

「いい事考えた」ニヤリ

 

 

 

 

 

 

「チッ、相変わらず強い…!」

「そして貴様は相変わらず周りが見えていない。私を倒す事に執着するあまり、マスターを無視し殺しかけた。貴様に足りないのはその視野の狭さよ」

「ほざけ!!!」

 

30回目のインパクト。クラレントと黒剣が鍔迫り合いを起こし火花が散る。距離を取る為に蹴りを入れたがモードレッドだったが、その隙を見逃さなかったセイバーの一閃が彼女から剣を叩き飛ばした。遠くに突き刺さるクラレント…モードレッドに彼女の剣技を防ぐ手立てはない。

 

「しまっ──」

「これで終わ───ッ!?何っ?」

 

トドメを刺さんと剣を振り上げたセイバーの顔に鈍い衝撃が走った。頬に当てたその手には血が滲んでいた。

 

 

───

 

「よっしゃ!ガキん頃にやってたコイツの腕前、思い知ったか!バーカ!」

「先輩、煽ったら殺されます」

 

ガキん頃に隣の家の栗の木から実を落とす為に練習したスリングショットの腕、どうだ!その辺にあった枝と蔦で作ったモンだが、奴の面に一発ぶちかましたぜ!!!

 

「おのれ……蛮族が…」

「あ──やべ」

 

ワナワナと震えるセイバー。その魔力の放出量が一気に増大する。マシュの後ろに隠れ次の尖った石を拾った俺は可愛い後輩に指示を下した。

 

「マシュ、仮想宝具展開。死んでも俺を守れ」

「酷いッ!ですが、了解しました!後輩のカッコいいところ、見せます!!!」

 

マシュが盾を構え、地面に突き刺す。大きく息を吐いた彼女から魔力が放出されて巨大な盾状のエネルギーが前面に展開された。その名も『人理の礎(ロード・カルデアス)』。厨二臭いがまぁ良しとしよう。

 

「聞こえてますよ先輩…」

 

まぁ、俺のいびりで緊張が解れたのか、展開されたエネルギーの障壁は厚く、丈夫に展開されていた。

 

「面白い、私の剣技…その盾で受け止めてみろ。エクスカリバー・モルガ──」

「させるかオラァ!!!」

 

対抗するように何かの剣技を放とうとしたセイバーだったが、モードレッドのドロップキックによって妨害され、放たれたビーム(?)はあらぬ方向に飛んで行き……

 

「なんでs───」

「ちょっ──味方ご」

 

別の場所で交戦していたキャスターとアーチャーに激突した…合掌。すまん、不慮の事故だ。許せ。

 

「モードレッド…きさ…痛ッ!?この……痛ッ!?」

 

剣をモードレッドに蹴り飛ばされた後は完全にリンチだった。殴り合いで上回るモードレッドによる殴る蹴るの暴力の嵐。反撃しようとすれば俺の狙撃で悉く妨害。

 

「先ぱーい…私何すればいいですか〜?」

「所長でも守ってろ〜」

「」

 

完全に見せ場を失ったマシュはトボトボとオルガマリーに近付き、盾を構えた。そう、活躍せずとも守る。盾持ちの大事な仕事だ。

 

「ハハハ!!!反撃なんてさせっかよ!!!」

「ねぇ今どんな気持ち?防戦一方だけどどんな気持ちィ?」

「くっ…!卑怯者が…!」

「なんとでも言えや!勝つ為ならリンチでも喜んでやってやらぁ!!!」

 

もうどっちが悪役か分かんねぇなこれ。結局、ダメージが蓄積し続けたセイバーは、モードレッドの飛び膝蹴りを防ぐ体力も無く鳩尾に膝を埋められてノックダウンした。

 

「「イェーイ!」」

 

戦いに勝利した俺達はハイタッチを交わした。ついて行けずにため息を吐くマシュをオルガマリーが慰めている。死者1名か…クーフーリン、惜しい奴を亡くした。と、意識を回復させたセイバーが起き上がった。が、ダメージが蓄積し過ぎて体は動かず、這って進み壁にもたれた。

 

「───フ。知らず、私も力が緩んでいたらしい。最後の最後で手を止めるとはな」

「嘘つけや、中盤から手も足も出なかったろうが」

 

俺のツッコミを無視して彼女は続ける。

 

「聖杯を守り通す気でいたが、(おの)が執着に(かぶ)いたあげく敗北してしまった。結局、どう運命が変わろうと、私ひとりでは同じ末路を迎えるという事か……いずれ貴様らも知る、グランドオーダー───聖杯を巡る戦いは、まだ始まったばかりだという事を…な」

 

言いたい事を言った後、セイバーは意識を手放した。今度こそ勝利したらしい。その勝利を噛み締めてはいたが、オルガマリーの表情は…………。

 

 

 




モードレッド(その1)
愛称:モーさん
身長:154cm / 体重:42kg
出典:アーサー王伝説
スリーサイズ:B73/W53/H76
属性:混沌・中庸 / カテゴリ:地
趣味:バカ騒ぎ・ゲーム
特技:奇襲・昼寝
概要:円卓の騎士であり、かつて叛逆の騎士としてアーサー王と相打ち(実質負け)になった彼の息子。ぐだ男とは同じタイプのキャラの為、何故か似通っている。『物事を大局的に見る事が出来ない』という劇中での指摘の通り、それが『器ではない』理由となっている。
一方、モードレッド本人は父上であるアーサー王にある想いを抱いている…。


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