をじさんぐだぐだ明治維新頑張るぞー
「さぁて、回すゾォ」
「はいはいお疲れお疲れ」
手をスリスリしながら俺は召喚サークルを眺めていた。今回もしっかりと30コ貯めた聖晶石を突っ込んで俺は期待感に胸を膨らませた。
そしてそれは人の姿を成した………。
「私が来たからには、どうか安心なさい。全ての命を救いましょう。全ての命を奪ってでも───私は必ずそうします」
「「ひぃっ!?」」
なんかヤバイの来た。赤い軍服に鋭い眼光の女性…凄まじい気迫か、いや気迫なんて生易しいもんじゃない。もっと凄い何かだ。
「ふむ…貴方がマスターですか」
「あ、あぁ。」
「お、オレはその相方のモードレッドだ。よろしくッ!?」
その瞬間、モードレッドの襟首を女性は掴んだ。顔を近付けるとスンスンと匂いを嗅ぎ、ジト目になった。
「貴女、怪我をしているようですね」
「あ、あぁ…眉毛を成形してた時にちょっと……」
完全に萎縮してしまったモードレッドはまるで蛇に睨まれたカエルのようになって俺に目で助けを求めていた。
「いけませんね。即座に殺菌しましょう。いえ、しなければなりません。今すぐいらして下さい」
「ひっ!助けて…助けてくれマスター!!!」
「や、止めてくれ!モードレッドの怪我はただの軽い切り傷だ」
「いえ。ただの怪我でもそこから破傷風を発症し、壊死する危険性があります。即座に殺菌。その後切除します。」
「止めろ!!!頼むから!!!モードレッドにはちゃんと破傷風の予防接種をしてあるんだ!殺菌だけで済むだろうが!」
「───分かりました。では、殺菌しましょう」
ダメだ…全然話を聞かねぇ。このままだと相棒がキズモノ(物理)にされちまう!
「ウチには最新の医療が出来る人がいるんだ。だから要らな──」
直後、凄まじい銃声が響いた。何事かと扉を開けるサーヴァント達がいる中、女性の手に握られていたのは旧世代の遺物とされる「ペッパーボックスピストル」。かなりヤバイやつを当てたみたいだ…。
「この銃とその治療、どっちが最新ですか?二度言わせないで下さい」
「くっ───」
だが、こんな所で引き下がる訳にはいかん。
「悪いがアンタは─」
「私の名前はフローレンス・ナイチンゲールです。以後お見知りおきを」
「──へ?」
え!?よく白衣に天使の姿で描かれるような可憐な乙女…の筈なんだけど……。
「天使とは、美しい花を撒くのでは無く、苦悩する誰かの為に戦う者よ」
「いや、間違いなく名言なんだろうけど話を聞けよ」
「───何度も言わせないで下さい」
そう言うとナイチンゲールはペッパーボックスピストルに弾丸を高速で装填した。その時間わずか1秒。早過ぎる。
「実際に施設に来てくれ。こっちには医者がいる!軽薄な男だが優秀な奴だ!」
「───分かりました。彼に治療を頼みましょう。当然、私も見守ります」
「勘弁してくれ……」
レアプリズムに変換しようか真剣に考えよう………。
*********************
ナイチンゲールがカルデアの医務室に住むようになってから、彼女の習性を少しずつ理解出来るようになった。
「痛ッ…」
「我が王よ、無理をせずそちらにお待ち下さい。もうすぐでフィッシュ&チップスが完成します」
「いえ、こういう時は唾を付けておけば治ると聞いていま──」
「話は聞かせていただきました」ズギャァアアン
「ひっ!?」
「アルトリアさん。人の唾液には約一億前後の雑菌が存在します。それを傷口に入れた場合、免疫が低下している方はそこから病気を患う危険があります。しっかりと殺菌した後やはり切除ですn──」
「カットバンで大丈夫ですから!!!」
①怪我をしたら速攻で治療という名の切除を行おうとする。
「ただいま〜、お腹減ったわ。オヤツある?」
「あぁ、あんころ餅が出来たてだぞ」
「ありがと───」
「ジャンヌ・ダルク。お待ち下さい」ド☆ン
「えぇ…!?私何も悪い事してないわよ!?」
「いえ、手を洗っておりません。それどころかウガイすらせずにその汚い口と手で食事をしようなど言語道断です。さぁこちらへ」
「まっ!?ちょっ───ゴボゴボゴボ」
②手洗いウガイの他にも消毒液に顔面を浸けさせてまで殺菌しようとしてくる。
「よーし、今日は酢豚・ご飯・中華スープにしようかな…」
「ぉおおおおおお!!!オレ中華大好き!楽しみだぜ!」
「食後には杏仁豆腐もあるからな──」
「話は聞かせていただきました」ギョーン
「げぇ!?婦長ぉ!?」
「ふむ…メニュー表ですか……」
「あぁ、美味そうだろう?」
「──食事バランスが悪いですね。食事の比率は穀物50%・野菜20%・肉魚類10%が基本となっています。オマケに脂っこすぎて体に脂肪が付きます」
「まぁ、そうだけどさ…」
「え?50+20+10だと80%にしかなんねぇぞ?」
「腹八分目という言葉があるでしょう?人間の健康寿命を伸ばし長生き出来ます。また、免疫力の向上やダイエットにも効果があります。こちらが統計データです」
「分かってんだよ。それくらいよぉ…今日は打ち上げで」
「問答無用です。こちらが私の提案するメニュー表ですのでご利用下さい。私も監視を兼ねて調理補助を致します」
「───…はぁ」
③過剰なレベルでお節介を焼いてくる
*********************
「作戦会議だ」
「そうですね」
俺と円卓の騎士団はマイルームに用意した大きめの卓袱台に座っていた。
「ナイチンゲールの奴をどうするかだ」
「言ってる事は正しい。それは理解出来るんだが、全然楽しくねぇんだよ」
「それは理解出来ます。私もマッシュポテトを作っていましたところ、『栄養が足りない』と言われまして…気が付けば肉じゃがとサラダを作らされていました」
「ぇぇ…」
口々に不満が漏れ出す。それらをメモに書き連ねていった時、俺はある恐ろしい思いつきが浮かんできた。
「モードレッド、俺…対策に気付いたわ」
「は…?」
「言ってくる」
急いで上着を羽織ると、目的地へと向かった。
「ナイチンゲール。今日は大事な用事があって来た」
「何ですか?」
医務室に入るとナイチンゲールがレポートを書いていた。早速、彼女に俺が用意した物を手渡した。
「これは…?」
「現代医療の本だ。で、これは精神医療の本。これを読んで感じた事を教えて欲しい」
「ふむ……因みに、私は断るつもりですが──」
「今回ばかりは令呪3区画使ってでも話を聞いてもらうぞ」
「───分かりました。こちらには目を通しておきます。令呪はこんな場所で使わないようにお願いします」
「ありがとうな。この本を読んでナイチンゲールの中で何か大きな発見があれば嬉しい」
フッと微笑み…俺は医務室を出た。出て数歩歩いた瞬間、俺は膝から崩れ落ちた。
「あー…マジで怖かった……」
流石に心臓が止まる思いだった。だが、その効果は意外にもすぐに見受けられた。
「──…」
「(なぁ、マスター…あれって)」ヒソヒソ
「(あぁ、間違いない…)」ヒソヒソ
次の日、共用の洗面台に行くと、鏡に向かい合い口元を指で引っ張り笑顔を作ろうとするナイチンゲールの姿があった。
ナイチンゲール
真名:フローレンス・ナイチンゲール
身長:165cm / 体重:52kg
出典:史実
スリーサイズ:不明
属性:秩序・善
性別:女性
概要:カルデアに降臨した紅い悪魔。今作は理屈さえ通っていれば納得してくれる聞き分けの良い女性となっている。が、Lv1の時点で単騎で円卓の騎士団を壊滅させる程の戦闘力を持っている。ぐだ男はそんな彼女が貴重なサポート役なので集中的に種火を注ぐようになった。