たたたたたたたた……
「私……オレはまだ行ける!頼む!連れて行ってくれ──うっ!?ごほっ!ごほっ!」
「流石にこれは無理だ。ゆっくり休んでろ」
「マスター……すまん」
最悪だ。次の任務の地であるロンドンに行こうとしたところ、当日にモードレッドが風邪に罹ってしまったのだ。高熱で魘されている彼女は仕方ないのでゆっくりと寝かせる事にした…が、今回の任務は難しくなりそうだ。なにせ相棒が動けないのだから。
「こういう時は可愛い後輩にたy──」
「アルトリア、円卓の騎士達と後輩を頼んだぞ。俺はジャンヌと2人で行動してる。いいな?」
「酷いッ!?いつもこんな扱いですよね!?たまには2人で居させてください!」
「盾と守りが取り柄のマシュは拠点防衛向きだって言ってんだろ!前線に出て来るな!」
「もぉ怒りました!今回の任務はボイコットします!反省するまで助けに来ませんからね!」
相棒が居なくなったからかいつも以上に苛立った上に後輩も喧嘩同然に追い払ってしまい、1人になった俺は大きく溜め息を吐いた。
「……流石に言い過ぎたか」
まぁ、謝る気はない。あの男子達が動けるなら充分だ。副官のアルトリアと護衛係のジャンヌも居るしな。
「んじゃ、行ってくる」
「マシュとはちゃんと仲直りするんだよ」
「しねぇよ。あいつが自分の役割に気付くまではな」
俺はロマンの言葉を受け流しコフィンに入った。
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「レイシフト完了だ。全員無事か?」
「はい、今回も普通にレイシフト出来ました」
「よし全員居るな…ってマシュも来たのか」
「先輩が謝るまでついて来ます」
結局、アルトリア・ガウェイン・トリスタン・ベディヴィエール・ジャンヌ・マシュというメンツでロンドンを探索する事になった。
「ったく…ストレス溜めさせるなよ?」
「見ててください!私が一番活躍出来るサーヴァントだって事を証明しますから!」
ムキになるマシュと呆れ顔のジャンヌを連れて、俺は歩き出した。アルトリア達には独自に探索を行うミッションを依頼している。
「にしても霧が深いな…ジャンヌ」
「そうね、でもいいの?アンタの後輩がすごい拗ねてるわよ」
「良いんだよ。アイツは自分がまだ見えてねぇんだ。見えるまで俺は何も言わない」
「まぁ私には関係無い話だから」
にしても、霧の都市ロンドンとして有名なイギリスだが世界史の本に書いてあったよりも濃い霧がこの都市全体を包んでいた。
「おかげでこっちは敵がハッキリ見えないってのがサイコーにムカつく」
たたたたたた……………
「そうだな、下手に出過ぎると敵を見失うな」
たたたたた…………
「一応、守りますので先輩は前に出過ぎないようにお願いします」
たたたた………
「頼むぞ後輩。無茶しない程度に……?」
たたた……
「マシュ!後ろだ!!!」
たた…
「え───?」
直後、俺の顔に何かがかかった。そっとそれを手で触って確かめると……それは…
「マシュ─────!!!」
「敵襲!?何処から!?」
ジャンヌが慌てて抜刀し、旗を突き出して牽制しながら周囲を伺う。だが…一瞬感じた殺気は既に無く、何処かへ消えていた。
「ん……」
気がつくと私はとある家のベッドに寝かされていた。身動きを取ろうとすると体の奥に痛みを感じ、動くのを止めた。
「目が覚めたか、マシュ」
「先輩──」
「動かない方がいい、腹を裂かれている。現地の人に縫合してもらって出血が止まったばかりだ。しばらくは安静にしていろ」
「お腹を…?」
「あぁ、五臓六腑がはみ出て酷かったぜ。聞くか?」
「結構です」
「とにかく、今は休んでろ。臓器の損傷は無かったが、ダメージはあった筈だ。当分は点滴で我慢しろ」
「はぃ……」
大人しく寝ているとマスターが点滴を入れ替えてくれた。時折包帯を替えたりと自分にここまで向き合ってくれる先輩を見るのは初めてだった。
「そんな顔をするな。死なれたら困る」
「…」
「完全に塞がったら何か食わせてやる。リクエストはあるか?」
「フィッシュ&チップスで…」
「あれただの揚げ物じゃん」
「酷いッ───!」
「安静にしろって言ったろうが!!!」
当分は私の所為で任務の遂行は延期…ですか。何とか遅れを取り戻さないと……もう振り返ってもらえない。そう思い私は汚名返上を決意して眠りについた。
通り魔幼女によってマシュ戦闘不能。ジャックちゃんは女性特攻である事を時々忘れるが、セイバー系の曜日クエストでアーチャーを差し置いて活躍する有能。