Grand Order Of Fate   作:レモンの人

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今回は冬木編突入です。いよいよあのサーヴァントが登場します。今回から、主要キャラの解説を毎話後書きに記載します。






A.D.2004 炎上汚染都市 冬木
冬木にて…1


「───っ!?」

 

気がつくと、そこは燃え盛る廃墟ばかりが広がる都市だった。手に残る温もりを少し名残惜しく握りしめると、周辺に何か戦える物が無いか探した。

戦う事で培われた経験がこの事態を危機と決め、身を守る物を探す事が最適解と決めたのだ。

 

「ったく…なんなんだこれは……」

 

取り敢えず、まだ使えそうな長い鉄パイプを瓦礫から引っ張り出した。これは使った事がある武器だ。

 

「取り敢えず、生存者を探すか………」

 

まずは情報収集だ。

慎重に移動しながら、俺は周囲に目を光らせた。見た感じ人間は居ない………闊歩する骸骨は別として。武装している辺りヤバそうな雰囲気がプンプン漂っている。筋肉も無いのにどうやって体動かしてんだろう?

 

「なんだありゃ」

 

そう思っていた時、足で蹴ってしまった鉄パイプが瓦礫に当たった。それにより瓦礫が崩れ、音が立つ。

 

「あ」

 

気付いた時は既に手遅れだった。骸骨達総勢4体が鈍刀を手に襲い掛かってきた。

 

「ヤバっ……が、1人の時に敵に背中を向けたら死ぬってのがお約束だ」

 

慌てず俺は鉄パイプを槍のようにして構えた。

 

「だから、前にッ出る!!!」

 

一気に刺突した鉄パイプは骸骨の顔面を砕いた。頭を失った骸骨は手をぷらーんと垂れ下げ、力尽きて倒れた。

 

「弱点があるならなんとかなるってな!!!」

 

続けて遠心力を使った薙ぎ払いでもう一体の背骨を叩き割り間髪入れずに頭を踏み砕く。取り敢えず、二体潰した。まだ二体がこちらにジリジリと近寄っている。動きを見るに…経験者の骸骨か。勝てっかなぁ…。

 

緊張した空間の中、俺は突然殺気を感じた。いや、()()()から感じてはいたんだが、これほどの力は知らない…!

 

───ァーサー!!!───

 

本能に従って伏せた瞬間、プラズマ電流を纏った光の奔流が一瞬にして骸骨達を殲滅し、他の瓦礫ごと蒸発させた。

 

「な…なんなんだ……!?」

 

理解出来ずに混乱していた時、今度は別の音が聞こえた。骸骨のガチャガチャした音では無く…重厚感のある…それでいて軽やかな足取りと…鉄がぶつかりカチャカチャ鳴る音…それが近づいて来た。

覚悟を決めて鉄パイプを構えた時、視界に入ったのは骸骨でも荒くれ者でも無く……()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

「生存者みてぇだな」

 

騎士は俺の顔をまじまじと見つめて……突然どっかりと瓦礫の山に胡座をかいた。

 

「あ〜よかった〜…独り言ばっかブツブツ言ってんのもう飽き飽きしちまってよぉ〜……」

「誰だお前?」

 

そう尋ねると、騎士はあっさりと兜を脱いでくれた。男とも女とも取れるようなキリッとした顔にブロンドの髪を一本結びにした…これは女で良いのか?

 

「オレははぐれサーヴァントのセイバーだ。」

「藤丸立香だ。ダチからはぐだ男って言われてる」

「一文字も合ってねぇじゃねぇか!?」

 

Dr.ロマンと同じツッコミを受けて俺はやれやれと肩を竦めた。対するセイバーは頬をぽりぽりと掻きながらも警戒を怠らず周囲を見回していた。

 

「ところで、なんで兜を脱いだんだ?」

「理由は2つだ。1つ、初対面の相手だから。2つ、クソ暑い」

「納得」

 

ココアシガレットをボリボリ食って考えを巡らせる。他に生存者がいるかどうか正直怪しい。食糧も調達出来そうにない…やや詰みに近い状態だ。どうすれば…?

 

『あぁ!やっと繋がった!もしもし、こちらカルデア管制室だ!聞こえる!?』

「Dr.ロマン!よかった〜、助かりそうだ…」

 

空間にモニターが表示され、Dr.ロマンの顔が見えた。俺を見た事のある人物と出会った事でやっと安心する事が出来た。

 

「ん〜?なんだこれ?空中に絵が出てるぞ?」

 

騎士は浮かび上がるモニターを興味深げにジロジロ見ている。サーヴァントという事は過去の人間なのだろう。

 

『ちょうど良い!我々の事情を説明して協力を仰ごう!』

 

 

 

(中略)

 

 

 

「状況は理解した。つまり、こいつを安全に届ければ良いんだな?」

『大雑把に言えばそういう感じだ。頼めるかい?』

「頼めるも何もさっき宝具をぶっ放しちまって魔力があんまし残ってねぇんだよなぁ」

 

言われて気が付いた。この騎士…少し透けている。

 

『じゃあ条件を提示しよう。そこにいるぐだ男君が君のマスターとなり魔力を供給する。君は全力で彼をバックアップする。悪くはない話だろう?』

「んー…等価交換かどうかは怪しいが了解。どのみちこのままくたばるよりはマシだ。取り敢えず、散策しながら他に生存者がいるか探しておく」

「助かる、セイバー」

 

取り敢えず、セイバーと契約を結ぶ。同時に魔力供給が行われ、彼女の肉体が(恐らく)元に戻った。

 

「じゃあ、気楽に行こうぜ!マスター」

「分かった。まずは飯だ飯!どっかの家の地下室に缶詰めの2つや3つあるだろ!」

『いきなり略奪タイム!?』

 

まずは飯。どうせ人類が居ないのであれば飯食い放題ってのがお約束だろ?

 

*********************

 

「ヒャッハー!!!略奪ダァ!!!」

「これだけ探して缶詰め15個かよ…水は黴が浮いてるからアウトだしよぉ…」

 

丸3時間使って住宅地らしい場所やショッピングモールを探したが、結局見つかったのはこれだけ。しかも、見つけたとある場所には腐った死体が転がっており、前歯が2本転がっていた。恐らく、缶切りを失い前歯で開けようとして失敗したんだろう……合掌。

 

「取り敢えず、飯だ飯。缶切りも見つかったし、分けて食おう」

「いや、サーヴァントは飯食わなくても大丈夫だ。マスターは必須なんだから優先して腹ァ満せ」

「…悪い」

 

取り敢えず、コーンビーフを開けて肉にかぶりついた。舌の肥えた俺の口には合わないが…まだ食えるか。

 

「お前も一口どうだ?」

「いや、さっき言ったばっk──」

「良いから、1人だけ食ってんのは嫌だからよ」

「じゃあ一口……ぅぇまずッ…マスター、後で吐くなよ…」

 

彼女の口にも合わなかったらしい。期限はまだ3日あるのに…質が悪いんだな。

 

「よし、探索するか…」

 

俺は缶詰を地下室で回収した風呂敷に包んで背負った後、鉄パイプを肩に担いだ。彼女もまた、手に持つ剣を肩に担いで歩く。

 

「セイバー、鞘は無いのか?」

「あ、こいつ?こいつ鞘に入れるとスパスパ切って使い物に出来なくしちまうんだ。仕方ないから抜き身のままこうやって運んでんのさ」

「不便な剣だな」

「まぁ、そんだけの切れ味を持つ剣だ。例えばッ!」

 

セイバーは突然跳躍すると、目の前の瓦礫の壁を一閃し杖のように足元に付いた。直後、瓦礫の壁に綺麗に線が出来、続いて放ったキックで見事崩れ落ちた。あー…これは鞘に入れられないな…。

 

「ざっとこんなもんよ!」

「すげぇな。カッコイイぜ」

「だろだろ!俺の剣はなんたって聖k……ごほん!何百切っても切れ味の落ちない名剣なんだからな!」

 

胸を張るセイバーに思わずほっこりしてしまった俺は、ふと聞き覚えのある声を耳にした。

 

「この声……あいつまだ生きてやがったか!」

「?」

「セイバー!生き残りがまだいるぞ!」

「了解!クソッ…勘が冴えねぇ!」

 

セイバーは悪態を吐くと兜を被り、凄まじい速度で走り出した…。

 

 

───────

 

 

駆け付けると、そこには2人のサーヴァントによって襲われる1人のサーヴァントがいた。しかも、その1人とはあのマシュだ。魔力が供給され切っていないのか、フラフラした動きで攻撃を避けつつ武器である盾で身を守っていた。中々の粘りだが、重厚な攻撃が得意なランサーと身軽な動きで攻めるアサシンが相手ではそれももう保たないだろう。

 

「シャドウサーヴァント2体か…理性が崩壊してるから実力の30%ってとこか」

「行けるか?セイバー」

「上等!」

 

くるくると剣を回したセイバーはそれを下段に構え、一気に距離を詰めた。

 

初見の感想から云えば、『圧倒的且つ暴力的』。彼女の戦い方は、『型に嵌る事無く機転と応用を利かせ、剣だけでなく手足を存分に使った戦い』が際立つものであった。セイバーの介入で、まず手に掛けられたのはアサシンだった。飛び蹴りでマシュから引き剥がした後、その柔軟な動きで翻弄するように攻め、懐に迫ってきた相手には蹴りで牽制。距離を取ろうと後退しようものなら剣で斬り付ける。決して同じ動きをせずに微妙に違う動きを絡める事で「翻弄して攻める」筈のアサシンを逆に追い込んでいた。

 

「手応え十分ッ!」

 

トドメの薙ぎ払いによって胴体と泣き別れたアサシンは霊核を切り裂かれ消滅した。加勢するはずのランサーはマシュが必死に喰らい付き、動きを封じられていた。「アサシンよりは目で追える」相手を任せた事で確実に敵を分断出来たのだ。

 

Take That, You Fiend(これでも喰らいやがれ)!」

 

最後に残ったランサーの攻撃も穂先を切断し蹴りで怯ませた後、勢い良く跳躍して振り下ろした剣により真っ二つに裂かれ消滅するのを確認したセイバーは疲れたと言わんばかりに剣を杖にして休んだ…剣を杖……?

 

「よくやったぞ、モードレッド卿」ボソッ

「なっ!?今のでバレたのかよ!?」

 

そうこっそり労いの言葉を伝えた途端、セイバー…もといモードレッドは頬を真っ赤にした。

 

「だって今のポーズはカムランのアレだろ?」

「…癖なんだよ、てか今のでよく見破ったな……」

 

真っ赤にしたままの頬を掻いて誤魔化す顔は妙に可愛かった。モードレッドって女だったんだな…勉強になります。

 

 

 

 

 

「無事でなによりです!先輩!」

「てか何故上半身しか無かったのにいつの間に下半身も治ってんだ?」

 

太腿を指でつんつん突いてみたが…これちゃんとした人の肌だよなぁ……どうなってんだ?

 

「あの…先輩……突くの止めてください」

「へいへい、私が悪ぅございました」

「この体は私がサーヴァントになった事で新たに出来上がった体です…尤も、戦闘能力とこの体しか貰えず、私を助けてくれたサーヴァントも消えてしまったので真名も分からずじまいです…」

 

へぇ、と取り敢えず相づちを打ってから、俺は突くのを止めて残り二本となったココアシガレットの箱から一本を咥えた。

 

「モードレッドも食う?」

「煙草じゃねぇのか…まぁ、一本貰うぜ……まずッ!?」

「悪かったな、禁煙中だ」

 

モードレッドも馴れた手つきでココアシガレットを咥えた所、マシュと同じく顔を顰めた。そんなにマズイか…これ。

 

「で、他に生存者はいるのか?」

「はい、あちらに所長が………所長?」

 

「殺される殺される殺されるぅうううううううううう!!!」

 

ゴミ箱から声が聞こえたのでひっくり返すと、中から泣きながらボソボソ呟く所長…オルガマリー・アニムスフィアが出てきた。まぁ、良く生き延びたな…としか。

 

「所長」

「ひぃっ…って!?アンタは…!」

「よっ!ところで色々分かんない事あるから聞いていいか?」

 

取り敢えず、親しげに声を掛けてみた…が、

 

「きゃああああああああああああああ!!!犯されるぅううううううううう!!!」パシーン

「なんでぶたれんの俺!?」

 

 

 

 

平手打ちを食らいました。




プロフィール①

藤丸 立香
愛称:ぐだ男
年齢:18歳。高校卒業したて。
趣味:料理、食べ歩き、グルメ巡り
特技:料理
概要:「レモン式FGO」の主人公。人相がやや悪い面構えと顔の傷から、怖がられている。喧嘩っ早く、元不良且つ現役中に何度も大規模な喧嘩をしている経験から、雑魚レベルのエネミーを倒せるぐらいの戦闘能力は持っている。冬木編にてモードレッドのマスターになる。


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