Grand Order Of Fate   作:レモンの人
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オルレアン編完結です。やっぱり長編は馴れませんね…シナリオ展開といいシリアス展開といい未熟さを思い知らされました。反省…






オルレアンにて…7

我が麗しき父への恩返し(クラレント・リターン・アーサー)!!!2発目を喰らえ!!!」

モードレッドの宝具が民衆に炎を吐こうとするファヴニールの顔に直撃する。痛みに身を悶え頭を振った事で黒ジャンヌは振り落とされ草の上に墜ちた。

「かはっ───!?」
「殺れ!」
「殺せ!」

彼女の息の根を止めようと襲い掛かる民衆をお付きのサーヴァント達が殺して守る。混沌とした戦場に俺達は介入した。ここまでアルトリアの馬で何往復かして運んでもらったが、何とか間に合った。

「久しぶりだな!ヴラド公!次は負けん!」
「よくぞ来たアーサー王。次こそ仕留めてやろう」

アルトリアとヴラド三世の槍が交錯し

「Arrrrrrthurrrrrrrrr!!!」
「父上の下へは行かせねぇよ!!!」

モードレッドとランスロットがぶつかり合い

「アァアアアアアアアアアアマデウスゥウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!」
「ボクの八つ当たりに付き合ってもらうよ!」

アマデウスとアサシンのサーヴァントが激突し

「我が名はシュヴァリエ・デオン!いざ尋常に勝負!」
「ゲオルギウス、参る!」

セイバーのサーヴァントとゲオルギウスが刃を交え

「もう一度貴様を地獄に叩き落とす!覚悟しろ!ファヴニール!」
「私も先輩の為にいいとこ見せます!」
「グォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

ジークフリートがマシュの援護を受けてファヴニールに斬り掛かり

「私は過去から目を逸らさない!そして、アンタを倒す!」
「お黙り!!!」

いつの間にか(?)居たエリザが自分の未来と称した女と衝突した。






「退きなさい!」

襲い来る民衆を相手に半泣きで抵抗する黒ジャンヌの下に現れたのは本物のジャンヌ・ダルクだった。旗を投げ捨て腰に提げた細剣を引き抜いた。

「───いいでしょう。どちらが本物か…決めようじゃありませんか」

黒ジャンヌも旗を投げ捨て細剣を抜いた。宝具を捨て、互いの実力のみの決闘。怒りに震えるギャラリーが彼女達を取り囲む中、先に動いたのは黒ジャンヌだった。

「はぁああああああああああ!!!」
「───はッ!!!」

剣がぶつかり合い、2人とも退かずに押し合う。

「絶対に殺してやる!!!」
「では私は…怒りではなく哀れみを以って応えましょう!」

力強く打ち払ったジャンヌは剣先を喉元に向けて振るう。打ち払いで折れた細剣で黒ジャンヌが受け止め、流す。しかし、すぐに体勢を立て直したジャンヌの突きが黒ジャンヌの腹を刺し貫く。

「──何故だ!何故裏切った国民の為に戦う!!!」
「私は後悔していないからです」

怒りに身を委ねるまま黒ジャンヌは剣を投げ捨て、刺さった剣を引き抜きそれも捨てた。黒ジャンヌの腹からは大量の血が噴き出ているが、アドレナリンが分泌されその痛みを打ち消していた。次は肉弾戦だった。

「アンタにだけは───負けない!!!」

黒ジャンヌはジャンヌ・ダルクである証でもある冠を外し、それをナックルダスターとして握って襲い掛かった。手首を握って受け止めようとしたが、力を抑えきれず頬が切れる。

「ハハハハハ!!!ザマァみろ!!!」
「───何がッ!」

対しジャンヌは頭突きで応えた。思わず後退りし鼻血が流れる黒ジャンヌはそれを甲冑で拭い、再び殴り掛かった。だが、それは届く事なくジャンヌの足払いで阻まれた。馬乗りになり黒ジャンヌの顔に拳を埋める聖女の姿に野次馬から歓声が上がる。ヨーロッパ人は血の気が多いな、ホント。






「マスター!魔力供給に集中してくれ!」
「おぅ!悪りぃ…なッ!!!」

俺も矢を放ち、ワイバーンの柔らかい腹を撃ち抜いて倒す。これで3頭。黒ジャンヌがご覧の有様なのでワイバーン達の統率に乱れが出ており、それが撃墜の容易さに繋がっている。因みに矢は一般人から借りている。

「ジークフリート!そっちはどうだ!」
「押され気味だ!加勢に来てくれると助かる!」
「了解!」

槍を借りて、戦場を駆け抜ける。襲い掛かるワイバーンを牽制しつつファヴニールに下へ向かった俺は、弓に持ち替えた。

「目を狙うんだ。怯んだ隙に倒す!」
「俺の射撃は雑なんでね。当たるかは分からんぞ──ッ!」






「Arrrrrr!!!」
「───ッ!」

モードレッドの胸にランスロットの剣が刺さる……だが、彼女はニヤリと笑った。

「かかった…!」
「!?」

同時に甲冑がパージされる。その衝撃で剣の勢いが落ち、モードレッドはその剣先を片手で掴んだ。炸裂装甲…彼女がカルデアで見たアニメにあった戦法だった。

「オレの勝ちだッ!!!」

モードレッドのクラレントがランスロットの兜を突き貫き、彼はビクッと数回震えてから消滅した。鎧の下に装備していた赤いサラシには傷1つ無かった。ぶっつけ本番であれだけ出来るとは流石アルトリアの息子といった所か。

「出直して来いクズ野郎!」
「モードレッド!加勢に来てくれ!」
「今行くぜ!」

消えゆく姿に中指を立てたモードレッドは笑顔で俺達の加勢に来た。徐々に形勢がこちらの有利になってきたな!これなら…!











その時、遠くの方から何かが殺到してくる音が耳に聞こえた。咄嗟に俺は危険と判断した。

「総員撤退!ジャンヌ!一旦退け!!!」
「分かっています!」

最後に一発蹴りを入れて黒ジャンヌの意識を刈り取ったジャンヌは急いで民衆に対し旗を掲げ避難するよう告げた。
マシュが宝具を展開しながら誘導していたその時、俺はその存在を視界に捉えた。不気味な海洋生物だった。ヒトデともイソギンチャクともタコとも似つかない怪物の大軍…それが濁流のように押し寄せて来た。避難が間に合わなかったアルトリアが流され、アルトリア・アマデウス・ゲオルギウス・エリザと対峙していたサーヴァントも呑まれていった。一瞬冷や汗が出たが、幸いアルトリアはドゥン・スタリオンを鼓舞しながらその波を渡って戻って来た。
そして、もう1人…黒ジャンヌに駆け寄るべく濁流から出てきた者がいた。黒装束の不気味な男………。

「ジャンヌ!なんと酷いお姿に…!」
「ジ…ル……!」
「すぐにお城へお連れしますぞ」

「させるかッ!」

迷わず矢を番え、最後の一射を放つ。

「グッ!?……」

矢は男の右肩を貫通したが、彼は怯むことなく黒ジャンヌを抱えて大軍の上に乗ってオルレアンへと逃げ帰っていった………。

******************

「なんとか助かったが、黒ジャンヌは変な男に連れられて占拠した筈の城に逃げた…悪い。俺の判断ミスだ」
「総力戦は正解だったと思うぜ。現に被害は最小限で済んだ」

ファヴニールを見ると、抵抗しているが次々と群がる海魔達に貪り食われていた。やや腑に落ちないが、助かったのは確かだ。

「マシュ、他の皆さんを家に帰してください」
「あの…ジャンヌさんは?」
「私はあの城に用があります」

ジャンヌは海魔の海の先にある城を視界に捉えていた。決着を付ける気なのだろう。だが、彼女の力では対抗出来ないだろう。ましてや先程の戦いでジャンヌ自身も消耗している筈だ。

「では、私がドゥン・スタリオンで運びましょう。ただし、戦闘員は少数で」
「編成は決まっている。アルトリア・モードレッド・ジャンヌ…そして司令塔の俺だ。俺の指揮は絶対…だが、危険と判断した時は自分で動け。いいな?」
「「はい!!!」」
「海魔の海は城門まで続いている。そこから先は減っているだろう。多分、奴の宝具で展開されたものだが、恐らく召喚のし過ぎで奴も弱っている。今がチャンスだ!」

アルトリアはドゥン・スタリオンを説得し、4人乗りの許可を得た。4人も乗せられるんだからアーサー王伝説の名馬はヤバイ。
取り敢えず、1番前にアルトリア・2番目にジャンヌ・3番目に俺が座り、モードレッドが俺の背中にしがみつく形になった。

「頼みますッ!」

アルトリアが手綱を引き、ドゥン・スタリオンが海魔の中を駆ける。ホントにドゥン・スタリオンには無茶をさせ過ぎた。帰ったら美味い飯と良いベッドで休ませてやらんとな。

───

オルレアン 城内

「器用なもんだな!」

狭い廊下を器用に飛んで来るワイバーンや襲い掛かる海魔の中をロマンから受け取る情報を頼りに正面突破で駆け抜ける。振り落とされないようジャンヌの腰にしっかりと掴まる。

「もう少しです…!」
「指定ポイントです。降りて下さい!」

その言葉で一斉に降りた俺達はモードレッドが背負っていた武器を受け取り、扉の前に立った。この先に…黒ジャンヌが…そして、あの男が居る。

「行くぞ!」

俺は扉を蹴破り、部屋の中…玉座の間に入った。そこには確かに黒ジャンヌとあの男がいた。ジャンヌの言っていたジルという奴だ。だが、馬に乗っている間の彼女の説明により、奴はサーヴァントである事を知った。ならば遠慮する必要がどこにあるかってんだ!








「ジル、偽ジャンヌ…覚悟しろ」

黒ジャンヌの方は腹を裂かれたダメージが大きすぎた為か、意識が朦朧とし、ジルは傷口を押さえて延命しようとしていた。

「ジル…わ…たし…まだやらなきゃ…いけない……」
「もう良いのですよジャンヌ。貴女は十分に働きました。ゆっくりとお休みなさい…明日の朝も忙しいですぞ?キャンセルしたツアーをもう一度やらねばなりません。その為にも…今は疲れた体を癒しなさい…」
「あり…が…と……ジ…ル……あす…も…いっぱい…うた…わ…な…きゃ……」

彼女の姿が光の粉へと代わり、霧散した。シャドウサーヴァントのような黒い粒子ではなく、モードレッド達と同じ…サーヴァントであった。

「やはり……」

ジャンヌが前に出るとジルはゆっくりと立ち上がった。その顔には怒りも憎しみも無かった。ただ、無表情。

「そう、この時代でアイドルとして活動していたジャンヌ・ダルクは私がこの力に願ったモノ…」

ジルの手に掲げられたのは黄金の杯……。先の問答で俺も理解した。あのジャンヌはジルの妄執の塊である事くらい…。

「ジル…」
「私は貴女達が憎い…そして、ジャンヌ・ダルク…貴女が憎い!何故貴女はあれほどの屈辱を受け、それでも赦すのだ!貴女の無知と純粋な心を弄び、見捨て魔女と断罪した奴等を…!」

ジルの魔力が増大する。ここが正念場だ。モードレッドもアルトリアもそれぞれに武器を構え、攻めの姿勢に入った。

「貴女は赦すだろう。しかし、私は赦さない! 神とて、王とて、国家とて……!!滅ぼしてみせる。殺してみせる。それが聖杯に託した我が願望……!我が道を阻むな、ジャンヌ・ダルクゥゥゥッ!!」

刹那、爆発的な魔力暴走により俺達は吹き飛ばされた。だが、それぞれに受け身を…俺はモードレッドに受け止められてダメージを回避した。
爆発の先にあったのはこの玉座の間を覆い尽くさんとする巨大な海魔であった。

「ここは危険です!一度退きましょう!!!」
「何処へ退けって言うんだ!どこもかしこも海魔だらけ!間に合わねぇよ!」
「オレの宝具でぶっ飛ばす!各自衝撃と閃光に備えろ!」

力強く床を踏みしめたモードレッドは魔力を放出し刀身に収束させる。

「我が麗しき父への恩返し───ッ!!!」

モードレッドが放った渾身の宝具が海魔に直撃する。だが、肉の塊の一部を焼くだけで、焼き切れず照射の光が尽きた。

「すまねぇ…乱発し過ぎで……」
「いや、今ので充分だ」

焼き払われた肉の奥にはジルが居た。先程から壊れたように高笑いを続けている辺り、完全に精神が崩壊したようだ。次々と肉の塊が追加されその姿が再び消える。

「ジャンヌ、攻撃が来た瞬間に宝具で守ってくれ。残った体力は守りに回してくれよ!」
「はいッ!」
「モードレッド、魔力を回すからもう一発だけ頼めるか?」
「はいはい……あと…オレが死なない程度に一発だけな」

それぞれに戦闘態勢を取り、アルトリアはロンの槍で牽制して巨大な海魔を進撃させないよう駆けていた。モードレッドに対し俺は躊躇無く令呪を使う。オルガマリーの資料にある通り、令呪は応用すればサーヴァントの宝具一発分の魔力供給は傷の修復も出来る。それを利用してモードレッドの宝具を高速チャージする。

「終わったらマッサージでも何でもやってやる!頼んだぞモードレッド!」
「何でも…な」ニヤリ

モードレッドは再び力強く床を踏みしめる。クラレントへ白銀の粒子が集まり、巨大な刀身となる。大きく呼吸をした彼女は静かに言葉を紡いだ。

「これこそが、燦然と輝く王の剣!───我が麗しき父への恩返し!!!最大出力だ…腹いっぱい喰らえ!!!」

そして、クラレントを振り被った。放たれる白銀のビームが海魔の肉へと直撃し、次々と焼いていく。だが、聖杯と宝具から得ている圧倒的な魔力炉が再生力を高め、渾身の一撃はジルの手前で霧散した。

「───今だッ!!!」

俺の叫びと同時にジルは視界にさっきまで蝿のようにしつこく動いていたサーヴァントを見失った事に気が付いた。


「───最果てより光を放て……其は空を裂き、地を繋ぐ! 嵐の錨!」

クラレントの光と轟音で気付かなかったが、いつの間にか天井が砕け、上空には見失ったサーヴァントが居た。
ロンの槍を掲げ、其れは一気に天から地へと駆ける。

「─最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)!!!」

再生が間に合わない。最期に見た一瞬の光に手を伸ばした彼は……アルトリア・ペンドラゴンの特攻の一突きによって腹を穿たれ、巨大な海魔の体内の魔力が暴走し、大爆発を起こす。その前に後退したアルトリアを含め、全員がジャンヌ・ダルクの後ろに隠れる。そして、聖女は臆する事無く旗を掲げ、魂の叫びを上げた。


「我が旗よ、我が同胞を守りたまえ!──我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)!!!」

飛び散る肉片や棘がジャンヌ・ダルクの宝具により防がれていく。腰を据え踏ん張る彼女に、俺は魔力を供給し続けた………。


**********************

「聖杯回収完了。ミッションコンプリートって奴だ!」

ロマンに向けて通信を送ると、彼を含めたスタッフ達が歓喜の声を上げた。一時期どうなるかと思った戦いだったが、任務は無事に完了した。皆に労いの言葉を掛けようとして振り返った時、聖女はいつの間にか姿を消していた……。

「ロマン、別の場所で待機しているマシュとフォウを含め、レイシフトを実行してくれ。もう帰る!帰ったら美味い飯と熱い風呂に入って休む!」
『そうしてくれ。よし、レイシフト開始!』
「かーっ…疲れたァ……よし、マスターに何お願いすっかなぁ♪」
「ズルいですねモードレッド、私もお願いしたいものです」
「おい!なんかヤバイ事になってねぇか!?」

俺達は肩の荷が下りた気分でレイシフトによってこの時代から消え去った………。





─────



「──くっ、間に合わなかったか…」

ジル・ド・レェ率いる部隊が登場した頃には竜の死体達の姿が薄れ、海魔達も消えかかっていた。
その中で、1人佇む少女を彼は確かに見た。

「ジャンヌ・ダルク!」
「ジル…」

消え失せようとしている体を見たジルはジャンヌに何を言えば良いか決まっていた。だが、その前に聖女は微笑んだ。そして、唇を動かして何かを告げた後……彼女はこの世界から消滅した。

「やはり、貴女は……。いや、それでも。死してなお、この国を……!赦して欲しい、ジャンヌ・ダルクよ!我々は、フランスは、貴女を裏切ったのだ!!!」




ジルの慟哭が対照的な程に爽やかな青空に響き渡った………。



ジル・ド・レェ
身長:196cm / 体重:70kg
出典:史実
属性:混沌・悪 / カテゴリ:人
性別:男性
イメージカラー:濁った黒
特技:イベント立案・プロデュース
好きなもの:ボーイッシュな少女、フェミニンな少年 / 苦手なもの:政治・財政管理
概要:後に青髭と語り継がれるようになった男。今作では序盤と終盤のみの登場。元々、黒ジャンヌにアイドルをやらせようとした理由は「ジルの特技がプロデュース」だったから。彼の企みはジャンヌの推測通りだった。