【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

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新文のスクープ(その4)

 

 

 

 

 

記事はまだまだ続く。

 

 

 

〉次に会ったのはスラリとしたスタイルながら、豊かなバストの持ち主で『ユニットNo.1の美女』と呼び声高い『Aさん(21)』だ。

 

〉実際、高校在学中から、各芸能事務所がスカウト合戦を繰り広げていたという噂があるほどだ。

 

〉しかし、彼女は引く手数多(あまた)の誘いを断り、現在は都内の外語大学に通っている。

 

〉Aさんと言えばポニーテールをしている印象が強いが、今はむしろ、髪をおろしている方が多いらしく「ここ1年でグッと大人の色気が増した」と評判が高い。

 

〉当然、そんなAさんを周りが放っておくハズもなく、アタックする男子はあとを絶たないという。しかし今のところ、彼女のハートを射止めた者はいないとのこと。

 

〉記者も、突撃取材を試みた際、彼女の美貌と吸い込まれそうな蒼い瞳に、完全に心を奪われてしまい、危うく本来の趣旨を忘れるところであった。

 

〉ふと我に返り、本題であるアイドル活動の再開について尋ねたところ、彼女はうっすらと笑みを浮かべて「без комментариев」と言い残すと、そのまま町中へと消えていってしまった。

帰って調べてみると、それはロシア語で「ノーコメント」と言っていたことがわかった。

※Aさんは祖母がロシア人のクォーターである。

 

〉通訳になる為(ロシア語は堪能だが)苦手な英語を猛勉強中らしい。近い将来「美しすぎる通訳」として、対象者よりも話題になることは間違いないだろう。

 

 

 

 

 

「なに?この気持ち悪いほどの礼賛記事は?新文の記者にいくら渡したのよ」

 

露骨に嫌悪感を現したのは、にこだった。

 

「絵里ちゃんが美人なのは認めるけど、ちょっと誉めすぎだよね」

と穂乃果も不満そうだ。

 

「明らかに『絵里推し』ね。昔からのファンなのかしら?」

 

真姫の言葉に、絵里は

「さぁ…」

とだけ答えた。

 

「いいなぁ、絵里ちゃんはモテモテで」

 

「穂乃果だってモテるでしょ?」

 

「う~ん…友達はいっぱいいるけど、告白されたことは…」

 

「絵里ちゃんは彼氏作らないの?」

 

ことりが、絵里の顔を見る。

 

「そういうわけではないけど…いい人がいない…っていうか…」

 

「そりゃあ、絵里ちゃんに見合う人は、なかなかいないよね」

 

穂乃果がそう言うと、他のメンバーも同意した。

 

「違うの。見た目がどうとかじゃなくて…それこそ、さっきの凛の話じゃないけど、希を超える存在じゃないと納得できないというか…」

 

「なんだ、絵里ちゃんも他人(ひと)のこと、言えないにゃ」

 

「えぇ、だから私は凛のこと、否定しなかったでしょ?」

 

「そうだったにゃ!」

 

「やっぱり、付き合いが長いし…全部言わなくてもわかってくれるというか…」

 

「わかるよ、かよちんも一緒にゃ」

 

「もっと言うとね…μ'sに入って…あなたたちに出会って、私は変わった。今はあなたたちといる時が、一番リラックスできる時なの。素の自分でいられる…というか。だから…私が本当に『好き』っていう人が現れて、心を許せる人が現れない限り、お付き合いとかは…」

 

「ひょえ~…穂乃果なんか、好きって言われたら、それだけでクラっと来ちゃうけど」

 

「アンタは単純過ぎるのよ」

 

「それが穂乃果ちゃんのいいとこなんだけどね…」

 

「ことりちゃん…暗に穂乃果のこと、バカにしてない?」

 

「そ、そんなことないよ…」

 

「次はそういうアンタのことが書いてあるわよ」

 

「ことりのこと?」

 

 

 

 

 

〉4人目は『正統派美少女』の『Mさん(20)』である。

 

〉高校時代の一時(いっとき)メイドカフェで『○ナリンスキー』と名乗ってバイトをしたことがある。期間はほんの数ヶ月であったようだが、愛くるしい表情と「脳がとろける」と揶揄されるほどの甘い声、そして神接客が相まって、一瞬で『カリスマメイド』と呼ばれる存在となった。業界関係者によれば、彼女は今でも『伝説』と語り継がれ、その時の生写真はネットで数十万円で取引されているという人気ぶりだ。ちなみに前出のAさんとは違い、ロシアとの関わりはない。

 

〉今は美大に通っているMさん。当時と変わらない可愛らしい声と、潤んでいるような瞳を目の当たりにすると、記者も一瞬で骨抜きにされそうな『魔力』を持っている。

 

〉アイドル活動の再開について質問すると「さぁ、どうなんでしょう?ちゅん、ちゅん!」と誤魔化されてしまった。ブサイクな女子にこんなことを言われると殴り飛ばしたくなるが、彼女のそれはすべて許せる!!天性のオジサンキラーだ。

 

〉ユニット在籍当時は、衣装製作を担当していた彼女。将来は、洋服だけでなく、アクセサリーやインテリアのデザイン、さらには空間演出などを行うトータルコーディネーターを目指しているという。

 

〉彼女が造り出すモノ。それは甘く優しく…きっと我々に癒しを与えてくれるに違いないだろう。

 

 

 

 

 

「…なに?このオヤジ目線のスケベな記事は!絵里の以上に気持ち悪いんですけど…」

 

にこは「おえっ!」と1回吐く真似をした。

 

「これだけ読むと『女性が選ぶ嫌いな女子』の典型みたいな人物像ね…」

 

「真姫ちゃん、ズバッと言いすぎにゃ…」

 

「でも、ことりの場合、狙って作ってるキャラじゃなくて、誰に対してもこの喋り方だし…」

 

「絵里、それはわかってるわ。私はことりのキャラを非難してるんじゃなくて、この記事の書き方がいやらしい…って言ってるの」

 

「真姫ちゃんの言う通り!だいたい絵里ちゃんは『ユニットNo.1美女』とか、ことりちゃんは『正統派美少女』とか書いてあるのに、穂乃果はなんで『かなりふっくら』なのさ!差別だ、差別!人権団体に訴える」

 

 

 

「…」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「まぁ、それはそれとして…ことりが『正統派』なら、にこは『本格派美少女』って感じかしら」

 

「相変わらず、妄想癖が激しいにゃ」

 

「なんでよ!」

 

「ことりちゃんは?彼氏作らないにゃ?」

 

「う~ん、今はあんまり考えてないかな…」

 

「でも、周りに言い寄られるでしょ?」

 

「なくはないけど…でも美大の学生って男女問わず、やっぱり芸術家肌の人が多くて、みんな自分の作品に没頭してるから…」

 

「へぇ…」

 

「まぁ、アンタみたいなタイプは男が放っておかないから、作ろうと思えばいつでも作れるんじゃない?…変なヤツに引っ掛からないようにしなさいね」

 

「は~い!」

 

「にこちゃんは自分の心配をしたほうがいいにゃ」

 

「うるさいわね…私は大丈夫なの」

 

「そうだよね、にこちゃんは家庭的だもんね。男の人は、そういう女性にに惹かれるから…」

 

「そういうこと!見た目だけで、料理のひとつもできないような女には負けないんだから!」

 

ことりの言葉に、一切の否定をしないにこ。

 

「料理のひとつもできない…って、それ、て私のこと?」

 

「あら?アタシは別に真姫とは言ってないけど…」

 

「別にいいけど…」

 

「その真姫ちゃんが、次の記事だにゃ」

 

「へっ?私?」

 

凛は週刊誌の文字を読み始めた。

 

 

 

 

 

〉続いてはユニットでは主に、作曲を担当していた『Nさん(20)』だ。

 

〉彼女は現在、医大に通っている。

 

〉『医大』と聴いて『意外』と思われる方もいらっしゃるかも知れないが(決してシャレではない)、彼女の両親が医師であることを考えれば、医学への道は幼い頃からの規定路線だったといえよう。

 

〉逆に我々が取材をして意外だったのは、彼女が元スクールアイドルで活躍していたことを、同級生のほとんどが知らなかったことだ。受験勉強で忙しく、そういうことに興味がなかったということか。

 

〉彼らによると、普段は眼鏡を掛け(医大生である為当たり前であるが)白衣で過ごしており、休憩中も独りで目を閉じて携帯音楽プレーヤーを聴いているとのことで、非常に地味な存在だという。

 

〉ただし、私生活は少し違うようだ。休日には真っ赤なスポーツカー(外車)を駆って、海へドライブに行くなど、一転してアクティブな一面を見せる。その身なりは地味どころか、高級ブランド服を華麗に着こなした『令嬢』といったところで、元スクールアイドルだけあって、身のこなしも軽やかだ。

 

〉我々の取材に対し「アイドル活動の再開?なにそれ?意味わかんない…」と剣もほろろの塩対応。根拠はないが、きっと『ツンデレ』に違いない。対面してみて、そう思った。

 

〉メロディメーカーとして、数々の名曲を産み出してきたNさん。果たして、再びピアノを奏でる日は来るのであろうか。

 

 

 

 

 

「真姫ちゃん、友達いないにゃ…」

 

「い、いるわよ!」

 

「知ってはいたけど、相変わらず寂しい人生を送ってるのね」

 

にこは半笑いで真姫を見る。

 

「そ、そんなわけないじゃない。勉強は勉強でちゃんと集中したいだけ。医者になるって、そんな簡単じゃないんだから」

 

「でも、休日だって独りじゃない」

 

「あのねぇ、私にはあなたたちがいるから、それで充分なの!」

と真姫は、にこを見据えて言った。

 

「…あ、当たり前でしょ…そんなこと…」

 

にこは視線を外しながら、そう呟く。

 

 

 

「でも…私たち、いつまでこうしていられるのかな?」

 

 

 

「穂乃果?」

 

 

 

「今はみんな、まだ学生だったりで、わりとこうして会えるけど、仕事持ったりとか、家庭持ったりとかしたら、やっぱりそうはいかなくなるよね…」

 

「うん、頻繁には会えなくなるね」

と、ことり。

 

「だよねぇ…」

 

「そうしたら、真姫は孤独死しちゃうかもね」

 

「しないわよ!っていうか、にこちゃん。別に私、大学に友達がいないわけじゃないから!この記事が大袈裟過ぎるのよ」

 

「無理しない、無理しない」

 

「だから、いないわけじゃ…」

 

 

 

「穂乃果の質問だけど…」

 

 

 

「絵里ちゃん?」

 

「直接会えなくても、大昔と違ってコミュニケーションツールは日々発達してるわけだし、みんなが元気だったら、いつまでだってこうしていられるわよ」

 

「そうだね」

 

「ただ…」

 

「ただ?」

 

「さっきも言ったけど、みんなへの依存度が高すぎて…それがたまに心配になることはあるわ。逃げ道がある…って言うのかしら…。何かあっても、みんながいる…っていう安心感」

 

「それじゃダメなのかにゃ?」

 

「だけどそれは裏を返せば、みんながいなくなった時、どうしよう…っていう不安があるわけでしょ。だから、どこかで、甘えすぎは良くないんじゃないかな…とも思うの」

 

「その時はその時よ」

 

「にこ…」

 

「頼れるうちは頼ればいいんじゃないの?これだけ固い絆で結ばれてる仲間なんて、世界中探しても、そういないと思うんだけど」

 

「そうね…」

 

にこの言葉に、絵里は大きく頷いた。

 

 

 

 

 

~つづく~

 


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