【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
《大物カップル!高野梨里と夢野つばさ!?》
《高野梨里 二股疑惑!?》
《元スクールアイドルの裏切り行為!?》
『週刊 新文』は、3大スクープと銘打って、センセーショナルに売り出された。
〉オリンピックの開幕を直前に控え、日本国内でも各種目、メダル獲得の期待が高まっている。
〉そんな中『悲劇のヒーロー』と呼ばれているのが、男子サッカーオリンピック代表候補だった『高野梨里(20)』だ。
〉ご存知の通り、オリンピックのアジア最終予選でロスタイムに『ジョホールバルの再来』と呼ばれる劇的なゴールをあげた、日本が誇る中盤のドリブラーである。
〉当然、オリンピック本番でも、その活躍が期待される選手であったが、合宿の直前、交通事故に巻き込まれるアクシデントに見舞われ、一時は意識不明の重体に陥った。
〉幸い一命は取り留めたが、しかし頚椎損傷という重傷を負い、今日現在入院中だ。
〉残念なことに、オリンピックに出場できなかったばかりか、今後の選手生命まで危ぶまれている状況である。
〉ここまでは、既に報道されている通りで、今更説明する必要もないだろう。
〉先日、復帰に向けた決意と、日本代表に送ったエールが公開されたが、本人の無念はいかほどのものか…我々では計り知れず、この不運には同情せざるを得ない。
〉しかし、彼にはそんな悲しみを癒してくれる、素敵な彼女がいることが、我々の取材で判明した。
〉その人の名は『夢野つばさ(20)』である。
〉モデル、アーティストとして活躍したあと、サッカー選手に転身し、いまや、なでしこジャパンのエース的存在となっている、あの夢野つばさである。
〉「えぇっ!?」と驚いたかたも多いだろう。
〉夢野つばさは、いわゆるスキャンダル処女で、それこそ、これまで浮いた話のひとつもなかったのだから、無理もない。
〉しかし、中には「やっぱり…」と思った方もいるかも知れない。
〉2人は小学校時代の同級生であり、それが縁で夢野つばさがサッカー選手に転身する際、高野梨里に諸々レクチャーを受けた…というのは、関係者やファンなら、あまりにも有名な話である。
〉だからこそ「もしかしたら、そういうことがあるかも知れない」と考えていた人も多いハズだ。
〉関係者の話によると、やはり二人は「それだけの関係ではない」という。
〉それが判明したのは、高野が事故に遭った当日の夜。
〉一報を聴きつけ、病院にはサッカー協会やオリンピック代表の幹部など複数の関係者が集まった。
〉そこに現れたのが夢野つばさであった。
〉報道陣を避けるように、緊急外来口から入ってきたという。
〉「同じオリンピック代表として、居ても立ってもいられなくなって」と、その理由を述べた夢野。
〉その時は混乱の中にあって、特に誰も疑問には思わなかったが、冷静に考えてみれば「あの状況下で単身病院に駆けつけるというのは、よっぽどのこと」と、その場に居合わせた関係者のひとりは明かす。
〉「確かに、事故については速報が流れたくらいですし、その時点で知っていることについては、まったく不思議じゃありませんが、身内でもない人があの時点で病院に駆けつけるというのは、ちょっと早すぎますよね」と前出の関係者。
〉しかし、それだけなら同級生やサッカーの師匠という間柄にあって、本当に心配してのことでは?と思わなくもない。それに対し「もちろん、それはあると思いますが、私にはもっと親密な間柄に見えました。そこには当然、ご両親がいたのですが、つばささんと高野のお母さんが会話している様子は『仲の良い嫁と姑』という感じでした」と言い「とても、単なる顔見知りではなかった」とも語った。
〉交際期間は不明だが、その様子からすると、両親公認の中であり、かなり長い間、密かに愛を育んできたことが窺い知れる。
〉それを裏付けるように、その後、病院内では、度々、夢野の姿が目撃されている。
〉長身の彼女は、それだけでも目立つ存在なのだが、特に変装することもなく、人目も憚らず来院していた。
〉自身もオリンピックを直前に控え、色々大変な時期である。にも関わらず、ほぼ毎日のように高野を見舞っていたようだ。
〉意識が回復した今も、基本的に高野は面会を拒否しているが、彼女だけは別らしい。
〉当初は投薬の影響で眠っていることが多かった高野だが、夢野は静かにその様子を見守っていたという。
〉「彼女は幼いときに父親を交通事故で亡くしていますからね。同じようなことが起きて、相当ショックだったようです。ですから、必死に回復を祈っていたと思いますよ。もし最悪の事態になっていたら、とてもオリンピックどころの騒ぎじゃなかったかも知れません」と、こちらは夢野をよく知る事情通。
〉この献身的な回復祈願の甲斐もあり、幸い高野は一命を取り留めた。
〉そして彼女自身のオリンピック欠場も回避されたのだった。
ここまでを読み終えて高野は
「浅い記事だな…」
と呟いた。
…そもそも誰だよ?関係者とか事情通って…
…まぁ、いつかはわかることだし、バレて困るわけじゃないが…
…このタイミングで出すかね!?…
高野の顔が険しくなった。
「このタイミングしかなかったんだろうな」
病室にいた父親が言う。
高野にこの週刊誌を見せた張本人だ。
「どういうことだよ?」
「彼女が出発する前にこの記事を出す…というのは、いくら新文とはいえ、気が退けたのだろう。不祥事でも不名誉なことでもないが、さすがに熱愛報道で取材陣が殺到するとなると、世間の反応は『新文よ、大事な時期に何報じてるんだ!?』となりかねないし、バッシングは免れない」
「実際にそうなってるけど?」
「いや、彼女は今、日本にはいないから、下衆な芸能リポーターの追及を受けるようなことはない」
「でも、マスコミは結構詰めかけてるだろ?」
「現地にいるマスコミで、このタイミングでそんなことを訊く人はいないよ。そういう人は…よっぽど空気が読めないか…炎上覚悟の目立ちがり屋だ」
「そうかな…。でも、それなら帰国してからだって構わなくないか?」
「彼女たちが、いつ帰国するかわからない」
「ん?」
「早ければ1週間で帰ってくるだろうが、決勝まで残れば1ヶ月だ。仮に後者だった場合、折角のスクープネタを塩漬けすることになる。その間に他社に出し抜かれでもしたら、目も当てられない」
「なるほど」
「それに普通に考えれば、お前は入院中、向こうは本番直前。記者会見など開いたり、コメントを発表する余裕はない」
「そりゃあ、まあ」
「先に関係を知らしめておけば、結果がどっちに転んでもネタになる。活躍できれば『梨里のお蔭』、できなければ『梨里のせい』だ」
「『オレありき』か…」
「だから、このタイミングなんだよ」
「へぇ…」
…言われてみれば…ってとこだな…
高野は、父親の話に妙に納得した。
しかし、記事には続きがある。
高野にとっては、こっちの方が、頭が痛いことだと感じていた…。
~つづく~