【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

5 / 173
言葉の重み

 

 

 

 

 

…事故から救った相手が…μ'sの元メンバー?…

 

 

 

「ビックリしたでしょ?」

 

「…確かに綺麗な人だな…とは思った。一瞬見ただけだったけど…なるほど、そういことか…」

 

「ナンパでもしようとしたんじゃないの?」

 

「あのさぁ…そんなことしてる場合じゃないでしょ?時期が時期だぜ!オリンピック前に、そんなことしてるヒマはない!っつうの」

 

「どうだか…」

 

「ひょっとして…妬いてる?」

 

 

 

「…バカじゃないの…」

 

 

 

否定も肯定もせず…。

 

 

 

オレはチョモの前でも、平気で「あの人、胸デケーな…」とか言ってしまうタイプ。

 

そんな性格は熟知してるだろうから「彼女が美人だった」と言ったところで、チョモは何も動じない。

 

いや、内心、もしかしたら傷ついてるかも知れないが…今さら自分のキャラを変えられない…。

 

 

 

「それが全治6ヶ月の怪我人に対する言葉かね?」

 

「それだけ元気に喋れるんだし、同情する気なんて、まったく起きない…」

 

「冷たいねぇ…」

 

 

 

…まぁ、こうやって、普段通りに接してくれてることが、どれだけありがたいか…

 

 

 

「それにしても…スゲーな…オレ」

 

「なにが?」

 

「『伝説のスクールアイドル』を救ったんだろ…」

 

「そうね…」

 

「それならサインのひとつでも貰っておけばよかったな」

 

「あとで貰えばいいんじゃない?」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「お見舞いに来る…って聴いてるわよ」

 

 

 

「あっ?そうなの?」

 

 

 

…冗談のつもりだったんだが…

 

 

 

「キミが意識を失ってる間も、ずっと病院にはいて、無事を祈ってたみたい。だけど、おじさんとおばさんが、あまりに気の毒になって『今は面会謝絶だから…意識が戻ったら改めて…』って」

 

「まぁな…いてもらっても治るわけじゃないしな」

 

 

 

「こらっ!そういう言い方しないの!」

 

 

 

「あぁ、わかってるよ…」

 

オレはチョモの言葉を遮った。

 

悪気があって言ったわけじゃない。

 

助けた相手が『そういう人だったのは想定外』だが、誰であっても見舞ってもらうつもりはなかった。

 

 

 

「どうかした?」

 

「いや…サイン云々はどうでもいいんだけど…見舞い、断ってくれないか…」

 

「私が?なんで?」

 

「責任…感じちゃってるんじゃない?その人…」

 

「普通の感覚の持ち主なら…」

 

「…だよな…。オレは別に礼を言って欲しくて、助けたわけじゃないし…。こんな姿見せちまったら…精神的にキツいじゃん」

 

「…う~ん…」

 

「『こう見えて』一応、オレも有名人だしさ。関わると色々と面倒なことになる」

 

「否定はしないわ…」

 

「それに、今は『普通の大学生』なんだろ?」

 

「…うん…」

 

「元スクールアイドルとはいえ、こんなことで注目されても…迷惑なだけだろ」

 

「キミの言うことはわかるけど…」

 

「…けど?…」

 

「直接、お礼くらいは言いたいでしょ」

 

「いらないよ!」

 

「りさとっ!」

 

 

 

よっぽどのことがない限り、チョモはオレの名前を呼ばない。

 

…ということは、よっぽどのことだったのだろう。

 

 

 

「なに!?」

 

「キミが逆の立場だったら?」

 

「ん?」

 

「お見舞断られて、お礼も言えなく…『はい、そうですか』って、納得できる?…人として、感謝の意を伝える…当然でしょ?それを固くなに拒否するのはどうかと思うわ」

 

 

 

「…」

 

 

 

さすがチョモ。

 

モデルであり、アーティストであり、『なでしこ』の代表メンバーでもある彼女と、サッカーしかしてこなかったオレとでは、同い年にも関わらず、人生経験が違う。

 

チョモの半生をドラマ化・映画化する話もあるみたいだが、内容が濃すぎて一筋縄ではいかないらしい。

 

そんなチョモの言葉には、オレを黙らせるだけの説得力があった。

 

 

 

「でしょ?」

 

 

 

チョモはベッドの横に立つと、そう言ってオレの顔を覗きこむ。

 

ひょいと顔を近づければ、キスできそうな距離。

 

だが残念ながら、今のオレにはそれすら叶わない。

 

とにかく身動きがとれないのだ。

 

 

 

「あぁ、そうだな…。ちょっと、先を考え過ぎた…」

 

「わかれば、よろしい」

 

「ただ、もし彼女が来るなら、お前もいてくれないか」

 

「私が?」

 

 

 

「二人きりになったら、恋におちない…とも限らない」

 

 

 

「勝手に…お・ち・れ…ばっ!」

 

 

 

チョモは利き手の左で、オレの額にデコピンを放った。

 

チョモがオレを嗜(たしな)める時の、得意技。

 

しかし、このシチュエーションでやってくるとは思わなかった!

 

 

 

脛椎損傷してる、オレ。

 

全身に電気が走った。

 

 

 

「ぬおっ!…オレ、怪我人だって…」

 

「ごめん、ごめん!忘れてた…」

 

 

 

「そんなわけ、ねぇだろ!!」

…と言いたかったが、ここはガマンした。

 

 

 

今、この状況下では、オレの全治が延びるも延びないも、チョモの左手の力加減ひとつに懸かっているのだから…。

 

 

 

 

 

~つづく~

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。