捻くれぼっちプレイヤー   作:異教徒

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第5話:卑屈な妖精と毒舌な猫耳

「なんだこいつ?ちっさい妖精?」

「はい。私はナビゲーションピクシーです。ご主人様のをサポートする機能をもち、冒険を円滑に進めるための存在です。以後、よろしくお願いします。」

突然現れたこいつはそう言ってふわっと一礼をした。その様子はまるで精巧な人形のようだ。

「これって、どうすればいいんだ?売ったら結構高かったりする?その手の趣味の人とか好きそうだし。」

「ちょっと!?こんな小さい子を売ろうなんてヒッキーには人の心がないの?」

「知るか。今の俺に必要なのは金と強い装備だけだよ。そのためなら外道と呼ばれようが知ったことじゃないな。」

「鬼、悪魔、鬼畜、外道、ロリコン!」

「最初の4つは甘んじて受け入れるが、ロリコンは違うだろ?俺はこんなやつ必要としてないし、それなら必要なやつの手にわたってほしいという純粋な思いで売却しようとしてんじゃないか。」

「噓!今、ヒッキーの目が一瞬ドルマークになった!」

由比ヶ浜の糾弾を軽く受け流していると、妖精は少し顔を青くして体が震えていた。

「え、えっとですね。私はもうすでにご主人様の専用アイテムとしてロックされてしまったので売却はできないといいますか...それにですね!私、こう見えて結構レアで便利なんですよ!私がいれば地図をいちいち見たりする必要もありませんし、敵が来たらすぐにお知らせ出来ますし!」

「いや、いらん。そんなの、索敵スキル取ったらすぐだし。だいたい地図を見るくらいの手間ならさして変わんないだろ。

うーん。これは分解ってできるのか?試しにやってみるか。」

すると、妖精は体をがくがく震わせてほとんど泣き出しそうな声で必死に腕にしがみついてきた。

「お、お願いです!何でもします、言われたことはたとえ無茶でも絶対にこなして見せますから!だから分解したりだけはやめてください、お願いします...!」

「ちょっとヒッキー、女の子泣かせるとかサイテー!こんなに言ってるんだから使ってあげたらいいじゃん。それにヒッキーのコミュ障を治す訓練だと思ってさ。」

「NPCに話しかけるなんて余計に末期だろうが!だいたい、こいつはプログラムに沿って話しているだけで普通に話してるように見えても一定の答えしか返せないようにできてんだよ。」

いくら正論を言っても駄々をこねる由比ヶ浜に辟易した俺はこっそりと妖精に尋ねてみた。

「なあ。あいつの声を聞こえなくすることってできるか?」

「それはちょっと... あっ、いいえ!できます!できますからアイテム欄を開かないでください!」

「じゃあよろしく。あと、ここから蜜の火鉢程までの最短ルートも頼む。」

「かしこまりました。では、今からナビゲーションを開始します。前方50メートル先の角を右に曲がって、そこから『ポーション専門店 モーリス』を左に行くと_________」

その間も由比ヶ浜はずっと何か叫んでいたが俺は無視して目的地へと向かった。

 

それから妖精の指示に従って歩いくすぐに目的地が目に入った。

中に入るとかなりの数の人が座っており、情報交換や雑談に花を咲かせていた。それらの様子をできるだけ視界に入れないようにディズティたちの座っているテーブルへ向かった。

「やあ、80000。町はどうだった?」

笑顔で聞いてくるディズティに俺は少し疲れた顔で返事を返す。

「おう。なかなかによかったぞ。だけど、リアルの知り合いと会っちまったのがなあ...」

「ああ。それはたしかに気まずかったりするよね...」

彼は苦笑いでうなずいていたがそうじゃない。由比ヶ浜とゲームの中でも関わらないといけないのがげんなりするだけだ。

「そんな話はいいんだ。それより今ここにいるのでパーティーは全員揃ってるのか?」

「うん。みんなを紹介するね。こっちのシルフの人が『ピラー』。主に前衛から中衛を担当してくれてる。」

「今回はディズティを助けてくれてありがとう。これからよろしく頼むよ。」

手を差し出してくるピラーと軽く握手をすると、今度はノーム二人が手を出してきた。

「俺たちは『デオ』と『グスク』だ。双子でこのゲームをやってる。二卵性だから普通の兄弟程度にしか似てないんだけどな。

で、こっちのウンディーネが俺らの姉貴の『アンジェ』。気をつけろよ。見た目に騙されると後で痛い目を痛いたたたた!」

「あんた何言ってんのよ!私がいつそんなことをしたって?」

「今してる...痛い痛い痛い!」

耳を引っ張られ涙目になるデオを見て、俺は戦闘禁止区域の抜け道の恐ろしさに震えた。コブラツイストがセーフってどういうことだよ?

「これがシステム的にセーフというのは納得がいきません...」

妖精のつぶやきに俺が同意で返すと、ディズティが妖精に気づいて驚いた顔になった。

「それってナビゲーションピクシー!?すごいね、どこで手に入れたの?」

「ああーっと、ディズティがくれた水晶玉から...」

「ええっ!本当!?そんなすごいものだったの?」

「なんかごめんな、こんないいものもらっちゃって。なんか今度お返しする。」

「ううん、別にいいよ。捨てたものがレアアイテムだったなんてよくあるし。それで今更所有権を主張するのはノーマナー行為だしね。」

「そうだね。僕たちもそれでいいよね?」

ピラーの言葉に皆がうなずくのを見て俺はほっと胸をなでおろす。今ここで決闘になったら間違いなく負けるだろうしな。それに相手が勝っても持ち物として贈与はできなさそうだし、誰にも得がない。

「その子の名前はなんていうの?呼び方は自分だ決めれるらしいけど。」

「そうだな...『セレビス』なんてどうだ?お前にはぴったりだと思うぞ。」

「はい!それでは私の名前はこれからはセレビスです。改めてよろしくお願いします。」

「かわいいーっ!この子欲しいっ!セーちゃん、うちの子にならない?」

「すみません。私はご主人様の所有物としてロックされてるのでそれはできないんです。でも、フレンドのメッセージ機能を使ってお話しすることはできると思います。」

「80000!絶対にこの子大事にするんだよ!泣かしたら許さないらね!」

真剣な表情でアンジェが言っているが、それは俺からしたら非常にまずい。だってもうすでにさんざん泣かしている。これはセレビスに口止めの必要がありそうだな。

そう思って小声で命令をしようとすると、突如目の前にお団子くくりのめんどくさいやつが現れた。

「ヒッキー!!!ここにいた!急に無視してきたりしてひどくない?それにちょっと話があるから来てよー。ゆきのんが少し話あるってー!」

 


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