捻くれぼっちプレイヤー   作:異教徒

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第4話:三次で二次の人間とは会えないが、二次で三次の知り合いと会うことはよくある

町に着いてまず始めにすることといえば人それぞれだが、俺はまず全ての店をチェックする。その中で気に入った店で買い物をしたり今後の予定を立ててじっくり回るのが鉄板となっている。

「これは、ちょっと無理がある...」

あまりの店の多さには頭を抱えた。

「ここは素直に進められた店に行ってみるしかなさそうだな。」

本当は水晶玉の鑑定をして早いうちにお金に換えておきたかったのだが仕方ない。そう思いながら言われた通りに広場を目指して歩いていると、道を走っていた人にぶつかられ尻もちをついた。

「っつ...」

「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」

「ああ。大丈夫だ。そっちも怪我はないか?」

ぶつかった相手の顔を見てみるとお団子くくりをしたウンディーネの少女だった。

少女は銀髪で背中に槍を背負っており、真新しいローブを着ていることから初心者と推測できた。

「わたしは大丈夫です。すみません。今急いでいて。」

「どうしたんだ?何かあったのか?」

「はい。今『動く樹海』周辺で初心者を狙ったPKが起きたそうなんで、仲間たちに何かないか心配になって。」

「メッセージ機能は使ったか?あれがあったらわざわざ行く必要もないと思うが。」

すると少女は虚を突かれたかのように固まった。どうやら盲点だったようだ。

「えーっと。やりかたを教えてもらってもいいですか?わたし最近始めたばかりで...」

「まずフレンド枠ってところを開くと、フレンドの名前が表示されるだろ?そこからメッセージを選択すると送れる。」

「あっ!出来た!すごい、これめっちゃ便利だ!こんどみんなにも教えよーっと!」

無邪気に喜んでいるのを見て、これが実は受け売りですとは言いにくかった。まあ、そんな事をわざわざ言う必要もないわけだが。

「ところでPKの件だが、さっき退治されたらしいから大丈夫みたいだぞ。ほかにも同じことをやってるやつがいないという確証はないが、一組やられたとなったらそうそう手出しはしてこないだろ。」

「そうなんですか!じゃあ安心ですね。それと、もしよければフレンド申請してくれませんか?わたしのパーティーってスプリガンいないんですよね。スプリガンて一人居たら便利じゃないですか?」

それはつまり二人はいらないほどしか役に立たないってことですか。

見知らぬ少女にあたっても仕方ないのでぐっとこらえてフレンド申請を送るとすぐに承認された。

「えーっと、名前は『ゆいゆい』?」

「えーっと。『80000』?これってもしかして『はちまん』?」

「「あの、もしかしてだけど...」」

「お前由比ヶ浜か?」

「ヒッキー、なの?」

例えVRであっても世界は狭い。それを実感した瞬間だった。

 

「えーっ!?じゃあ、PK倒したのってヒッキーだったの!?」

「声がでかい。あと、ヒッキーで呼ぶな。80000とよべ。」

「えー。それだとなんか距離間開いた感じじゃん。ハチでいいよね!」

「よくねえよ。それじゃあまるで俺が義理堅いみたいじゃねえか。」

「たしかに、それだと全国のハチがかわいそうだよね...」

「お前、何気にひどいよな!?俺そこまで言ったつもりないんだけど?」

だいたい犬キャラはお前のほうだろうが。

「今何か失礼なこと考えなかった?」

「はあ?何言ってんだよ。言いがかりはよせよ。」

「完全没入型のゲームは感情表現がかなり大味になってるんだよ。だからいやらしいこと考えたらすぐバレるんだよ。」

「誰がお前で変な妄想するか。お前みたいなビッチで。」

「うわ。まだそんなこと覚えてたんだ。それはもう違うってわかったでしょ?」

「男子とべたべた話してるやつはだいたいビッチだ。」

「ボッチの偏見ってこわ...」

リア充としゃべってばかりのやつにボッチの気持ちなんてわからないだろうな。

女子から気持ち悪がられて男子からさけられてそのくせオタクや変態扱いされて、理由もないのに理不尽な扱い受けてるやつがいるんだぞ。ソースは俺。

「なんか...ごめんね...?」

おい、そんなかわいそうなものを見る目でこっちを見るな。やめろ、優しく肩を叩くな。やめてくれ!

「そんなことより! どこかアイテムの鑑定ができるところ知らないか?ちょっとアイテムを売っておきたいんだが...」

「うーん。アイテム売るとしたら、ちょっと遠いけど『ホルツハイデ』ってところはレアアイテムの取引が盛んだから行ってみる価値があると思うよ。案外掘り出し物の可能性だってあるわけだし。」

「わかった。覚えておく。でも、こんな水晶玉一個にそんな価値があるかどうか...」

[水晶玉?見せて見せて!」

「ちょっ、近い近い!って、ああっ!」

「え、どうしたの?」

「なんか使用ボタン押しちまった...」

見ると、割れた水晶玉が手元で光になり収束してだんだん小さな人の形を作っていく。

水晶玉を割って光の中から現れたのは、手のひらサイズの小さな妖精だった。

 


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