捻くれぼっちプレイヤー   作:異教徒

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第3話:イミテーションとナイフ

「ありがとうございます!あれだけ強い武器を持った人たちを同時に相手取って戦って、すごくかっこよかったです!」

「いや、あれはちょっとした小細工を弄しただけだから...」

「謙遜はいいですよ。それより、あなたはやっぱり黒の剣士なんですか?」

キラキラした期待に満ちた目で見られてとても居心地が悪いのだが、俺はただの初心者だ。

そのことを伝えると、彼は最初は冗談と思って笑っていたが、プレイ時間を見せるとそのまま固まった。

「えっ?プレイ時間1時間て... ついさっき始めたばかりってことですか!?それであの実力って、あなたいったい何者なんですか!それ以前にスプリガンが何で1時間でこんなところに?」

頭にはてなマークが浮かんでるところを見るとどうやら俺はかなりイレギュラーな事態に巻き込まれているらしい。

ちょうどいいのでこのゲームについていくつか質問をすることにした。

「さっきスプリガンが一時間じゃここには来れないみたいなこと言ってたけど、それってどういうことだ?

「ああ。それはですね。普通は、始めた最初のログインの時はそれぞれの種族のホームタウンからスタートするんです。80000さんみたいに森の中に飛ばされたっていうのは聞いたことがないんですけど...

あまり力になれなくてすみません。」

「いや、気にしなくていいよ。それより、ここから一番近い町を教えてくれるか?」

「お安い御用です!仲間たちもそこで待ってると思うので、もし良ければそこに来てください。何かお礼がしたいので。」

「おう。わかった。じゃあ、案内頼むよ。」

「はいです!」

と、ここで俺は一つ気になっていたことを口にした。

「ところで、この武器ってどうすればいい?さっきのやつから盗った小刀なんだけど、俺のものにしちゃっていいのかな?」

「えっ!?いつの間に盗ったんですか!第一どうやって...」

「窃盗スキルがあったから使ってみたんだが、これってこうやってPvP使うんじゃないのか?」

「違いますよ!アイテムは時々モンスターに奪われたりもしますが、それでも一定時間は所有権が持ち主に持続するものなんです。だから人から武器を奪ったり悪用はできないんです。」

「でも、一向に消える気配がないぞ。それに所有権はどれぐらい持つものなんだ?もうかなりの時間がたったと思うんだが...」

「たしか、10分ほどだったと思います。」

余裕で30分は経過してるな。

しかし、これはさっきの戦いからしてみてもかなりの高性能武器だろう。下手をすればこのゲームの中でもかなり上位のレアリティかもしれない。思いもよらないお宝が転がり込んできたものだ。

「よし。じゃあ、システム的にこれは俺のものってわけでいいんだな?」

「ええ。問題ないですよ。もし万が一相手から返せと言われてもちゃんと言い返せます。これはもうあなたから所有権は移りましたよって。」

「となると、今後は小刀のスキルを伸ばしていく必要があるか。どこかいい練習場所知ってるか?」

「そうですねえ。さっき僕たちが行っていた『動く樹海』というエリアがあるんですが、そこならちょうど初心者向けのイベントをやってるのでお勧めですよ。」

「そういえば、あの二人もそんなこと言ってたな。レアアイテムもかなりあるのか?」

あの二人は上級者のように見えたが、そんな人たちでもほしがるようなアイテムがあるとなれば、ぜひ一度行ってみたい。ただし、安全性が確保されたルートで。

「それなんですけど、自分たちのパーティーでは中級ぐらいのと、よくわからないアイテムばっかりだったので。何がレアなのかよくわかんないです。もしよければ、拾ったきれいな水晶玉いりますか?売ったらそこそこの値が付くと思いますけど。」

「いいのか、みんなで集めたレアアイテムを勝手に渡したりして。」

「大丈夫ですよ。自分の命の恩人ですし、それぐらいはみんなも許してくれるでしょう。」

「じゃあ、ありがたくもらっとくよ。」

「はい。そろそろ町に着きますけど、これからどうしますか?」

「そうだな...少し町を見て回ってから行くわ。」

「わかりました。じゃあ、終わったら自分にメッセージ飛ばしてください。

あっ。メッセージの飛ばし方わかりますか?」

「すまん。わからん。」

「だったら、今からフレンド登録しときますので申請を受諾してください。そしたらそこにフレンド欄が表示されると思うんですが、そこからメッセージを選択すると送れますよ。」

送られて来たフレンド申請を見て、俺は不覚にも少し感動してしまった。今までどのゲームでも実はフレンド欄を埋めるのが最後の難所じゃないのかと思うほど埋まらなかったフレンド欄に名前が刻まれたのだ!

「ディズティ...で、あってるか?」

「はい、あってますよ。こっちは80000さんははちまんさんで合ってますか?」

「ああ。じゃあよろしく。ディズティ。」

「こちらこそお願いします。80000さん。」

 

それからしばらく森を進み続けるとやっと道らしい道に出てきた。

「ここが『迷いの林道』です。ここを地図に沿って行けば『ボーウェンデン』という町に出ます。そこに行けば武器屋や商店、酒場もあります。自分たちは何かあったらここの酒場に落ち合うようにしているので、みんなそこに集まっていると思います。地図で見ると、この『蜜の火鉢亭』というところになります。」

「ふむふむ。あとほかに、武器屋なんかはあるか?」

「そうですね...さっき森を抜ける際に倒したモンスターの報酬があるのでそれを考えると、中央広場付近の『ワフラド』という店がおすすめですかね。フルプレートからローブまで何でもありますから。あそこならきっといいものが見つかると思いますよ。」

「わかった。じゃあ、町に着いたら早速行ってみるか。」

俺は手持ちの金額に目をやり、どんな装備を買おうか考えを巡らせていた。

「俺が装備を着けるとしたら重装備か軽装備のどっちにしたほうがいいと思う?」

「そうですねえ。さっきの戦い方で行くと、軽装で素早く立ち回って素早くとどめを刺したほうがいいと思います。」

「そうか。じゃあ、軽装と小刀の鞘とポーションなんかを買うか。」

「どれもこの街でいいのが売ってますよ。...あっ。町が見えてきましたよ。」

「じゃあ、いったんここで別れるか。」

「そうですね。では、またあとで。」

「ああ。じゃあな。」

 

 


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