捻くれぼっちプレイヤー   作:異教徒

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 長かった...いろはす降臨です。
 これから頑張って元の投稿ペースに戻していきますので、見守ってください。
 ではでは、どうぞ。


第22話:一色いろはは黒く嗤う

 さて。シリカがどう動くかは別にどうでもいいとして。

 俺は俺で知り合いに片っ端から声をかけていかなければならない。...悲しいことにリアルの知り合いに、だ。

 とりあえず最初に声をかけたのは一色いろは。俺のかわいい(ただし見た目に限る)後輩だ。

 「なあ、一色。ちょっといいか?」

 「何ですかそれって告白ですかごめんなさい好きな人がいるので無理です!」

 「で、今日部室に来る前に図書室によってくれるか?」

 「スルーですか!?」

 だってそろそろ飽きたし。持ちネタ一本化はすぐに廃れるぞ?

 「よりによって持ちネタ扱い!?それを言うなら先輩の『ソースは俺』だっていい加減飽きられて...」

 「俺のはそこそこ汎用性が高いからいいんだよ。お前のは用途が限られてくるだろ。」

 「だからって持ちネタ扱いはあんまりです!これだって私が頑張って編み出した____」

 「じゃ、放課後よろしくな。」

 そろそろ面倒くさくなってきたので適当に切り上げてその場を後にする。一色はギャーギャー言っていたがあいつは多分来てくれるだろう。ああ見えて予定とかには律義な奴だし。

 

そして放課後。図書室にやってきた一色を手招きして座らせる。

 「で、何の用ですか?私に用事なら部室で言えばよくないですか?」

 「いや、今回は少し雪ノ下達には秘密で動いてる。まあ、これも雪ノ下のためではあるんだけどな。」

 「はあ...。まあいいです。話してください。そのうえで断るか辞退するか決めます。」

 「どっちにせよ断っちゃうんだ...」

 すると一色はニコッと笑った。

 「冗談ですよ。冗談。センパイの物まねです。」

 「いや、俺そんなこと...言いそうだな。」

 若干あきれた様子の一色を前に程よく緊張感が霧散する。こういうのもある種の才能なんだろうか。だとしたら斯くも社会とは不平等だ。障がい者に対して保護が叫ばれる中でコミュ障は保護されない。まあ、ある種保護はされてるけどな。腫物でも扱う様な空気でみんな特別待遇してくれる。やったー!僕の分だけニンジンが多いぞ!

(千葉県のとある男子の中学校生活)

 一色に一通りの事情を話し終えて返事を待つ。一色は考えたのちにこう切り出した。

 「それって、私に何かメリットってあります?」

 来た。これが今回の山場。一色にいかにして興味を持ってもらえるようなプレゼンをするか。

 本来縁遠いゲームをいかに面白く思わせるかが今回の作戦の重要なポイントだ。

 「いろいろあるが...まず、葉山も参加する。」

 「当然です。」

 ...これは予想外の反応が来た。当然か。葉山の参加は前提条件。となればこの後がいろいろ厳しい...逆に考えれば葉山との絡みを押し出せば行けるかもしれない。

 「例えば、葉山と模擬デートができる。」

 「ふうん?どういうことですか?」

 目が完全に本気モード入ってる。いつもとは全く違う雰囲気に少し気圧されるが、ここで止まってなどいられない。

 「このゲームではいろんな町があって、そこを自由に歩ける。そして当然買い物やカフェで食事もできる。さらに服装も現実じゃありえないようなものから普通の服まで、幅広くある。しかも、これを持ち運び無しでいつでも着替えることができる。」

 「なるほど...つまり、葉山先輩好みの服装を探すことが出来るってことですね?」

 「そういうことだ。ついでに服は既製品からドロップアイテム、果てはオーダーメイドまで多種多様だ。一応、オーダーメイドの店は一軒押さえてある。」

 一色は黙ったまま黙考している。黙っているのでそのまま話を進める。

 「さらにもう一つ。今回の一件に乗ってくれたら雪ノ下と雪ノ下さんに恩を売れる。これを使えば一回ぐらいは葉山をデートに呼び出すことができる。もちろん現実のに、だ。」

 ここで一色が少し反応を示す。やはり釣れたか。これには絶対乗るはずだ。何せ二人きりが保証付きのデートなんてそうそうないからな。

 「っ...。でも、それだけならほかにでも方法はありますよね?」

 「ああ。そうかもしれないな。」

 嘘だ。雪ノ下さんのバックアップなしに葉山を確実に一人にすることは無理だ。おそらく一色もそれはわかっているはずだ。それでも反抗するのはせめてもの意地か。

 「ならもう一つ。」

 「何ですか。」

 「いまなら、葉山と一つ屋根の下で過ごせる。」

 「乗ります。」

 即答だった。今までの意地なんて嘘だったかのようにくるっと手のひらを返した。

 「で、詳しく説明してください!」

 「ちょ、顔が近い!」

 慌てて一色から距離をとるが、さらにずいっと距離を縮めてきた。由比ヶ浜と言い一色と言いなんでこうも顔を近づける癖があるんだ。

 「で、ゲーム内っていうのはわかっています。それ以外に説明してください可及的速やかに!」

 「キャラが変わってる!キャラを直せ!」

 互いに若干混乱しながらも俺はキリトからきいた話をそのまま伝える。

 「このゲームにはマイホームが持てるシステムがあるんだが、その持ち主がゲームを辞めたり何らかの事情でお金が必要な時に売られたりするんだ。それがいま、権力者が失脚したことでその周囲も金欠で家を捨て値で売っているらしい。しかも家具付きで。」

 そして俺は計画を一色に語って聞かせた。まず金を集める。これに関しては別枠で用意しているから問題ない。また、維持費もそれなりにかかるのが問題だが、これに関しては葉山も受験でゲームに参加するのは実質1ヶ月程度。つまり全く問題にならない。最期に葉山をゲームに呼ぶ方法。これは由比ヶ浜がもうてまわしをしてくれた。雪ノ下のためならと即断してくれたそうだ。

 これを聞いた一色は少しの間考えると、俺に手を伸ばした。

  

 交渉成立だ。

 

 俺と一色が悪代官の笑みで握手をしていると、それを見た一年生が小走りに図書室を出て行った。

 ちなみにこの一年生は、その後クラスで生徒会長が何やら裏工作をしているとうわさを流した。これによって一色は誤解を解くのに奔走するのだが、それはまた別のお話。





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