捻くれぼっちプレイヤー   作:異教徒

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 今回はちょっと重いかもです。
 ちなみにこの後いろはす出せたらなーって思ってるのでしばらくリアル回続くかもです。

 ではでは、どうぞ。


第2章
第21話:蝙蝠の過去と禍根


 俺の昔話をしよう。

 

 なんて言っても聞いてくれる人なんて誰もいなかった。だって話したら重くなることは目に見えているし、何よりめんどくさいから。それは俺も同じで、人に過去を放して理解を得ようとするのは全く愚かであると言わざるを得ない。「過去」にどんな栄光があったとしても「今」が駄目なら全部だめ。逆に「過去」が悪ければ「今」の評価も悪くなる。

 つまるところ人間は本能的にゴシップを求める生き物なのだ。そこで人間は隠すことを覚え、過去の失敗を笑い話や同情を誘う話にして共感を得ようとする。なかったことにする。しかしそれでも消せない過去というのもあるわけで。例えば嫌われ者だった過去はどうしようもない。そこで本来得るはずだったコミュニケーション能力を養う機会を失ってしまったから。それは手痛い損失だ。ともすれば俺のことを嫌ってはぶってきた者たちが訴えられてもおかしくないほどに。

 けれど俺はもちろんそんなことはせず笑い話として、情報ソースとしてみんなに語っている。こうすることで自分の過去だけでなくったことにしているからだ。俺も彼らも過去をなくせてハッピー。これ以上有意義な仕組みはないんじゃないかと思う。

 「.........で?結局何が言いたいんですか?」

 「頼むから弁解させてくださいお願いします!」

 

 街のカフェで俺はシリカに必死に頭を下げていた。うん。別に頭を下げるのはいやじゃない。頭とはその仕組みからして何もしなければ勝手に自重で下がるようにできているから。だからこそ人間は頭をを下げ続けるのだ!例えば俺の親父のように、今の俺のように!

 「弁解も何も、80000さんは裏切者の蝙蝠。それでいいじゃないですか?」

 「まあ、そう思われても別にいいんだけどさ。」

 「じゃあ何を弁解するっていうんですか?言っておきますけど動機なんて聞かされても情状酌量の余地なんてありませんよ?」

 「じゃあそれでもいいから聞いてくれ。これは今回の件に結構深くかかわってる話だから。」

 あくまでそっぽを向いたままのシリカだが、体はこちらのほうを向けてくれた。一応聞いてくれる気はあるようだ。俺は水を一口飲んで口を開く。

 「事の発端は3年前にさかのぼる。」

 

 その当時の俺はかなり、というか今の材木座レベルで中二病でオタクだった。これでも高校デビューで脱オタした身だから言えるが、あれはかなりイタかった。...今もイタいとかは知らない。お前の目が狂ってる。...目が腐ってるのは生まれつきだ。あとこれでも視力は両方とも2.0はある。話を続けるぞ。

 オタクだった俺はネトゲをやっていた。そのうちの一つのMMORPGで俺はギルマスをやっていた。

 ああ。似合わないことぐらいわかってる。それでも事情が事情だったから仕方なくやっていたんだ。

 で、問題はそのギルドがPKギルドだったってことだ。

 

 「...じゃあ、80000さんはほかのゲームでPK常習者だったってことですか?」

 「まあ、な。一応PvPを心がけていたつもりだったが、それでも何人かは不意打ちで殺ったな。」

 そのギルドが作られた原因も俺が元凶だ。

 その当時、珍しく面倒を見ていた新人がPKにあって持ち物を奪われたりした。そのゲームは結構過酷でな。PK可能、死んだら周囲に一定確率で持ち物がばらまかれる仕組みだった。このゲームでもそうだが、その当時はVRMMOなんてまだなかったし顔を合わせずに殺せるからチキンな奴らがこぞってPKをしていた。俺はチキン?そういう目的でやったことは一切ない。本当だ。信じないだろうけどな。一応運営も対策はしていたが焼け石に水だった。それでも一定量のプレイヤーがいたからゲーム自体は続いていた。

 その中でPKが起きても抗議するだけ無駄だろ?だから俺は別な方法で対抗することにした。

 それがPKギルドを創ってPKyerだけ狙うって方法だった。

 

 「それって、相手と同じ立場になるってことじゃないですか?」

 「ああ。それでも最低限のルールとしてPKyerだけを狙うことと、同じプレイヤーを連続して狙わないことだけは条件にしていた。それで正義の立場を守ってたんだ。」

 「そんなことをしても、助けられた相手はうれしくないと思いますよ?」

 「...ああ。だから、結局は自己満足だったんだ。」

 結果的にそのプレイヤーはいなくなってしまった。多分他のゲームに移って楽しくやってると思う。

 そして後にはPKギルドとギルマスの立場だけが残った。

 後は想像がつくだろ?ほかにもPKギルドが乱立してあちこちでPKが勃発した。それを止めようとして俺たちとほかのギルドで何度も戦って、そのたびに吸収合併してどんどん大きくなって。

 気が付いたらシステム限界の999人になってて、俺は他のやつにギルマスを譲った。その直後から受験勉強を始めて俺はそのゲームを引退した。そのあとギルドがどうなったかは知らない。ただ、1年前にそのゲームはサービス終了したってことだけはネットで知った。

 

 「...それならなんでPKギルドで全面戦争なんて言い出したんですか。このゲームも同じようにしたいんですか!?」

 「いや。今回はそうならないようにする。絶対に成功させる。」

 「そんなことができるんですか?私には無理としか思えないです。」

 「いや。出来るさ。そのための布石もちゃんと用意してある。」

 「.........安心しろ。シリカたちの居場所を潰すようなことはしない。」

 その言葉を信用する人がどれだけいるだろうか。少なくともあんな話を聞かされた後ではまずいないだろう。だから俺はシリカの返事を待たず席を立った。

 「俺は先にほかの用事も済ませておく。シリカはもう休んでもいいぞ。」

 「...わかりました。」

 「じゃあな。」

 

 店を出ると、今まで息をひそめて隠れていたセレビスがひょっこり出てきた

 「で、マスター?この後はどうするんですか?まあ、なんとなく予想はついてますけど。」

 「じゃあ聞くなよ。こんな人通りの多いところで話せるわけがないだろ。」

 「じゃあ聞きませんけど。あ、ここから1キロほど先を西です。」

 「了解。ところでお前、なんで戦闘の時に出てこなかったんだよ。あの時バフが欲しかったのになくて苦労したんだぞ?」

 「えっ?なんで私がそんな危ないことしなくちゃならないんですか?ヤですよ。」

 とことんふざけてるAIを小刀の鞘で叩くと、恨めし気な顔でにらまれた。

 「お前が仕事しないのが悪いんだろ。わかったら仕事しろ。」

 「マスター自身が一番嫌いなブラック会社の社長っぽいですね。」

 こめかみをぐりぐりしてやると悲鳴を上げて逃げて行った。何事かと周囲の人たちがこっちを見てきて少し気まずい。なんて思っていたらセレビスは思いっきり舌を出してきやがった。

 つまり雇い主に対して反抗プラス職務放棄か。

 まるっきり俺じゃん。バイト先の俺と完全に一致。そもそも最初の条件と全然違うじゃん?みんな優しくて歓迎なんて嘘だし、すでに人間関係出来上がってて割り込む余地ないし。カップルの間に割って入って仕事のつまらない質問ができるかって無理に決まってるだろ!

 結論。某Mのハンバーガーチェーン店は広告詐欺。ソースは俺。

 「マスター、大丈夫ですか?なんか非リアの権化みたいな顔してますけど。」

 「よし、お前今から渡す仕事今日中に済ませといて。出来なきゃ残業してくれるよな?もちろんサービスで。」

 「めっちゃブラックです!?」

 

 




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