捻くれぼっちプレイヤー   作:異教徒

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第1章
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比企谷八幡はぼっちである。

これについては疑いようのない事実であり、本人や家族も否定しない。

しかしながら、何事も百聞は一見に如かずと言うように実際に彼に会ってみたらどうなるだろうか。

恐らくは何も話しかけてこないかすぐに逃げ出すだろう。

そんな彼に、もし話しかけて来る人がいたら?

より正確に言うなら、彼の周りに多くの人だかりができ、どれも友好的な視線を向けていたとしたら?

それはもはや別人だと由比ヶ浜結衣は言った。

そんなのお兄ちゃんじゃないと比企谷小町は言った。

それは彼のアイデンティティーの崩壊だと雪ノ下雪乃は言った。

言い方は様々だが、要約すると彼に友人ができることはあり得ないということだ。

では、今の彼を見たら彼女たちは何と言うだろう?

比企谷八幡は、多くのプレイヤーたちに囲まれて万雷の拍手で迎えられていた。

 

そもそも、こうなった元凶はすべてこのゲームのせいである。

比企谷八幡は周りの人たちを見渡しながらこっそりとため息をついた。

 

すべての始まりは2週間前のことだった。

「ん?なんだこれ。」

居間に置いてあったものを見て彼は首を傾げた。彼が手に持ったそれはヘッドギア型のVRゲーム機だった。

「あみゅすふぃあ...?」

「どうしたの、お兄ちゃん。」

「うわあ!...なんだ小町か。脅かすなよ。」

「ちょっと後ろから声かけただけなのに大袈裟だなあ。ところでそれ何?」

「わからん。なんか頭にかぶるものだってのはわかるんだけど」

そう思ってほかに何かないか見てみると、アミュスフィアの隣にはゲームソフトらしきものが置いてあった。

「なになに...アルウヘイム・オンライン?小町これがなんだかわかるか?」

そう尋ねると、小町はものすごい勢いでソフトをひったくた。

「え、う、うそ!これって今ものすごい流行ってるゲームで、自由に空を飛んだりできるって人気なんだよ!

なんでそれがこんなところにあるんだろう?お兄ちゃん何か知ってる?」

「全く。だけどどうせまた親がその場のノリで買ってきたんじゃないのか?あの人たちはいつも急に旅行に行ったりするし可能性がないわけじゃないだろう?」

「うん、確かに。だけど、わざわざアミュスフィアまで買ってくるなんてよほど本気だよ。たしかこれ2,3万はするはずだから。」

「げっ。高っ!そんな金があるならもっとおいしいもの買って来いよ...」

「それもそうだけどね...でも、面白そうじゃん。早速やってみようよ。」

「だめだ。」

八幡がゲームソフトを取り上げると小町は不満げな声を上げた。

「もー!なんでダメなの?これはお兄ちゃんのじゃないんだから指図しないでよ。」

「お前のものでもないだろう。それにお前は受験勉強があるだろう。ほら、とっとと勉強しろ。」

そう言われると弱いのか、小町はおとなしく引き下がったが、それでも未練がましくアミュスフィアをちらちら見ていた。

「終わったら感想聞かせてね!絶対だよ!」

「はいはい。」

そう適当にあしらった八幡は再びアミュスフィアに目を落とした。

「...少し、やってみるか。」

こうして、比企谷八幡はアルヴヘイム・オンライン、通称<ALO>の世界に足を踏み入れた。

 


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