赤色の魔法陣です。
今回ちょっと長いです。お楽しみください。
「お前に、神と戦う覚悟があるか?」
「...は?」
______遡ること数分前
「うわぁ、凄ぇ!」
俺は目に入った光景に目を輝かせていた。ドアの向こう側に広がっていた部屋には近代的なモニターがいくつも設置されており、パソコンのキーボードらしき物、机、そしてそれら全ての研究スペースを白い証明が照らしている。
……え、ここ未来じゃないよな?
そう思うのも難しくないほど先進的としか言いようがなかった。語彙力や経験が少ないため言い表せる言葉が思い浮かばない。周りを見回すと俺達が入って来たドアの他に別のドアがいくつかある。その中で目に入るのは巨大モニターの下にある金色のドア。
「あの金色のドアの部屋って何があるんですか?あそこだけ色違いますし」
「ん?あそこ?知らない」
「...え?」
予想外の反応に驚く。高らかにようこそ研究室へと自らの部屋だとういう様な雰囲気で言っていたため、てっきり物凄い発明品が扉の向こうにあって、それを見せてくれるのかと思ったが、研究室内にある部屋を知らないとはどういう事なのか。
「いや、開かないんだよ。まったく。たぶん金色もメッキだしね、本物の金だったらとっくに壊して売ってる」
ジョーク混じりに話す彼女に俺はずっと気になっていたことを尋ねた。
「ここってどこなんですか?窓もないし地上かも怪しいし。そもそも元々何かで使われていた場所なんですか?」
「おお、鋭いね。正解、ここは地上じゃないよ。地下」
「地下?でも普通に息出来ますけど」
大抵の地下室は酸素が入り込む隙間があるため窒息する事はないと言うのを昔どこかの本で見た気がするが、ここへの移動は光のようなものを使ってのワープであり、地上から直接地下へ降りたというわけではない。地上との境界面が見当たらないが息苦しく感じないのは何故だろうか。
「それは私が話してやる」
考え中に急に後ろから聞こえてきた声に驚く。それは聞き覚えのある声だった。後ろに振り向いたと同時に、俺の行動に合わせるように巨大モニターにある女の姿が映し出される。
「あんた、あの時の」
「そうそう、覚えてるよな。私は...」
「あの銀髪ロング‼」
「そうそう、私は...って、はあッ⁉誰が銀髪ロングだッ、あんたでもないし、お前“神”って呼べつったろ、“神”って‼」
こんな口悪くても一応俺の命の恩人...ってことで良いのだろうか。しかし何で画面越しなんだ?
「ったく、命の恩人になんて口だ」
そこまで悪口言ったわけではないし得体のしれない女を神と崇めるのは普通じゃないだろ。だが気に障ったのなら素直に謝るとしよう。
「ごめん」
「ん?あ、あぁ意外と素直じゃないか。取り敢えず説明してやるからよく聞いとけ。お前ここまでどうやって来たか覚えてるか?」
相変わらず自分の話題に変える速さが尋常じゃないなと呆れながらも俺はどうやってこの近未来的なラボに来たのか記憶を整理する。
「何か光に包まれて...」
「そう。その光に包まれてお前はここに来た。考えてみな、今の時代それが出来るのは宇宙工業だけだろ?」
「え?」
言われて気づいた。確かにありえない。俺と彼女はあの占い館からここへあの光を通じて
「そして地下でも息が続くこの謎の空間、これから導かれる答えは...」
しばらく黙った後で彼女は元気よく言い放つ。
「私が創ったってことだー!!」
思いもよらない答えに絶句したのは言うまでもない。というかそんな伏線どこにも張って無かっただろ。こいつがワープの機能でも持っているとでもいうのか。
……は?今何て言った?創ったとか聞こえたけど?ってかどうやったらその結論になるんだよ⁉
「おい、それってどういうこ...」
その瞬間、けたたましい音と共に一つのモニターが光出した。
「え!?何?」
画面には赤い文字でWARNING!!と表示され、続けざまに白文字で『Dominater were detected』と表示される。文の意味は...支配者を探知した、となるはずだ。
「しまった繋げっぱなしだったんだ。思ったより早かったなぁ」
「ったく、説明まだ残ってんのに。仕方ない。ウィッチ、あれを」
「はいはい」
まるで普段通りと言うように二人は淡々と話しながらウィッチさんは研究スペースらしき場所にコードを接続されたまま置いてあった水色の携帯電話のような物を手に取るとこちらに持って来た。
「これは?」
「これは
「え...あ、ありがとうございます。携帯ちょうど壊れてたんで」
とても綺麗なマリンブルーがベースカラーとなっているスマホのような物だ。でもネーミングセンスがGod-tellって...
「普通の携帯には無い色んな事が出来るんだよ」
「どんな事が出来るのか試してもいいですか?」
俺は子どもみたいに尋ねた。彼女はそれを不思議に思いながらも
「時間がないけど...いいよ」
と承諾してくれる。
「じゃあ...」
俺は彼女と距離を取り電話番号の五のボタンを三回押す。そして右手を上に構え、
「変身‼」
と腹部の前に携帯を降ろした。勿論固定するベルトなど巻いていない為エアであるが。すると携帯から赤い光が出て身体全身を包み込み...
「『complete』とかならないからね⁉」
出ませんでした。当たり前だろう、普通に考えて出るわけ無いし、そもそも携帯をはめるベルトをしていないし。
しかし無駄に発音の良いcomplete、そして即座に対応出来る知識力、この反応まさか...
「えー、なりきっちゃったじゃないですか」
「いや、普通そんなことしないでしょ。それガラケーじゃ無いし」
まぁ確かに。高三になる男がここまでして引かれないのが不思議だけど。でも諦めない。それがダメならまた別の。
「じゃあ193って入力しても...」
「『ラ、イ、ジ、ン、グ』にもなりません‼」
えぇそれもダメか。後は...
「なら、画面をなぞって...」
「『ファイナルカメ...』って歩く図鑑にもならないから‼」
ここまで言ったのにも関わらず全て返してくれるとはしかも発音がそれぞれに準拠しているなんてこの人出来る、まさか全部知ってるのか。
「っていうかスマホ関連にしてよ!ずらして『トッ●ュウ6号』とかボトル差して『ビ●ドチェンジ』とかあったでしょ!?」
「それ一緒にするとライダーなのかロボかわかりにくくなりますね両方『ビ●ド』だし」
「あっ、しまった。そうじゃん」
……意外にいじりがいがあるかも?
「おーい、終わったか?」
彼女の扱い方を模索するあまり完全に“神”の存在忘れてた。夢中になり過ぎるのは悪い癖なんだよな。
「あ、ゴメン。で、何だっけ?」
「まったく、急がないといけないのに。てか卯一もな!!趣味が合うからってはしゃぎ過ぎだから!」
「何を急ぐの?」
すると、“神”はため息をついた後でスイッチが入ったのか本気の顔になり
「神木 零矢、汝に問う」
と言ってきた。
「何だよ、改まって?」
先程のおちゃらけた雰囲気とはうって変わり緊迫した空気が辺りを漂う。
「お前に神と戦う覚悟があるか?」
_____そして今に至る
「は?神と戦うってどういうこと?」
「言葉の通りだ。時間の都合上疑問は受け付けない。もう一度だけ問う。お前に覚悟はあるか?」
……そんなこと言われたって訳わからないし、言ってること無茶苦茶だし
「これはお前が生き返ることに関わることだ」
そう言われても素直に頷けるわけがない。神と戦って生き返らせてもらうなどという妄言という可能性もなくはないからだ。
「無いっていったら?」
「保険を掛けるな。生き返りたいなら覚悟を決めろ」
ずるいな、生き返るかそのまま死ぬかの選択肢を二つ出しているように見せ掛けて俺が選ぶとわかっている方に脅しを掛ける。だが
「俺は生き返らなければいけない、かたをつけなければならない約束があるからな。例え神と戦うことになろうとも俺は...必ず生き返って見せる」
精一杯答えた。これが自分にとって最善なのかなんてわからない。それでもこの目の前のチャンスにでもすがり付いてちゃんと生き返って姉貴の仇を取る。そう心に決めている。
「これが答えだ。時間がないんだろ、俺はどうすればいい?」
今も昔もその考えは変わってないようで心の中で安堵する。変なこだわりだと思われようが俺が憧れるヒーローとはこういう時に迷わず即答し余裕を見せるというものだ。
「さっすがウィッチが見込んだ男」
「カッコいいよ、後輩クン」
(一度決めたことは曲げるなよ?)
……あぁ、わかってるよ。姉貴
昔自分が言われた言葉を思い出した。曲げた事は一度もない。何時だって目の前の道を真っ直ぐ突っ走って来た。俺は必ず生き返る。こんなところで躊躇っている暇なんてないんだ。
「ところで何で俺なの?」
「あぁ、お前を選んだのはお前とウィッチが『
「『
……何だそれ!選ばれた者だけの力的な?
「そう。ウィッチが『
「俺が双命?」
……何かカッコいいな、双命って!
「で、それを使ってお前には
「はいはい、じゃあ後輩クンこっち来て」
そして俺達二人はいくつかある内のドアの一つに入った。
書いていて作者思いました。ウィッチさんマント脱いでなくね⁉
ということで前回の秘密基地を少し編集しました。
次回やっと神話の世界へ参ります。
お楽しみに。