俺達と神達と空想神話物語   作:赤色の魔法陳

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「天才大学生の妖美卯...」

「それもう終わっちゃいますね、次の更新までには」

「うぅ...そうだね。じゃあ普通に」

「前回、俺と翔の連携により、犯人こと破神霊香から天界ノ書の奪還に成功」

「その際に人質として狙われていた私ですが、新アイテムのGK銃により、狙撃主を撃破。その裏読みにより、戦わずして天界ノ書を手に入れたのだが...」

「って言うかウィッチさんのあの一撃は凄いですね。角度もバッチリだし」

「...翔君⁉あれ、入院中じゃ?」

「前書きは時空が歪んでいるので関係無いですよ」

「メタ発言止めろよ...ってか誰が喋ってるのかわかりにくいんだけど!」

「……そんなことより、私の力であなた達は怪我をおった。……もはや先に力を手に入れる事は不可能」

「何でこいつまでいるんだよ⁉」

「……時空が歪んで...」

「はい、ワイヤーが活躍するお話をどうぞ♪」


再戦

「ふぅ、あった、あった」

 

 研究室に戻って来た私達は無事に転送された天界ノ書を見つけた。今回の件で偽箱は壊れてしまったが、あれは元々耐久値が低かったから仕方ないとしよう。

 

「後輩クン、その怪我で行ける?」

 

 翔君ほどではないが、後輩クンも確実にダメージを受けている。その状態で飛んでも失敗する確率の方が高い。しかし、完治するのを待つ時間なんてない。

 

「って言うか、行くしかないんでしょう?大丈夫です。最強の傷薬を持って行けば」

 

 確かにあれはもう整備が終わったから使えるだろう。なら杞憂だったか。

 

 行くと決まれば、事は急げなので早速マシンへと彼を促す。本当は心配だけど、年下相手に不穏な顔を見せる訳にはいかない。ここは信頼して、壊れそうな程の恐怖を作り笑いに隠して。

 

「行ってらっしゃい」

 

 嘘つき。私は結局何も変われないのか。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 凄く澄んだ空気だ。最初に思ったのはそんな旅行者みたいな感想だった。神の国へ旅行なんて随分と洒落てるなと思いながら、おそるおそる自らの服装を見る。

 

 前回は胴着だった。今回は...

 

「ウップス、流石に予想外だわ」

 

 白いワンピースみたいな姿だが、妙に下半身を風が通り抜けていく気がする。え?穿いてないの?

 

 それに背中が重い。一対の腕よりも長く、大きな白い羽が生えて...付いていた。邪魔。

 

 極めつけには頭の上に天使の輪みたいな物が。ってこれ...蛍光灯かよ。もっとあったでしょ、他に。

 

 全ての元凶がGod-tellの中で高笑いをする。いやお前のセンスおかしいだろ。コスプレイヤーかっつーの。

 

「あっはっはっ、ちょっ、お腹痛い。取りあえずすぐそこの街に行ってみ、ふふふっ」

 

 こいつのツボがよくわからないがここまでは前回と同じ。また聞き込みからだろうか?

 

 今回の世界は恐らく天界だろう。天使が暮らしているとされる世界だ。言いようによっては天国とも言えるのだろうか。むしろそっちの方が一般人は納得しやすい。

 

 モダンな外国風の街に近づくにつれ、段々と騒がしくなってきた。って何で毎回街から少し離れているんだ?まぁ街中で何だこの格好⁉とかなるよりはまだマシか。

 

「何かあったんスか?」

 

「はぁ⁉お前聞いてなかったのか?お前はどっちにつくんだよ!」

 

 どっち?何の事だ。って何故怒られなければならないのか。

 

「言わないって事はさてはミカエル派か!ルシフェル派の俺達を偵察しに来たんだな!」

 

 ミカエル派、ルシフェル派?ってまさか天界大戦争か?だから妙に街の中は殺気だってたのか。

 

 それはそうと、この前みたいに神力のような物を貰うなら戦争が始まる前の方が手っ取り早い。戦争中に双方から力を貰うなど骨が折れる話だ。

 

「とりゃぁっっ‼」

 

「うぉっ⁉」

 

 話を聞いた天使が斬りかかってきた。いや、別にどっちについてるとか言ってないでしょ。短気ってレベルじゃねぇぞ。

 

 俺はワイヤーを召喚し、建物の上に先端を引っ掛け飛翔する。が、相手は天使。すぐに背中の翼を使って追い付いて来る。流石、本物。

 

 そんな冷静ぶった事を考えているうちに、普通に叩き落とされた。飛行速度は天使の方が一枚上手だったらしい。

 

 瞬時に月読命にチェンジし、出現した剣を建物の壁に突き刺す。

 

「クッ...止まれぇッ‼」

 

レンガの粉が飛び散り、瓦礫を飛ばしながら地面スレスレで止まってくれた。回りを見ると何事かと天使達が騒いでいた。

 

「すみません、ルシフェル派とミカエル派の決戦地はここからどの方向にありますか?」

 

 すぐ近くで驚いていた天使に訪ねると、おそるおそる右側を指差したので、礼を言ってワイヤーを右側の建物へ向けて伸ばす。そしてスピードを上げる為に天宇受売命にチェンジして、

 

「...縮めぇぇッッ‼」

 

 ワイヤーを縮めさせ、少し助走を着けて地面を蹴る。瞬く間に俺の身体は建物の間を猛スピードで滑空していった。そして、

 

「外れろッ‼」

 

 両脇の建物に固定しておいたワイヤーの先端部分を外し、その勢いのまま空高く飛翔していった。このワイヤー、空飛ぶ為にも使えるとか凄い性能だな。

 

 が、空気抵抗が凄く後ろから天使が追って来ているのか否かが確認出来ない。って言うか喋れない。目も開きにくいので自由落下が始まっているのかさえ確認出来ない。やはり定められた用途以外の使用は危険という事だ。

 

「お前、凄い事してるな。って言うか落ち始めてるぞ」

 

 God-tellからの“神”の声で落ちてるのはわかったが、目が開かないからどうしようも出来ないんだってば。

 

「仕方がない、ほら」

 

 “神”が気遣ってイヤホンマイクを召喚してくれた。やはり、こういう時は天才に頼るのが最善か。

 

「後輩クン喋れないだろうからよく聞いてて!蛍光灯にワイヤーを着けて全力で上に投げなさい!その時絶対に自分側のワイヤーを縮ませるイメージを持って!」

 

 こちらの考えている事は筒抜けなのか?そう思うほど聞きたい事をすぐウィッチさんは答えてくれた。そう言えば前に、

 

(このコネクト・ワイヤーは射出したフックを対象の物に密着させて、引き寄せるor自分をそちらに寄せると言う事が出来るの。普通は対象の物が自分より重いと引き寄せられちゃうけど、フックの内部の仕掛けによって対象の物が自分より軽くても自分をそちらに寄せれるから♪凄くない?天才で...)

 

 とか何とか自慢げに話していたな。よくわからなかったけど、要は対象の物をこの蛍光灯に置き換えて考えろって事か、ってそんなに上手くいくの?前に試した事もないし、ぶっつけ本番はかなり怖いが転落死よりはよっぽどマシか。

 

 ウィッチさんの言葉に逆らうつもりなど微塵も無いので、風圧の中手を動かして何とか蛍光灯にワイヤーを巻き付ける事ができた。続けて須佐之男命にチェンジし、全力で真上に投げる。

 

……縮めッ...

 

 直後、身体が少し上に引っ張られるかと思ったら引きちぎられるような痛みが襲って来た。それはそうだ、重力に逆らう加速度を受けているのだから。

 

 風圧も少し弱くなり、やっと目を開けれるようになると、何も無い平坦な道の上を飛んでいるのがわかった。しかし、少し先に丘陵になっている所が見える。やるしかないのか。

 

 蛍光灯のワイヤーを外し、再び自由落下状態に戻る。取りあえず痛みは無くなった。地面との距離はもう20m程だろうか。

 

須佐之男脚・直打(ストレートキック)ッ!」

 

 丘陵の頂上にスライディングのように着地する...つもりだったが、勢いの余り体勢を崩し、土煙を巻きながら転がり落ちるかのように着地した。

 

「ちょっ⁉大丈夫?」

 

「...大丈夫じゃないッス」

 

 焼けるような痛みを全身に感じる。皮膚は擦りむき血が滲み、身体が上手く動かせない。脚は...多分折れてるだろう。

 

「“神”...傷薬出して」

 

「全く、GDの反応もあったのにもう傷薬使うなんて先が思いやられるな」

 

「おい、待て。GDの反応って?」

 

 さらっと言ったがもうここに入って来たのか。また三人いるならば、最強の傷薬をここで使うのはまずい。ワイヤーがあるし、移動は困らない...さっきみたいな事をしなければ。

 

「君が飛翔する前に出たの。でも反応は一人。まぁ傷薬使うかどうかは自由だけど...」

 

 その時、道の先に紫色の動く物体が視界に映った。獣のようなその姿は以前戦った猫又に見える。否、一匹ではない。その後ろから続々とおびただしい数の霊獣がこちらに向かって歩いてくる。

 

「ヤヴァイんじゃない?」

 

 ゴブリン、グリフォン、オーガにケンタウルス。伝説上の生き物勢揃いかよ。しかも一匹、二匹の話じゃない。その数、実に数十匹。百は軽く越えている。わらわらとまる軍隊のようだ。

 

「地獄かよ、ここは」

 

「……そう」

 

 声を発したのは群がる霊獣の中心にケンタウルスに跨がる一人の人間。それは俺もよく知っている、いやさっきも会った怪我の原因の人物だった。

 

「ちょっと早すぎやしないか?破神...霊香」

 

「……別に、あなたが来るのが遅いから、地獄から軍隊を引き連れて迎えに来ただけ」

 

 本当に地獄だ。さっきまでここは天使がはびこる楽園とばかり思ってたのに。魑魅魍魎はびこる地獄の釜の目の前かよ。

 

「“神”ッ」

 

「あぁ、わかってる」

 

 自動で出てきた傷薬を身体に掛けると、傷が治っていくのがわかる。立ち上がるとすぐに月読命にチェンジし、手元に現れた剣の柄を強く握り締めた。

 

 こちらは剣が一本、相手は数十体。一騎当千とまではいかないがそれでも数は多すぎる。この数は相手した事など一度もないがやるしかない。

 

 霊香が合図を送ると、様々な鳴き声を挙げながら次々と霊獣達が突進して来た。俺は叫びながら、目の前の霊獣を斬りつけていく。

 

 腕や胴体、尻尾に角。斬られた箇所は霊石となって足元にばらつく。それを蹴り飛ばしながら前進し、ひたすら前の敵を斬りつけ、中心を目指した。

 

 飛びかかって来るゴブリンを刺し、その身体ごと別の個体に投げ飛ばし、空を舞うグリフォンの奇襲を躱し、オーガが振り下ろして来る棍棒を受け止めた。

 

 

満月斬り(フルムーン・スラスト)ッ‼...ハァッ、グッ」

 

 回りの霊獣を回転斬りで石へと還すがもはや体力の限界だった。膝をついた俺はオーガに掴まれ、投げ飛ばされた。地面を転がり、立ち上がる前にゴブリン立ちに殴られ、蹴られリンチのようにされる。それを剣で凪ぎ払い、その剣を杖にして立ち上がる。

 

 まだ傷薬がある。どれだけ疲れようと身体が壊れようと、死ぬ前に傷薬さえ使えば元に戻る。立ち上がって前を向くと十数匹のケンタウルスが弓を構えているのが見えた。

 

 放たれる矢をしゃがんで避けようとした瞬間、爆発のようなものが起き、後方へ身体が飛ばされてしまった。受け身を取り、煙が立ち込める場所を凝視すると、霊石が散らばっていた。

 

 が、そこにあったのは霊石だけではなかった。白いワンピースに双方の大きな羽。最初は天使か、と思ったが手に持っている物を見るとどうやら違うらしい。それは見覚えのあるハンドガンと言うには少し大きく、バズーカと言うには小さすぎる物だった。

 

 俺の記憶が正しければ、その武器を使ってたのは只一人だけ。

 

「...まさか...ウィッチさん?」

 

 呼び掛けに答えるようにその人はこちら側を向き、蛍光灯の輪を見せながら悪戯っぽく微笑んだ。

 

「来ちゃった♪」




──天使降臨?──

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