赤色の魔法陳です。
今回は零矢君の悪友と先生が登場します。
ぜひお楽しみください。
「ああッ!何すんだよ⁉」
「お前大丈夫か?頭打ったんじゃ?」
目を開き起き上がると見馴れぬ汚れ一つない簡素な白い壁、清潔な布団にシーツが視界に入った。微かにだが薬品のような香りが漂っている。
……病院かここ?
そう思い布団を剥がして立ち上がろうとする。何だか俺を呼ぶ声が聞こえた気がするが多分気のせい...であってくれ。いや気のせいで聞こえる声がアイツっていうのも大分気分が悪くなるんだが。
「おい、怪我人は安静にしてろ」
やはり気のせいではなかった。とうとうヤバめの幻聴が聞こえ始めたのかと思ったが、そうであった方が良かったかもしれない。そいつの言う通り渋々もう一度寝て、言った。
「お前がいるとは珍しいな、真」
「悪友が怪我したって聞いて来てやったのに何だよ?」
「余計なお世話だ」
俺が寝ていたベッドの隣に立っていたのは俺の悪友と言ったほうが良いのだろう、
悪友、と書けばまるで法に反する事をした仲間とか喧嘩しあった仲という風に思われるだろう。まぁあながち間違ってはないんだが。
少しばかり話すならば一年ぐらい前にこいつととある事情で他校の生徒相手からの喧嘩を買い、警察沙汰になってしまった事がある。因みに否はほとんど相手側にあるが、こちら側が進学校ということもあり厳重注意だけですんだが評判は最悪となった。こいつとはその事件から続く腐れ縁というわけだ。
「それにしてもよく死ななかったな、屋上って五階だろ。お前は前から悪運と体だけは強いと思っていたがこんなとこで役に立つとは」
余計なお世話だ。皮肉でも言いに来たのか?お前はお呼びじゃないんだよ。普通目が覚めたら横にいるのはナースだろ、何でお前なんだ。でもこいつなりに心配して来てくれたのかもしれない。それは感謝している。
……そういえば
「おい真、俺が何で落ちたか知ってるか?」
「あー、何か木戸先生が言ってたな。なんだっけ?」
その時病室のドアが開き俺達がよく知る一人の中年の男性が入って来た。
「お、噂をすれば」
「何の噂をしてたのかな?」
入って来たのは物理の担当教員である
「お、目覚めたのか零矢」
「何でこいつが落ちたのかを話してたんすよ。で何でしたっけ?」
木戸先生ならば現場の状況などを警察から聞いているだろうし説明してもらえるだろう。だがこの人は自分の分野となると途中でヒートアップする可能性がある。今それはキツいのでやめて欲しい、俺はそう思った。
「はい。俺も当時のことはよくわからなくて。振り向いたと思ったら落ちて、それだけです」
「そうは言っても屋上の柵などの設備を警察が調べたんだが、問題は何もなかったし。その時、少し風が吹いてたぐらいなんだよな」
……え、じゃあ何で?落ちる原因がないのに...
「一応、手が滑って落下しパニックか何かでその前後の記憶が抜け落ちたという結論に達している。屋上は一時閉鎖して、念のため今警察が目撃証言を探してる」
「え……?突き落とされた可能性もあるってことですか?」
それでは殺人未遂事件である。俺は何者かに命を狙われていたということだ。思い当たる節はなくはないが殺される程恨まれている覚えは...やっぱり以前一悶着あった他校の生徒だろうか?
「まだわからん。あくまでも可能性、ということだ。それにしても下に業者が運んでいた体育用マットがあったとは幸運だったな」
「まぁ、こいつは昔からこういう時の悪運だけは強いですからね」
……いや、それはない。あの時確かに衝撃は感じたし、あの“神”って奴も俺は死んだと言っていたし...あいつが他の人の記憶を書き換えた?だから俺は業者が運んでいたマットの上に落ちて助かったってことになってるのか?いやそんなわけない、これはフィクションじゃないんだから
「どうした?何か心配事でも?」
深くうつむいて考え過ぎたのだろう。木戸先生が心配するように声を掛けてきた。
「あ、いや別に。そういえば、俺いつ退院できるんですか?」
「奇跡的にも多少の打撲程度で他に怪我はしてなかったから今日中に退院できるが、しばらく学校には来ない方がいいな」
「そうですか」
……まぁ当然だろう。学校側も狙われているかもしれない生徒を危険な目に逢わせるようなことはしないだろうし、じゃあ警官とかが護衛に...そこまで暇じゃないか
「まぁ、一週間ぐらいだし、安静にしてるんだな」
「いいなぁ、学校休みとか。ずるくね?」
「ナニカイッタカナ?伊達君?」
真...お前というやつは。馬鹿なのか、先生の前で普通それ言っちゃ駄目だろ。しかもこの状況下だぞ、一週間内に殺されたら永遠に休みだ。
「い、いえ。何も」
「そうか。あ、そうだ。親御さんに電話しておこうと思ったんだが繋がらなくてな。連絡先が変わったとか何か事情があったりとかするのか?」
「さあ、俺もしばらく会ってないので」
自分でも表情が変わるのがわかる。二人は例え俺が死んでも来ることはない。声は聞くがここ一年は会ってないからだ。一人暮らしの俺に毎月金を振り込んで来るだけ、どこにいるのかもわからない。帰ってきたとしても深夜で出ていくのは早朝、顔を会わせることもない。
まず前に会ったのはいつだ?入学式はいたし、文化祭も来てたような気がするがどれもこれも一年以上前の出来事だ。二学年に上がってからは面と向かって会ったかどうか。まぁ別にもう慣れたので寂しくもなんともないし構わないのだが。
少し間をおいた後、事情をなんとなく察した先生は
「そうか、まぁお大事にな」
と言って、部屋を出て行った。
※ ※ ※ ※ ※
あれから数時間後俺は退院し、家に帰った。勿論手ぶらではない。いつの間にか置かれていた大量の課題と共に...
「物理だけだと思ったら他の科目もあるし、こういうところはちゃっかりしてんだからな...」
流石進学校。受験生に必要以上の課題を与えてくれる。まぁ家に籠ってた方が安全だし仕方ないかと思いながら取りかかりやすいものから取り組み、あの“神”とやらが言っていた約束の時間まで待つ事にした。
※ ※ ※ ※ ※
それから一時間後、俺は“神”に言われた占い館に行った。結局今の状況をあれこれ考えてしまって課題はあまり進まなかった。
家は学校と近いので、占い館は俺の家と学校のちょうど中間ぐらいにあった。住宅街に建っているため建物の見た目はドア以外は妖しくはないし、大分前から経営して続けているため評判は良いのだろう。
……こんな所普通来ないからな、露店ならまだしも館って...妙に緊張するな
明らかにそっち系の店の雰囲気が漂っているがとりあえず入らなければ始まらないので妖しげな装飾が施されたドアを開け、中へ入った。
そこは奇妙な絵や置物が飾られていてかなり不気味に思えた。入り口の色は赤紫で統一されて、西洋の舘のような雰囲気を感じた。
……うわ、何か不気味
受付はこちらという張り紙が貼られており、それにしたがって少し行くと、受付があり俺はそこに立っている従業員に話しかける。
「あのー、すみません」
受付だというのにフードが着いたマントのようなものを羽織り顔は口元しか見えていない。唇には真赤な口紅が塗られており魔女といった印象を受ける。
「はい、いらっしゃいませ。始めての方ですね。ここは占い師を指名することが出来ますが、どなたからのご紹介で何番の人が良いなどの指名はありますか?」
……いや、まだ受けたいも何も言ってないんですけど。訓練されてるんだろうな、この人。ってか指名って大丈夫な店だよなここ
てっきり魔女のような低い声だと思ったがそこら辺のコンビニ店員にいそうな明るい女性の声だった。メニューのようなものを見せられ会員制ではないこと、指名料が発生しない事を確認し先程“神”なるものに告げられた番号を告げる。
「あ、じゃあ一番の人で」
「わかりました。少々お待ちください...はい、これが番号札ですね。では、この先をまっすぐ進んで一つ目のドアの前で待っていてください。中の者から声が掛けられたら入ってください、お支払いは中の物が行いますので」
「はい」
「あなたにも占いの神のご加護がありますように」
「はぁ、ありがとうございます」
何か宗教じみてるなと思いながら、俺は言われた通りの場所まで行き、ドアの前で待った。番号札は赤く1と書かれているが降霊術系の御札に使っていそうな模様が周りに刻まれていた。
しばらくすると中から、
「1番の方、お入りください」
という女の人の声が聞こえたので返事をした。
「あ、はい!」
俺はドアを開けおそるおそる中へ入った。
ようやく占い館に行きましたね。
さて今回謎がありましたね。何故なのか?考えて見てくださると嬉しいです。
次回はついにヒロイン登場です。お楽しみに‼