……ヤバい、変な所に来ちゃった
駅で、この前学校にいた、女の人(多分中は男)の人と似た声がして後をつけたら何か変な話してるし、走り出すしで、どうしようかと思い、いつもの予知能力を使ったらマンホールに何か呪文を唱えているビジョンが見えたので、それを言ったらこんな場所に来ていた。
「いや!でもここ凄い、何と言うか最新みたいな」
大きなモニターに難しそうな器具の数々、金色のドアに澄んだ空気。まるで研究室のような印象を受ける。そんな感情に浸っていると、
「変わってなくてよかっ...」
どうやら家主が来たようだ。人数は二人。
片方は赤茶髪のショートカットヘアーで黒い大きな目、誰もが美人と言うであろう顔で普段着の上に白衣を羽織っていた女性。
もう片方は男性で女性より頭一つ分背が高くどちらかと言うとボサボサに見える黒髪に鋭い目付き、カッコいいと言うよりはイカついイメージを受けた。
「ここ...どこですか?」
不用意にも道に迷った風に装って訪ねてしまった。いや、無理なのはわかっている。どう迷ったらここに来るんだろう。
僕達の目線は一点で交わり、お互い気まずい雰囲気が続くなか、どこからかすっとんきょうな声が聞こえてきた。
「久し振り...ってはぁ⁉こいつ誰?」
声の方向を見ると、モニターに女性の姿が。肩より下まで伸びた銀髪。アニメキャラのような顔立ちと声。今の自分の気持ちを簡潔に表現するなら、
何 だ コ イ ツ は ?
としか表現できない。AIか...?
「仕方ない、
赤茶髪の女性がボソッと呟く。今確かに気絶させると言った。全身に冷たい汗が伝わっていく感覚がする。
「後輩クン、よろ」
「え...わかりました」
後輩クンと呼ばれた男性が近づいて来る。喧嘩などあまりしないのでよくはわからないがこれは殺気ではないだろうか。
「悪ぃ、ちょっと我慢してくれ」
……ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい‼我慢って何?ちょっ、僕これから何されるの?あっ!集中しろ、集中しろ!いつものビジョンで...
深呼吸し、気持ちを落ち着かせてイメージする。体が熱い感覚に襲われ、脳内にビジョンが映し出される。そこには左腕を掴まれ、身動きが取れなくなるまでの映像が流れた。
直後、男性はビジョンと同様に左手を掴もうとしてくる。僕は左手を後ろに回し、
……ダメージを入れるなら...ここだ‼
思いっきり、股間を蹴り上げた。男性は呻きながらダウン。ヤバい、やり過ぎただろうか。
間発入れず女性がワイヤーのような物を射出してきた。僕がギリギリで躱すと、次は左手のワイヤーを射出してくる。
このままでは避け続けて体力を消耗して負ける。もう一度集中し、ビジョンを見ると背後から銃撃されて倒れる自分の姿が見えた。ワイヤーを射出し続けるのはそこへ移動させる為だったのか。
次々に射出されるワイヤーを避け続けて少し開いているドアの前に立つ。ビジョンではここから銃撃された。
「今!
女性の掛け声と同時にしゃがむ。ドアの隙間から弾丸が放たれ、僕には当たらずに真っ直ぐ女性へと向かって行った。
「えっ、いやいやいや、ちょっ!待っ...アアアアアッッ‼‼」
叫び声を上げ、倒れる。今のが電気銃って奴か。
僕は長居するのは危険だとわかり入り口の扉を開こうとするが、
「あれ?開かない」
「ハァッハッハッ‼無事に帰れるとでも思ったか?」
アニメ声が耳に響く。コイツの仕業か。
「コイツ等がそう簡単にやられる訳ないだろ?」
僕は集中し、この後のビジョンを見ようとする。が、
「なっ⁉いつの間に!」
両手両足にワイヤーが巻き付けられている。それは左右の二人から射出されていた。
「フィナーレだ、
身動きが取れない中、ドアが開いてアンドロイドが銃を構えながら出てくる。僕は観念して目を閉じた。タイミング良く三人の絶叫が重なるビジョンが見えた。
※ ※ ※ ※ ※
「ぷはっ、ハァッ、ハァッ...え?」
「目、覚めたか」
水をかけられ覚醒すると、椅子に座らされて縛られていた。しかし、他の二人も同様だった。
「今、何時ですか?」
「七時半過ぎだよ」
女性はやれやれといった感じで答えた。疲れているのだろう。が、それよりも気になったのは...
……お、大きい...
部屋に入ってきた時もそうだが、縛られているので嫌でも女性のある部分が強調されてしまっている。
言い訳をいうならば別に見たくて見てる訳ではない。面積的に視界に仕方なく入ってしまう訳で...
「武器庫‼」
アンドロイドから水を掛けられた。ってあれ?何で男性も掛けられてるの?あ、あぁ同じ理由か...
「あのねぇ!少しは欲望を抑えられないの?」
そう言って自分だけ武器庫に縄をほどいて貰っている。僕達はそのままなんですね...
※ ※ ※ ※ ※
何はともあれ、お互いに自己紹介をした。
女性は妖美 卯一、大学生で、男性は神木 零矢、僕と同じ高校の先輩だった。
彼らは表ではいわゆる何でも屋を経営し、裏ではGDと呼ばれる組織が起こす事件を阻止していると言う。どおりでこの場所を隠しておきたいわけだ。
「そうだ!多分そいつも聖なる力持ちだ。えっと...『
で、このアニメ声が“神”と呼ばれる存在でどういう者なのかは実際のところウィッチさんも零矢先輩も知らないらしい。
GDはほとんどが隠された力持ちで並の人間では歯が立たない。しかし、二人は一般人が持っていない聖なる力を使って対抗している。そして何故か僕もその力を持っている...らしい。どうやらよく見るビジョンはその能力だという。
「で、翔?だっけ。お前も狙われる可能性あるかもだし神事屋入らない?」
零矢先輩が聞いてくる。確かにバイト代も出るし、基本楽な仕事内容なのだが危険度が高い。しかし、GDは遅かれ早かれ襲って来るだろうし、何の情報も無いままだと身内にも危険が及ぶかもしれない。
結局色々考えた後、
「じゃあ、入ろうと思います。これからよろしくお願いします、先輩方」
「先輩だって、可愛い後輩から!良いねぇ、言われないし」
「そうですか、ウィッチ先輩?」
「後輩クンはさん付けでしょ?」
零矢先輩...せっかく先輩ってつけて呼んだのにあえなくスルーされた。何だか凄い可哀想に見える。
「そう言えば二人ってお付き合いされているんですか?」
「「へっ?」」
間の抜けた声が重なる。実はずっと気になっていた。と言うか、高校生と大学生だし、カップルでもおかしくはない。
二人はしばらくお互いを見つめ合い、言った。
「「いや、確かに同棲してるようなものだけどそう言う関係じゃない」」
そう言う関係じゃなくても凄い言葉が聞こえた気がする。ってカップルじゃないのに同棲なんてするのか?二人とも何か特別な理由があるとか?
「まぁ、確かに住んでいるけど、健全な男子高校生が夢見ているものは起きてないし...起きて欲しい?」
「まぁ、欲しくない訳では...」
「スケベ」
「はぁっ⁉」
何だろう、見てるこっちがニヤけてしまう。なんかズレてる感じはするがカップルみたいに仲が良いと思う。
「おいおい、痴話喧嘩はそこまでにして...」
「「どこが痴話喧嘩だッ‼」」
ヤバい、タイミングが同じ過ぎる。笑い過ぎてお腹痛い。
「翔爆笑してるじゃん、早く話を戻せ!」
※ ※ ※ ※ ※
「まぁ、こんなもんだよね~」
今僕は水色のTシャツの長さをて測って貰っている。手にはGod-tellと呼ばれるマリンブルーの携帯が。僕専用との事。
「これでお前も神事屋の一員だし、同じ学校だからよろしくな」
僕は零矢先輩と握手を交わした。何だか高校に入って新たなスタートを切れた気がする。上手く両立出来るかは心配だが、頑張って見ようと思う。
僕は別れを告げ帰路へついた。両親になんて話せばいいか悩んだがありのまま話せばいいか。