俺達と神達と空想神話物語   作:赤色の魔法陳

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卯「前回、て~んさい大学生妖美 卯一の後輩こと神木 零矢は晴れて停学が開け、一週間振りの高校に行くといつもの日常が待っていたのでありました」

零「あのー、それ大丈夫なんですか?あれですよね、あのあらすじ紹介...」

卯「そ~んな友人関係が心配な人はほっといて、って怪しすぎるなこの転校生。って霊獣まで!やっぱり何かある」

零「何でいきなりノリノリに...(前回出番なかったから?)」

卯「さぁどうなる今回?」


来訪者

「...そんな事がねぇ」

 

 私は後輩クンの話を聞きながら運ばれてきたコーヒーを飲んだ。ここは駅の喫茶店だ。私が連絡してここで待ち合わせた。

 

 連絡した理由は霊石の事だ。彼は猫探しの際に会った猫又の霊石を一欠片死守していた。それをその日の夕食の日に渡してきたのだ。私はその霊石をある工場に持ち込んだ。もちろん高く売るためとかではない。

 

 彼の話では、今日学校でも霊獣が出たらしい。『変身』で倒したらしいが猫又の時に近くにいたGDらしき人物と出くわしたと言う。そいつは霊石を取り返しに来たらしい。

 

「取りあえず用心するに越した事はないね、特にその転校生。白って訳じゃ無いだろうし」

 

「そうですよね、なんか目が闇を帯びてた気がしますし」

 

 しかし、木戸先生が転勤する少し前からいたということは、代わりとして新しく派遣されたのだろうか。

 

「戦力増強も無理そうだし、明日私が霊石を渡しに行った工場に行こうか、遅かれ早かれ行くことになるだろうから」

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 午後四時、私は時間通りに喫茶店に着いた。が、まだ彼は着いていないらしい。遅いな~、と思っていたら彼は息を切らしながらやって来た。

 

「大丈夫?もしかしてまた今日も?」

 

「いえ、今日は何も。用事が入ってしまって...」

 

 なんだ、用事か。ヒヤヒヤさせてくれちゃって。君がいつも通りだから何か安心しちゃうな。

 

「無事で良かった」

 

 私は彼に微笑んだ。彼は私の顔を見るとすぐに目を反らして、

 

「そんなにヤワじゃないです」

 

と、恥ずかしそうに頬を掻きながら言った。そう言う所は子供みたいで可愛い。

 

「じゃあ行こうか」

 

 私達は喫茶店を出て、電車に乗る。目的地は西街の工場だ。電車に揺られながらふと思う。誰かと一緒にどこかに出かけるなんて久し振りだ。私は行きたい所があれば一人で勝手に行ってしまう。

 

 だが今は横に彼がいる。不思議な気分だ。そんな気分を深く味わう間もなく列車は駅へと着いた。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 『神聖西工場』、そう書かれた看板が風化してボロボロに成りつつある石の壁に掛けられている。いい加減建て替えればと来る度思うのだが。

 

 この工場は日用品を作る事を目的にしている。プラスチック製品だとか。スーパーに売ってる日用品は大抵神聖工場の物だ。

 

 では、何故そんな工場に来たのか、何故それぞれの街に工場はあるのに西街なのか。きっと彼は困惑していることだろう。

 

 門をくぐり、事務所に顔を出して挨拶し、従業員以外立ち入り禁止の扉から中に入る。このまま行くと...あ、あったあった。鉄製の扉に侵入禁止の張り紙が貼られている。私は思いっきりノックした。

 

『誰だい?』

 

 どこからか声がする。聞こえるように大声で話す。

 

「私、卯一だよ。新入りと来たの」

 

 扉のロックが解除されたような音がして一枚の扉が横に開くとまた扉があり、縦、横、斜めと色んな方向に次々と扉が開いて道が出来てくる。何回も思うがここは宇宙船か?

 

 私達が道を通り終わると扉はまた閉じていった。彼の驚く顔が新鮮である。しばらく歩いて行くと、カンッ、カンッと何かを叩くかのような音が聞こえ始めそれに徐々に近づいて行く。

 

 角を曲がると白衣の体がガッチリとした大男がハンマーで何かを叩いていた。その大男は私達に気付くと振り返り、彼に

 

「あら?あなたが新入りかい?」

 

と、女性のような口調で話しかけた。私はもう慣れているが初対面の相手に取ってそのギャップは凄まじくしばらく彼はポカンとしていた。

 

「私の説明してないのかい?」

 

 私に聞いてくる。そう言えば、行こうかと言っただけでこの人の説明をしていなかった。

 

「全く...お前名前は?」

 

「神木零矢です」

 

 すると彼の体をじっと観察し、

 

「ふ~ん、あら!以外に良い体つきしてるじゃない」

 

「あ、ありがとうございます。あまり言われた事がないもので何と言えば...」

 

 マジか。彼出会った時も感じたけど以外に筋肉の付いた体形なのだがあまり言われないって周りどれだけ皆筋肉あるの?

 

「なるほど、卯一と似た境遇なのね」

 

 あ、友達が少ないからか。我ながらに失礼だと思うが納得した。心配しないで、私もそうだからね!

 

「卯一が紹介しなかったみたいだから自己紹介を。私は大鎌(おおがま)。卯一にはカマさんって呼ばれてるから好きに呼んでね。この工場で秘密裏に誓石(オリハルコン)を加工してるのよ」

 

「オリハルコン?」

 

 すると、私にそれも教えてないの?と言うように睨んできた。愛想笑いを返すしかない。忘れるんですよ、色々あるから。

 

「まぁ、ざっくりと説明するとGod-tellとかアイテム、それは全て誓石から作られてるの。誓石は代償に応じて特別な能力を持った物に加工出来る。それこそワイヤー、携帯、それに宇宙船とかね」

 

「宇宙船って今ある既存の宇宙船も誓石から出来てるんですか?」

 

「ビンゴ!社会で習ったよね。私達は宇宙進出を目指した結果、日常ではほとんどが三百年近く前から変わらない。それっておかしいよね。そんな技術があるならどれだけ日常を豊かに出来ることか」

 

 彼はうつむき顎に手を当てて考えている。恐らくその結論まで至るにそう時間はかからない。

 

「もしかして...その技術を隠蔽してるんですか?例えば管理局とかが」

 

「ハイハイ、その話はそこまでにしなさい」

 

 せっかく答えに辿り着いたのにカマさんに遮られる。用は、来た理由を言えという事だろう。私は最近二人の周りに起こった事を話した。

 

「学校にも霊獣が...いったい何考えてるのかしらね」

 

 霊獣とは霊石で出来た化け物の事だ。

 

「まぁ、例の物はあと数日で完成するだろうし。ソウに届けさせるわ。それまで頑張ってね、新入り君」

 

「はぁ...」

 

 そう言えば、今日はソウ君を見ない。買い物かな?まぁあの子は人見知りが激しいから居たとしてもあまり見かけないんだけど。

 

 私達は取りあえず紹介が終わったので帰ることにした。帰り際、カマさんに呼び止められ小声で

 

「あまり一人で背負うんじゃないよ、せっかくわかってくれる子が来たんだから。お幸せに」

 

 どうやらまた背負っていることを見透かされたらしい。最後の一文はちょっとよくわからないが。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 私達は工場を出て電車に乗り南街へと戻る。疲れたから家に帰りたいところだがまだ行く場所がある。学校付近を歩いていると彼が、

 

「そう言えば何でカマさんは代わりに誓石に何かしらの代償を払ってくれるんですか?」

 

「それはあの人がそういう『隠された力』だから。だから...⁉」

 

 彼がシッ、と口に人差し指を当てて喋るなと示唆している。口パクで普通に歩いてください、と言っているのでなるべく彼の方を向かずに理由を聞いた。

 

「どうしたの?」

 

「駅か学校からですかね、多分付けられてます。件のGDではないと思いますが」

 

「目的の場所は大型スーパーの裏の道の丁度周りから見えない位置にあるマンホールだから。五分ぐらい別々に行動してそこで待ち合わせで」

 

「了解しました」

 

 私達は二手に別れて目的の場所とは別の方向へ走る。目的の場所は左に曲がるが私は右へ、彼は直進した。

 

 幸い土地勘はあるので色々曲がりながら五分ぐらいかけて目的地まで辿り着くと彼の方が先だった。

 

 私達は無事での再開を喜んだあと、マンホールに向かい一喝。

 

「「神聖解錠ッッ‼」」

 

 光が辺りを包み見慣れた地下室へと一瞬で移動する。いきなり暗くなったので目が慣れなかったが彼はちゃんと居るらしい。

 

「あぁ、変わってなくて良かっ...」

 

 良かった、と言いたかった。ドアを開けたらいつもの研究室だと思っていた。それは変わらなかった。ただ一つ絶対にここに居るはずのないものがあった。

 

「ここ...どこですか?」

 

 神聖学園高校の制服、彼よりも眺めの黒髪で凛々しいと言うよりは可愛らしいという印象を受ける男の子がそこにはいた。

 

「ウソ...」

 

「マジか...」

 

 三者の視点は互いに交わったり反らしたりして約三十秒もの間誰も喋らず、沈黙を破ったのは“神”の

 

「久し振り...ってはぁ⁉」

 

 と言うムードぶち壊しのすっとんきょうな声だった。




──予期せぬ来訪者──

 次回、

  「悪ぃ」

  「今!武器庫‼」

  「なっ⁉いつの間に!」

  「無事に帰れるとでも思ったか?」


            ──プレディクション

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