卯「どうしたの急に?」
零「いや、何か一週間ぐらい忙しくてまるで一年近く感じたんですよ」
卯「えっ?そう言われればそんな気もするなぁ」
神「いやいや、お前達...
マジで一年経ったから」
卯「あはは、笑えない冗談はよしてよ。だって計算してみなよ。一週間で一年でしょ、つまりこっちの一年で約52年...え?」
零「それかなりまずくないですか?」
どうなる俺達と神達と空想神話物語?ちなみに本日で一周年‼
四月十二日。俺は停学が開け神聖学園の土地の中に足を踏み入れていた。時刻はまだ8時。授業までにはまだ時間はあるが、何もようなしに早く来た訳ではない。
八日の猫探しの際の謎の化け物に襲われ、その一部始終をウィッチさんに話すと、化け物は霊子の結晶体である霊石がいくつか組合わさって出来る霊獣と言う物だった。
霊石は人に見つかる事は少ないので高値で売れるらしい。また、再利用も出来る。だからこの世の不可思議な事件はほとんどが霊石を使用した誰かによるものだと言う。
彼女の推察によると、その場で俺が出くわした人物はGDの一員であり、あちらも本気で動き出したから、こちらの戦力を確かめに来たと言うのだ。
だからこちらも戦力増強と言うことで誘って来いと言うことだ。
この時間帯なら部活勢はいない。そう思いドアを開ける。
「おはよー‼」
「「「うるさい」」」
開幕早々文句かよ。教室にいた三人全員からバッシングを喰らった。一番近くにいた女子が話し掛ける。
「あ、神っち停学開けたんだ」
肩までかかる長い金髪、メイクの濃い顔、短いスカートに胸元のリボンを少し緩めだらっとした印章を受ける内のクラスのギャル代表こと間城 可奈(ましろ かな)だ。
彼女は俺の事を神っちと呼ぶ。特に関わった覚えなどないが。
「ああ。そう言えば間城ってバイト探してたよな、良い仕事があるって行ったらどうす...」
「あ、パスで。同級生に誘われるバイト程怪しいものはないし。つーかあんた働いてたの?」
話終わる前に拒否される。恐らく無理だろうと思い、俺は答えを濁して自分の席に向かう。荷物を置くと後ろからカリカリと何かを書いている音が聞こえる。
眼鏡に整った髪、既に受験に向かってフルスロットルの我が学園トップの得点王、金橋 勉(かなはし つとむ)だ。
「あ、あのさ、金橋。お前バイトとかしてみる気は...」
「は?何言ってるんですか、僕はこうして勉強しているというのにバイト?停学中に頭おかしくなったんじゃないんですか?」
声が大きいし勘に障る言い方だ。まぁ、どうせダメだろうと思っていたからいいが。
……最後は...出来ればあまり関わりたくないのに部類なんだが
俺は部屋の隅の机にヘッドホンを着けながら座って、窓を眺めている男子...黒田 勇(くろだ ゆう)に話し掛ける。
「何?」
好きな音楽鑑賞の時間を邪魔され、ムッとした表情で黒田は俺の方を向いた。
「あのさ、バイト...」
「やだ」
即答かよ...って言うかこのクラスの奴等は最後まで俺に話をさせてくれないの?自己中ばっかかよ⁉
「いや、話を最後まで聞いてから...」
「どうせさっき他の二人に言ってた事と一緒だろ、何?勧誘でも頼まれたの?停学中にバイトかよ...」
……ああ‼どいつもこいつも‼
こいつ何気に正論言って来るからムカつくんだよな。まぁ、関わりたくないっていうのは別の理由なんだが。
「用が済んだらどっかに行け、お前と話していると俺も風評被害を受ける。お前は俺にとって壊すものだ」
出たよ。こいつに関わりたくない一番の原因、それはこいつは全てのものの価値を自分にとって守るものか壊すものの二択でしか見いだせないのだ。要するに俺はこいつにとって要らない存在だと言うこと。
俺は呆れて席に戻った。部活未所属の3人なら誰かしら承諾してくれるかと思った俺が馬鹿だった。
正直こういう扱いは慣れてるから別に気にしない。そんなの二年からずっとそうだからだ。
しばらくするとクラスメイトが続々と教室に入って来た。その中で俺より背が高い男子が話し掛ける。
「よぉ、零矢!バカンスは楽しめたか?」
伊達 真だ。こいつ挑発してるのか?俺は停学直後に和の世界に飛ばされるわ、戻って来て殺されそうになるわでバカンスなんて程遠かったんだからな。
「アルテミスの矢に射られて死ね」
「ははっ、久しぶりに聞くな。その言い回し」
クラスメイトから奇異の目が飛ばされる。それもそのはず、俺達二人が風評被害を受ける原因だからだ。学年の中では俺達と関わると不良に絡まれるだとか皆から嫌われるだとかいう噂が流れているらしい。
「そう言えばさ、隣のクラスの転校生知ってる?」
人が真剣に考えているのにお前は...ん?転校生?この時期に?
「そんな奴聞いた覚えがないが」
「そりゃそうだ、お前が停学中に転校して来たんだからな。しかも転入テストは高得点。おまけに美人だしな」
なるほど、随分と物好きが来たものだな。しかし、この学園の転入テストで高得点ってすげぇな。
そんな事を話していると先生が入って来てホームルームを始めた。そんな聞くことでもないか、と思い流していたがある言葉に引っ掛かる。
「木戸先生が転勤してもう二日になるが物理は引き続き私がすることに決定した」
……え?転勤?
真っ先に和の世界であった事が思い出された。まさか任務に失敗したから消されたとか、しかし二日前と言うことは和の世界から帰って来てしばらく経ってるし、辞職ではなく転勤だから生きてはいるだろう。
ホームルームが終わり、一限目までの十分間に隣のクラスに行くことにした。ドアから覗くとすぐ近くの見慣れない生徒と目が合い、気まずくなって目を反らした。
長い黒髪、青色の瞳、日本人とは離れたような綺麗な顔立ちは見るものを男女問わず魅了してしまいそうだ。
見つめ過ぎたか?と思っていたら真が、
「お前見つめ合ってたろ、あれ転校生の破神 霊香(はがみ れいか)」
「見慣れないと思ったら彼女が転校生か、破神って珍しい名字だな」
だけど、多分真は気付かなかったかっただろう。見つめられた瞬間にふと覚えた違和感。青い瞳の奥に暗く沈んだようなものが見えた。それに、なんというか殺気のようなものを。
……何か闇を抱えてる?
そんな事を思っていると、破神は立って廊下に出てきた。話し掛けて来るのかと思ったが、ただ横を通り過ぎただけだった。その瞬間、風が囁くかのように声が聞こえた。
...挨拶と。
パリィン‼と言う響きに我を取り戻す。廊下の窓が割れたのだ。生徒達が次々に教室から出てくる。
すると、割れた横の窓が砕け散った。パニックになる生徒。俺はまさかと思い、God-tellを取り出す。
直後、その二つ横の窓が割れる。階段の方に向かって順に割れていくので階段の方向まで生徒を掻き分け走る。
生徒が居なくなった廊下でGod-tellの光を浴びせると、やはり霊獣の仕業だった。以外に小さく、手に棍棒のような物を抱えている。
……ゴブリンか?
霊獣はゴブリンと呼ばれる魔物に酷似していた。猫又と言い、霊獣とはこの世に存在しない魔物や妖怪などを表したものなのだろうか。
ゴブリンはこちらを振り向くと棍棒で殴りかかって来る。俺はしゃがんで攻撃を避けたが、横の壁はひび割れ砕けてしまった。威力は申し分なさそうだ。
棍棒を構え直し、振りかぶるゴブリン。俺は横に避けて反撃を試みたが、ゴブリンは攻撃するのではなく走り去って行く。逃げるつもりだろうか。
今ここで逃げられると被害が広がる。だからなんとしても仕留めなければ。しかしその思いもむなしくすばしっこいゴブリンは離れて行く。
……このままじゃ追い付けない...なら!
走りながらGod-tellの『変身』を押す。体が軽い神をイメージしていると、少し重かった体が随分と軽くなった。
横の窓を覗くと、そこにいたのは髪が長く化粧をしたかのような白い顔で、踊り子の色々ギリギリな衣装を来た俺だった。
他人から見るとこうなってるのか、なんて思っていたらゴブリンは廊下の隅の窓を割り外へ消えた。
※ ※ ※ ※ ※
「おい、皆!あっちでガラスが割れたって騒ぎになってるぞ!」
静かだった教室にそんな声が響いた。まだ新生活が始まって間もない僕らはまだそんなに仲良くなかったが騒ぎと聞いたら見に行きたくないという事はなく、ぞろぞろと教室から出ていく。
自分も行こうか、なんて思っていたら頭に謎のビジョンが。そこでは裏庭の所の窓から際どい女の人が乗り出して何か叫んでいる。
「あ、僕トイレに行くから」
そっちの方が気になったので人目を避けて、その窓が見える箇所まで行った。これまでの事を考えれば必ずさっきのビジョンは現実に現れるはず。すると、
「逃がさねぇ‼」
本当にビジョンの通り女の人が出てきた。しかし声が明らかに男だった気がするんだが...
その人はワイヤーのような物を腕から射出した。そのワイヤーは空中で何かを縛るように宙で止まり、その人の方向に引き寄せられていく。
すると、その人は窓から飛び降りた。
「え?ちょっ‼」
「
その人はくるりと回転して見事に地面に着地する。僕はホッとして胸を撫で下ろした。のも束の間、僕は木の陰に佇んだマントを被った人物を見つけた。そのマント人間は女のようなその人を見つめている。
「やっぱりこの間の奴か」
女のような人はマント人間に向き直る。どうやら気付いていたらしい。
「...お前、貴重な霊石を、盗った。そのせいで私、ペナルティ喰らった」
何とも言えないような曇った声。ボイスチェンジャーでも使っているのか?意識しないと言葉の一つ一つを追うのに苦労してしまう。
「あぁ、あれね。残念ながら件の物はもう無いよ」
「...ふざけるな、殺す...」
「落ち着け、ギャラリーがいる前ではあまり良くない、だろ?お互い」
ギャラリーと言われ心臓が強く脈を打ったのがわかった。額に先程まで無かった脂汗が浮き出てくる。こちらに気付いている?
「...覚えてろ」
そんな言葉が聞こえた後、僕はすぐさま逃げ出した。
教室に戻っても、授業を受けてもその恐怖は頭から離れなかった。この学校はいったい何なんだろうか?
零「いや後書きとか書いてる場合じゃないから」
神「一周年、なんだよな。私達にとって一週間だぜ?」
卯「ここでお知らせをもらったので予告をさせていただきます‼」
神「どうした、いきなり。予告って言ったって...」
卯「ただの予告ではございません。『先行予告』でございます‼」
零「こんな終わるのか?状態ですが第四章のタイトルを先行公開いたします」
神「すみません~、聞いてないんですけど!台本ください!」
卯「俺達と神達と空想神話物語第四章のタイトルは...私と天使と天界大戦争物語だそうです」
神「作者~‼台本寄越せ~‼」
卯「ええと、読みますね。天界ノ書を手にいれた神事屋は天界へと次元を越えて向かう。そこで待ち受けるのは『翠女神』。零矢は魔王の力を手にし立ち向かうが...」
零「魔王⁉ってかタイトル的にウィッチさんが中心?」
卯「HAHAHA。軽く暴れますよ。ちなみに第四章開始日時は不明です」
零「そしてもう一つ。俺達と神達と空想神話物語番外編、まぁ外伝?の制作が決定!その細工は...二周年記念で」
卯「では二年目もどうぞご贔屓に」
零「ご愛読ありがとうございました」
神「終わっちゃったじゃんかぁ‼‼」