さぁ初めての前、後編ですね。切り方が変かも知れませんが、そこは許して下さい...
前回の零矢の発言もそうですが今回のウィッチさんの発言もちょっと...
ジリリリリリリリ‼‼
「あぁ、もう!うっさい‼‼」
鳴り響く目覚まし時計のベルで覚醒する。時刻は六時だ。今日は寝坊しなかったな。さぁ、学校へ...行かないぜ。そんなくだらない事を考えていると、誰かが二階に上がって来る音がして、少し間を開けてドアがノックされた。
「起きた?ご飯出来てるよ、着替えて降りて来な」
そう言えば昨日から晴れて同棲となったんだった。俺は着替え、寝間着を手に持ち階段を降りて、洗濯機に手にもった物を突っ込み席に着いた。
「「いただきます」」
今日は和食と言った感じだ。焼き魚や漬物メインといった感じ。ウィッチさん色んな食事作れるの凄いな。
結局、彼女は1年近く同棲する事に同意してくれた。こんな俺と生活を共にするとは変わり者だなと客観的にも思ってしまったが心の中では家に誰かいてくれる事が嬉しかった。だからと言うか、使いきれないであろうお金を使って彼女にこの家に住むよう提案した。
「「ごちそうさまでした」」
考えているとすぐにご飯が茶碗から無くなっていた。おかわりしようと思ったが朝からそんなに食べるのもあれなので、二人で片付けた。
朝食後、俺達は土地を買うために不動産へ立ち寄り、土地を購入した。そして建築会社に頼み、一ヶ月で一階建ての事務所を立てる事を契約した。料金は倍近くかかったが。
しかも、買った土地はあの占い館跡地。まぁあそこには研究室へ入る為の場所があるからそれを死守できたと思えば良いのだが。これでお金はほぼ無くなった。
※ ※ ※ ※ ※
「本当に良かったの?」
自宅で昼食中に彼女は問い掛けて来た。ちなみに今は正午で二人でパスタを食べている。やはり午前中は建設関係で潰れてしまったのだ。
「まぁ、約束ですし。まぁ、お金が無くなったのは少し痛手ですが、その分神事屋で稼ぎましょう」
「そだね」
なんか共同経営者見たいな雰囲気になりながら食事を続ける。
「そう言えば、ネットでホームページとか作ったんですか?」
「うん、深夜にね」
どうやら寝る前に既にホームページを作ってくれたらしく、なんともう受付も開始したらしい。仕事早すぎない?
神事屋に依頼が来るとホームページの掲示板に内容が書かれる。そして、管理者だけが見れるようにアドレスが貼ってあるページにとびダイレクトメールを送った後で伺うという流れらしい。
もちろん、何でも受ける訳ではなく法に触れる事、ようは殺人、窃盗等は極力避ける。それに巻き込まれた場合は速やかに相談して対処する、との事だ。
「あ、従業員は男、女一人ずつって書いといたから。代表取締役は神谷貢(かみや みつぎ)」
聞いた事の無い名前だ。俺はその名前の人物と会った記憶が無い。むしろ、俺と彼女以外に協力者なんていただろうか?あれ?じゃあもしかして...
「わ、た、し」
携帯の中から予想通りの声が聞こえた。やはり貴様だったか、銀髪ロング神。責任者に会わせろとか言われたらどう対処するんだよ?
「あ、依頼来てるよ」
携帯の画面が神事屋の特殊ホームページにとぶ。数字が目まぐるしい程に並んだかと思うと、それが一つ一つ意味を帯びた文字へ、文章へと変わっていた。不思議な演出だ。
依頼内容は小学生の男の子からだった。内容は三日前からいなくなっている猫を探して欲しいとの事だ。てっきり極秘ミッションだとかを期待していた俺は拍子抜けしてしまった。
「なんか、以外と小さい依頼ですね。これじゃあ、やってる事探偵みたいだし報酬もさほど無さそうですね」
「でも、やるしかない。言い忘れてたけど君を甦らせるには、いくつかの神の力を使って神の書をこの世に出現させなきゃ行けない。その為にはこの間行ったみたいに神の時空へとんで神力をもらう必要がある」
神の書か...なんか人類が知らない、いや知ってはならない事が書かれている禁断の書ってとこか。ようは俺が完全に復帰するにはその書が必要って事か。しかしそれとこれと何の関係があるのだろうか。
「しかしそんなホイホイととべる訳はない。時空を繋げるのは大変だし、一度繋いだらすぐには閉じれない。だからGDも入ってこれたの。それに繋げるには条件がある。その世界観を書いた本が必要。それも数世紀も存在して真実味を帯びていないと無理。またそれが手に入れにくい物でさ、私達も有名にならないと入れない所とかにあるわけ」
だから、小さい事を積み重ねて、この神事屋を有名にするしかないという事か。まぁ納得はできた。じゃあ、この間の世界は15世紀近く前に書かれた大万呂による『古事ノ書』か。確か初版がまだ博物館に残っているって言われてたし。って確か...
「でも『古事ノ書』って数年前に盗まれて現在行方不明でしたよね?何でそんなのウィッチさんが...」
「あはは...まぁ、内緒。もう返したし大丈夫...多分」
いやいやいや⁉今気のせいだろうか、思いっきり犯罪臭がしたんだけど⁉え、法に触れる事は極力避けるんじゃなかったっけ?
「...それ、窃盗罪ですよね、犯罪ですよね」
「平気へーき、裏社会に出回ったのをちょっとした方法で手にいれて、使った後また売って、博物館に匿名で買手を告発したから♪」
もう言ってる事が笑えなくなって来た。まさかと思いTVを付ける。丁度速報で『古事ノ書発見か』と流れて来た。持ち主ははめられた、と証言しているらしい。俺はなんと言うか引きまくって声が出なかった。
俺はとんでもない人に一緒に住もうと誘ってしまったのかもしれない。この人はどれ程、裏の繋がりを持っているのか...
そう考えている間にも当の彼女は依頼に向けて了解のメールを送っていた。
※ ※ ※ ※ ※
午後2時。僕は待ち合わせのコンビニまで行った。すると、数分後に高級車みたいな赤い車がやって来た。まだ春だと言うのに手に汗が滲んで心臓が高鳴っているのがわかる。
後方のドアが開きその車から背の高い男の人が出てきた。男の人は、助手席の女の人と少し会話をした後、赤い車は走り去って行った。
男の人は僕の方を見て、
「少年が今回の依頼主か?」
と、恐い目つきで睨んでいるように言った。僕は恐くて泣きそうだったが手を握り締めて、そうですと小さい声で答えた。
男の人は長くもなく、かと言って短くもない黒髪で、目つきが鋭いカッコいいと言うよりは、恐い印象を受ける。光が反射して目がチカチカする水色のTシャツにジーンズ、スニーカーという、仕事という服装にはお世辞にも言えなかった。
「あ、自己紹介が遅れたな。神事屋M-S(ミース)従業員、神木だ。好きに呼んでもらって構わない。今回は依頼してくれてありがとうな」
男の人は俺に微笑んだ。恐かった表情が少し緩んだ。案外優しい人なのかもしれない。歳は大学生ぐらいだろうか。それから依頼内容の確認をされ、僕達は当の現場へと向かった。
※ ※ ※ ※ ※
我が家の飼い猫ミケが居なくなったのはつい一昨日の事だ。夕飯の時間になっても帰って来ず、結局昨日も家には帰って来なかった。
一度も帰って来なかった事は無いので両親は探偵に頼むかと相談していたが、依頼料が高いので悩んでいたところ、この神事屋M-Sをネットで見つけたのだ。
そうこう考えている内にある通りに着いた。最後にミケを見た通りだ。
「ここが、猫を見た最後の場所か?」
「はい、そこの裏路地に入って行くのを下校中に見ました。でも、そこは悪い人達がよく集ってるって言われてるから入れなくて」
僕は思い出す内に情けなくなってしまって涙が出てきてしまった。もしミケに何かあったらどうしよう、あの時追いかけていれば。
すると頭にポンッ、と手が置かれた。神木さんの手だ。そしてクシャクシャと僕の頭を撫でた。
「情報さんきゅ、後は任せな」
この人、普通に良い人なんではないか?彼は僕に先に家に帰るように指示すると、ミケの写真を手に持ち路地裏へと入って行った。帰り道、この世界にヒーローと言う者がいるなら彼みたいな人なんだろうと無邪気に思いながら歩いた。もう不安は一欠片も残って無かった。
──希望を込めて──
後半は少年視点でした。子供っぽい零矢も少年から見れば大人っぽく見えるものなんですね。
因みに登場した本はオリジナルです。日常会と思いきや重要な内容を入れてみました。
次回予告はちょっとはしょって良いですか?ごめんなさい。