俺達と神達と空想神話物語   作:赤色の魔法陳

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 こんにちは、赤色の魔法陣です。新年振りですね。
 いい忘れていましたが3章開幕です。彼らの戦いから離れた?日常ですので、お楽しみに。多分4章は戦いまみれになるので。


同棲開始?

「あぁ、終わった~‼」

 

 荷物の移動が終わり、私の引っ越し(?)は完了した。ここは後輩クンのご両親の部屋で彼が掃除して私用の部屋にしてくれた。この家は二階建てで一階にリビングやキッチンや和室が、二階にはそれぞれの部屋や物置がある。私の部屋は二階の階段を上がったすぐ右で、彼の部屋は階段の先を真っ直ぐ行った所だ。

 

 階下に降りる。降りるとすぐ右側に1LDKのリビングがあり、普段はここにいようと思う。彼は私に炊飯関連は全て任せてくれた。どうやら料理は苦手らしい。

 

 リビングには少し大きなTVがあり、その前にテーブル、そしてソファーが置いてある。後は特に目立った物はない(テーブルの上に散らばっていた玩具はあったが)。キッチンはまぁ、いかにも新居って感じだ。あまり使った形跡がないから彼は普段はトースターを使ったりコンビニで食事を済ませているのだろう。

 

 そう言えば彼は何年ここにいるのだろうか。こうして貰って言うのも悪いが、何か彼はこの家の使い方は知っているが自分の家ではない、みたいな気がしないでもない。

 

 って私はなんて事を考えてるんだ。奇しくも家を借りている身ながら。気を取り戻して廊下へ。

 

 この家には一階と二階に一つずつトイレがある。これならどちらかが使えないと困る事もないだろう。続いてバスルーム。脱衣場はそれほどの広さはないのか、と思っていたら浴槽が大きく大の大人が二人は余裕で入れそうだ。占い館のお風呂は小さかったのでここで存分に足を伸ばさせてもらおう。

 

……二人入っても全然平気か...

 

「って何考えてるの!?別に一人でしか入らないでしょ!」

 

 取りあえず一階は見終わったので二階へ戻ろう。と言っても、二階は私の部屋と物置と大きなベランダ、そして彼の部屋だけ。彼の部屋は流石に悪いかな。

 

 しかし、彼は今、足りなくなった夕食の食材を買いに行っているし、少しぐらいなら...良いよね?私は恐る恐る扉を開ける。そう言えば昔、馬鹿兄貴が彼と同じぐらいの年の頃、部屋に入られるのを嫌がっていたがやはり、思春期だったからか?女の私はそう言うのよくはわからないが、扉を開いた先には未知の部屋が待っていると思うと私は好奇心を抑えずにはいられない。私は勢いよく彼の部屋に入った。

 

 だけど、私の期待は大外れで特に何かある訳でもなくやはり、ザ・普通と言った感じだった。普通に勉強机があり、普通にベッドがあり、特にポスターだとかフィギュアだとかはなかった。ベッドの下とか、タンスの後ろとか、本棚とかクローゼットを覗いて見たが、彼ぐらいの年相応の物は隠されてもない。純粋な男の子じゃないのか?と疑ってしまう程何もなかった。

 

 なんだ収穫無しか。と思って自分の部屋に帰ろうとしたその時、

 

「お目当ての物は見つかりましたか?」

 

 背後から声を掛けられてビクッとなる。彼だった。夢中になっていたせいで帰って来ていたのに気づかなかった。

 

「全く、人の部屋に勝手に入るなんて...」

 

「ちょっと、興味本位でね...ゴメン」

 

 彼は呆れているようにも見えたが、すぐに許してくれた。これから暮らしていくのだから細かい事をいちいち気にしない為だろう。

 

 私達は一階に降り、リビングに言った。後輩クンはソファーに座り、録画した番組を見る。私はキッチンへ行き、夕飯の仕込みをしよう。彼は色々な物を買って来たらしい。これだけあれば、たくさん作れるが二人なので張り切り過ぎて作り過ぎるのには気を付けよう。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

……まぁこれぐらいでいいか

 

 取りあえず下準備は終わった。まだ十七時前だし、残りは後で良いや。暇だから私も一緒にTVを見よう。私は二人分のコーヒーを入れ、ソファーへ向かう。

 

「お隣良いですか♪」

 

「どうぞ」

 

 ちゃんと断ってから座った。あぁ、やっとくつろげる。コーヒーをテーブルに置いてから画面を見た。さっきから効果音が凄いなと思ったら彼は特撮を見ていた。まぁ、玩具はそれ関連だったし予測は出来たが。

 

「番組これで良いですか?ウィッチさん、知ってそうだし」

 

「ん、良いよ♪」

 

 実は私も特撮が好きだ。この、何と説明すれば良いか、ヒーロー達はカッコいいし、ヒロイン達は可愛いし、やっぱり数式とかに囲まれていた生活に置いて、多少の感動や興奮、夢を与えてくれるからだ。

 

「あ、この後、敵組織からの戦士が登場するんだっけ?」

 

「そうですよ。良いですよね自分の正義に従って動く戦士」

 

「すぐ自分の組織に利用されがちだけどね」

 

 あぁ、何だろう。この感じ。普段同じような趣味を持つ人が余りいないから一人で呟いてたけど、こうやって共有できる人がいるなんて。やっぱそういう人とは仲良くなりたいと思える。彼はどうなんだろう。

 

「後輩クンは何で好きなの?」

 

「ん~、このシリーズ本当好きで、多分理由としては世界観とか今と全然違うのに思っている事とか共感出来るし。やっぱりカッコいい所かな。男の子だったら避けては通れない道ですし。後、お恥ずかしながら彼女はおろか友達も少ないので、のめり込めるからかな」

 

 彼も夢を与えられた人なんだな。まぁ話で一番気になったのは彼女いないってことだけど。やっぱ気が合うな~。

 

「やっぱり気が合うね、私達」

 

「そうかもしれませんね」

 

 でも気が合うというのは恐らく趣味や環境だけではないと思う。彼は多分まだ知らないと思うが『聖なる力』は『隠された力』とは違う。必ず呪いがつきまとうのだ。『聖なる力』は神から与えられた力。それを人間が手に入れるなど罪深き行為。

 

 だから、これ以上『聖なる力』を増やさない為、要は子供を作らせない為に、保持者は恋愛運が異常な程に下がり、さらには友達すら出来にくい、人間関係も上手くいかないという人生ハードモードになると“神”は言った。しかし、青春真っ只中の彼にその事実を告げるのは酷だろう。

 

 そう言えばそれ以外に伝えなければいけない事があるんだった。神事屋の話。番組もちょうど終わったし話そう。

 

「後輩クン...話があるんだけど」

 

「...はい」

 

 彼はTVを消してこちらに向き直ってくれた。しかも正座。私は恐る恐る話を切り出した。

 

「神事屋の事なんだけど、ネットでホームページを作ろうと思って、でも私一人じゃ全ての仕事受けきれないし、時間も無い。だからかなり辛いかもしれないけど手伝って頂けませんか?勉強は私も協力するから」

 

 私はソファーから降り頭を下げた。自分が何を言っているかなんてわかってる。受験生に対して、家主に対して仕事を手伝えと言っているのだ。歳上として情けないなんて知ってる。すると、いきなり肩を掴まれ体を起こされた。

 

「頭下げられても困ります。歳下なのに。でも本部とか良いんですか?普通本部があってネットとかで受け付けるんじゃ?」

 

 うぅ、痛い所をついて来る。その通り。本部がないとネットを使って頼みたくないとか誰が来るのかわからないから信用出来ないって人からは依頼が来ない。それにこちらにもリスクがある。

 

「だけど、あの研究室を本部には出来ないし、建物を建てるお金も...」

 

「なるほど...」

 

 彼は深く考える。建物はともかく今後の事を承諾してくれるなら気は楽だが承諾してくれないなら私はしばらく彼と生計を共にしなければいけなくなり、彼の負担が大きくなってしまう。

 

「本部建てても良いですよ、それに運動程度なら忙しくても構わないし。勉強よりも大事な事ってありますし」

 

 思いもよらない答えに絶句する。今なんて言った?建てても良い?そんな私みたいに富豪の娘が言うならともかくそんなの一人暮らしの高校生が用意できるお金じゃ...

 

「え、だって...え?そんなお金どこに...」

 

「え?家に。親にも内緒だったんですよね、へそくりみたいだし、多分使い道余りないしどうしようか困ってたんですよ。宝くじの一等賞」

 

「なッ...え?えええっっっッ?た、宝くじィッ?そッ、それってここでやってる...」

 

「そうです、美神コーポレーションの傘下がやってる神聖宝くじ」

 

 いやそれかなりの確率だよ?よりにもよって凄い所からお金来たー...私も何回かやってるけど絶対外させられてるのに...私、彼にとんでもない借りを作ってしまった気がする。

 

「と、言うことで本部は作りますが...タダでは優しすぎるんですよね?」

 

 私はゴクリと唾を飲み込む。これだけやってくれるんだ、並の対価じゃないだろう...

 

「じゃあ...」

 

 何だ?奴隷としてこき使われるとか?それとも...よ、夜の相手とか...

 

「一年ぐらいここに住んで家事全般をやって貰えます?」

 

「え?」

 

 それじゃあ、今の仕事に洗濯と買い物が加わっただけじゃない?そんな私にデメリットが全くと言って良いほど無いなんて...

 

「あ、彼氏いる場合は結構ですし。もし暮らしている内で出来たら出ていっても構いませんけど、嫌ですか?」

 

「いや、彼氏とかいないし別に嫌じゃないんだけどさ、君はそれをやって何のメリットがあるの?」

 

 それが一番気になっている。彼にはメリットが一切無い、むしろデメリットしか無い。そんな事人に対してホイホイとやるなんて普通じゃあり得ない。

 

「メリットですか...昔ですね、知り合い?って言うか師匠って言うかまぁその人から『袖振り合うのも多生の縁、人には優しくしとけ出来るだけな』って言われてまぁそれと、人への親切に見返り、メリットなんて求めちゃいけないじゃないですか。要するに見返りを求めたらそれは正義とは言わないでしょ?ヒーローってそう言う物じゃないですか?」

 

 私は何も言えなかった。ただ一つ自分の中で全細胞が叫んでいるのがわかる。彼は狂ってる。ただヒーローに憧れてる子供なんかじゃない。お人好しなんかじゃない。人としての倫理と言うか、頭のネジが外れてると言うべきか。やはり彼も私と同じだ。

 

 

 普通じゃ無い。異常な人間。人成らざる力を持つあまり思考すら普通の人間から離れていく。

 

 

「それに多分、俺は彼女は勿論、結婚も出来ないんで遺産なんて残すだけ無駄だし。家事も面倒なんでそれがメリットって言えばそうですけどね」

 

「そう...あ、ご飯食べようか」

 

 話を切り上げて夕飯の準備をした。ただただ黙々と。いつの間にか目の前の料理は全て完成していた。ずっと考えていた。ご飯を食べ終わっても、食器を洗い終わっても、お風呂に入っても、寝る時間になって布団に入っても。

 

 彼には感謝しても仕切れない。でもどこか私は彼に興味と同じくある種の畏怖を抱いている。今までそんな人には会わなかったから。

 

 それに私達『聖なる力』保持者はいつその力を手に入れたのか?生まれつきか、誰かに入れられたのか?そもそも『神』は本当に存在しているのか?それは望んで手にしたのか、それとも...

 

 私はいつからこの力の保持者になったんだろう?って言うか私自身昔の記憶が余り無い。

 

 そして呪いによって子孫が残せないなら、人間関係さえ滅茶苦茶にされてしまい変な組織に一生狙われたままなら、

 

 

 

 

 

 

「私達は...今何の為に生きてるんだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 独り天井に呟いた言葉は闇の中に消えて行く。時計を見ると時刻は零時を回っていた。眠れない夜は随分と久し振りだ。ホームページ作るか...




──新生活?──


 晴れて新生活開始となりましたね。次回は初の前編、後編となります。お楽しみに。

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