俺達と神達と空想神話物語   作:赤色の魔法陳

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 1ヶ月以上も空いちゃってごめんなさい‼
 赤色の魔法陣です。
 今回は能力発動シーン登場です。バトルシーン多めなのでどうぞ!


ココロカヨワセ

 岩戸は事件でも起きたかのようにパニックになっていた。それはもちろん天宇受売命(オレ)が須佐之男命にスサと言ったことである。

 

「天宇受売命が...ス、スサなど...」

 

と言った風にガヤガヤし始めた。むしろさっきの戦いよりも騒いでいるんじゃないかと言うぐらい。

 

「あぁ、俺の事?」

 

「「「「「お、俺‼⁉」」」」」

 

 これにはドン引きである。中には落ち込んでいる神や絶句している神、悪霊がとり憑いたなどと言いお祓いをしている神まで。どうやら天宇受売命は人気だったらしく、そりゃあショックだよなと思った。俺は心の中で天宇受売命に詫びながら向き直る。

 

……身体が軽い...‼

 

 最初にそう思った。恐らく自分の身体より体重が軽いからだろう。あと筋肉量?目線は少し低い。奴と同じぐらいだった背は少し低くなったようだ。身体を見ると、やはり腕や脚が細い。触って見ると予想通り柔らかかった。

 

「あ...あんまり触らないで欲しいのですが...」

 

 びっくりして見るとGod-tellの中に天宇受売命がいた。なるほど、俺の魂がこの身体に入っている間は天宇受売命の魂がGod-tellに入ってるのか。すると、“神”が画面に入って来て

 

「お前、普通にセクハラだぞ...」

 

 ついでにイヤホンマイクから

 

「後輩クン...それはちょっと...ねぇ?」

 

落胆するウィッチさんの声まで。何ですか、俺は変態として扱われてるの?物凄くブラックな気分に浸りつつ俺は気持ちを切り替えるように自分を鼓舞した。

 

「あー‼もう考えるの止めた。おい!GD」

 

 何だ、と言う顔をしている敵に対し余裕を、強さを見せつけるように、声を掛ける。

 

「Shall we drive?」

 

「何だそれは?」

 

 俺に飽きてきた奴が襲いかかって来る。それをジャンプして頭上を越え俺は裏へまわる。

 

「正義の掛け声。良いでしょ?」

 

 カッコ付けるなよ‼と言う女子三人組の声を無視し、足払いをする。態勢を崩した奴が振り向くように斬撃をしようとするがそれを見通し、奴の前に回り込む。

 

「何ッ⁉速...」

 

 奴の腹へ蹴り込む。奴は手から剣を離し、かなり後ろへ吹っ飛んだ。さらに追撃しようと走り出そうとすると、天宇受売命に止められた。

 

「男の方、待って下さい。これ以上は...あの、服が」

 

 俺は自分の服装を見る。天宇受売命の服装は出会った時のような巫女服ではなく、踊り子の服で何と言うかはだけやすい服だった。いや、もう既にはだけて色々見えそうになっている。

 

……うっ...ヤバッ

 

 体に触らないように上着を抑え座り込む。このままじゃ攻撃だけじゃなく防御も出来ない。

 

「何座り込んでんだ!」

 

 奴は起き上がると同時に拳を構え突っ込んで来る。すると今度は奴の身体が横へスクロールしたかのように飛んだ。視点を元に戻すとスサだった。

 

「スサ、お前...」

 

「安心しろ。やっぱりあいつはヨミ兄じゃない。俺にもそれ出来るんだろ。戦うぞ、零矢」

 

 俺はあぁと頷き、天宇受売命の身体から出て元に戻った。そして再び『変身』を押す。しばらくして俺はスサの身体になった。

 

「天宇受売命、ここは任せてステージへ」

 

 俺は奴に向かって歩き出す。目線は戻ったが身体が重い。俺はGod-tellからアイテムの『(ソード)』を召喚する。

 

「御神事開始...」

 

奴は二本の内一本の剣を拾い上げ俺と対峙した。すぐに間を詰め俺は剣を振りかざす。受け止められ、蹴りを叩き込まれたが

 

「何ッ?」

 

「効かないね。オラッ!」

 

 ダメージは全く無かったので蹴り返す。グッという声が聞こえた。相手にはダメージは入っているようだ。そして追い撃ちに回し蹴り。奴が倒れてる間に、

 

「フィニッシュは必殺技で決まりだ...須佐之男斬・突撃(ストレートスラッシュ)

 

 構え剣をですかで突こうとする。奴の身体へ一撃というところでウィッチさんが止めた。

 

「待って‼そのままだと月読命にダメージが入っちゃう。ネックレスを壊さないと‼」

 

 俺は奴の体を見るがどこにもネックレスを着けていない。どこかに隠しているのだ。俺は奴に聞こうとするが奴が答えるはずもないので止めた。

 

「フッ、甘いな」

 

 足払いされ剣を突き出された。俺は動けなくなる。その時、かん高い声が辺りに響いた。

 

「作戦再開ィィィィッ!皆さんステージに注目して下さいィィ!」

 

……思金神か?さすがだな...ん?ちょっと待てよ

 

 俺は動かないまま自分が本で読んだ事を思い出す。たしかこのあと...

 

「後輩クン、移動した方が...」

 

 先に気付いたウィッチさんが俺に囁く。気のせいかわかってるよねというような威圧感が込められているような気がする。出会って数時間だがこの人は威圧込めるの上手いなと思ってしまう。綺麗な薔薇にはトゲがあると言うが正にこの事だよなと思う。

 

 俺は奴の隙を狙い、攻撃して退けたあと、胸ぐらを掴み岩戸と反対方向へ思いっきりぶん投げた。そしてそれを追う。その時、ステージから黄色い歓声が聴こえ、笑い声が聞こえたが天宇受売命の事を思うと無視する事にした。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 ステージからだいぶ離れただろうか、ここからだと全くステージが見えない。声も少し聞こえるが何を言ってるかわからないぐらいだ。なんかいかにもライブから抜け出してきたかのようだ。

 

「おい、零矢。お前何でこんな所に」

 

「え?...あぁ、その大人の事情?」

 

 お前子供だろ!というGod-tellからのつっこみはさておき奴の体を見る。

 

……さてと、どうするか。ネックレスを隠してる以上下手に攻撃出来ないし...

 

 隠してるならやはり攻撃の際に探っていくしかないが、それでは隙ができてしまう。どうすれば効率がいいのだろう?

 

「...悩んでる?よね。どこに隠しているかって。そういう時は...」

 

……あるのか?隙が出来ず効率が良い方法が...⁉

 

「殴ってみようか」

 

……え?何ですかそのなげやりな答えは。作ってみようか、みたいなノリでとんでもない暴力発言したよ、この人?

 

 勿論考えがあるんだろうということは百の承知だ。じゃないと可愛いから許されるのだろうか?氷川さん、照井さん来ちゃうよ。

 

「相手の受け身の形を見て明らかに庇ってる所とかに入ってる可能性が高い。そうやって見ていく。だからわざと転ばせた方がいい」

 

「ラジャー」

 

 早速、行動に移そう。まず、俺は剣を放り投げ奴の胸に連続パンチを浴びせていく。勿論手加減でだ。無さそうなので反撃される前に服の襟を掴んで背負い投げをした。膝丈程の草が奴の体を形どるように折れる。汗と土と草の匂いが混ざり気持ち悪い。

 

……背中にもないか

 

 もう一度立ち上がらせようとすると拳をふるって来たので受け止める。すると今度はもう片方の手からも拳が来たので受け止めた。なんだかつばぜり合いのようになってしまう。だが純粋なパワーならスサの方が上のはず。腕を下に下げ頭突きした。よろけた所にキックをしたがギリギリで受け止められた。が、勢いで後ろへ飛ばすことは出来た。

 

……さっき左腹部を庇った...そこか!

 

 全力で走り、宙に浮かんでいる奴の体めがけ、拳を左腹部へ叩き込んだ。何かが壊れるような音が...しなかった。

 

「なっ...⁉」

 

 驚く俺に奴は口に血を滲ませながら嘲笑う。

 

「馬鹿がッ!誰が持ってると言った!お前はただ思い込みでこの神の体を傷つけただけだ!何が正義の掛け声だ、笑わせるな!お前の行動はただのヒーローごっこだ、歪んだ正義を力に替えて暴力をするただのガキだ‼」

 

 醜い、だが非常に腹が立つ。こういう自分を全否定されるのが一番ムカつく。しかし、奴が言っていることは合ってる。俺は思い込みで攻撃し、そして外した。神の体を傷つけた。俺は自分の拳を見る。その拳は返り血がべっとりとついている。すると眼中に手がスッと入って来る。

 

「⁉」

 

「言葉に全て反応する辺り本当にガキだな」

 

 胸ぐらを捕まれて投げられた。体の三倍はあろう大岩に叩きつけられる。痛みが走ったのも束の間、日本刀が頬をかすり突き刺さる。『剣』だ。すぐに奴がその剣を掴み首めがけて岩ごと切り裂こうとする。

 

「...くっ‼」

 

 両手で刃を掴み止める。両手から赤い血が流れ出す。岩を見ると止めている所まで切れていた。奴が更に力をかける。肉に刃が食い込んで痛みに変わっていく。

 

「どうせ、何も知らされてないんだろ?よくわからず妖美卯一に連れて来られたんだろ?教えてやるよ。俺達が使ってるアイテムだって元は妖美卯一の設計だ。俺が盗んだんだよ。それを世間に知られる前に尻拭いしようとあの女は行動していた。お前はあの女に騙されてるんだよ‼ただ自分の失態を人にすがってなかった事にしようとしているあの女にな‼」

 

 更に腕に力が入る。最早悲鳴をあげる気力もない。血が流れすぎたせいで脱力感が襲って来た。しかしここで力を抜けばバイオレントスマッシュ状態になってしまう。

 

「お前は言わば被害者だ。目を覚ませ」

 

 しかし、その一言で力が湧いてきた。俺は被害者じゃない。そう言い返せる自信があったからだ。確かに今の話なら俺はウィッチさんに利用されているのかもしれない。だけど俺は被害者なんかじゃない。この世界に来たのは紛れもなく自分の意思だ。

 

「俺は被害者なんかじゃねぇよ」

 

「そうか、ならば消えろ」

 

 奴は剣に全ての体重をかけるように岩ごと切り裂いた。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

「……」

 

 私は声をかけることも出来ずただその光景をモニター越しに眺めるしかなかった。

 

「...死んだか?」

 

 “神”が心配そうに私に向かって言う。その心配は後輩クンに向けてか?それとも私への侮蔑の言葉に向けてか?

 

「いいや、まだ生きてる。切り裂かれる前に...」

 

 ガラガラと岩が崩れ砂煙が立ち上る中で須佐之男命──後輩クンが立ち上がる。それを見て確信して呟いた。

 

「わざと倒れるように横に転んだんだと思う」

 

……普通の人間がそんな俊敏な動き出来るだろうか。あの状態ですぐに避ける方法が思い付くだろうか。やっぱりあの子も普通じゃないんだ...

 

 モニターで敵が動く。

 

「どうだ?思わないか。あの女さえいなければ、お前はこんな目に遭わなかった」

 

「あぁ、そうだな...」

 

 後輩クンは血だらけの手を握り締め答える。やはり私は迷惑だったんだな。あの時に占うだけで家に帰せばこの子はこんな目に逢わなかったはず。ただ高校生として友達と笑っていたはずなのに。この子の未来を変えてしまったのは私だ。

 

「お前さえ...月読命に入ってなければウィッチさんはそんな事言われずにすんだ...俺が変な判断さえしなければそんなきっかけ作ることもなかった...」

 

 よろよろと月読命へ近づいて行く。何故そこで私を庇ってくれるのだろう。

 

「お前さえ...いなければッ...」

 

 ガシッ、と肩を掴む。月読命の中に入っている者は動けないのかずっと固まったままだ。

 

「何だ...これはッ⁉」

 

 月読命の両目が白銀に光出す。

 

「何あれ⁉ウィッチ、眼が、眼が‼」

 

 “神”が大慌てで私に報告するがそんな事見ているのだからわかっている。何かの能力が発動するのか?でも敵の言動を聞くに任意の発動ではない感じがするのだが。

 

「離れろ...ッ‼」

 

 後輩クンの左眼が妖しく白銀に光る。直後、月読命の体がブレたかと思ったら分離するように敵の体が出てきた。

 

「えッ!分離した‼なんで」

 

「わかってる‼“神”ちょっと黙ってて!」

 

「怒られちゃった...ってウィッチ、右眼が...」

 

 “神”の言うことをガン無視しモニターをくまなく見る。真下のキーボードを弄り、カメラの向きを変えて見てもやはり分離している。後輩クンの『双命』とは単に()()()()()()のではなく()()()()能力もあるのかも知れない。

 そんな推測をしているうちに敵の体は分離を終え、魂が抜けたように月読命はその場に倒れた。敵の顔はよく見えなかったがすぐに岩に叩きつけられ、後輩クンは右拳を振りかぶり

 

「『須佐之男拳(ストレート)』ォ‼」

 

 敵の腹部めがけ渾身の一撃を叩き込んだ。

 

「『直打(ナックル)』ッッ!」

 

 二つに裂けた岩は粉々に粉砕し、くの字に曲がった敵は岩は愚か、ぶつかった際に木さえもへし折りステージの方向まで跳んでいったところを見ると、とてつもない威力がモニター越しでも伝わってくる。

 

「はぁ、っぐ...はぁ」

 

 疲れたのだろう、後輩クンは元に戻り、よろけながらステージの方へ向かう。まだ完全に奴を倒した訳ではないからだ。元に戻った須佐之男命が倒れている月読命を抱え、後輩クンに話し掛けた。

 

「零矢、大丈夫か?」

 

「あぁ、まだ...終わってない...ぐっ」

 

 体力の限界が来たのか力無くその場へ手をついて倒れてしまった。

 

「クソッ...まだ...終わって無いのに...」

 

 悔しいという気持ちがマイク越しにひしひしと伝わってくる。彼の息づかいが荒くなっていくのも。そんな姿を見て私は...

 

「まだ...アイテムが残ってる。マイクが入ってた所と同じ場所に『現在と未来を繋ぐ糸(コネクト・ワイヤー)』って言うアイテムが」

 

……正直あれを初心者に使わせるのは危険すぎるけど速く追い付くにはもうそれしかない...

 

「Summon...『現在と未来を繋ぐ糸(コネクトワイヤー)』」

 

 後輩クンの両手首に同形状のアイテムが装備される。それは射出機能が付いたワイヤーだ。その強度は念じることで硬さを変え、糸の長さは最大約50mまで伸びる。任意でフックを射出して自分側に引き寄せる又は自分がそちら側へ行く事が可能最大移動速度は100km。高速道路の最大速度ぐらい。要するに体勢を崩したらアウト。

 

「え。カッコいいけどどうすればいいの?」

 

 後輩クンが手首を見ながら立ち上がった。

 

「前に向けて、あそこに届けって思えば良いの...ってあれ⁉」

 

後輩クンがモニターから消えた。不思議に思い、視点を変えると凄いスピードで進んでいる。

 

「のわあぁぁぁぁぁぁっっっっっっ‼‼‼‼」

 

 スピードの割には体勢は安定してる。危なっかしいけど。これを使うとスピードで体が浮くから制御しないと事故ってしまう。しかし彼は体を上手く動かし障害物を避けながら移動していた。30m先の大木にフックは引っ掛かってるらしい。

 

「ぶつかる‼ちょっ⁉外れっ、ろっ‼‼」

 

 直前でフックは外れ、後輩クンは枝を蹴って衝突を回避した。けど、このままだと着地の衝撃で動けなくなる。その時、もう一度後輩クンの左眼が光りズザザザッという音と共にステージ付近までスリップしながら着地した。もちろん私も右眼を光らせながら見ていたが。

 

「この『現在と未来を繋ぐ糸』って名前付けたのウィッチさん?」

 

「...そう...」

 

 すぐ近くに奴はいた。体は腕や足が間接ではないところで曲がっていた。当たり前だろう、むしろ五体がバラバラになっていないだけマシだ。

 

「終わりだ、GD」

 

 その言葉のあと、顔を上げた奴に私達は絶句した。




──『先生』の正体とは──

次回予告

 「俺はあんたの言葉を信じたからウィッチさんの事を信じたんだ」

  

   零矢の信念はいかに?


 ちょっと予告変えて見ました。お楽しみに


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