俺達と神達と空想神話物語   作:赤色の魔法陳

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 すみません、更新に約一ヶ月かかってしまいました。誠に申し訳ありません。
 赤色の魔法陣です。バトルシーンです。どうぞ。


狂気な心に響く鈴の音

 その男は俺に向かって狂気的に呟いた後、構えた。その構えを見て、俺はこの男はただ者ではないと感じた。恐らく何回か実践経験があるのだろう。それが命懸けかチンピラとの喧嘩かはわからないが。

 まぁ、俺達と同じ次元超越者だろう。だが、冷静に考えるとこちらには剣。あいつは素手。リーチの差は歴然だ。それにこの剣は特殊な効果(エフェクト)がされている。つまり勝ったも同然ということ。

 俺は剣を構え敵の間合いに入り縦に切りつける。そいつは左へ避けたので、俺は続き狭間に左へ一閃。そいつは上体を反らし避けた。やはり避けるのに必死なようだ。

 

……少し引っ掛けを入れてみるか

 

 俺は剣を大きく振りかぶった。奴は右に避けようとする。俺は剣を振り下ろすと見せかけて右足で蹴りを入れた。俺の足は奴の脇腹にヒットした...そう思った。

 

「おい、まさか俺舐めらてんの?」

 

 奴は左腕でそれを受け止め軽口を叩いた。奴は左腕で俺の右足を掴む。間髪入れず奴の左足が俺の右手の剣へ伸びる。剣からの衝撃が手に伝わり剣を放した。1メートル先辺りに落ちる剣。さらに奴は剣を飛ばしたその左足を俺の顔面へ加速させる。

 

……この体勢からだとッ...⁉

 

 横顔にヒットする足。しかし無理な体勢だった為か威力はあまりなくダメージはあまり喰らわなかった。

 

「残念だったな」

 

 余裕の表情を見せる俺。しかし、次の瞬間奴の身体が宙に浮いたかと思うと、右肩に強い衝撃を受け左へよろけた。

 

……クッ、何だ?今何が起きた⁉

 

 しばらく考えた俺は一つの結論にたどり着いた。

 

……まさかあいつは左足を軸にして回し蹴りをしたのか⁉

 

 俺の顔に左足がヒットした後、その足を軸にして地面に着いている右足で回し蹴りをしたということだ。そんなこと普通に鍛えてできるだろうか?いや、できるはずがない。

 

……だとしたらこいつは一体...

 

 俺は考えたが途中で考えるのをやめた。そう、例え人間技じゃないにしろ場数が違うこいつに負けるはずがない。戦いを甘く見てる奴に負けるわけがない。

 俺は左足を地に着けて踏ん張る。

 

……こっちは命がかかってんだよ...かけてるものが違ぇんだよ!

 

 そして握りしめた左拳をそいつの腹へ突き出した。ウッ、と低いうめき声を出しそいつは後ろへ下がる。俺は追い撃ちに蹴りを放った。そいつが後ろに吹っ飛んだのを横目で確認してから先程飛ばされた剣の方へ向かった。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

……クソッ、油断した

 

 敵に吹っ飛ばされ地に伏した俺の頭には一つの疑問があった。先程から呼吸が乱れ、息が苦しい。確かに須佐之男命と戦い、天宇受売命を抱えて走り、体力の消耗は激しい。しかしここまでなるとは思わなかった。体力には自信があったからだ。しかしそうなるとあまり長期戦にはできない。

 俺は立ち上がり、剣を拾う為に後ろを向いていた奴に一直線に駆け寄って拳を突き出した。しかし、奴は瞬時に剣を拾って俺の拳を避けた。

 

「クソッ!」

 

 すぐさま奴が避けた方へ拳を向かわせる。しかし、その時奴は剣を突き出す構えをとっていた。すぐに避ける体勢に切り替えようとしたが時既に遅し。奴の突きは避けきれなかった俺の左腕を貫いた。焼かれたような痛みが走り、思わず声が出る。しかし、右拳を突き出し何とか奴を突き飛ばした。

 

「ハアッ、ハッ...」

 

 先程よりも息があがる。剣が刺さったままの左腕はだらりと下げ、既に力を入れても動かない。

 

……どうしたんだよ、俺⁉

 

 急に脱力感を感じ、地面に膝を着いてしまう。

 

「ゴホッ、ガハッ、ウッ...」

 

 手を口元に当て、離すとそこには掌いっぱいに赤い絵の具が付いたように血がベットリと付いていた。吐血したらしい。それに血が付いた手を見ているはずなのに目が霞む。どうやら目も異常をきたしているようだ。

 

「男の方⁉大丈夫ですか?」

 

 天宇受売命が駆け寄って来る。もはや俺は天宇受売命を見る余裕もない。それと同時に奴も立ち上がった。ヤバい、とてもこの状態はまともに戦うこともままならないだろう。

 奴が立ち上がったのを見た天宇受売命は、

 

「男の方、少し失礼します」

 

「ハアッ、ハアッ...え?」

 

「男の方なんですし、痛みは耐えられるのですよね?」

 

 そう言うと、天宇受売命は動かない俺の左腕を貫いている剣の柄を持ち、()()()()()()()()()

 

「アッ、ガハッ、ちょっ何を...」 

 

 当然のことながら痛みは容赦なく襲って来る。

 

「え?いや男の方なら痛いのなんて我慢できるのかと」

 

……いや、どれだけ天然なんですか。俺、超痛いんですけど...

 

「大丈夫ですよ、こんなの少しすれば治りますって」

 

……いや、治るわけないでしょ。なんなんですか、さっき突き飛ばした嫌がらせ?

 

 もはやツッコむ余裕もない。天宇受売命はその剣を一振りし刃に付いた俺の血をはらった。その剣先を奴の方へ向け、

 

「あんまりこういうのは持ったことないのですけど...あなたが逃げられるぐらいの時間なら稼ぐことはできるのかもしれません」

 

と宣戦布告した。俺は驚いた。止めようとしたが声が出ない。俺は自分の無力さを呪うことしかできない。

 

「止めてください、って顔してるのですね。でも私は止めませんよ。例え無理だとわかっていても、私の為に戦った誰かの為なら」

 

 よく見たら剣を持つ手が震えている。怖いのだろう。それはそうだ。自分を狙ってきた殺人鬼に立ち向かうのだから。

 

……動けよ...

 

 俺は動かない身体に対しそう思うことしかできない。 奴は天宇受売命へ駆け出す。

 

……動いてくれッ...‼

 

 力を振り絞り上半身を起こす。

 奴は天宇受売命へ拳を突き出し、殴りかかろうとする。余裕を持って躱す天宇受売命。

 

「あーあ、か弱い乙女に戦わせちゃって、罪な男だな」

 

 イヤホンマイクから“神”が皮肉るように言う。そりゃ俺だって戦わせたくないのはやまやまだ。しかし、身体が動かないから逃げることもできない。どれだけ情けないのだろうか。

 

「ねぇ、後輩クン。もしかして息が苦しかったりする?」

 

 先程から息があがっていた俺を不審に思ったウィッチさんが聞いてきた。俺はそうです、と答える。

 

「どういうことだ?」

 

「つまり、原因はあれにあるってこと」

 

……“あれ”?それって何だ?

 

 俺は戦っている天宇受売命の方を見る。それはちょうど奴の剣を躱したところだった。剣は膝の辺りまで伸びている雑草を切る。次の瞬間、その雑草が枯れたように倒れた。

 

「なるほど、効果(エフェクト)付きか」

 

 “神”がわかったように呟く。しかしまだ俺はよくわからない。

 

「後輩クン、God-tell(ゴッテル)の『探査(サーチ)』のボタンを押して画面を自分の身体へ向けて」

 

 俺は動かない身体に鞭打って言われた通り行動する。

 画面に自分の顔が映る。どうやら読み込んでいるらしい。サーチが終わると画面にドクロマークが映り、『毒状態』という表示が出た。やっとわかった。恐らく奴の剣に毒性があり、切りつけられた時に傷口から毒を流した。だから腕に刺さった時に急激に体調が悪くなったのだ。

 

……天宇受売命に感謝しないとな

 

 だがからくりがわかったところでどう仕様もない。

 

……せめて毒さえ完治できれば...

 

 そう考えていた俺の頭に打開策がひらめいた。

 

……そうだ‼アイテム、それの中に何かあるはず!

 

「お前、アイテム使う気か?」

 

 俺の心を読んだのだろうか、“神”が問いかける。

 

「まぁ、確かにこのままだと死ぬ。死んだらどうなるかって思ってるだろ。現実世界に戻されてこの世界から次元を越えて来た者がいなくなるまでこの次元には来れない。つまり、一度戻った場合あそこで勇敢に戦っている女神様の無事は保証できないってことだ。それに私がやったアイテムの有効時間は()()()だ。それが契約だからな」

 

 聞いてもないがペラペラと喋る“神”。しかしどれも重要なものだった。そういうのは先に言っておくべきだろ、とツッコみたくなるのをこらえ聞く。

 

「まぁ、上手に使うことだ」

 

 俺は震える手でボタンを押す。『メニュー』、『アイテム』、そして...

 

「召喚方法はイヤホンマイクと同じ。戦いの邪魔になったらBackって言えば戻る。召喚はSommonって言ってもできる」

 

 選択したのはやけに大層な名前が付いたアイテム。

 

「Summon...」

 

 俺が呟くと同時にGod-tell(ゴッテル)の画面から出る光。その光は俺の手に収束し、画面で見た物と全く同じ見た目になる。茶色の小さい壺のようなそれは紋章が描かれており、神々しさを感じた。そのアイテムの名前は...

 

最強の傷薬(ザ・ストロンゲストオイントメント)ッ...‼」




──正義の魂は再び立ち上がる──

 今回、天宇受売命大活躍ですね。あと今回段落分けを意識したので前の話も編集しました。良かったらそちらも。

 では次回予告といきましょう。

──再び立ち上がる零矢。しかし敵も召喚はでき──

 また待たせてしまうかもしれませんがお楽しみに。

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