俺達と神達と空想神話物語   作:赤色の魔法陳

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 どうも。赤色の魔法陣です。お久しぶりです。
 待たせてしまって申し訳ありません。今回はいつもの2倍の文章量です。さぁ、また戦闘シーンだ!(ワクワク)
 では、どうぞ。


天岩戸へ

 その男の方は私に、

 

「通りすがりだ」

 

と言ってきた。

 私は何と言って良いかわからず唖然としてしまった。だけど何故か悪い人ではない、そう思った。女の勘だけど。

 

「痛ぅ」

 

 足首が痛い。転んだ際にひねったのだろう、少し赤くなっている。これではあと四十分程かかる天岩戸までかなりかかってしまう。それにこの状態だと与えられた仕事をこなすのが難しいかもしれない。

 

 どうしよう?お付きの方に運んでもらうよう頼んでみようか?そう考えていると自称通りすがりの男の方が私に尋ねてきた。

 

「天岩戸の場所と方向わかります?」

 

「え?あ、まぁ暗いけど道はわかりますが」

 

 しかし何故そんなことを聞くのだろうか。と言うか普通怪我を負っている人に道を聞くだろうか。もしや自分が天岩戸へ行って私が負傷したことを説明してくれるとか...そんな親切な人間なんだろうか。しかし、

 

「良かった。じゃあ迷う心配は無いですね」

 

「え、それってどうい...キャッ⁉」

 

 私の予想を覆すようにその男の方は私を軽々と横に持ち上げた。

 

「な、何をするのですか⁉」

 

 そんな事をされたことも無いので顔が赤くなり声が上ずってしまう。

 

「こうした方が速いかなって思って」

 

「デ、デリカシーとか無いんですかッ⁉」

 

 私は降ろしてくれるように脚を動かして暴れるが心配無いと言うように男の方は私に笑顔を向ける。少しぎこちない笑顔が目付きの悪い顔立ちとのギャップを感じ、少し可愛らしいと感じた。

 

……可愛い...

 

「...もしかして嫌...ですか?」

 

 少し見つめていたのだろう。私が気に入らないと思っていると勘違いした男の方が聞いてくる。

 

「えッ⁉いや別に‼お気遣いありがとうございます」

 

 少し恥ずかしく顔を背けながら答える。この何とも言えないギャップに大分やられてしまったらしい。

 

「なら案内お願いします。皆さん!俺も一緒に行きますので、出発しましょう!では天宇受売命、しっかり掴まっててください」

 

 男の方は私を抱き抱えたまま、走りだした。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 十分ぐらい走っただろうか。大の大人を抱えて全力疾走しているから流石に疲れてきた。

 

「大丈夫ですか?少々息が荒くなっていますよ?」

 

 疲れているのがわかったのか天宇受売命が聞いてきた。

 

「いえ、大丈夫です」

 

「でも無理はしないでください。一度休みましょう。他の人がまだ追い付いていないようですし」

 

 振り向いてみて気付いた。他の人の気配が感じられない。暗いので人影も見えない。

 俺はGod-tell(ゴッテル)の光を出し、座れるような場所を探して座った。光を見た天宇受売命は目を輝かせて、綺麗と言っていた。

 しばらくして、天宇受売命は俺に話しかけてきた。

 

「今宵は月が雲に隠れてよく見えません。とても綺麗なのですが」

 

 そう言われ、俺は空を見上げた。確かに雲がかかっていて、その隙間から少し月が見えるぐらいだ。そういえば、こんなに静かな場所で空を見上げたことなどあっただろうか。あったような気がするが、よく思い出せない。

 

俺が感慨にひたっていると、

 

「そういえば、男の方は何者なのですか?ウズメや天照様を知っているようでしたし」

 

と天宇受売命が聞いてきた。

 

「あー、それはですね...」

 

 俺は自分の違う次元から来たことをなるべくわかりやすく説明した。

 一通り聞いた天宇受売命は、

 

「う~ん、ウズメにはよくわからないのです...」

 

と言った。まぁ無理はない。いきなりそんなこと言われても俺だって信じられない。

 

「でもここに来たってことはウズメ達を助けに来てくれたってことで、つまり男の方はとても良い人ってことですね‼」

 

「まぁ、そういうことですね」

 

 物わかりが速いのか天然なのかわからなかったが取り敢えず、信じてもらえて良かった。そう思っていると、

 

「実はウズメ、天照様にあったことはないのです。とてもお綺麗で偉い方とは知っているのですが。だから天照様はウズメにとって太陽そのものなのです。いつも何処かで見ていて照らしてくれている、そう思ってるのです」

 

……太陽か...

 

 かつての俺の太陽と言えば、いつも何処に居るかわからず、自分勝手な太陽と呼べるかわからない人だった。それでも...

 

「だから、閉じ籠ってしまったと聞いた時、悲しかったのです。でもウズメが天照様を天岩戸から出す為のキーパーソンだと知らせが来た時は嬉しかったのですが...」

 

 天宇受売命は顔を下げ、落ち込んだように見えた。

 

「自信が、無くて」

 

 プレッシャーと言うやつだろう。何かをする際憧れの人の前なら尚更だ。

 

「ごめんなさい、暗くなってしまって」

 

 天宇受売命は笑った。いや、笑おうとした。その笑顔は誰からでもわかる程、無理に笑っていることがわかる。

 

 申し訳ないのだが無理に笑っている笑顔程、嫌いな物はない。無理に笑うと言うことは今の自分の気持ちを押し殺して周りの為に笑うと言うことだ。そんな笑顔に何の価値があるのだろう。笑顔と言う物は心からそう思った時に自然とこぼれる物だ。だから...

 

「やめてください」

 

「え?」

 

「そんな無理に笑うの、やめてください」

 

 俺は自然に言葉が出ていた。驚く天宇受売命。それに構わず俺は続ける。

 

「別に無理に笑ってなんか...」

 

「笑ってます」

 

 断言する俺。流石に腹が立ったのか天宇受売命は、

 

「あなたに何がわかるのです⁉」

 

 怒ったように言った。

 

「何でそんな嘘が言えるので...」

 

「俺が違う次元から来たからですッ‼」

 

 俺は天宇受売命の言葉を遮って言った。天宇受売命は意味がわからない、という顔をした。

 

「俺はあなたのおかげで天照大御神が助かったことが書かれている次元から来たんです。つまりあなたが成功するってことを俺が、俺自身が証明しているんです‼」

 

 俺は天岩戸のことを知っている。勿論、天宇受売命のことも。例え自信がなかったとしてもこの神のおかげで太陽はまた登ったのである。

 

「大丈夫ですよ!」

 

 俺は力強く親指を突き立てた(サムズアップ)。天宇受売命は思わず吹き出して笑ってしまった。

 

「何ですかそれ?」

 

 そう、俺が見たかった笑顔はこの笑顔である。心から笑っているという証拠の。

 

「おーい、私達を忘れてるんじゃ」

 

 イヤホンマイクから“神”が話しかける。その一言で自分が言った言葉が全て聴かれていたことに気付き、顔が青ざめた。

 

……き、聴かれてたー‼マイク付けてたの完全に忘れてたー‼え、俺何て言ったっけ?「そんな無理に笑うのやめてください」とか言っちゃったよ⁉

 

「いやー、何かドラマ見てたみたいだったぞ」

 

「そうだね、私は最後まで見るかな」

 

「でも台詞がな、『やめてください』って...ククッ」

 

 イヤホンマイクから二人の笑う声が聞こえる。

 

「いや、あれはその場のノリと言うか...」

 

 俺は必死に言い訳をする。

 

「そんな簡単な言葉だったんですか?」

 

 天宇受売命が話しに割り込んでくる。

 

「うわぁー、マジか。罪な男」

 

「それは傷つくよ、流石に」

 

「そんな、嘘だったんですか⁉」

 

……あぁ、話がごちゃごちゃになってマイナス方向に。天宇受売命、どれだけ天然なんですか...この状況こそもう『やめてください』だよ...

 

「あぁー、もう‼確かに綺麗事だったかも知れないですよ!でもだからこそ現実にしたいでしょ?本当は綺麗事の方が良いんだから」

 

「男の方...」

 

 よし、これでこのカオスな状況を元に戻せる。そう思っていたが、

 

「あ、そう言えば録音してたんだ」

 

 “神”の一言で俺のメンタルはボドボドです。あの銀髪ロング後で覚えておきなさい。あ~、ウィッチさんに幻滅される...

 

「あ、人が」

 

 どうやらそうこうしているうちにお付きの人が追い付いたようだ。遠くに松明の光が見えた。その光はどんどん近づいてくる。やがて近くまで来ると、

 

「良かった。追い付いたんですね」

 

 天宇受売命は声をかけた。すると、

 

「天宇受売命様!無事だったので...」

 

 そのお付きの人はその場に倒れた。松明が地面に落ちて消えかけてしまう。

 

「大丈夫ですか?もうだらしないですね」

 

 俺は落ちていた松明を拾って倒れた人を照らそうとした。

 その時、その人の腰あたりから何か液体のようなものが広がっていることに気付いた。

 

……何だこれ?

 

 暗いせいで赤く見える。しかし、疲れたといえ、流石に動かな過ぎでは?そう疑問に思った俺はその人の背中を照らし、驚愕する。その人の背中には何か貫かれたような穴があり、液体は血だった。

 

……まさか死んでる...?何で...?

 

 そんな事には気づかない天宇受売命は声をかけ続ける。

 

「もう、大丈夫ですか?」

 

「天宇受売命、この人...」

 

 その時、雲の間の月の光に反射したのか、しゃがんでいる天宇受売命の1メートル上あたりがキラリと銀色に光った。

 

……ヤバいッ‼

 

 ドスッと言う音が響き、銀色に光る物──剣が地面に突き刺さる。飛び散る鮮血が辺りを赤く染めた。

 

「クッ...」

 

 俺は咄嗟に天宇受売命を抱えて地面に倒れ、彼女への致命傷は避けた。が、自分の肩にダメージを喰らってしまった。肩に鋭い痛みが走る。持っていた松明は消えてしまった。天宇受売命は何が起きたかわからないという風にしている。

 

「誰だ、テメェ‼」

 

 天宇受売命が危なかったこともあり、口調が荒くなる。

 俺はGod-tell(ゴッテル)のライトで剣の方を照らした。ライトの光と月の明かりに照らされ、人型のシルエットが浮かびあがる。どうやら男のようだ。みずらの髪型に白い胴着のような服。そいつはこの世界の服装をしていた。しかし、胸に光を受けて鈍く光る黒いネックレスをかけていた。

 

「あ?別に名乗る者程のじゃねぇよ」

 

 その男は地面に突き刺さった剣を抜き、

 

「これから死ぬ奴にはな‼」

 

 その場から駆け出し剣を俺に振り下ろした。俺は天宇受売命を左へ突き飛ばし、自分は右に避けた。そいつは剣を振り下ろした後、天宇受売命の方へ歩き出す。

 

「い、いやッ!来ないでッ!」

 

……狙いは天宇受売命か!

 

 俺は火の消えた松明を持ちそいつに振り下ろした。棒はそいつの右肩にヒットした。

 

「ひょっとしてあんたがGD(ゴッドドミネーター)か?」

 

 俺はそいつに問いかける。

 

「だったら?だったら何だってんだ?」

 

 そいつは左手で棒を掴み、へし折った。そして振り向き狭間に回し蹴りを放った。紙一重で俺は躱し、後ろへ下がって間をとる。

 

「俺がそうじゃなくてもお前は死ぬだろ?」

 

……何だこいつ?この自信に満ちた態度、狂気的な言動。GD(ゴッドドミネーター)って一体...?

 

「ハッ、じゃあ相手が悪かったな」

 

 それでも相手が誰だろうと、俺は余裕を崩さない。

 

「あ?」

 

 俺はそいつより自信気に狂気を込めて言った。

 

「俺は不死身だ、残念だったな。近くに来たお前が悪い」

 

 俺は戦闘体勢になる。それを合図にそいつも戦闘体勢になる。

 

「少しは楽しませろ」

 

 そいつは剣を俺に向け、そう呟いた。




 このワイワイやってからのシリアスなシーン...嫌いじゃない。とうとう対決する零矢VsGD。派手にいきたいですね。でもウズメさん、突き飛ばされて怪我増えてるんじゃ...
 では次回予告。
──激しい死闘。須佐之男命との戦いのダメージもあり、負傷する零矢。遂に“神”から授かった『アイテム』を使用する──
 次は戦闘シーンばっかりですね。お楽しみに。

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