俺達と神達と空想神話物語   作:赤色の魔法陳

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 こんにちは。
更新が遅れてしまい本当に申し訳ありません。赤色の魔法陣です。
 今回は前回に引き続き、須佐之男命との戦いです。
 ではどうぞ。


零矢VS須佐之男命(2)

……何事も最初の一手が重要...!

 

 そう思いながら、臆する事なく須佐之男命の顔面に左拳を突きだす。その拳はすんでのところで須佐之男命の左手に掴まれる。

 

……クソッ、なら‼

 

 左足を浮かせ、須佐之男命の右肩にミドルキックをお見舞いする。攻撃を喰らった須佐之男命は俺の左手を放し、左へよろめく。がしかし、

 

……痛ぇ、ダメージ入ってんのかよ⁉

 

 須佐之男命の身体は鉄を蹴っているかのように固くこちらに反動のダメージが入る。

 

……だったらッ...

 

 よろめいた須佐之男命の身体に向かいドロップキックをする。身体が固くても勢いをつければ攻撃は通じると読んだのは間違いではなかったらしい。須佐之男命はそのまま後ろによろけた。

 

……やっぱ、よろけるだけか。それならそれで...

 

 俺は須佐之男命が後ろへさがる度に前へ進みながら動く隙を与える事なく勢いをつけてパンチやキックを連続で撃ち込む。

 

……反撃の隙を与えず連続で攻撃し続ければ、いける‼

 

 俺は攻撃し続けた。そして最後に回し蹴りをして須佐之男命を吹き飛ばした。

 

……よし、これで...

 

 ここまでのラッシュを浴びせればさすがにダメージは入っただろうと思ったが

 

「まさかこれで終わりとかないよな?」

 

 すぐに須佐之男命は立ち上がり、余裕の表情でそう言った。その身体には目立った外傷も見当たらない。

 

……マジかよ⁉

 

「やっぱキツいか...生身の人と神だと体力や頑丈さに差があり過ぎる」

 

 ウィッチさんがイヤホンマイクから話しかける。声からして本当に焦っている事がこちらに伝わってきた。

 

「じゃあ、今度はこっちの番だ」

 

 須佐之男命は右手を天に掲げ、呟いた。

 

須佐之男拳・直打(ストレートナックル)

 

 そして掲げた拳を勢いよく地面に向かって振り下ろした。その一撃で拳を中心に地面がひび割れ、地盤が崩壊し、陥没を始める。

 

……嘘だろッ⁉馬鹿げてるだろこの威力はッ‼

 

 自分が立っていた場所にもひびがまわり地面が割れて崩れ、バランスを崩す。

 

……やべっ‼

 

 まるで地震の時の震央の近くにいるように揺れ、立っていることもままならない。あたりには砂埃が立ち込め、視界が遮られてしまった。やがて砂埃が風に流れ、視界が良くなると見えた風景に戦慄を覚えた。

 

「な、何だよこれ?」

 

 驚き過ぎて声が上手くでない。先程の一撃だけで自分達がいた場所がクレーターのようになってしまったなど夢にも思わなかったからだ。須佐之男命を中心に半径20メートルほどの地形が変わっており、まるで超小型隕石によって出来たクレーターのようになっていた。

 

……ヤバい

 

 そういう言葉しか頭に浮かばない。今、俺の人間としての本能とでも言うべきものが俺に警告している。

 

……俺は死ぬ

 

と。須佐之男命は拳を持ち上げ立ち上がってこちらへ歩いてくる。

 

「まじかよ...これで終わりなんて...俺は...」

 

 足が動かない。まるで蛇に睨まれた蛙のように。今すぐ逃げだしたいのに身体がいうことを聞かない。

 

……これが絶望、これが死...

 

 屋上から落ちたあの時と同じように避けられない恐怖感が俺の身体の中を駆け巡った。万事休す、そう心の中で観念した時ふとどこからか声が聞こえた。

 

(ガキ、お前諦めるのかよ?)

 

 俺はその声を知っている。嫌になるほど何度も聞いた声だ。教えられた事が上手く出来なかった時、いじけた俺に姉貴に鬱陶しい程言われた言葉だ。

 

(私を超えるって言ったのは忘れたのか?)

 

 この上から目線の台詞も今となっては全てが懐かしい。弟子は師匠を越えるもの、そう信じて疑わなかった俺は彼女の出す無理難題を気合いと努力で突破して来た。

 

(立てよ)

 

 何回同じ言葉を言われたことか。何度奮い立たされただろうか。目の前の敵は自分自身だと何度も教えられ自分に勝つ為にどれだけ苦しかろうが辛かろうが俺はこの脚で立ち上がって来た。

 

(立てよ、お前は負けないって誓っただろ‼)

 

 確かに俺はそう誓った。汚い大人なんかに負けない程の強い力、それを求めて彼女に弟子入りし鍛え抜いたのだから。何も出来ない何も知らない子供のままではなく、何かを知る為に自ら行動するヒーローになる為に。

 

……ムカつくんだよ

 

 子供心の俺には彼女の厳しさを恨んだことさえあった。しかし今ならはっきりとわかる。それは彼女の俺に対する愛情であった事を。今この瞬間のように身体が逃げたいと思う程の敵を目の前にしても立ち向かう勇気を教えていた事を。

 

(立って戦え弟分(クソガキ)ッ‼)

 

……出て来なくていいから、静かに眠っててくれよ

 

 須佐之男命は俺の顔に拳を突きだした。その拳を___俺は受け止めていた。

 

「何ッ?」

 

 動揺を隠せない須佐之男命。とどめのつもりだったのだろう。腕の骨が軋む音が鳴り響く。それを気にせず俺は立ち上がり言い放った。

 

(ほら、立てたじゃねぇか。私の仇討ちの約束、忘れてねぇよな?)

 

「うるせぇよ、姉貴(クソアネキ)‼忘れてるわけねぇだろ‼」

 

 俺は掴んだ腕を引き寄せ、須佐之男命を思いっきり後ろへ投げ飛ばす。不意討ちだったのか重心を後ろへ掛けていなかった須佐之男命をいとも簡単に投げることが出来た。俺は振り向き、言い放つ。

 

「俺はもう誰にも負けねぇ‼姉貴にもお前にも‼」

 

 俺の心から身体から勇気と覇気が溢れだして来るのを感じる。例え死ぬかもしれない戦いでも全力を投じるまでだ。

 

 立ち上がった俺に驚きながらもすぐに笑いを浮かべた須佐之男命は土を払いながら立ち上がると

 

「何だか知らんが吹っ切れたようだな、ならもっと楽しませてくれよ」

 

 と指で招くように挑発する。俺は再び構えると軸足に力を入れ一気に距離を縮めるイメージで地面を蹴った。

 

 俺と須佐之男命の戦いの第2ラウンドの幕が今上がった。




 ちょっとクサかったかな?でも自分では『須佐之男拳・直打』はカッコいいと思ってます。こういう必殺技、また出るかも?
 では次回予告。
___明かされる須佐之男命の過去、零矢との決着、そして謎の組織が動く中、ついに日本神話最大の事件が___
 お楽しみに。

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