ブラック・ブレード 黒の刃   作:豆は畑のお肉

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神様は出てきませんが転生?成り代わり?そんな様なもののジャンルです。


序章
ボディーパーカッション


とある部屋の一室に、穏やかな日の光が閉めたカーテンの隙間から差し込む。日の光ははそのまま伸びていき、部屋のベットに仰向けになりながら、惰眠を貪る男の顔を優しく照らす。男はしばらく眠り続けていたが、次第に顔に当てられた明るさに意識がいき、脳が起きだしていく。次いで脂肪の殆ど残っていない精悍な肉体が徐々に活性化していき、身体が活動する感覚を感じ取り男はゆっくりと瞼を持ち上げた。

 

 

いつもと何も代わり映えのしない朝。小野将馬《おのしょうま》はその代わり映えのしないはずの朝に奇妙な違和感を感じた。

まず目覚めがいい。これ自体は何も憂うことはないのだが、目覚めが良すぎるのだ。身体がやたらと活気に満ちている気がする。まるで一流のアスリートや格闘家の様な肉体の張りと密度を、自分の標準的なモブ体型から感じる。

 

次に自分の部屋のはずなのにえらく落ち着かない。昨日、自分の部屋で床につくまでの記憶ははっきりとあるし、ここは自室で間違いないはずなのだが……なにか、こう、なんとも言えない馴染み深い部屋の空気が感じられない。部屋の内装の違いを見つけようにも、元々この部屋は寝るだけの部屋だからベット以外の物は置いていない。つまり部屋の比較のしようもないのだ。

 

(なんだ?この違和感の塊は。俺が寝てる間に誰かが俺を誘拐した?いや、ドラマやアニメじゃあるまいし。それに玄関や窓の鍵はかけてあるし、一人暮らしで金の無い俺を攫う物好きもいないはずだ。………うーん、わからん。)

 

朝っぱらからうんうんと頭を捻って悶々としていたが、やがて考えるのは止めた。

 

(常識的に考えて、寝て起きたら全く違う部屋にいるなんてあるわけないし、ましてや俺を攫う物好きなんてさらにない。寝起きだからなんとなくそう感じただけだろう。)

 

そう結論づけて将馬はベットを抜け、部屋を出て顔を洗いに、洗面所へと向かう。幸か不幸か部屋の間取りが似通っていた為に、将馬は特に疑問を抱くことなく廊下を歩いていく。

 

 

 

 

 

ーーーーーーそうして洗面所に辿り着き、鏡に映る自分の顔を見たとき、将馬は自分が感じていた違和感の正体を知ることとなった…。

 

 

 

 

鏡の前には、髪を金髪に染めたツンツン頭に、表情筋が睨む仕草で固定されたかの様な目つき。どう好意的に見ても「路地裏でギャングやってんだ。恫喝の天才だ!大統領でもブン殴ってみせらぁ、でも警察だけはかんべんな!」 と言わんばかりの人相の悪く、肉襦袢を数枚重ね着したかの様な筋肉モリモリマッチョマンの変態が、鏡から将馬を見つめていた。

よく視ると変態の発達した左腕には、KILL or DIEの文字を抱いた死神の様な髑髏の刺青が彫られている。

 

将馬は一途の望みに賭け、後ろにこの男が立っていると思い、とっさに振り返った。が、そこには当然誰もいない。

 

(そりゃ、そうだ。鏡に映ってるの、この男だけだし。)

 

将馬は振り返った頭を戻し、改めて鏡に映る筋肉マンをじっと見据える。

 

(……………………………知らない顔だ。顔見知りどころか多分会ったこともない…。こんな目立つ奴が視界に入れば絶対に記憶に残る。ってことはなにか?俺は寝てる間に全く見ず知らずの男に成り代わったのか?似た様な現象が起こる映画が流行っているし、いつの間にか俺もそのブームに乗っかったのだろうか。まぁ、その映画は美少女に成り代わってたけど…。)

 

暫しの沈黙の後将馬はHAHAHAHAHAとアメリカンな笑い声をあげる。自分の声よりもイケメンだったことに密かにダメージを負いながら、

 

「いやいやいやいや。ないないない。成り代わりとかファンタジーかよって!そんなメルヘンチックな現象を考える程、俺の脳内はお花で満たされちゃいないっての。アレだ!多分どこかの悪の科学者みたいのが肉体改造でもしてくれたんだろ、うん。いやぁ最近運動不足だったし!?顔もまぁ悪人面とはいえ、イケメンにしてくれたみたいだし!?いやはや、気ぃ遣わせちゃったなぁ悪の科学者に!HAHAHA、ちゃんと後でお礼言わなきゃな!」

 

などと、どうにか今、自分に起きている現象を自分の脳が処理できる様に肉付けしていく。

 

「ふぅ。原因さえわかりゃどうってことないな。普通TVとかだと、こういう場面は動揺してあたふたするもんだが意外と冷静だな、俺。やっぱり男は熱血系より、やれやれクール系だな!」

 

熱血系単細胞タフガイのなりをした自称クール系男児の将馬は、己の出した結論が既に十分冷静さを欠いた判断であることに気づかない。

疑問を解決した(棚に上げた)将馬は、部屋を見渡そうとする程度には落ち着きを取り戻す。

 

 

そして再び思考が混乱の渦に飲み込まれた。

 

 

(洗面所の位置も、鏡が設置されている場所も同じだからわからなかったけど……なんか所々内装が違う⁉︎)

 

自分の慣れ親しんだ部屋でない、似た様な別の部屋に居ることに将馬は極限まで焦る。焦り過ぎて逆に普段通りの行動をしようと脳が働き、洗面所でとりあえず顔を洗い始める。

 

両手で桶を作り、そこに水を溜めて顔に打ちつける。若干いつもより打ちつける威力が高いのだが、そんなこと御構い無しに黙々と顔面に水を強打していく。

 

バシャ!バシャァ!!バッシャアァン!!!ババシャァ!!!!ババァシャアアアアン!!!!!

 

顔に水を打ちつける音は段々激しくなり、勢い余って水の大半は顔の横を通り抜け床に着水していく。水が無いのに顔から快音が聞こえてくるのは、水の無くなった将馬の手が自身の顔をしばいているからだ。

 

傍から見れば、水で手を清め、その清めた手で己の顔をしばき倒している不審者にしか見えないだろう。

 

 

 

 

肉と肉がぶつかり合う音と、床に水が撒かれていく音が、陽気な光で大地を照らす清々しい朝の風景を彩っていく。

 

そんな非日常の演出を一手に担っている不審者を、困惑しながらもドアの隙間からそっと覗き「将監、さん…?」と呟く小さな影に、将馬は未だ気づかない………。

 

 

 




今更ながらに原作を読んで面白いなーと感じつつ、夏世生存ルートがあってもいいじゃないと思い、駄文をダラダラと書き連ねることにしました。

粗が目立つ上に更新も遅い、おまけに小説に慣れていないので非常に読みづらいですが、それでも読んでもらえるのであれば、幸いです。

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